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2012/10/21

【拾い読み】昔の人が地震や噴火をどう思ったかがわかりました。保立道久『歴史のなかの大地動乱ーー奈良・平安の地震と天皇』

 3.11のあと、平安時代に同じく東北を襲った貞観地震・津波について、何度も耳にしました。日本は古来何度も大きな地震に襲われたはずで、そうした地震は科学的な地震学の立場からはいろいろと分析されているそうです。しかし、当時の人々が地震をどのように理解し、どのような反応をしめし、どのように対処したかという歴史学的な研究はほとんどなかったのだそうです。奈良・平安に詳しい著者が、3.11以降に精力的に行った研究の成果をわかりやすくまとめたのが、本書です。地震だけでなく、噴火や飢饉などを、当時の人々がどのように捉えたかがよくわかります。後半の、それに基づいて、『古事記』や『日本書紀』の神話を分析するあたりは、無学なぽん太にはよくわかりませんでした。
 以下、いつものように、ぽん太が興味深く思ったところの拾い読みです。

 日本最古の地震の記録については、『日本書紀』の599年に地震の記録があるが、これを史実とみるのは難しいとのこと。朝鮮半島ではあるけれど、『三国史記』に記された、白村江の戦いの翌年である664年に新羅で起きた大地震が、記録上最古の地震となるようです。噴火に関しては、636年に成立した『隋書』に阿蘇山噴火のことが書かれているそうです。
 当時地震を表すのに、「地震る・地動る」(なゐふる)という言葉が使われていたそうです。
 昨今地球温暖化がいわれてますが、奈良時代から鎌倉時代にかけて、日本の気候は比較的温暖だったそうで、「中世温暖期」と呼ばれるそうです。反対に、飛鳥時代や江戸時代は、比較的寒冷だったそうです。
 奈良時代の日本では、自然の運行と人の善悪には特定の関係があり、天は王の不徳を譴責(けんせき)するために天変地異を引き起こすという、中国の天譴思想(てんけんしそう)が影響力を持っていたそうです。725年にたびたび起きた地震に対する聖武天皇の詔には、「責の深きことは、予(われ)にあり」(責任は自分にある)という文言が含まれているそうです。
 一方で、怨霊が地震を引き起こしているという考え方もあったらしい。たとえば729年に自殺に追い込まれた長屋王が、怨霊となって地震を起こしていると考えられていたのではないかと著者はいう。
 中国では古くから、雉(キジ)が地震を察知して鳴くという観念があったそうです。ぽん太は、地震を予知する動物といえばナマズを思い浮かべますし、江戸末期に「鯰絵」と呼ばれた浮世絵が大量に描かれたこともよく知られています。地震と鯰の関係は、いつごろ形成されたのでしょうか?Wikipediaによれば、豊臣秀吉の時代までは遡れるようですが。
 富士山の噴火に関しては、781年に小規模な噴火を起こしていたようですが、800年(延暦19年)の大噴火をして多くの火山灰を噴出し、また802年(延暦21年)の噴火では火砕流を引き起こし噴石を降らせたそうです。これによって、これまで火山といえば阿蘇だとおもっていた平安時代の人たちが、富士山も火山として認識するようになったそうです。
 855年(斉衡2年)に奈良を襲った地震で、大仏の首が落ちるという大事件が発生したとのこと。
 9世紀前半から御霊会(ごりょうえ)が全国各地で行われるようになりました。これは、地震や噴火などの自然災害や、疫病、飢饉などが怨霊によって引き起こされると考えられていたことを示しています。863年には、京都の神泉苑で初めて朝廷自らによる御霊会が行われたそうです。
 しかしその翌年の864年(延暦19年)、富士山が史上最大規模の噴火。このおりに、甲斐国に浅間明神を祀る神宮が作られたそうですが、現在の浅間神社(ホームページ)がそれでしょうか?この噴火のおり、富士山の山頂に壮麗な「社宮」が出来上がっていたというウワサが広まったそうです。
 9世紀に都良香(みやこのよしか)が記した『富士山日記』には、山頂に虎のような石があると書いてあるそうですが、これは現在もあるそうです。しまった、ぽん太が富士山に登った時は気にしなかった。ぐぐってみると、確かにあるようで、「虎岩」と呼ばれているそうです。ううう、もう一度登る気にはならないし……。残念!
 古代日本には、「王の跡継ぎは雷鳴時の性交によって宿る」という神話があったそうです。そういえば、歌舞伎の『鳴神』で、鳴神上人は、呪術によって天皇に皇子を誕生させ、龍神を閉じ込めて干ばつを引き起こしたりします。『鳴神』は、『雷神不動北山桜』という狂言の一部でもありますし、「鳴神=なるかみ=鳴雷」なのかもしれません。
 自然災害を引き起こすものとして「龍神」が想定されるようになったのは、824年に空海が神泉苑で「請雨経法」を行ったころだろうと著者は言います。

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