« 【オペラ】マムシのようなセンヒョン・コーのスカルピア「トスカ」新国立劇場 | トップページ | 【バレエ】大人っぽくなってきたね/ダニール・シムキンのすべて <インテンシオ> »

2012/11/21

【歌舞伎】「四千両小判梅葉」はまるで「実録!刑務所潜入」2012年11月新橋演舞場夜の部

 仁左衛門が11月2日から病気で休演しているとのこと。1日の初日に昼の部を見れたのはラッキーでした。そのときは、ちょっと声が小さいのが気になりましたが、そんなに具合が悪いとは思いませんでした。十分休養して早く舞台に戻って下さい。さて、今回は夜の部。公式サイトはこちらです。
 実はぽん太とにゃん子が歌舞伎ファンになったのは、2005年に仁左衛門の「熊谷陣屋」を観て以来。ちなみに相模は雀右衛門でした。そのときは感動で涙が止まりませんでしたが、哀しいかな歌舞伎を観るのは2回目だったので、細かいところはまったくわかりませんでした。その後、歌舞伎もいろいろと観て、多少は演技の善し悪しもわかるようになったところで、ぜひもう一度、仁左衛門の「熊谷陣屋」を観たいと思っていたのですが、残念でした。
 でも、まあ、松緑の初役を観れるんだからいいかと、気を取り直して観に行ったのですが、やはり力不足は否めません。相模を見つけて両手で袴をたたく仕草から、なんか速すぎて貫禄がありません。表情も、迫力を出したいのかもしれませんが、何であんなに歯を食いしばったり、口をあんぐりあけたりするのでしょう。なんだか必死になっている子供みたいでした。まわりの配役が仁左衛門を想定した幹部級ぞろいなので、よけいに若さが目立ってしまい、出陣の支度をして座っているあたりでは、ほんと存在感がなくなってしまいました。最後の幕外の花道でも泣き叫んでいるだけで、吉右衛門のような複雑な表情の変化はありませんでした。などと批判ばっかりになってしまいまいしたが、代役での初役だから仕方ないかも。ぜひ役を重ねていき、いつかぽん太を感動させて下さい。
 梅玉の義経がさすがにすばらしかったです。梅玉もここのところ代役が多くて、仁に合わない役を苦労して演じておりましたが、梅玉といえば義経、義経といえば梅玉、水をえた魚のように延びのびと演じておりました。高貴さといい、深い慈悲といい、これ以上のものはありません。
 魁春の相模も格式が感じられて悪くはなかったですが、息子の首を抱きかかえ、藤の方に見せるあたりの悲しさ、哀れさが、いまひとつでした。藤の方の秀太郎はあいかわらずうまい。左團次の弥陀六は、老人っぽさはありましたが、ちょっとテンポが遅く、糸にのせたリズム感がありませんでした。
 全体として、メリハリに欠けて一本調子でしたが、画竜点睛の仁左衛門を欠いていたので仕方がありません。

 藤十郎の「汐汲」は短い踊りですが、華やかで美しく、最高レベルの芸を見せてくれました。後半に翫雀の此兵衛が出て来るのは、新演出なんだそうな。
 ところで、今月の夜の部の演目は、「一・中幕・二」となっておりますが、昭和初期まで行われていたという「一番目」(時代物)、「中幕」(所作事または一幕物の時代物)、「二番目」(世話物)という習慣に従ったのでしょうか。
 ところで、ここのところ上演時間が短くなってますが、切符の値段は下がらないのでしょうか。

 「四千両小判梅葉」は初めてみる演目。菊五郎お得意の世話物で、家族との泣き別れなどもあってそれなりに面白かったのですが、「大牢の場」になってびっくり仰天。テレビの「実録!刑務所潜入」といった感じで、小伝馬町の牢の様子が延々と描写されます。牢名主が畳を重ねて座っているのはよく見る光景ですが、板もいっぱい持っているのは何なんでしょう。板も貴重なんでしょうか。囚人に「すってん踊り」を踊らせたり、新入りの入牢の儀式や、キメ板で打つ懲罰など、驚くことばかりです。ぽん太も以前の記事で小伝馬町の牢についてはみちくさしてことがありますが、百聞は一見に如かずでした。
 これってどこまでリアルなんだろうと思ってぐぐってみたところ、こちらの「文化デジタルライブラリー」に行き当たりました。「四千両小判梅葉」は明治18年(1885年)11月に千歳座で初演されたそうです。千歳座は現在の明治座です。明治座の歴史については以前の記事でみちくさしてことがありますが、現在の明治座とほぼ同じ位置にあったと思われます。当時の千歳座の興行師・田村成義(たむらなりよし)は、幕末に小伝馬町の牢役人をしていたそうで、奉行所の書類を調査したり、もと囚人から話しを聞いたりして、様々なしきたりから小道具にいたるまで、リアルに表現されているそうです。
 今月は「顔見世」ですが、看板役者たちが囚人役で勢揃いしているのがおかしかったです。


新橋演舞場
吉例顔見世大歌舞伎
平成24年11月 夜の部

   一谷嫩軍記
一、 熊谷陣屋(くまがいじんや)
                   熊谷直実  仁左衛門
                  白毫弥陀六  左團次
                     相模  魁 春
                    堤軍次  亀 寿
                   亀井六郎  松 也
                   片岡八郎  萬太郎
                   伊勢三郎  右 近
                    藤の方  秀太郎
                    源義経  梅 玉

中幕 汐汲(しおくみ)
                   蜑女苅藻  藤十郎
                    此兵衛  翫 雀

二、 四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
    四谷見附より
    牢内言渡しまで
                 野州無宿富蔵  菊五郎
                  女房おさよ  時 蔵
                浅草無宿才次郎  松 緑
                寺島無宿長太郎  菊之助
                   黒川隼人  松 江
                      頭  亀三郎
                    三番役  亀 寿
                 伊丹屋徳太郎  松 也
                下谷無宿九郎蔵  萬太郎
                田舎役者萬九郎  桂 三
                   穴の隠居  由次郎
                    数見役  権十郎
                   石出帯刀  秀 調
                   隅の隠居  家 橘
                  生馬の眼八  團 蔵
                うどん屋六兵衛  東 蔵
                   浜田左内  彦三郎
               牢名主 松島奥五郎  左團次
                  藤岡藤十郎  梅 玉

|

« 【オペラ】マムシのようなセンヒョン・コーのスカルピア「トスカ」新国立劇場 | トップページ | 【バレエ】大人っぽくなってきたね/ダニール・シムキンのすべて <インテンシオ> »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

gamzattiさん、コメントありがとうございますhappy01
ひょっとしたら、どこかでお会いしているかもしれませんね。ぽん太を見かけたらお声をおかけください。丸い耳としっぽが目印ですcoldsweats01
ブログも拝見させていただきました。いろいろ観てますね。ぽん太もときどき立ち寄らせていただきます。今後ともよろしく。

投稿: ぽん太 | 2012/11/27 13:56

初めまして。
自分の見た舞台を検索しておりましたところ、
何を検索しても、みなあなた様のブログがヒットし、
そのうちいくつかは、観劇日も同じものが多く、
一度も面識はないものの、
(もしかしたらすれ違っているかもしれないけど)
同じ趣味をたくさん共有している親近感で、
ごあいさつ代わりにコメントさせていただきました。
これからも、ブログ楽しみに拝読させていただきます。

投稿: gamzatti | 2012/11/21 10:30

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/56142576

この記事へのトラックバック一覧です: 【歌舞伎】「四千両小判梅葉」はまるで「実録!刑務所潜入」2012年11月新橋演舞場夜の部:

« 【オペラ】マムシのようなセンヒョン・コーのスカルピア「トスカ」新国立劇場 | トップページ | 【バレエ】大人っぽくなってきたね/ダニール・シムキンのすべて <インテンシオ> »