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2012/11/20

【オペラ】マムシのようなセンヒョン・コーのスカルピア「トスカ」新国立劇場

  トスカは(新国立も含め)何回か観た演目なので、それほど期待もせずナニゲに観に行ったのですが、非常にドラマティックな舞台で、ぽん太はすっかり引き込まれて涙がこぼれ落ちそうになりました。公式サイトはこちらです。
 何といってもメインの歌手陣が光ってました。トスカを歌ったノルマ・ファンティーニは、以前に新国立の「アンドレア・シェニエ」でも抜群の歌唱力と演技力をみせてくれましたが、今回も期待を裏切りませんでした。焼き餅焼きの歌姫が、深い苦悩に追い込まれていき、ついにスカルピアを刺し殺す勇気を得て、ひとときカヴァラドッシとの愛の幸福にひたるものの、スカルピアが仕掛けた罠にかかって愛する人を失い、スカルピアとのさらなる戦いに向けて自ら命を絶つ、そうした一つひとつの変化がくっきりと表現されていました。また歌でも、「歌に生き、愛に生き」では、最後の方は歌っているのかすすり泣いているのかわからないくらい、感情がこもっておりました。
 そしてスカルピアのセンヒョン・コー。韓国出身で、メイクをした顔はコロッケと和田勉を足して2で割ったよう。最初は「をひをひ、『トスカ』に東洋人かよ」とか「冷酷で狡猾なスカルピアには合わね〜な〜」とか思ってたのですが、「いやらしくて、ずる賢く、まむしのような」コーのスカルピアがだんだんすばらしく思えて来て、最後は感動することしきりでした。ヨーロッパ人の表情ってなんだかよくわからないですが、コーは同じ東洋系のでしか、細かい表情の変化がよくわかりました。
 カヴァラドッシのサイモン・オニールの伸びやかで明るい声にも、すっかり聞き惚れました。
 志村文彦の堂守は、こっけいな人物。アンジェロッティの谷友博も朗々としておりました。指揮は沼尻竜典。今後も日本人指揮者を取り上げて欲しいです。指揮者が日本人だったからかどうかわかりませんが、東京フィルがとってものびのびと力強く演奏しておりました。

 「トスカ」といえば、最後の言葉「スカルピア、神の御前で」がよくわからない、というので有名です。なんで「カヴァラドッシ、神の御前で」ではないのでしょう。ぐぐってみると、「実はトスカはスカルピアの悪の魅力に魅かれつつあったのでは」などと勘ぐっている人もいるようです。
 ぽん太も最初に「トスカ」を観た時は、同じような疑問を持ったのですが、今回の舞台ではトスカが力強く決然と飛び降りて行きましたから、「次は神の前でスカルピアと白黒つける」という雰囲気が出ていました。
 それに、最近ぽん太は地獄や天国について興味をもってみちくさしているので思うのですが、日本の聴衆はキリスト教と仏教を混同しているんじゃないでしょうか。仏教に支配された日本の考え方では、トスカが最後に身を投げるのをみると「心中」を思い浮かべ、「トスカとカヴァラドッシが現世では添い遂げられなかったので、あの世で二人幸せに暮らしたい」と理解します。しかしそれは、善人も悪人も信仰心さえあれば死後に極楽浄土に生まれ変わるという浄土宗の影響を受けた考えです。キリスト教では、死者はこの世の終わりの最後の審判の日に甦り、神の裁きを受けて天国と地獄に振り分けられて行くのですし、ましてやトスカは悪人とはいえスカルピアを殺しているのですから、彼女の頭には「死後の世界でカヴァラドッシと幸せに暮らす」などという発想はなかったんだと思います。
 残念ながらぽん太は、キリスト教における死後の世界の捉え方については詳しくないので、正確なところはわかりません。ググってみても、宗派によって考え方が違うようですし、怪しげな新興宗教の教義も混ざっていたりして、一般的なキリスト教徒の考え方がよくわかりません。
 そういえば「ロミオとジュリエット」では、息絶えたロミオを見てジュリエットは自ら命を絶ちますが、ロミオが死んだことに絶望して自殺しただけなのかどうか。「白鳥の湖」のある版では、死んでしまった王子とオデットが、なかよく天に昇って行きますが、あれはひょっとしたら非キリスト教的な物語なのか。ぽん太にはじぇんじぇんわかりません。


「トスカ」
ジャコモ・プッチーニ
2012年11月11日、新国立劇場オペラ劇場

【指揮】沼尻竜典
【演出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美術】川口直次
【衣裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァロッティ
【照明】奥畑康夫

【トスカ】ノルマ・ファンティーニ
【カヴァラドッシ】サイモン・オニール
【スカルピア】センヒョン・コー
【アンジェロッティ】谷 友博
【スポレッタ】松浦 健
【シャルローネ】峰 茂樹
【堂守】志村文彦
【看守】塩入功司
【羊飼い】前川依子

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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