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2014/10/23

【歌舞伎】勘九郎・七之助を盛り立てる。2014年10月歌舞伎座夜の部

 十七世勘三郎の二十七回忌と十八世勘三郎の三回忌の追善をうたった10月歌舞伎。とうぜん勘九郎と七之助が中心となりますが、まだまだ若い二人、まわりを仁左衛門や玉三郎、藤十郎などががっちりと固め、勘九郎・七之助をみなで支えていこう、という暖かみ溢れる舞台でした。こちらが公式サイトです。
 「寺子屋」は、勘九郎が初役で武部源蔵。楷書のしっかりした演技で、七之助の戸浪とともになかなか頑張っていて、悪くありませんでした。でも、松王丸の仁左衛門と千代の玉三郎の自在の境地を見せられると、歌舞伎の演技の奥深さが改めて感じられます。勘九郎・七之助もこの高みを目指して、精進を続けて欲しいと思います。
 仁左衛門の松王丸は、7月に松竹座で観たばかり。子を思う心情が胸に伝わって来ます。今回は3階席だったので、膝の上に置かれた両手をじっと見ていたのですが、何気ない指の開き加減、感情の動きに伴うひくつき、そして感極まって力いっぱい着物を握りしめるなど、手を見ているだけで飽きないどころか、すっかり引き込まれてしまいました。玉三郎も、何をしているわけでもないのに、感情表現、様式性、姿の美しさが伝わって来ます。
 7月と同じく今回も、松王丸が偽首を「菅秀才の首に、相違ない」と言ったとき武部源蔵と戸浪がびっくりしつつも安堵する、という演技がありませんでした。ということは、ここの演じ方は仁左衛門の好みか。話しの流れからいうと偽首は、見破られる危険性が高い一か八かの作戦だったので、源蔵と戸浪はびっくりするのが自然な気がします。ここは松王丸のしどころなので、他のところでの余分な演技を抑えたのでしょうか?ぽん太にはよくわかりません。
 ところで、こんかい観劇にあたっって脚本を読み返していたら、最後のいろは送りのところで、「剣と死出の山けこえ」というのがあり、脚注に剣は「地獄にある山」とありました(『菅原伝授手習鑑・歌舞伎オン・ステージ16』(白水社、2002年)。こ、こ、これは先日登った、立山の剱岳のことではないか?立山と地獄思想に関しては、以前の記事で書きましたが、平安中期以後、地獄を現実に見ることができるところとして、多くの人たちが立山を訪れたのです。そして剱岳は、地獄の針の山にたとえられたのです。
 立山にある剱山から、この「剣と死出の山けこえ」という詞章が出て来たのか、それとも元々地獄に剣の山があるとされていたので、あの山が剱山と名づけられたのか、ぽん太にはわかりませんが、前者の可能性が高いような気がします。調査継続といたします。

 一方「鰯賣戀曳網」の方は、もう勘九郎のお手の物という感じで、なかなか楽しめました。真面目な勘九郎が一生懸命滑稽な演技をしているのは、愛嬌とサービス精神に溢れた十八世勘三郎とは違った面白さがあります。特に軍物語のなかのタコの動きなどは、ホントにヌルヌルしている感じで、白塗りの顔のまっ赤な紅のおちょぼ口とともに、抱腹絶倒でした。七之助も、傾城蛍火の色気、丹鶴城の姫に戻ってからのテンポの良さなど、いつもながら見事でした。彌十郎、市蔵、家橘が周りを固めて芝居をしめておりました。
 ところでこの狂言の作者は三島由紀夫ですが、いわゆる「新作歌舞伎」っぽく心理的で説教臭いところがないのがいいですね。古典に対する造詣の深さが感じられます。しかし一方で、三島由紀夫がこんなに明るく楽しい芝居を書くのかな〜と見ていて思いました。歌の講釈あたりで教養をひけらかしているのかもしれませんが、もっと毒々しい部分があってもいいような気がします。こんど原作の脚本を読んでみよ〜っと。

 藤十郎と梅玉の「吉野山」は言うまでもなく絶品。高齢の藤十郎が、静御前の可愛らしさと気品を感じさせれば、柔らかく美しい梅玉の佐藤忠信。素晴らしかったです。
 

歌舞伎座

十月大歌舞伎
十七世 中村勘三郎二十七回忌 十八世 中村勘三郎三回忌 追善
平成26年10月19日

夜の部

一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
  寺子屋
   
 松王丸 仁左衛門
 武部源蔵 勘九郎
 戸浪 七之助
 涎くり与太郎 国 生
 百姓吾作 松之助
 春藤玄蕃 亀 蔵
 園生の前 扇 雀
 千代 玉三郎

二、道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
  吉野山
   
 佐藤忠信実は源九郎狐 梅 玉
 早見藤太 橋之助
 静御前 藤十郎

三、鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
   
 鰯賣猿源氏 勘九郎
 傾城蛍火実は丹鶴城の姫 七之助
 博労六郎左衛門 獅 童
 傾城薄雲 巳之助
 同 春雨 新 悟
 同 錦木 児太郎
 同滝の井 虎之介
 同 乱菊 鶴 松
 庭男実は薮熊次郎太 市 蔵
 亭主 家 橘
 海老名なあみだぶつ 彌十郎

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