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2013/02/12

【歌舞伎】殺された妹を思うがゆえの滑稽さ、幸四郎の「魚屋宗五郎」2013年2月日生劇場

 2月の日生劇場は、染五郎の怪我からの復帰舞台。公式サイトはこちらです。
 まずは幸四郎の口上。染五郎の事故に関するお詫び、お礼、決意といった生真面目な挨拶で、團十郎の他界に関しては触れませんでした。
 続いて「吉野山」。染五郎がスッポンから上がってくると、観客は暖かく盛大な拍手でお出迎え。染五郎の忠信はとても清々しい若者。怪我の影響は全く感じさせませんでした。福助はだいぶアクが取れてきた感じで、持ち前の華々しさはもとより、静御前の美しさや可愛らしさに加えて、はかなさ、哀れみまでも伝わってきました。さぞかし素晴らしい踊りだったろうと思うのですが、風邪気味だったぽん太は、ひとり桜ならぬ桃源郷へ……。
 続いて「新皿屋舗月雨暈」。「魚屋宗五郎」だけが独立して上演されることが多い演目ですが、今回は「弁天堂」からの通しで、怪談「播州皿屋敷」を下敷きにしていることがよくわかりました。
 前半は、こっけいな「魚屋宗五郎」とは正反対の、重くてシリアスなドラマ。磯部主計之助が愛妾お蔦を斬り殺すのが見せ場です。主計之助を演じた染五郎は、だいぶ風格や迫力が出てきて、身体も大きく見えました。ただぽん太には、歌舞伎らしい様式性に欠けるように思えてなりません。お蔦殺しのシーンでは「激情」が直接的に表現されていて、生々しく感じられてしまいます。なんだか昼メロを観ているみたいで、日生劇場に詰めかけた奥樣方にはいいのかもしれませんが、中年男のぽん太はちと辟易します。生来の直情的な性格の主計之助が、アルコールの作用に臣下の讒言が加わって嫉妬の炎がかき立てられ、理性的な判断を失っていく様子を、歌舞伎らしい「芝居」で表現して欲しかったです。
 小姓梅次は福助の長男の中村児太郎でしたが、セリフはまだまだ。
 「魚屋宗五郎」は幸四郎の宗五郎。幸四郎は喜劇を演じてもどうしても暗さが残るのですが、この芝居ではかえってそれが殺された妹を思う気持ちとして感じられました。ぽん太の気持ちのなかでは、さらに勘九郎や團十郎の死と重なって、ちと感動してしまいました。妹の死をだれよりも悲しむが故に、その一途な行動が、自然と滑稽に見えてしまう。こういう宗五郎はぽん太は初めて観ました。
 女房おはまの福助が、水を得た魚のような大活躍。酒屋丁稚与吉、金太郎くんは夜の部だけだそうで、観れなかったのが残念です。浦戸十左衛門の市川左團次が流石の風格でした。
 今回も空席が目立ちました。松竹さん、お値段と演目、よろしくお願いします。


日生劇場
二月大歌舞伎
平成25年2月7日昼の部

  口上(こうじょう)
                      松本幸四郎

一、義経千本桜 吉野山(よしのやま)
          佐藤忠信実は源九郎狐  市川染五郎
                逸見藤太  中村亀 鶴
                 静御前  中村福 助

 河竹黙阿弥歿後百二十年
  河竹黙阿弥作
二、通し狂言「新皿屋舗月雨暈」(しんさらやしきつきのあまがさ)
  弁天堂
  お蔦部屋
  お蔦殺し
  魚屋宗五郎
      〈弁天堂・お蔦部屋・お蔦殺し〉
                愛妾お蔦  中村福 助
              磯部主計之助  市川染五郎
               召使おなぎ  市川高麗蔵
                小姓梅次  中村児太郎
                岩上典蔵  大谷桂 三
               浦戸紋三郎  大谷友右衛門
              浦戸十左衛門  市川左團次
      〈魚屋宗五郎〉
               魚屋宗五郎  松本幸四郎
            宗五郎女房おはま  中村福 助
               召使おなぎ  市川高麗蔵
                小奴三吉  中村亀 鶴
                 鳶芳松  大谷廣太郎
              酒屋丁稚与吉  松本金太郎(夜の部)
               父親太兵衛  松本錦 吾
                岩上典蔵  大谷桂 三
              磯部主計之助  市川染五郎
              浦戸十左衛門  市川左團次

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