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2012/02/03

【歌舞伎】おとくが主役!秀太郎の「傾城反魂香」/2012年1月大阪松竹座

 1月末、ぽん太とにゃん子は歌舞伎を観に大阪遠征して参りました。こちらが公式サイトです。
 昼の部の「傾城反魂香」の秀太郎がすばらしかったです。秀太郎のおとく、翫雀の浮世又平という配役を聞いたとき、おとくが又平を引っ張る感じになだろうとは予測してましたが、想像を遥かに越えて、まさにおとくが主役でした。「傾城反魂香」は何度も観てますが、これまでとはまったく違う芝居に見えました。
 おとくと又平の花道の出でも、おとくが「今日こそはお師匠さんにきっちり話しをつけて、土佐の名字を頂かなければ」とでもいうような毅然とした面持ちで、つかつかと先頭を歩んでいきます。いっぽう又平は、「あ〜どないしよ」と途方にくれてちょっと虚ろな表情でおとくの後に従います。以後もおとくが芝居を仕切っていきますが、秀太郎の、夫に自害を勧める時の真剣な表情、筆を離させるために又平の手をさするときの優しさ、絵が手水鉢を抜けたのを見て驚く様子、名字を許されて幕外の花道での夫婦のやり取りでのパッと花が咲いたような嬉しそうな顔など、一つひとつに見とれてしまいました。
 又平の翫雀は、人が良くて大人しそうな感じがよく出てました。ちょっと押しが弱い感じはしましたが、今回の演出ではこれでいいのかも。しかし怒って妻を叩く場面では、ぽん太がこれまで観た演出ではどれも様式的に演じておりましたが、翫雀はビシビシひっぱたくだけでなく蹴り飛ばしたりしてました。これが上方のリアルな演出というものでしょうか。
 笑也の修理之助、虎をかき消した功績で名字を賜ったときに、泣き叫ばんばかりに喜んでいて、ちょっと大げさな気もしましたが、又平が名字を許されたなかったことで自害するところまで行く、という話しの前振りですから、免許皆伝のありがたさをこれくらい強調してもいいのかもしれません。市蔵と家橘の土佐将監とその妻もよかったです。海老蔵の雅楽之助は、独自の世界を形作っていました。
 ぽん太がびっくりしたのは、土佐将監が手水鉢を刀で叩き割り、又平の吃りが治るという下り。初めて見ました。この下りがあるのとないのと、どっちがオリジナルなんでしょうか?ただ、精神科医のぽん太としては、又平の吃りが治ってめでたしめでたしというより、吃りのまま幸せをつかむ、障害がありながら幸せに生きる、という結末の方が好きです。それにこの脚本だと、言葉は吃るが節を付けた口上は吃らない、という話しが重複というか、無意味になってしまう気がします。
 昼の部は続いて「修禅寺物語」。岡本綺堂作とのことですが、職人と宮仕えとどちらが偉いか比べるという発想が近代っぽくて、ぽん太は好きではありません。最後に夜叉王が娘桂の断末魔の表情を写し取ろうとするのも、芥川龍之介の『地獄変』のパクリか、と思ったのですが調べてみると、『修禅寺物語』の初出は1911年(明治44年)、『地獄変』は1918年(大正7年)ですから、『地獄変』の方が後。失礼いたしました。役者陣は大健闘で、特に我當はさすがでした。進之介は世話物の演技ではちょっと粗が目立ちました。
 「積恋雪関扉」は、團十郎の関守、藤十郎が小野小町と傾城墨染の二役を演じ、さらに人間国宝の一巴太夫が常磐津を務めるという超豪華版。けれど、1時間30分にわたる舞踏劇を味わい尽くす鑑賞眼が、ぽん太にはないのが残念です。
 第二部は、海老蔵の「雷神不動北山櫻」の通しでした。海老蔵の「雷神不動北山櫻」は、2008年1月に新橋演舞場で観た演目ですが、エビゾー歌舞伎がさらにパワーアップしたようです。海老蔵が五役を演じ分けますが、妙になよなよした安倍清行や、お馬鹿っぽい粂寺弾正など、キャラがコミック調です。大詰めの立ち回りの途中で、押し寄せる敵にあきあきしたように「あ〜あ」とため息をつくあたりは、アメリカ西部劇調。鳴神上人の「酒は一滴もならぬ、奈良漬けでもだめじゃ」という台詞では観客に笑いが起きましたが、どうせならここで一発自虐ネタのアドリブが欲しかったです。ということでエビゾー歌舞伎、エンターテイメントとしては悪くはありませんが、「歌舞伎」としてはどうなのか。やがて猿之助歌舞伎のように評価を得るにいたるのか、それとも一時のあだ花として消えていくのか、ぽん太にはまったくわかりません。


大阪松竹座
壽初春大歌舞伎
平成24年1月

昼の部

一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の場
       浮世又平後に土佐又平光起  翫 雀
             狩野雅楽之助  海老蔵
             土佐修理之助  笑 也
               土佐将監  市 蔵
              将監北の方  家 橘
            又平女房おとく  秀太郎

二、修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)
             面作師夜叉王  我 當
             源左金吾頼家  海老蔵
               下田五郎  市 蔵
                妹娘楓  吉 弥
                 春彦  進之介
                姉娘桂  扇 雀

三、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
  逢坂山関所の場
        関守関兵衛実は大伴黒主  團十郎
             良峯少将宗貞  海老蔵
  小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精  藤十郎

夜の部

通し狂言
雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
  市川海老蔵五役相勤め申し候

  発 端    深草山山中の場
  序 幕    大内の場
  二幕目    小野春道館の場
  三幕目第一場 木の島明神境内の場
     第二場 北山岩屋の場
  大 詰第一場 大内塀外の場
     第二場 朱雀門王子最期の場
     第三場 不動明王降臨の場

               鳴神上人
               粂寺弾正
               早雲王子  海老蔵
               安倍清行
               不動明王

              雲の絶間姫  扇 雀
               文屋豊秀  右 近
               腰元巻絹  笑 也
               小野春風  宗之助
               秦秀太郎  吉 弥
               八剣玄蕃  市 蔵
               関白基経  門之助
                秦民部  右之助
               小野春道  翫 雀

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