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2013/08/23

【歌舞伎】内容がないよう『ABKAI—えびかい—』2013年8月シアターコクーン

 勘三郎が長年取り組んできたコクーン歌舞伎は彼の他界によって昨年で打ち切り。今年はなんと海老蔵がコクーンで公演を打つとのこと。う〜ん、大丈夫かいなと思いつつ、ひょっとしたら何かやらかしてくれそうな予感も……。有名な宮本亜門の演出を見るのも、ぽん太は初めて。ドキドキしながら観に行って来たのですが、残念ながら期待はずれに終わりました。オフィシャルサイトはこちら
 昔話の「花咲か爺さん」を原作にした「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。」。確かに海老蔵は一生懸命「歌舞伎」をやってました。新作だからといって現代演劇風にならずセリフや動きは歌舞伎の手法に徹してました。「犬」の演技も頑張ったし、早変わりや宙乗りもこなし、軍物語やタテもありました。ここらは宮本亜門や宮沢章夫では無理でしょうから、海老蔵が自分で作り上げたものでしょう。よく頑張ってます。でも、ちっとも感動しなかったし、ドラマに引き込まれることもありませんでした。
 宮本亜門の演出もいまいちでした。洪水を表す幕が舞台から客席に流れて、観客を飲み込んでいく演出は、素晴らしかったです。しかしその他は、独創的な演出はありませんでした。
 宮沢章夫の脚本も面白くなく、最初の洪水はとうぜん東日本大震災の津波を意識していると思われますが、あの大災害を経験した我々に問いかけるようなものは全くありませんでした。最後のメッセージが「自然が戻って良かった、自然を大切にしよう」では小学生並みです。また昔話の「花咲か爺さん」の特徴的な構造は、「良いおじいさんがやって成功したことを、悪いおじいさんが真似をするとうまくいかない」というものだと思いますが、それは全く踏襲されておりませんでした。虫がでてきて、悪いおじいさんの顔を刺し、そこが次第に腫れていくのも、どうなるのかと思って見てたら、結局どうにもならずに終わりました。悪事を働く桃太郎一味が、実はニセモノだったというのでは、オチになってません。また宣伝に書いてあった「切なさ」などは全く感じませんでした。
 極めつけはナイナイ岡村隆史のサプライズ出演。勘三郎も歌舞伎役者でない笹野高史を歌舞伎の舞台に上げましたが、それは彼の演技力を見込んでのこと。勘三郎は高い水準の同時代的な演劇としての歌舞伎を生み出そうとし、現代演劇トップの野田秀樹などと互角に渡り合いました。しかし海老蔵が行っているのは、「人気タレントを舞台にあげれば、客が喜ぶだろう」というレベル。今回のサプライズ出演の様子は「めちゃイケ」で放送されるとのこと。つまりABKAIは、テレビのバラエティ番組レベルということですかね。題名の「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。」の最後の「。」も、「モーニング娘。」だし。確かに歌舞伎の観客の裾野を広げることにはなるかもしれないけど、これでいいの?勘三郎は歌舞伎を引き上げることで新しいものを創り出そうとしたけど、海老蔵は歌舞伎を引き下げて迎合しているだけじゃない。

 「蛇柳」は、消滅してしまった歌舞伎十八番の一つを海老蔵が復活させたものとのこと。その試み自体はすばらしいし、良くできておりました。が、後ジテと押戻しを両方海老蔵が演じるのは、ちと無理があったか。早変わりの演出上、海老蔵が押し戻すのは三階さんが扮した後ジテとなりましたが、後ジテと押し戻しが力の限りぶつかりあうところをぽん太は見たかったです。後ジテを愛之助にすればよかったのに。
 


市川海老蔵 第一回自主公演
『ABKAI—えびかい—』
Bunkamuraシアターコクーン
20013年8月14日

一、 歌舞伎十八番の内「蛇柳」
脚本◇松岡亮
振付・演出◇藤間勘十郎

二、 新作歌舞伎「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。」〜はなさかじいさん〜(はやてのごときしろいぬ どとうのはなさきおきなのものがたり)
脚本◇宮沢章夫
演出◇宮本亜門

出演◇市川海老蔵 片岡市蔵 上村吉弥 片岡愛之助 ほか

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