【歌舞伎】亀鶴が「釣女」で暴走!2014年5月明治座昼の部
風邪をひいたり忙しかったりしてる間に、だいぶ芸術鑑賞の感想が溜まってしまったので、急ぎ足で簡潔に。
5月の明治座は、夜の部の「伊達の十役」はなんとなく想像がつくので、昼の部だけ観劇。公式サイトはこちらです。
全体に面白く楽しい公演でしたが、「花形」の若手が、現在持っている力を出し切って古典の名作を演じる、という演目がなかったのが残念に思われました。
「義経千本桜」から「鳥居前」は、イケメンの若手が勢揃い。みなさん頑張ってました。ただ、意外に空席が目立ったのが残念。松竹さん、もちっと宣伝しても良かったのでは。
隼人くんの義経、悪くはなかったですが、まだまだ高貴さは出て来ません。期待の女方の米吉の静御前が、思ったより情が薄く、義経に同行できないのなら死んでやる〜と言う時も、あまり切羽詰まった感情が伝わってきませんでした。
「釣女」は醜女役の亀鶴が暴走。妙な動きを連発し、客席は大爆笑でしたが、大名の高麗蔵や常磐津さんたちも笑ってました。
これはこれで楽しかったですが、「歌舞伎」の演目としてはどうだったでしょうか。特にこんかいの昼の部の狂言立ては、最初が古典とはいえ「若手勢お披露目」みたいな演目、次がこの「釣女」で、最後の「邯鄲枕物語」もお笑い系。冒頭に書いたように、古典をしっかり演じる演目も見たかったです。
染五郎、やはり歌舞伎の舞踊っぽさがなく、現代劇調。こういうのは又五郎とかの方が好きです。ぽん太ごひいきの壱太郎……亀鶴に気を取られてよく見れませんでした。
「邯鄲の夢」という言葉は、ぽん太は今年の4月に塩原元湯温泉元泉館で耳にしたばかり(そのときのブログはこちら)。その数ヶ月後にこの演目が上演されることを知り、楽しみにしていたのですが、「お金がなくって借金取りに追われている主人公が、夢の中ではお金がどんどん増えてしまって使い道に困る」という滑稽話で、「現実の無常を悟る」という部分はありませんでした。楽しいことは楽しかったですが。三世桜田治助の脚本で慶応元年(1865年)に初演。本興行としては、明治38年(1905年)以来の復活上演だそうです。
お金を使おうとしてもどんどんたまってしまうという設定のもとの様々なエピソードは、一つひとつ面白く、例えばそば屋に1両を渡して逃げようとして、食い逃げならぬ「払い逃げだ〜」と追っかけられるのも笑いました。また、吉田屋のパロディーなども入ってました。歌六の夜になると女になる病気も、気持ち悪かったです。
染五郎の妹の松たか子の「雪の女王」ネタや、横島伴蔵に不義のいいがかりをつけて金を奪おうとする染五郎に、歌六が「咳き込んでかみかみセリフを言う間に逃げられちゃったじゃないか」などと茶々を入れるなど、楽屋落ちも多くて面白かったです。
ちなみに、七福神の掛け軸に書かれていた、聖徳太子の作と言われる歌「長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな」(ながきよの とおのねむりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな)は、上から読んでも下から読んでも同じことば(回文)になっているので有名ですね。また、七福神を枕に寝たら目出たい夢を見るという設定は、落語の「羽団扇」(はうちわ)と同じです。
明治座 五月花形歌舞伎
平成26年5月22日
昼の部
一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
鳥居前
佐藤忠信実は源九郎狐 中村 歌 昇
静御前 中村 米 吉
早見藤太 中村 吉之助
源義経 中村 隼 人
武蔵坊弁慶 中村 種之助
二、釣女(つりおんな)
太郎冠者 市川 染五郎
大名某 市川 高麗蔵
上臈 中村 壱太郎
醜女 中村 亀 鶴
三、邯鄲枕物語(かんたんまくらものがたり)
艪清の夢(ろせいのゆめ)
艪屋清吉 市川 染五郎
女房おちょう/梅ヶ枝 中村 壱太郎
米屋勘助/蕎麦屋與四郎 中村 歌 昇
鳥追いお七 中村 米 吉
安芸の内侍 澤村 宗之助
横島伴蔵/盗賊唯九郎 中村 亀 鶴
家主六右衛門/鶴の池善右衛門 中村 歌 六
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