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2011/12/12

【演劇】〈ネタバレ注意!〉あの、笑えないんですけど・『90ミニッツ』三谷幸喜

 本日の記事はネタバレがありますのでご注意下さい。
 三谷幸喜生誕50周年スペシャル「三谷幸喜大感謝祭」のラストを飾る舞台とのこと。公式サイトはこちらです。
 忙しい12月、ちょっとの間でも現実を忘れて心から笑おうと、仕事の合間を縫い、冷たい雨の中わざわざ見に行ったのに、テーマが医療で、しかもどっぷり重たい話しで、ちっとも笑えまへんがな!あたしゃすっかり気が重くなったよ。
 登場人物は二人だけ。交通事故で救急病院に担ぎ込まれた若者を、なんとか手術して助けたいと願う整形外科副部長の医師(西村雅彦)と、信仰上の理由から輸血を伴う手術を拒否する若者の父親(近藤芳正)です。舞台の冒頭で90分以内に手術をしないと若者は死んでしまうということが告げられ、リアルタイムで二人の激しいやり取りが繰り広げられます。
 医者からすると、これは「ありえる話し」であって、演劇的な架空の状況ではありません。実際そのような事件が過去に起きているのは皆さんもご存知の通り。ぽん太は外科医ではないので輸血が問題になったことはありませんが、ぽん太の医学的な考え方と、患者さん(と家族)の思いの食い違いに悩むことは多々あります。なんだか身につまされる話しです。
 しかもその問題に関して、この劇で呈示されている論点は、ほとんど周知のものばかりです。ぽん太は医療問題のシンポジウムに行ったわけではありませんから、新たな論点が呈示されていなくてもかまわないんですけど、だとしたらそれが演劇として面白く作られていなかったら、わざわざ舞台を見に行った価値がありません。三谷幸喜の作ということで、ぽん太を初めとする観客は、笑う気満々だったと思うのですが、時おりくすくすと笑うぐらいしかできませんでした。医者からみても「あるよな〜」と笑えるようだと良かったんですけど。
 唯一面白かったのが、それまで輸血を拒否していた父親が、輸血はしていいけど手術承諾書にはサインしないので、医者が勝手にやったということにして手術をしてくれと言い出すところ。そうか〜こういうパターンもあったか!これまで「息子の命が大切じゃないのか!」と父親を怒鳴っていた医師が、逆に父親から、「裁判を起こされて生活や医師としてのキャリアを失うことのほうが、患者の命よりも重要なのか」と詰め寄られます。これを機に父親と医師の立場がすっかり逆転して……などとなっていれば笑えた気がするのですが……。整形外科副部長が今度は救命救急室にいる医師や看護師に、電話で「自分の許可なしに、現場が勝手に手術したことにはできないか」などと言い出すあたりも笑いを取れそうですが、あっさりと流してました。
 三谷幸喜はこの芝居では、あえて笑いを捨てていたのでしょうか。それとも小林聡美との離婚という私生活の問題が影を落としているのか、あるいは「三谷幸喜大感謝祭」で書きすぎて筆が荒れているのか、初日から間もないので二人の間が悪いのか。むむむ、わかりません。
 セットはシンプルで照明や美術もさしたる工夫がなく単調。正面に流れ続ける水が、砂時計のようでもあり、また少年の命をも表しているようですが、ちょっとありきたり。せっかく90分という、現実と舞台上の時間が一致しているという設定なのに、だんだんと緊迫していく感じが出てませんでした。
 二人の登場人物がずっと怒鳴り合っているのも聞いてて不快。また対話が理屈っぽすぎて疲れました。
 もっと笑って笑って最後にほろりとするのがよかったんですけど。


「90ミニッツ」
2011年12月8日 PARCO劇場
作・演出/三谷幸喜

出演/西村雅彦、近藤芳正

美術/掘尾幸男
照明/服部基
音響/井上正弘
衣裳/黒須はな子
ヘアメイク/河村陽子

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芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

みつさん、コメントありがとうございます。
そうですよね、普通、笑いを期待しますよね。
彼女と二人で、すっかり気分は深刻になってしまったりして……。

投稿: ぽん太 | 2012/02/08 16:49

今日、彼女と観てきましたが…期待はずれというか、笑うとこがありませんでした。
ちょっと残念でした。なんだかなあ…。

投稿: みつ | 2012/01/19 23:42

Lisaさん、コメントありがとうございます。
ブログも拝見しました。2回見にいかれたんですね。
ぽん太は仕事がら、医療以外のテーマにして欲しかったです。
でもそうすると、また別の仕事のひとが困るのかもしれませんが。
三谷さんの来年以降の展開が楽しみです。

投稿: ぽん太 | 2011/12/24 11:13

この舞台は本当のお医者さんに感想を聞いてみたいと思いました。ありえる設定とは、ミステリーとはちょっと違いますね。
笑いたいと思って観に行くと期待はずれかもしれませんが、私は舞台と一緒になって緊張して、観終わってからぐったりしました。でも後味の悪いものでは決してありませんでした。
ただ三谷さんの意図は良くわかりませんね。
笑いを封印して何を伝えたかったのか?
どの作品にも根底には悪い人がいない、皆いい人と思えることです。それでもやっぱり「笑の大学」の方が凄いです。

投稿: Lisa | 2011/12/22 23:35

Makさん、コメントありがとうございますhappy01
三谷幸喜の舞台をすべて観ているとはすごいですねcoldsweats02。よほどのファンなんですね。
なるほど、笑いが少ないのは意図的だったんですか。三谷幸喜が来年以降どのような方向に進んで行くのか楽しみです。
またぽん太のブログに遊びに来て下さい。

投稿: ぽん太 | 2011/12/18 16:14

初めまして。
私も観ました。「笑いに行った人」には微妙だったかもしれませんねぇ。
三谷氏の舞台を全て観ている私は「笑えなかった」けれど「面白かった」です。
似たような医師(人間)との倫理や論点のズレを経験た事がありますし。そういう人、多いと思うのですが。
もう一度観たいと思うし、多くの人(特に医療従事者)に観て欲しいと思う舞台でした。
ちなみに某記事によると三谷氏は「ギャグやくすぐりなど笑ってもらう要素を全部捨てて、何もないところでお客を引っ張ってみたい」と語られていたようなので、プライベートは一切関係なく、「狙い」だったと思いますよ。

投稿: Mak | 2011/12/18 10:18

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