« 【歌舞伎】亀鶴が「釣女」で暴走!2014年5月明治座昼の部 | トップページ | 【歌舞伎】ひょうひょうとした左團次の粂寺弾正/2014年5月歌舞伎座昼の部 »

2014/05/24

【オペラ】イタリアの白黒映画みたい「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」新国立劇場

 「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲というと、「クラシック名曲集」といったレコードには必ず入っている演目で、小さい頃から知っていましたが、老境にさしかかってはじめて「全曲」を聞くことができました。公式サイトはこちらです。
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」は意外と短い演目のようで、「道化師」というもうひとつのオペラと二本立てでした。それぞれ作曲者は違うのですが、どちらも南イタリアを舞台にしたヴェリズモ・オペラの代表作ということで、よく同時に上演されるんだそうです。
 ヴェリズモ・オペラというのは、Wikipediaによれば、1890年代から20世紀初頭にかけて見られたもので、ヴェリズモ文学の影響を受け、市井の人々の日常生活や、残酷な暴力などを描いたものだそうです。
 要するにエジプトを舞台にした「アイーダ」みたいなお話ではなく、民衆のドロドロした現実を描くという感じですかね。何かぽん太は、「自転車泥棒」やフェリーニの「道」などの白黒映画を思い浮かべました。
 映画つながりで言えば、「カヴァレリア・ルスティカーナ」に描かれている南イタリアのダンディズム(それが騎士道=カヴァレリアなんでしょうか)は、「ゴッドファーザー」やヴィスコンティの「山猫」を思い出します。

 で、感想ですが、有名な「カヴァレリア・ルスティカーナ」よりも、「道化師」の方が面白かったです。
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、要するに三角関係の末に決闘をして殺されるという話しで、筋が単純すぎるような気がします。また、登場人物の性格付けが曖昧で、サントゥッツァは夫の不倫を義母に訴えたうえに、夫のトゥリッドゥに「捨てないで」としがみつき、あげくの果てにアルフィオに告げ口します。なんかホントに「うざい」気がします。トゥリッドゥもさんざん浮気をしておいて、急に自分が死んだあとサントゥッツァが心配だ〜などと言い出します。なんかあんまり感情移入できませんでした。
 トゥリッドゥのヴァルテル・フラッカーロは、前回の「オテロ」同様、声が良く伸びるテノールで、力強さもあり、ドラマチックな歌声でした。サントゥッツァのルクレシア・ガルシアは、見た目やや体型に難がありますが、その体に響かせて発する声はさすがに深みがありました。

 「道化師」は、非常に面白かったです。話しはこちらも三角関係のもつれですが、芝居と現実を交錯させた脚本が良くできていて、ペーソスが感じられました。
 カニオのグスターヴォ・ポルタは、いわゆる甘い声ではないのですが、乱暴で無骨な旅芝居の座長にぴったりでした。また道化師の見かけと内面の苦しみの対比も見事で、先日観た「リゴレット」のヌッチをちと思い出しました。
 ネッダのラケーレ・スタニーシは、スタイルがよくて美人なうえ、芝居の衣装に着替えてからの豊満な胸がお楽しみ映像でした。声は少しハスキーな感じですが、これまた旅芝居の女優の雰囲気が出てました。
 トニオのヴィットリオ・ヴィテッリは、目を剥いて歌う表情は「テルマエ・ロマエ」の阿部寛を彷彿とさせますが、細身の体からは想像できない深くて声量のあるバスでした。「かたわ」の演技はいまいち。
 吉田浩之や与那城敬の日本勢も、なかなか甘い声で声量も負けておらず、ちと表現力には欠けておりましたが、大健闘でした。

 演出のジルベール・デフロは、上に書いたスカラ座の「リゴレット」を演出した人。ギリシャ風の朽ち果てた円形劇場が舞台上にしつらえられ、一角にはオリーブの古木があります。両方のオペラが、このセットを使って上演されます。
 南イタリア、特にシチリアは、昔はギリシアの支配が及んでいたのでありまして、例えば有名なアルキメデスはシチリアの都市シラクサの生まれであり、シチリアにはギリシア時代の円形劇場が多数残っております。デフロのセットは、そうした南イタリアの乾いた風景を彷彿とさせるものでした。
 ただ、普通は円形劇場の段々のところに座って舞台を見るのであり、われわれ観客は逆方向から見ていることになりますが、まあこの辺は固いことを言っても仕方ないでしょう。
 「道化師」では、劇中劇が行われるので、円形劇場のセットが生きていました。また登場人物が、新国立劇場の客席側から登場したりして、あたかも我々も劇中劇の上演に立ち会っているかのような錯覚を生じさせたのは見事です。
 一方で「カヴァレリア・ルスティカーナ」の演出は、円形劇場のセットも生きてなかったし、ちと退屈でした。いっそのこと「道化師」とがらっと雰囲気を変えて、合唱団をコロスのように使ったりして、ギリシャ悲劇風にしても面白かったかもしれません。
 指揮・オケの良し悪しはぽん太にはわかりませんが、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲は良かったです。子供の頃は甘ったるい通俗曲だと思ってましたが、こんかい聴いてオルガンの宗教的な響き、シチリア的な寂寥感などが感じられたのは、ぽん太も長い年月の間に多少は人生経験を積んで、いくらか耳が肥えたのかもしれません。

新国立劇場オペラ
「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」

カヴァレリア・ルスティカーナ/ピエトロ・マスカーニ 作曲
道化師/ルッジェーロ・レオンカヴァッロ 作曲
2014年5月21日 新国立劇場オペラパレス

スタッフ
【指揮】レナート・パルンボ
【演出】ジルベール・デフロ
【美術・衣装】ウィリアム・オルランディ
【照明】ロベルト・ヴェントゥーリ
【舞台監督】村田 健輔
【合唱指揮】三澤 洋史

キャスト
カヴァレリア・ルスティカーナ
【サントゥッツァ】ルクレシア・ガルシア
【ローラ】谷口 睦美
【トゥリッドゥ】ヴァルテル・フラッカーロ
【アルフィオ】成田 博之
【ルチア】森山 京子

道化師
【カニオ】グスターヴォ・ポルタ
【ネッダ】ラケーレ・スタニーシ
【トニオ】ヴィットリオ・ヴィテッリ
【ペッペ】吉田 浩之
【シルヴィオ】与那城 敬
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

|

« 【歌舞伎】亀鶴が「釣女」で暴走!2014年5月明治座昼の部 | トップページ | 【歌舞伎】ひょうひょうとした左團次の粂寺弾正/2014年5月歌舞伎座昼の部 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/59691900

この記事へのトラックバック一覧です: 【オペラ】イタリアの白黒映画みたい「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」新国立劇場:

« 【歌舞伎】亀鶴が「釣女」で暴走!2014年5月明治座昼の部 | トップページ | 【歌舞伎】ひょうひょうとした左團次の粂寺弾正/2014年5月歌舞伎座昼の部 »