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2012/10/31

【拾い読み】梅原猛『地獄の思想 日本精神の一系譜』で地獄の勉強(付:立山信仰再考)

 地獄と極楽は対になっていると思っていたぽん太は、富山県にそびえる立山が、最初は地獄として信仰され、のちに極楽が付け加わったと知って驚きました。そこで地獄についてもう少し詳しくなるため、梅原猛の『地獄の思想 日本精神の一系譜』(中公文庫、1983年)を読んでみました。
 この本が書かれたは昭和42年で、梅原猛の最初の書き下ろしの本なんだそうです。確かに若々しさが感じられます。
 本書は「地獄」の民俗学でも歴史学でもなく、哲学の本なので、「地獄」の概念の歴史的変化が詳しく述べられているわけでもありません。後半は文学が論じられています。でも、本書のあちこちから、地獄についての知識を得ることができました。
 以下はいつものように、ぽん太が興味深かったところの抜き書きです。

 地獄と極楽といいますが、地獄と極楽は仏教的には別の思想だそうです。地獄思想は『発句経』などの初期の説法集に書かれていますが、極楽の思想が出てくるのは紀元1世紀頃だそうです。地獄思想は仏教のほとんどの宗派にありますが、極楽を説くのは浄土教の一派に限られます。
 釈迦自身は積極的に地獄を説くことはなかったそうです。しかし釈迦は、現実世界を苦の世界として捉えましたから、仏教は地獄思想と結びつきやすかったといえます。
 仏教の六道輪廻の考え方のなかに地獄が入っていますが、極楽は入っていません。
 地獄思想はシュメール文明に始まったという説があるそうです。そして紀元前10世紀頃にインドに伝わりました。
 地獄に鬼や閻魔が現れ、六道思想が生まれてくる経緯は、梅原は知らないといいます。
 日本に地獄の思想が広まったのは平安時代で、天台思想によるのだそうです。6世紀の中国の僧、天台智顗(てんだいちぎ)は、十界互具の思想において、誰の心の中にも地獄があると考えた。
 源信は『往生要集』において、地獄には等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、阿鼻地獄という8つの地獄があると説いたそうです(地の池地獄が後年に生まれたものであることは、以前に勉強しましたネ)。それぞれの地獄の詳細については省略。そして源信は、死後に極楽浄土に行くために念仏を勧めました。地獄と極楽を結びつけたのは源信であると、梅原は言います。
 浄土教は、キリスト教の影響を受けた思想が中国に入り、道教と結びついて生じたという説があるそうです。
 仏教の地獄と西洋の地獄はどのような関係にあるのか、という問いを発します。
 『平家物語』の最後の「平家灌頂巻」には「六道之沙汰」という章があり、ここで建礼門院は、自分の体験を六道に例えるそうです。これを聞いてぽん太は、歌舞伎の「義経千本桜」の碇知盛を思い出しました。自害の前に知盛は、自分の人生を六道に例えます。そのうち二つを比べてみたいと思います。

 う〜ん、六道思想に含まれていることからわかるように、地獄は古くから仏教に組み込まれていましたが、極楽は浄土思想以降ということですね。
 こんかい得た知識をもとに、もう一度立山信仰を整理してみましょう。立山信仰の歴史に関しては、たとえばこちらの立山信仰と立山曼荼羅の解説がわかりやすいです。このサイトによれば、立山は古くから霊性のある山とされて、修験道などの場となっていました。9世紀半ばから10世紀前半には「天台宗」系の宗教者の拠点となり、地獄の現実化として喧伝されたそうです。
 702年に佐伯有頼が阿弥陀如来のお告げにより立山を開山したという物語があります。しかしこの物語は、鎌倉時代以降の文書に見られるので、浄土思想が広まった後に、遡って作られたものかもしれません。上のサイトには、立山にいつ極楽思想が入ったかについて、資料に基づいた記述はありませんでした。
 でも、なぜ立山なのか、という疑問も涌いてきます。しかし、少し考えると、関東育ちのぽん太には、立山のような火山による景観は、箱根の大湧谷や那須の殺生石などあちこりにある気がしますが、西日本には、立山以外には九州の阿蘇山ぐらいしかないからかもしれません。京都周辺の人たちにとっては、阿蘇山よりも立山の方が身近だったのかもしれません。

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