【演劇】美輪パワーで野田若返る!?「MIWA」野田地図
コロッケ→仏頭ときて、夜は野田秀樹の新作「MIWA」を池袋でみました。ぜいぜい。公式サイトはこちらです。脚本は、雑誌「新潮」2013年11月号に掲載されているようです。
こんかい取れた席は、なんと一階の前の方。ありがたや、ありがたや。細かい表情までよく見えて、とっても迫力がありました。いつもながら、時空を縦横無尽に超えて疾走して行く野田ワールド。特に宮沢りえが演じる美輪明宏の子供時代は、中性的な魅力がある、透明でハツラツとした少年。昔のりえちゃんと違って、それが地ではなくて、演技であるというところがすごかったです。また野田独特の美文(?)の早口のセリフも、さながらフルートの音色を聴いているかのようでした。オスカワアイドルの野田秀樹のセリフ回しも、声のトーンの変化やリズムがすばらしかったです。今回の舞台を見ていて、なんだかぽん太は下北沢時代の野田を思い出し、うれしくなって思わずニコニコしてしまいました。
ここのところ気になっていたオジさんの説教臭さも、今回はあまり感じませんでした。原爆の描写がちょっと…という気もしましたが、ポスト3.11である現在、こうした場面は描かざるを得ないのかもしれません。
ただちょっと気になったのは、今回のモチーフの多くが、美輪明宏自身が提供しているものであること。美輪明宏と天草四郎の物語をダブらせて〜というのは、野田の得意な作劇術のパターンにみえますが、美輪自身が自分は天草四郎の生まれ変わりだと言っていること。その他でも、美輪自身の語っていることが、多く劇の題材になっていたと思います。もちろんぽん太は美輪に詳しいわけでもないし、どこまでが美輪が言っていることで、どこからが野田の創作なのか、見極める力はないのですが。まあこれは野田の創作力が落ちたというよりは、美輪明宏の豊穣さを誉めるべきなのかもしれません。
今年の8月だったと思いますが、美輪は自分の被爆体験に付いてテレビで初めて公にしました。無知なるぽん太は、美輪にこんな過去があったのかと驚いたものですが、野田の芝居では被爆体験が重要な事件としてはっきりと描かれていました。だとしたら反対に、被爆体験や、同性愛に対する差別を、なぜ美輪が語らなくなったのかという劇の最後の部分を、もう少しきっちり描いて欲しかったです。「死」をくぐり抜け、安藤牛乳が消え去り、こんどは自分が黄色いカツラをかぶるというあたりの心の動きが、ちょっとわかりにくかったです。
宮沢と野田の演技は先ほど書いた通り。古田新太は「あまちゃん」でいつの間にか人気者になっていたようですが、「あまちゃん」を1回も見てないぽん太は、まったくそのことを知りませんでした。先日やっと総集編を見ましたが、とぼけてて面白いですね。「MIWA」では、冒頭近く、黄色い頭でいきなり後ろから走って出て来た時のインパクトが最高!ひょうひょうとした感じもよかったです。
瑛太は銀幕スターらしい軽さと爽やかさ。青木さやかはまだまだ。驚いたのは半・陰陽の池田成志。バーの店長、銀パリのオカマのオーナー、なんだか忘れたけど目玉をひんむくやつなど、変幻自在の演技力にびっくり。これまた昔の小劇場風のうさんくささが漂います。ぽん太は「THE BEE」で観てるはずですが、そのときは印象に残らなかったな〜。Wikipediaを見てみると、「八重の桜」の大隈重信役?気がつきませんでした。大昔は劇団第三舞台に属していたとのこと。ひょっとしたらその頃見てたりして。
野田秀樹の演劇を堪能すると同時に、美輪明宏の底知れぬ大きさを改めて認識できました。
野田地図 第18回公演
MIWA
2013年10月10日 東京芸術劇場プレイハウス
作・演出:野田秀樹
キャスト
宮沢りえ MIWA
瑛太 赤絲繋一郎
井上真央 マリア
小出恵介 最初の審判/通訳
浦井健治 ボーイ
青木さやか 負け女
池田成志 半・陰陽
野田秀樹 オスカワアイドル
古田新太 安藤牛乳
スタッフ
美術/堀尾幸男 照明/小川幾雄 衣裳/ひびのこづえ 選曲・効果/高都幸男 振付/木佐貫邦子
美粧/柘植伊佐夫 舞台監督/瀬崎将孝 プロデューサー/鈴木弘之 企画・製作/NODA・MAP
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