« 【オペラ】なんかよくわからないけど良かったです「パルジファル」新国立劇場 | トップページ | 【拾い読み】DSM-5を使う前に読んでおこう。アレン・フランセス『<正常>を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』 »

2014/10/14

【バレエ】熊川哲也の振付けっていいんじゃない?「カルメン」Kバレエカンパニー

 熊川哲也演出・振付けの「カルメン」の世界初演、ドラマチックでとても面白かったです。以前の「第九」の振付けはいまいちでしたが、「カルメン」で熊川の振付け師としての才能を改めて見直しました。
 技法的にはクラシックでしたが、変化に富んでいて、さまざまなアイディアが盛り込まれていました。特に腕を縄でしばれらたカルメンと、ドン・ホセの踊りは、縄を使ったさまざまな動きのなかに、ドン・ホセを籠絡しようとするカルメンと、心が揺れ動くドン・ホセの駆け引きが表現されていて、思わず引き込まれました。密輸業者のアジトを訪れたミカエラが、ドン・ホセの上着を見つけ、それを羽織って踊るのも、面白いアイディアでした(初心者ぽん太が知らないだけで、他のバレエの振付けであるのかしら?)。
 全体の進行もスピーディーで、最初から最後まで飽きることなく楽しむことができました。また、Kバレエのダンサーたちは、踊りとしての動きが、同時に登場人物の「動作」になっていて、表現力がとても豊かですね。動きの一つひとつに感情がこもっていて、意味が感じられます。
 ストーリーは、オペラの「カルメン」とほとんど同じでした。裏返せば、オペラの方を見慣れてない人は、ストーリーがわかりにくいところもあったのでは?会場で配るキャスト表の裏に、あらすじを書いておいたらいいのに。プログラムを買えってことか?
 密輸業者のアジトでのトランプ占いの場面。踊りながら立ったまま地面にカードを投げつけるのが、なんだかメンコをしてるみたいでした。そのあと、カードがまき散らされた舞台で踊ることにもなってしまうし、テーブルでも使った方がよかったのでは?
 ラストシーンでは、ドン・ホセはカルメンをオペラの用にナイフで刺すのではなく、ピストルで撃ち殺しました。人によって好みがあるでしょうが、ぽん太はナイフの方が生々しくて好きです。それからオペラでは、時々闘牛場のなかから歓声が響いてきて、華やかな闘牛と、ホセとカルメンの修羅場とが対比されるのですが、今回のバレエではこれがありませんでした。またこの場面、エスカミーリョになびいたカルメンを、逆上したドン・ホセが追い回して殺すというように描かれていましたが、オペラではもうちょっと複雑です。ドン・ホセはあくまでもカルメンとよりを戻そうとするのですが、カルメンの方が「よりを戻す気なんかない、エスカミーリョが好きなの、文句があるなら殺したら?」と挑発するため、ドン・ホセはついにカルメンを殺してしまいます。セリフのあるオペラと違って、バレエでこの心理を表現するのは難しいのかもしれません。でも、ホセとカルメンの駆け引きを、もっと時間をかけてたっぷりと踊って欲しかったです。
 それからラストで、二人が追いつ追われつして舞台下手奥に入って行ったと思ったら、すぐ下手手前から出て来ました。闘牛場を一周しているはずなので、「闘牛場ちっちゃ!」と思いました。
 カルメンの白石あゆ美。登場していきなり踊る「ハバネラ」はちょっと固かったけど、全体としてカルメンの妖艶さと強さとを感じさせる素晴らしい踊りでした。ぽん太の好みでは、「ハバネラ」はもっと「目つき」で誘惑してほしかったです。密輸団のアジトから毅然とした態度でドン・ホセとミカエラを去らせたあと、寂しそうな表情を浮かべ、最後に嬉しそうにエスカミーリョを追いかける(?)あたりの感情表現も見事でした。ミカエラの神戸里奈は、カルメンと対照的な清楚な雰囲気が良く出ていて、踊りを見ているだけで胸が痛んできました。エスカミーリョの遅沢佑介は、ちと不満でした。颯爽と舞台に現れて「闘牛士の歌」を踊るところで、闘牛士の力強さと、惚れ惚れするようなカッコよさを見せつけて欲しいところ。動きのツナギとキメのメリハリがないのかしらん?ぽん太にはよくわかりませんが、踊りが一本調子に感じられました。ドン・ホセの熊川哲也、端正で安定感のある踊りは美しく、回転やジャンプも魅せてくれましたが、さすがに以前のような思わず椅子からずれ落ちるほどの身体パフォーマンスが見られなかったのは、致し方ありません。群舞も悪くなく、目を引くダンサーも何人かいましたが、誰が誰やらわからなかったのが残念。
 ダニエル・オストリングの舞台セットは建物の質感が面白く、存在感がありました。マーラ・ブルーメンフェルドの衣裳も、フワフワときれないつものKバレエとはひと味違った美しさがありました。音楽は、ビゼーの曲と、新たに作曲した部分(?)があったような気がします。ビゼーの音楽は何度聴いても素晴らしいですね。ただ、もともとがオペラなので、歌がないためにちょっと違和感を感じる部分もありました。
 シアターオーケストラトーキョーも頑張ってましたが、バレエがなかなか良かっただけに、こうなってくると、もうちょっといいオケで聞きたいな〜という気もしてきます。
 驚くべきことにオーチャードホールの係員は、序曲演奏中にも遅れた客を座席に案内しておりましたが、Kバレエは音楽をあまり重視していない、ってわけじゃないですよね。

カルメン
2014年10月9日 オーチャードホール

カルメン:白石あゆ美
ドン・ホセ:熊川哲也
ミカエラ:瀬戸里奈
エスカミーリョ:遅沢佑介
モラレス:伊坂文月
スニガ:スチュアート・キャシディ
フラスキータ:浅野真由香
メルセデス:井上とも美
ダンカイロ:ニコライ・ヴィユウジャーニン
レメンダード:兼城将

|

« 【オペラ】なんかよくわからないけど良かったです「パルジファル」新国立劇場 | トップページ | 【拾い読み】DSM-5を使う前に読んでおこう。アレン・フランセス『<正常>を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/60471520

この記事へのトラックバック一覧です: 【バレエ】熊川哲也の振付けっていいんじゃない?「カルメン」Kバレエカンパニー:

« 【オペラ】なんかよくわからないけど良かったです「パルジファル」新国立劇場 | トップページ | 【拾い読み】DSM-5を使う前に読んでおこう。アレン・フランセス『<正常>を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』 »