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2012/10/12

【歌舞伎】染五郎じゃないので観に行ったけど染五郎で観たくなった/2012年10月新橋演舞場夜の部

 当初の発表では、染五郎が「御所五郎蔵」と「勧進帳」の義経を演ずるとのことでした。染五郎の御所五郎蔵はなんとなく想像がつくし、「勧進帳」も名作だけど見飽きた感があるので、夜の部はパスするつもりでした。ところがそこに染五郎の事故。御所五郎蔵の代役が梅玉と聞いて、梅玉が演ずるといったいどのようになるのかと、がぜん関心が涌いてきました。また義経も藤十郎が代役となり、團十郎、幸四郎、藤十郎ががっぷりよつに組んでの名演が期待されます。ということで、染五郎には悪いけど、あわてて切符を取って観てきました。
 ただ、やっぱり梅玉の五郎蔵は、おっとりしすぎているというか、威勢の良さが感じられませんでした。五郎蔵は、皐月の深い思いもわからなければ、止むに止まれぬ嘘も見抜けず、怒りに任せて殺してしまうという、どちからというと単純で短絡的な人物。老練な梅玉が演ずるには無理がありました。また、染五郎を想定していたため、他の役者が全般に若手なので、よけいに梅玉の「齢」が目立ってしまいました。冒頭の松緑との掛け合いも、初日だったせいかもしれませんが、黙阿弥独特の酔いしれるようなリズム感と華やかさがありませんでした。松緑は星影土右衛門のような役は悪くない。声も大きいので張りがあります。芝雀の皐月は可愛らしいけど、ちょっとちまちまして花魁らしい風格がありませんでした。胡弓はなかなか頑張ってました。やがて芝雀の「阿古屋」が観れるのでしょうか。高麗蔵の逢州も華やかさに欠けました。
 「五郎蔵内腹切」の場は初めて見ました。このような結末がついているのですね。でも、腹を切った二人が尺八と胡弓を合奏するというのは無理が感じられました。黙阿弥のこの芝居は、深い悲しみを誘うというものではなく、どこか戯画的・パロディ的な気がします。
 「勧進帳」は、このメンバーならば、悪いはずがありません。幸四郎の弁慶、以前に観た時は、呪文みたいにごにょごにょと早口でセリフを言っていた印象があったのですが、今回はゆったり堂々としておりました。團十郎の富樫も風格があり、義経一行を通して上手に去る時の顔を上げる動作もゆっくりめで、深い決意とともに、命を捨てることへの悲しみが伝わってきました。藤十郎の義経、抑制された動きのなかに、まるで観音菩薩のような慈愛が感じられました。
 染五郎が欠場になったせいで観に行ったのですが、御所五郎蔵が染五郎だったら、若さのパワーあふれる体当たりの演技を見せてくれただろうなと思ったり、また義経でも、幸四郎と團十郎の超ベテランに挟まれて、一皮むけた新たな芸の境地を見せてくれたかもしれないなどと考えたりし、染五郎で観たかったな、という気持ちになりました。あわてずにゆっくり療養して、元気な姿を舞台で見せてほしいものです。


芸術祭十月大歌舞伎
七世 松本幸四郎 追遠

新橋演舞場
平成24年10月 夜の部 

一、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵

  五條坂仲之町
  甲屋奥座敷
  廓内夜更
  五郎蔵内腹切
                  御所五郎蔵  梅 玉
                 星影土右衛門  松 緑
                     逢州  高麗蔵
                   梶原平平  亀 寿
                   新貝荒蔵  廣太郎
                   秩父重介  米 吉
                  二宮太郎次  廣 松
                     皐月  芝 雀
                  甲屋与五郎  幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
                  武蔵坊弁慶  幸四郎
                  富樫左衛門  團十郎
                   亀井六郎  友右衛門
                   片岡八郎  翫 雀
                   駿河次郎  高麗蔵
                  常陸坊海尊  錦 吾
                  太刀持音若  金太郎
                    源義経  藤十郎

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