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2012/11/05

【歌舞伎】「井筒屋」を観たら「双蝶々曲輪日記」がよけいわけがわからなくなった。2012年11月新橋演舞場昼の部

 初日に観てきました。公式サイトはこちら
 まずは「双蝶々曲輪日記」。こんかいは、東京では戦後初の上演という「井筒屋」がついていて、「角力場」はなし、という構成。いつもの「角力場」&「引窓」だと、なぜ濡髪長五郎が人を殺して逃げ延びることになったのかが謎でしたが、そのあたりがわかるのかも、と期待して観に行きました。
 ところが、「井筒屋」を観たら、余計にわけがわからなくなってしまいました。井筒屋に呼ばれた二人の遊女、都と吾妻。都には南与兵衛、吾妻には山崎屋与五郎という恋人がいます(なんだ、「角力場」の与五郎と、「引窓」の与兵衛は知り合いだったのか…)。しかも、ならず者に絡まれた与兵衛を救うため、与五郎は相手を斬り殺してしまいます(えゝ、与五郎って人殺しだったの?ひょっとして、角力場の与五郎は人殺しで指がないの?)。都と吾妻は、与兵衛と与五郎を救うため、吾妻に身請けを迫っていた権九郎という番頭を騙して指を切り落とし(指がないのが犯人の証拠です)、権九郎は役人に捉えられてしまいます(それって、あまりにひどくない?)。
 「難波裏」の冒頭の会話のなかで、濡髪と放駒長吉が手打ちをしたことを知らされます(えーと、人物関係はどうなったんだ)。吾妻の身請けをもくろむ平岡たちが、吾妻を拉致し、与五郎を痛めつけているところに濡髪が止めに入りますが、暗闇の中で敵二人が同士打になりかけます。ここで突然濡髪が二人を斬り殺します(な、な、なぜ?)。さらに自害しようとしたところを、あとから駆けつけた放駒に説得されて落ち延びることを決意しますが、襲ってきた敵をさらに二人殺してしまいます。
 さて「引窓」ですが、「井筒屋」があったせいで、お早(=都)に遊女言葉が残っているという下りが、すんなりと理解できました。そこに落ち延びて行った濡れ髪が、死ぬ前に母親に一目会いたいと、訪ねてきます。母親が後妻として嫁いだ家の息子がなんと南与兵衛で、いつの間にか都を身請けして、二人で所帯を持っているのです(は、早すぎる。それとも濡髪が数ヶ月逃げまくっていたのだろうか)。母親に家に都がいることに驚いた濡髪は、「さては与兵衛さんと所帯をもったか」とか言いますが、濡髪の母と与兵衛が義理の親子であることは知っているのか?少なくとも与兵衛は、義母が養子に出した息子がいることはしっていますが、それが濡髪であることは知らなかったはずです。
 都が、「殺した相手が偽金使いの悪人だったので、無罪放免になった」みたいなことを説明し、それを聞いた濡髪はが「同じ人を殺しても、ちょっとした偶然でこうも違うものか」みたいなことを言いますが、人を殺したのは与兵衛じゃなくて与五郎なので、辻つまがあわないのでは?
 まあ、江戸時代に作られた歌舞伎(ちなみに初演は寛永2年(1749年)、大阪竹本座です)に細かいことを言ってもはじまりませんが、原作はどうなっているのか興味がわいてきたので、そのうちみちくさしてみたいと思います。
 近代演劇的な視点からいえば、「難波裏」で濡髪が、その気がないのについ人を殺めてしまうというあたりがもう少しドラマチックに表現されていないと、悲劇的な盛り上がりが生じないかと思います。

 で、こんかいの公演の感想に戻りますと、「井筒屋」という珍しい場が観れてよかったです。扇雀と翫雀が二人ででると、芝居に浪速っぽい雰囲気が出てきますね。「引窓」の仁左衛門の南与兵衛、武士としての毅然たる姿と、商人の人なつこいかわいらしさとが、見事に演じられていました。左團次の濡髪長五郎、大きく身を屈めて鴨居をくぐったり、大きさと貫禄を見せる技は見事。ただ先ほど書いたように、元々の演出なのかもしれませんが、うっかり殺人を犯してしまうところに悲劇的な盛り上がりには欠けていました。時蔵の都とお早、梅枝の吾妻、竹三郎のお幸、いずれもすばらしかったです。

 菊五郎の「人情噺文七元結」は以前にもみた演目。菊五郎と時蔵がいつものとぼけた味を出して、ときに笑いをとり、ときに涙をさそっておりました。菊之助が文七、右近が娘お久。松緑の息子の藤間大河クンが酒屋丁稚三吉で出演。


新橋演舞場
吉例顔見世大歌舞伎
平成24年11月・昼の部

一、 双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
   井筒屋
   難波裏
   引 窓
           南与兵衛後に南方十次兵衛  仁左衛門
              藤屋都後に女房お早  時 蔵
                 山崎屋与五郎  扇 雀
                   平岡丹平  権十郎
                   三原伝造  亀三郎
                   藤屋吾妻  梅 枝
                    母お幸  竹三郎
                   放駒長吉  翫 雀
                  濡髪長五郎  左團次

二、 人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
                  左官長兵衛  菊五郎
                   女房お兼  時 蔵
                   手代文七  菊之助
                    娘お久  右 近
                 酒屋丁稚三吉  藤間大河
                  角海老藤助  團 蔵
                  鳶頭伊兵衛  松 緑
                 和泉屋清兵衛  東 蔵
                角海老女将お駒  魁 春

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