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2013/04/02

【フロイト「不気味なもの」を読む(6)】オットー・ランクのドッペルゲンガー論(p26〜27)

 ホフマンの『砂男』を論じたフロイトは、ホフマンつながりで彼の長編小説『悪魔の霊液』に話しを移します。お読みになりたい方は、『悪魔の霊酒』というタイトルでちくま文庫に入っております(深田甫訳、2006年) 。あらすじだけ知りたい方は、たとえばこちらをどうぞ。
 さてフロイトは、『悪魔の霊液』で用いられている様々な不気味なモチーフのうち、「ドッペルゲンガー」を取り出します。ドッペルゲンガーは分身あるいは二重身などと訳され、狭い意味では、自分と同じ人間が世の中にもう一人いることを意味しますが、フロイトはもっと広い意味での、さまざまなドッペルゲンガーのタイプが、この本に描かれていると言います。


 ここでフロイトは、オットー・ランクの論文「ドッペルゲンガー」(1914年)を援用します。これも邦訳があります(『分身 ドッペルゲンガー』、有内嘉宏訳、人文書院、1988年)。出産外傷論で有名なオットー・ランクは、フロイトの弟子のひとりですが、例に漏れずのちにはフロイトと決別しました。
 邦訳を読んでみると、全体が5章からなっております。そのおおまかな内容は、第一章が問題提起、第二章が文学に描かれたドッペルゲンガー、第三章が作家たちのドッペルゲンガー体験、第四章がドッペルゲンガーの民族学・文化人類学、第五章がドッペルゲンガーの精神分析、という感じでしょうか。
 第一章から第四章までは、ドッペルゲンガーのさまざまな実例が、これでもかというほど挙げられています。そこで今回は、理論的解明を行っている第五章の内容だけ、簡単に要約しておくことにしましょう。
 ドッペルゲンガーが持つ死の意味作用は、ナルシシズム(自己愛)と密接に結ばれている。不快な死の表象を払いのけるために、愛(ナルシシズム)に置き換えられたのだろう。
 ナルシシズムに対する防衛が現れる場合もある。その形態は二通りあり、第一はドッペルゲンガーに対する恐怖や嫌悪、あるいは影や鏡像を失うことである。失われた影や鏡像が自分を追跡・迫害することもあるが、これは「抑圧されたものが抑圧するものの意識に回帰する」という心理現象である。第二は、ドッペルゲンガーに迫害されることによって狂気に陥り、しばしば自殺に終わることである。パラノイアがナルシシズムと関係することは、フロイトがシュレーバー症例で明らかにした。
 ドッペルゲンガーはしばしば兄弟と同一視される。こうしてドッペルゲンガーは競争相手になるのであって、またドッペルベンガーに対する死の願望や殺人衝動が理解可能となる。
 分裂した自我が投影されてドッペルゲンガーを作ることによって、内心が免責・解法されるというだけでは不十分である。「自我コンプレックスから生まれる恐怖」が「抑圧された欲望を実行する」「ドッペルゲンガーという恐ろしい化け物を形作る」のである。
 自我の分裂を引き起こす原因として、過大な罪の意識をあげることができる。自我の罪がドッペルゲンガーに転嫁されることによって、罪の意識から逃れることができる。反対にドッペルゲンガーが「良心」や「親切な警告者」となることもある。
 死への恐怖、老いへの恐怖は、「いつまでも若くありたい」というナルシシズム的願望と結びつく。一方で、死を待つことの恐怖、老いへの恐怖から逃れるために、自殺をするというパラドックスが生じることもある。
 死の恐怖は、単なる自己保存欲動の現れではない。自己保存のための自我欲動に、リビドー的欲動も関係した、複雑な葛藤に基づく神経症症状である。
 ドッペルゲンガーは、過去に自分がナルシシズム的に愛着していた自我の一発達段階の表現であり、それは繰り返し現れては、本人の行動を妨げる。
 未開人は、つねに人間に付着し、また人間の形の生き写しである「影」を、「魂」や「霊魂」と考えた。人間の死後も永遠に存在する霊魂は、死の恐怖を否認するための道具であった。エジプト人は死者を消滅から防ぐために、故人の肖像を作った。本来は死の恐怖を防衛するものであったドッペルゲンガーが、反対に死の前触れや、本人を損なうものに転嫁することもる。
 以上のように、原初的ナルシシズムと、そのざまざまな防衛反応が、ドッペルゲンガーのなかに現れている。

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