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2014/01/23

【歌舞伎】巳之助の演技と良くできた脚本が泣かせます「上州土産百両首」2014年1月浅草公会堂

 第1部、第2部と続けて観てきました。なかなか見応えがあり、若さあふれる舞台で、「お客さんを楽しませよう」という気持ちが伝わってきました。公式サイトはこちらです。
 いちばん印象に残ったのは、「上州土産百両首」でした。とにかく脚本がよくできてます。10年後に再会する約束をしたとき、いったいどうなっているだろうと展開を考えてみたのですが、ぽん太にはまったく予測ができませんでした。そうして二人が再会してからも、さらに牙次郎が自分をだましたと正太郎が疑うというひとひねりが加わってます。登場人物一人ひとりのキャラがしっかりしており、それぞれが自分の考えに従って行動するうちに、物語が自然に展開して大団円と集結していきます。
 最初の浅草観音の雑踏での出会いとか、最後の捕り物での立ち回りなども、歌舞伎らしい雰囲気がよく出てます。兄貴分と、ちょっと頭の足りない弟分という人間関係はちょっと近代的ですが、牙次郎が切々と心情を訴えるところは、伝統的な「くどき」と言えるでしょう。細かい演出もよく練られていて、正太郎が牙次郎に二文しか入ってない財布を返す時、団扇でさっとすくって、ピンと弾く動作などもカッコよかったです。
 「上州土産百両首」の脚本は川村花菱(かわむら かりょう:1884年 - 1954年)という人だそうです。歌舞伎人の猿之助のインタビュー(こちら)によると、昭和8年(1933年)9月に東京劇場で初演された作品で、オー・ヘンリーの短編が元になっているそうです。調べてみると「二十年後」(After Twenty Years)という作品のようで、こちらで枯葉さんによる私訳を読むことができます。とっても短い作品で、比べてみると設定を借りたというだけで、川村花菱による創作が大部分のようです。
 そして巳之助の演技にもびっくりしました。こんなに演技がうまいとは知りませんでした。三津五郎のDNAが活動し始めたのでしょうか。軽度精神発達遅滞はあるけれど、いや、あるがゆえに人一倍純真で真実を述べる牙次郎ですが、滑稽になりすぎず、真面目さと誠実さが伝わって来て、ぽん太もちとウルウルしてしまいました。セリフ回しもうまいし、間の取り方も絶妙でした。猿之助を完全に食っていました。
 二年振りに「猿之助」と名前を変えて浅草歌舞伎に戻って来た亀治郎、主役としての自身にあふれた見事な演技でした。スリの親分でありながら自省的で実はけっこういい人の金的の与一を演じた男女蔵、根っからの悪者で嫌な奴のみぐるみ三次の役の亀鶴、対照的な人物をそれぞれ好演。吉弥、寿猿、門之助のベテラン勢がしっかりした仕事で脇を固めてました。おそでの梅丸はセリフがまだまだで今後に期待。
20120115_154112 二人が再会する舞台となった待乳山聖天は、平成中村座があった山谷堀広場のちょっと西にあります。ぽん太は以前に訪れたことがありますが、そのときの記事はこちらです。
 「義賢最期」は愛之助の芸と身体能力を堪能。戸板倒しや仏倒しなどを含む立ち回り、お見事でした。百姓九郎助を演じた役者さんの嵐橘三郎というお名前は今回初めて意識したのですが、歌舞伎俳優名鑑を見ると、昨年11月歌舞伎座の『仮名手本忠臣蔵』斧九太夫で幹部昇進した俳優さんだそうです。いぶし銀の名演技でした。
 ところで、この芝居の松で手水鉢を割る下り、いまだに意味がわかりません。そのうち脚本をみちくさしてみたいです。
 第2部最初の「博奕十王」は、地獄を舞台にした愉快な踊り。音楽方や黒衣さんも額に三角の布をつけて登場。猿之助が観客をおおいに沸かせました。
 「新口村」は、ぽん太ごひいきの壱太郎の芸の見せ所でした。傾城の色気よりは、義父を思う齢若い嫁の心情が心を打ちました。愛之助はまことに美しい忠兵衛でしたが、関西風のはんなりした香りは漂って来ず、ダメ男の情けなさも感じられませんでした。売出中で上り調子さなかですから、まだ仕方ないのかもしれません。橘三郎の孫右衛門のは、田舎の実直で義理堅い父親という感じで、なかなか良かったです。目隠しを取った孫衛門と忠兵衛が泣きながら抱き合う場面、昨年父を看取ったばかりのぽん太は、涙が止まりませんでした。吉弥はしっかりと仕事。
 ただ、家のセットが引かれて出て来るのは、この静謐なドラマをちょっと嘘っぽくしてしまうように感じました。
 最後は踊り二連発。前半は壱太郎、米吉、梅丸の女形の華やかな踊り、後半は歌昇、種之助、隼人の勇壮な毛振りでした。


浅草公会堂
新春浅草歌舞伎
平成26年1月22日

第1部

お年玉〈年始ご挨拶〉
    中村 歌 昇

源平布引滝
一、義賢最期(よしかたさいご)
   
    木曽先生義賢 片岡 愛之助
    九郎助娘小万 中村 壱太郎
    待宵姫 中村 梅 丸
    百姓九郎助 嵐  橘三郎
    葵御前 上村 吉 弥
    下部折平実は多田蔵人 中村 亀 鶴

二、上州土産百両首(じょうしゅうみやげひゃくりょうくび)
   
    正太郎 市川 猿之助
    牙次郎 坂東 巳之助
    勘次女房おせき 上村 吉 弥
    宇兵衛娘おそで 中村 梅 丸
    亭主宇兵衛 市川 寿 猿
    みぐるみ三次 中村 亀 鶴
    金的の与一 市川 男女蔵
    隼の勘次 市川 門之助

第2部

お年玉〈年始ご挨拶〉
    中村 壱太郎
   
一、博奕十王(ばくちじゅうおう)
   
    博奕打 市川 猿之助
    獄卒 市川 弘太郎
    同 市川 猿四郎
    閻魔大王 市川 男女蔵

恋飛脚大和往来
二、新口村(にのくちむら)
   
    亀屋忠兵衛 片岡 愛之助
    傾城梅川 中村 壱太郎
    孫右衛門 嵐  橘三郎
    忠三郎女房 上村 吉 弥

三、上 屋敷娘(やしきむすめ)
  下 石橋(しゃっきょう)
 
  〈屋敷娘〉     
    お春 中村 壱太郎
    お蝶 中村 米 吉
    お梅 中村 梅 丸
  〈石橋〉     
    獅子の精 中村 歌 昇
    獅子の精 中村 種之助
    獅子の精 中村 隼 人

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