« 【歌舞伎】お蝶の福助の独壇場・2011年8月新橋演舞場・第一部 | トップページ | 【温泉】切明温泉「雪あかり」で山菜を満喫(★★★★)・そば茶房遊蕎(ゆうきょう)【蕎麦】 »

2011/09/07

【歌舞伎】G2の新作は正統派の歌舞伎だ・2011年8月新橋演舞場・第二部

 8月歌舞伎、第一部に続けて観た第二部の感想です。公式サイトはこちら
 第二部のお目当ては、G2というどこが名字でどこが名前かわからない人の作・演出による新作歌舞伎、『東雲烏恋真似琴』(あけがらすこいのまねごと)です。8月歌舞伎の新作というと、一昨年のゾンビが思い出され、G2などという作者の名前とあいまって、どうせおチャラケだろうと殆ど期待していなかったのですが、どうしてどうして本格的な歌舞伎で、思いがけない展開や印象的なシーンの連続で、思わず引き込まれました。
 火事のなか藤川新左衛門(橋之助)は、妻となるはずの花魁小夜(福助)を必死に探しまわります。遺体が上がったにもかかわらず小夜の死を認めようとせず、人形を小夜と思い込んで結婚生活を始めます。このあと家督を失うことを恐れた家族が、新左衛門の妄想につじつまを合わせようとすることで、滑稽な展開になっていきます。
 しかし東日本大震災を体験したわれわれは、新左衛門をあざ笑う気にはなりません。妻を思う一途な気持ちに共感し、気がふれて人形を人と信じ込む姿に哀れみを感じます。第一部の演目の『花魁草』でも大地震が題材となっており、発端では逃げ延びる人々が描かれていますが、男女の出会いと別れや、「血」の問題がテーマであって、地震は「きっかけ」あるいは「背景」でしかありません。一方で『東雲烏恋真似琴』は、エンターテイメント風な印象にもかかわらず、今回の災害の悲惨さと真剣に向き合っている気がしました。
 またぽん太にはこの作品が、とっても「歌舞伎」らしく感じられました。台詞の言葉遣いが江戸っぽいとか、所作振る舞いが歌舞伎っぽいという理由もありますが、ぽん太が着目したいのは、本筋と関係ない部分がいろいろと組み込まれ、全体が不統一で雑多になっている点です。近代以降の演劇は、ひとつの目的に向かって劇全体が構成されていて、統一性があるかわりに複雑性が感じられません。しかし近世に作られた歌舞伎作品には、つねに不統一なところや余分なところがあり、それがぽん太が歌舞伎を好きな理由の一つなのです。『東雲烏恋真似琴』では、例えば小夜の人形を作るのが左甚五郎の末裔であるという設定になっております。それは本筋からいうとどうでもいいことなのですが、それによって様々な左甚五郎伝説とのつながりが出来てきたり、箱のなかの人形が動き出すというすばらしいスペクタクルが可能になりました。
 それから歌舞伎定番の要素がいろいろ出てくるのも、歌舞伎らしさの理由でしょうか。遊郭のシーンや、身請け、愛想尽かし。亀戸天神の鷽替えの護符も、お守りや臍の緒書きが劇の転回の重要なきっかけになることは歌舞伎では常識。妻を亡くしたのに楽しげに働く新左衛門を不思議に思い、同僚が次々と様子を伺いにいくところなどは、『暫』で鎌倉権五郎を追い返そうとして次々と試みるシーンが頭に浮かびます。ラストが怪談チックになっているところも、八月納涼歌舞伎という時宜を得ている気がします。
 浮世草子からプロットを借りてきて、改作によって話しを膨らませているところも歌舞伎っぽいです。また「真似琴=マネキン」という題名の洒落っ気もいいです。
 人形師左宝月が造った歌舞伎人形が、とつぜん命を吹き込まれたかのように動き出すところの視覚的効果には驚きました。どうせならもう少し動いているところを見ていたかったです。
 新作に強い福助、第一部に続きこの芝居でも大活躍。遊女はお手の物だし、最後に花道で新左衛門に付き従うときの、人形のような幽霊のような、愛しているようで取り憑いているような表情はすばらしかったです。
 橋之助、実直でありながら一途な思いを持ち、それ故に人形を妻と思い込む猟奇的な人物を見事に演じていました。
 獅童の左宝月が残念でした。他の登場人物が、歌舞伎として様式的に演じることで劇の品格が作られているなかで、ひとり学芸会調で浮いていました。
 七之助と萬次郎、きっちり歌舞伎らしく演じているからこそ、おかしいところが心から笑えました。目をそらした隙に食べ物を食べまくるというのは定番のギャグですが、この二人がやったからこそ面白かったです。扇雀の男役は久々に見ましたが、ちょっと軽はずみだけど根は真面目な若侍らしく見えました。扇雀も新作に強いですね。亀蔵に彌十郎、舞台を歌舞伎らしく締めてました。
 
 『夏魂まつり』は成駒屋一家による舞踊。震災に関連する演目が多いなか、癒された思いでした。橋之助の女形は久しぶりか。国生くん、踊りも頑張りましょう。


新橋演舞場
八月花形歌舞伎
平成23年8月24日
第二部

  新作歌舞伎
一、東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)
                藤川新左衛門  橋之助
                  関口多膳  扇 雀
                   左宝月  獅 童
                 高橋秋之丞  勘太郎
                    お若  七之助
                    宇内  巳之助
                伊勢屋徳兵衛  亀 蔵
                    お弓  萬次郎
                  潮田軍蔵  彌十郎
                    小夜  福 助

二、夏 魂まつり(なつ たままつり)
                若旦那栄太郎  芝 翫
                  芸者お梅  福 助
                  芸者お駒  橋之助
                 太鼓持国吉  国 生
                 舞妓よし鶴  宜 生

|

« 【歌舞伎】お蝶の福助の独壇場・2011年8月新橋演舞場・第一部 | トップページ | 【温泉】切明温泉「雪あかり」で山菜を満喫(★★★★)・そば茶房遊蕎(ゆうきょう)【蕎麦】 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/52558101

この記事へのトラックバック一覧です: 【歌舞伎】G2の新作は正統派の歌舞伎だ・2011年8月新橋演舞場・第二部:

« 【歌舞伎】お蝶の福助の独壇場・2011年8月新橋演舞場・第一部 | トップページ | 【温泉】切明温泉「雪あかり」で山菜を満喫(★★★★)・そば茶房遊蕎(ゆうきょう)【蕎麦】 »