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2011/12/19

【歌舞伎】染五郎が復活&主演の「碁盤忠信」が出色/2011年12月日生劇場昼の部

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 12月の歌舞伎公演は日生劇場。霞ヶ関駅からの途中、日比谷公園の紅葉がきれいでした。日生劇場は、ぽん太は初めて入りました。螺旋状のうねるような階段、奥様風ガウディという感じのホール天井や壁など、なかなか面白い建築でした。日生劇場の公式サイトに建物の解説がありますが、設計は村野藤吾(1891年〜1984年)とのこと。読売会館(現ビックカメラ有楽町店本館)などを設計した人だそうですが、これまであんまり意識していませんでした。
 さて今回は七世松本幸四郎襲名百年を記念した公演で、ひ孫にあたる染五郎、海老蔵、松緑が出演するとのこと。三人がそういう血縁だったとは、ぽん太は知りませんでした。夜の部は「また海老蔵の『勧進帳』」なので割愛し、昼の部を観ることにしました。『勧進帳』は7月の新橋、9月の大阪松竹に続いて、この半年で3回目。いくらお家の芸にしてもやりすぎでは?
 「碁盤忠信」は、明治44年(1911年)に七世松本幸四郎の襲名披露で上演されて以来、100年ぶりの公演とのこと。もちろんぽん太は初めてみたのですが、意外に面白かったです。散らばった碁石から敵が襲ってくることを読み取ったり、節分に見立てて碁石をまいて悪役を退治するなど、碁盤をライトモチーフにした様々な演出のアイディアが見事です。佐藤忠信が碁盤を持って戦ったという伝説に基づいているそうですが、『義経記』には書かれていないということで、ちとググってみましたが、いつ頃作られた伝説なのか、ぽん太ごときにはちとわかりませんでした。
 第一幕第一場の舞台は吉野の勝手神社。むむむ、ぽん太は以前に吉野に行って義経ゆかりの地を訪ねたはずなのに(その時の記事はこちら)、勝手神社の記憶がニャイ!調べてみると(吉水神社の公式サイト)、勝手神社は吉水神社の向かいあたりにありましたが、平成13年9月27日に不審火によって焼失し、現在は吉水神社の境内に仮遷座しているそうです。
 『義経記』は、岩波文庫版をこちらのサイトで読むことができます。義経と静が別れたのは勝手神社の前とは書かれておりませんが、伝説では義経は吉水神社に逗留していたとされておりますから、別れ話の場所が勝手神社の前あたりというのはあり得るような気がします。横川覚範は、「碁盤忠信」では堀川御所で忠信に闘いを挑みますが、『義経記』では、吉野にただ一人残った佐藤忠信に一騎打ちを仕掛けますが、ついにやられて首を掻かれてしまいます。これに驚いた敵方はいったん引き上げてしまい、忠信は町中に降りて来てある家に入ります。そこに追っ手が来たため、家に火をかけた上で、天井を破って逃げ延びます。先のブログに書いたように、吉野の金峯神社には、隠れていた義経が屋根を蹴破って追っ手から逃れたという言い伝えがありますが、ひょっとしたらこの忠信の行為と混ざっているのかもしれません。
 さて『義経記』に戻ると、吉野で逃げ延びた忠信は京に入り、思いを寄せていた女性を訪ね、その父親の小柴入道の家(堀川御所ではありません)にかくまわれます。この女性の名は、小車ではなく「かや」と書かれています。そして忠信を裏切ったのは、父親ではなくこの女で、内通したのは梶原景高ではなく「梶原三郎景久」となっていますが、どういうひとなのかぽん太にはわかりません。「梶原景久」という戦国時代の武将はいるようですが……。
 で、梶原景久は、恋人を裏切った「かや」をあさましく思って帰ってしまいますが、かやは次ぎに六波羅に密告し、忠信は敵に囲まれます。またもや天井を破って(!)脱出し、堀川御所に入ります。しかしここで二百騎余の敵に囲まれ、ついに自害します。
 さて、今回の公演に戻りますが、その忠信役の染五郎、勝手宮社前では若武者らしい凛々しさがなく、線の細さが目立って、なんだか世話物の町民みたいでした。しかし筋隈に変わってからは、荒事らしい大きさと迫力があって、すばらしかったです。歌舞伎美人の染五郎のインタビューによれば、染五郎が「碁盤忠信」の百年振りの復活に携わったとのこと。ぽん太は染五郎をちょっと見直しました。
 亀三郎は、ぽん太は今年の4月の新橋演舞場で観た『権三と助十』の助八の、バカっぽくて人のよさそうな印象が強く残っていて、『え〜、亀三郎が義経?」と思ったのですが、古風なひな人形のように凛々しく若々しい表情で、義経の高貴さはまだまだですが、意外にカッコよかったです。春猿の静御前は美しく、笑三郎はいつもながらによく言い立ても見事、猿弥おもしろく、錦吾は明るい味がありました。高麗蔵も武将の妻らしく、海老蔵も荒事はさすがに迫力がありました。
 「茨木」も初めて見た演目。梅丸君かわいかったです。松緑は、こういった古典的な演目はうまい。海老蔵は、あいかわらず声がくぐもって変な発声で、音程も変。揚幕の内からの声も、ターザンかと思いました。最後に鬼を追って片膝立てて舌を出しての見得は、七世幸四郎の型だそうですが、その前のぴょんこびょんこ跳ぶのと合わせて激しすぎ、「をひをひいったいどっちが化け物なんだよ」とつっこみたくなりました。


七世松本幸四郎襲名百年
日生劇場
十二月歌舞伎公演
平成23年12月15日・昼の部

一、碁盤忠信(ごばんただのぶ)
               佐藤忠信  染五郎
               横川覚範  海老蔵
                源義経  亀三郎
                静御前  春 猿
     塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍  笑三郎
              番場の忠太  猿 弥
             小柴入道浄雲  錦 吾
           忠信女房小車の霊  高麗蔵

二、新古演劇十種の内 茨木(いばらき)
         伯母真柴実は茨木童子  松 緑
              渡辺源次綱  海老蔵
              家臣宇源太  亀 寿
              太刀持音若  梅 丸
               士卒仙藤  亀三郎
               士卒軍藤  市 蔵
               士卒運藤  高麗蔵

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