« 【歩かないと行けない温泉(6)】みくりが池温泉(歩行時間10分)(★★★★) | トップページ | 【温泉】金沢市からほど近いのにのんびりできます/曲水苑(★★★★) »

2012/09/27

【演劇】ちとおじさんの説教くさい/NODA・MAP「エッグ」(ネタバレ注意!)

20120926_134153 リニューアルオープンした東京芸術劇場に、NODA・MAPの『エッグ』を観に行ってきました。
 上がった所に客が立ち止まると大変危険で、「池田屋の階段落ちかよ」とツッコミたくなる巨大なエレベーターはとりはずされ、既に半分使用されていなかった「滝」も撤去されました。だいぶ品よくなりましたが、逆にエントランス空間がだだっぴろくなりすぎた気がします。会場のプレイハウス(中劇場)は、舞台装置のほか、客席の傾斜などを修復したそうです。ぽん太は前がどうだったかよく覚えていないのですが、今回は1階後方の座席だったにもかかわらず、前の人の頭がまったく邪魔にならず、とても見やすかったです。
 で、舞台の方ですが、中年女性姿の野田秀樹が、女子学生たちの劇場案内をするのですが、リニューアルが間に合わず工事中、という楽屋落ちから始まります。そのとき工事中の梁から落ちてきた寺山修司の未完の直筆脚本をもとに、芝居が作られるというところから舞台が展開していきます。そして、話しは東京オリンピック、第二次世界大戦の満州、731部隊、ヒトラーとゲッペルスなどに、時空を超え、虚と実を交えて広がって行きますが、このあたりは野田にはお手のもの。
 ん〜なんで寺山修司なのか。「マッチ擦るつかの間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや」という彼の短歌が最後の方で出てきますが。同じ東北出身ながら、戦いに身を投じる主人公と、あくまでも世の中を斜めから見るスタンスを保った寺山を対比したかったのか。芸術監督と登場人物が同時に舞台に現れ、中断された演劇があらたなシチュエーションで再開されるあたりは、寺山の映画の「田園に死す」へのオマージュか。
 脚本に従って芝居を進めて行くと、これまでの設定と矛盾する文言が出てきて、登場人物一同「をひをひ、そうだったのかよ〜」と違う設定で舞台を再開することになるのですが、ぽん太はルリヤの本に出てきた驚異的な記憶力を持つ男を思い出します(その時の記事はこちら)。この男性は、文章を読むと、その情景が細部にいたるまで克明に再現されるのだそうです。だから、例えば小説で「男が木の下に立っていた」という文章を読んで、森のなかに男が立っている様子を思い浮かべたのに、次の文章が「彼はショーウィンドーを覗き込んだ」だと、「をひをひ街のなかだったのかよ〜」と、一から頭の中の風景を作り直さないといけないんだそうです。
 で、話しを元に戻しますが、「エッグ」というのは何とスポーツの名前。その新人プレイヤーが妻夫木聡演じる阿部比羅夫。阿部比羅夫といえば、飛鳥時代に白村江のたたかいで唐と戦った武将ですが、エッグの阿部比羅夫は中国チームと戦います。この時期、中国と戦うという設定はかなり微妙ですが、野田はわざと仕組んだんでしょうか、それとも中国と戦うという設定で芝居を作っていたら、たまたまこういう政治情勢になったんでしょうか?
 テーマはナショナリズムや熱狂に対する批判ということになるのかもしれませんが、あまりにタイムリーすぎるせいか、逆に説教臭く感じます。じじいに「戦争の頃はな〜」「最近の若いもんは〜」と飲み屋で絡まれている気がしてしまいました。満州とか人体実験とかナチスを見せつけられて、ぽん太はすっかり気が重くなりました。
 最後に「寺山修司に『エッグ』などという作品はありません」っていうのも、なんだか余分なような気もします。大きめのホールで公演期間も長いので、大勢の観客を動員するため、全般にわかりやすくなってしまっているのかもしれません。
 深津絵里、生では初めてみましたが、とても上手だったです。歌もうまい。『キル』では夢を見つめて一心に生きる若者を演じた妻夫木聡、CMののびた役などで鍛えたのか、軽薄で心のない立派な役者に成長しておりました。
 音楽はなんと椎名林檎。林檎姐さんの新曲をまとめて聞けるだけでも、多摩の奥地からはるばる池袋まででかけたかいがあります。林檎を歌う苺(深津絵里)もよかったです。
 美術も、全体が古い病院みたいなかんじで、ロッカーの見立て、カーテンを使った素早い場面転換など、悪くありませんでした。
 ちょっと今回は若者向け、大衆向けだったかにゃ〜。でも、椎名林檎の歌を生深津絵里で聞けたし、ぽん太の評価は70点。「エッグ」という得体の知れない気持ち悪そうな競技、サワリだけでもちょっと見たかったです。


NODA・MAP 第17回公演
『エッグ』
2012年9月5日(水)~10月28日(日)
東京芸術劇場 プレイハウス

【キャスト】
阿倍比羅夫(あべひらふ):妻夫木聡
苺イチエ:深津絵里
粒来幸吉(つぶらいこうきち):仲村トオル
オーナー:秋山奈津子
平川:大倉孝二
お床山(とこやま):藤井隆
劇場案内係・芸術監督:野田秀樹
消田(きえた)監督:橋爪功

【スタッフ】
作・演出:野田秀樹
音楽:椎名林檎
美術:堀尾幸男
照明:小川幾雄
衣装:ひびの こづえ
音響・効果:高都幸男
振付:黒田育世
映像:奧秀太郎
美粧:柘植伊佐夫
舞台監督:瀬崎将孝
プロデューサー:鈴木弘之

|

« 【歩かないと行けない温泉(6)】みくりが池温泉(歩行時間10分)(★★★★) | トップページ | 【温泉】金沢市からほど近いのにのんびりできます/曲水苑(★★★★) »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/55755790

この記事へのトラックバック一覧です: 【演劇】ちとおじさんの説教くさい/NODA・MAP「エッグ」(ネタバレ注意!):

« 【歩かないと行けない温泉(6)】みくりが池温泉(歩行時間10分)(★★★★) | トップページ | 【温泉】金沢市からほど近いのにのんびりできます/曲水苑(★★★★) »