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2011/09/06

【歌舞伎】お蝶の福助の独壇場・2011年8月新橋演舞場・第一部

 例によって、ちと時間がたってしまいましたが、8月の歌舞伎の感想です。本日は第一部。公式サイトはこちらです。
 第一部は、『花魁草』と『櫓のお七』の二本立て。『花魁草』は安政の大地震の話しで、『櫓のお七』も江戸の大火事に関わりがあるので、なんだか東日本大震災が頭に浮かんで落ち着きませんでした。続いてみた第二部の『夏魂まつり』の大文字の送り火で少し癒されたものの、こんどは例の被災松の放射能事件が思い出されてしまいました。
 さて、『花魁草』はまさに福助の独壇場。吉原の女郎といっても、格が低くて値段も安い小見世女郎のお蝶。格式ある花魁とはちがう可愛らしさや安っぽさ、情の厚さや素朴さが、最初の場面から見事に表現されていました。第二場になってかいがいしく幸太郎の世話をする姿はいじらしく、幸太郎に好意を抱く娘に嫉妬する様子も、かわいらしくも面白かったです。ところがこの嫉妬心には実は裏があり、かつてお蝶は自分を裏切った許嫁を殺してしまった過去があり、またお蝶の母親も同じ過ちを犯していたのです。お蝶が幸太郎と夫婦になろうとしないのは「純愛」ゆえではなく、汚らわしい血をこの世に残さないためだったのです。笑顔で幸太郎を江戸に送り出すいじらしさ、最後のシーンで病み上がりの身で泣きながら華やかな舟乗込みを見送る姿など、一つひとつメリハリがあり、筋が通ってました。
 ということで福助の技には堪能しましたが、北條秀司の脚本自体はよくある話しで、「こう書けば泣くだろう」みたいなところが透けて見え、ぽん太は好きになれませんでした。
 獅童の幸太郎、頼りないけどカッコいい優男の大部屋役者という雰囲気はあってましたが、どうも演技が学芸会っぽい。勘三郎の百姓米之助は、いつもながらうまいけど力が入り過ぎ。美形の芝のぶがなんと百姓の女房という役柄でしたが、こういう田舎のおばさんいるよな〜という感じで、仕草や表情に味があり、ぽん太は密かに感動しました。

 それからぽん太がちと興味を持ったのが、劇中に出てきた「かさね神社」。米之助が幸太郎とお蝶に、「ついでにかさね神社にお参りしていったら〜、でもあの神様は嫉妬深いからな〜」みたいな感じで言っていた気がします。聞いたことはありませんが、円朝の怪談落語『真景累ヶ淵』(しんけいかさねがふち)や、先日みた鶴屋南北作の歌舞伎の『色彩間苅豆』(いろもようちょっとかりまめ)が関係している気がします。
 ググってみても「かさね神社」というのはなさそうですが、Wikipediaによれば、江戸時代の慶長17年(1612年)から寛文12年(1672年)にかけて下総国で起きた実話に基づくと言われる「累の物語」というものがあり、細かいことはWikipediaを見ていただきたいのですが、累(かさね)という女が自分を殺した夫の後妻を次々と呪い殺したという話だそうです。茨城県常総市に法蔵寺というお寺があり(Yohoo!地図)、そこに累一族の墓があるそうです。明治の神仏分離令の前にここが神社だった可能性はありますし、栃木から江戸に行く途中に寄るというのも、地理的に矛盾しない気がします。もちろん『花魁草』が創られたのは昭和56年(1981年)ですから史実に基づいていないかもしれないし、北條秀司の創作が加わっている可能性も否定できません。ちなみに累の霊を鎮めたのは祐天上人というお坊さんですが、目黒にある祐天寺の開祖だそうです。祐天寺には「累塚」があるそうで、ぽん太も機会があったら累ヶ淵と祐天寺をみちくさしてみたいと思います。

 『櫓のお七』は、お七が火の見やぐらに登って太鼓を叩くところを、人形振りで演じる舞踏劇。なんか観たことあるな……と思って調べてみたら、平成18年5月の新橋演舞場の『松竹梅湯島掛額』で、亀治郎が人形振りでお七を演じるのを観たようです。むむむ、関係がよくわからん。ちと調べてみましたが、「お七吉三もの」と呼ばれる様々な系列があり、複雑でよくわかりませんでした。
 七之助はのお七は、女形の役を一つひとつ身につけていこうという熱意と気迫が感じられました。人形振りも見事でした。


新橋演舞場
八月花形歌舞伎
平成23年8月24日
第一部

一、花魁草(おいらんそう)
                    お蝶  福 助
                   幸太郎  獅 童
                   米之助  勘太郎
                   客孝吉  亀 蔵
                    お糸  新 悟
                小料理屋女房  歌 江
                   五兵衛  市 蔵
                   お八重  高麗蔵
                  勘左衛門  彌十郎
                    お栄  扇 雀

  伊達娘恋緋鹿子
二、櫓のお七(やぐらのおしち)
                 八百屋お七  七之助

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