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2012/04/09

【歌舞伎】一点の曇りもない勘九郎の御所五郎蔵。2012年3月平成中村座夜の部

 年度の変わり目で忙しいですばい。
 3月の平成中村座の夜の部でぽん太が楽しみにしていたのは、初めて観る仁左衛門の「傾城反魂香」です。田舎者っぽくてちょっぴりダサい浮世又平を、二枚目でカッコいい仁左衛門が演じると、いったいどうなるのか。おまけにおしゃべりの「おとく」を勘三郎が演じるとのこと。ペラペラしゃべって会場を大いに湧かせてくれそうです。こちらが公式サイトです。
 が、しかし、結論からいうとちょっと期待はずれでした。仁左衛門は、やはり又平を演じるにはハンサムすぎるし、また勘三郎の台詞のテンポが遅くて少し暗い印象でした。
 冒頭からみていくと、亀蔵の土佐将監はやはり貫禄不足。修理之助の信吾は、土佐の名字をもらって嬉しそうに笑っておりましたが、又平が名字をもらえないことで自害を決意することを考えれば、1月の松竹座の笑也のように、名字を賜って感極まる演技の方が筋が通っている気がします。
 「傾城反魂香」を観劇するにあたって注目点のひとつは、又平とおとくが花道からどのような表情で登場するかです。ふたりはすれ違った農民から、修理之助が名字を許されたことを聞いているという設定です。以前に観た吉右衛門の又平は、「今日こそお師匠様から名字をいただかなくては」という厳しい表情でした。また上に書いた松竹座の時は、翫雀の又平は弟子に先を越されて茫然自失、秀太郎のおとくは「ここは私がなんとかお師匠さんと話しをつけなくっちゃ」という決意が感じられました。ところが仁左衛門と勘三郎は、ふたりとも意気消沈といった様子で、トボトボと歩いてきます。勘三郎は仁左衛門を見てかすかに笑顔を見せますが、絶望的な状況のなかで見せた夫への情愛という感じでした。
 続くおとくのおしゃべりも楽しみにしていたところで、勘三郎に打ってつけのシーンだと思うのですが、台詞のテンポが遅く、おしゃべりの面白さもなければ、師匠なんとか納得してもらおうとついつい多弁になっている感じも出てませんでした。
 仁左衛門の又平、名字を許されて喜びながら着替えたり踊ったりするところの可愛らしさは期待通りでしたが、前半はちょっと格好良すぎたのは上に書いた通り。それよりも、心理描写が得意な仁左衛門にしては、妻に任せておれなくなって吃りながらも自ら将監に訴えようとしたり、八つ当たり気味に妻を打ち、そのことで一層自分を情けなく思ったり、といった気持ちの動きが、十分に表現されていないような気がしました。
 それから、土佐将監の奥方が出て来ないのはなぜでしょう。適当な役者が揃わなかったからでしょうか、それとも演出上の意図なんでしょうか。奥方が、又平を哀れに思いながらも夫将監に従うところや、名字を得た又平に「ほんとに良かった、良かった」という感じで装束や刀を渡すところも、見所のひとつだとぽん太は思うのですが。
 もひとつ演出で言えば、大頭の舞のところで又平が、おとくの鼓に注文を付ける下りが省略されていたのが、ぽん太は納得ができません。吃りの又平がおしゃべりのおとくに主導権を取られていたのが、逆におとくのどもり(鼓のリズムの誤り)をたしなめるという対比がなくなってしまいます。口が不自由な又平が物見を命じられて、必死に目を見張るシーンと同様、劇の構成上の重要な要素だと思うのですが。

 「口上」では、平成中村座というホームグラウンドでの講演であったためか、それともテレビの収録が入っていたためか、先月の新橋演舞場のときよりもざっくばらんな話しが多くて、面白かったです。

 「御所五郎蔵」が思わぬ拾い物でした。初役の勘九郎は、こんかい仁左衛門に教わったとのこと。直球勝負の勘九郎じゃ、どうせ仁左衛門の色気は出ないだろうな〜と思って観たら、実際その通りだったのですが、次第に勘九郎の五郎蔵が魅力的に見えてきました。まっすぐで一点の曇りもなく、若さゆえの単純さと勢いをもつ五郎蔵。おそらく人生において挫折の経験もなければ、妥協や裏表の使い分けもしたことがないはず。キッとした表情の見得も、浮世絵に描かれた役者絵のような美しさでした。
 この芝居は歌舞伎のよくある名場面を集めて作った感じで、これまでぽん太はなんだか単純でウソっぽいな〜と思ってたのですが、今回の舞台はとっても楽しめました。江戸っ子らしさを切り取ってポーンと差し出してくれる芝居だったんですね。
 笹野高史が友情出演しておりましたが、いつもながら上手。市川中車もまずこのレベルが目標か。

 最後の「元禄花見踊」は、若衆歌舞伎(見たことないけど)を思わせる華やかさでした。ここのところ歌舞伎の大御所の訃報が続いてますが、新しい世代も育ってきているようです。


中村勘太郎改め
六代目中村勘九郎襲名披露
平成中村座 三月大歌舞伎
平成24年3月 夜の部

一、片岡十二集の内 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の場
        浮世又平後に土佐又平光起       仁左衛門
              土佐将監光信       亀 蔵
              土佐修理之助       新 悟
              狩野雅楽之助       猿 弥
             又平女房おとく       勘三郎

二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)
                      勘太郎改め勘九郎
                           幹部俳優出演

三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵
               御所五郎蔵  勘太郎改め勘九郎
              星影土右衛門       海老蔵
                傾城逢州       七之助
                梶原平蔵       亀 蔵
                新貝荒蔵       男女蔵
                秩父重介       国 生
               二宮太郎次       猿 弥
               花形屋吾助       笹野高史
                傾城皐月       扇 雀
               甲屋与五郎       我 當

四、元禄花見踊(げんろくはなみおどり)
                元禄の衆       児太郎
                   同       虎之介
                   同       鶴 松
                   同       宜 生
                   同       国 生

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