【歌舞伎】(ネタバレ注意!)脚本がぐだぐだ・海老蔵の「石川五右衛門」2015年1月新橋演舞場
(★以下の記事にはネタバレがありますので、これから御観劇の方はご注意下さい)
前に海老蔵の「石川五右衛門」を観たのは2009年でしたが、だいぶ内容が変わっているようです。前回は、歌舞伎のさまざまな演出やケレンがてんこもりで、ちょっと食傷気味な感じでしたが、今回はだいぶ整理されたようです。しかしその分、脚本がぐだぐだでした。なんか石川五右衛門が中国に乗り出して行くという壮大な話しなのですが、有名な五右衛門のエピソードがほとんど出てこないばかりか、そもそも「盗み」すら出てこないので、別に主人公が石川五右衛門でなくても誰でもいい、という感じでした。
冒頭、傘で顔を隠した海老蔵が出て来て小芝居が始まりますが、普通はある程度したところで顔を見せてお客さんが拍手喝采、という段取りですが、顔を見せないまま引っ込んでしまいます。う〜ん、約束事を裏切るあたりがいいな〜と思っていると、次の場面でようやく顔を見せました。そして海老蔵ならではの身軽さで塀の上にひらりと飛び上がり、見得をきった瞬間にさっと幕が降り、そこには「石川五右衛門」のタイトルが。スピード感とリズム感があって、まるでテレビドラマか映画の幕開きようで、まずまずです。
次いで、幕が変わると一転して茶々と五右衛門の舞踊となりますが、ここら辺りの省略感も歌舞伎っぽくて悪くありませんでした。
問題はここから。次の幕で、いきなり五右衛門が実は秀吉の子供だったことが明かされますが、客席にはどよめきと苦笑が広がり、ぽん太の近くのおっちゃんは「はははは」と声を出して笑ってました。
「歌舞伎」なんですから、ぽん太は別に荒唐無稽な発想を否定するわけではありません。しかし、これだけ奇想天外な設定をしたのですから、このあと相当おもしろいストーリー展開があってしかるべきところですが、残念ながら期待はずれに終わりました。場面が突然中国に移るのですが、残虐な王様が日本に美しい女性がいると聞いて茶々をさらいに行くんだそうで、これまでの話しと中国の結びつきが強引というか、とってつけた感じでした。
ラストの中国皇帝となっての「山門」の場面の再現も、秀吉のあとを次いで日本を支配するよりでっけ〜ぜ〜、ということなんでしょうけど、それほど感動しませんでした。
海老蔵の新作に取り組む意欲は買いますが、もう少し脚本を工夫する必要があるのでは?
ところで、道行改め市川九團次って誰だ?たしか昨年の12月の歌舞伎座にも出てたけど。ベテランみたいなのに初めて聞いたぞ。調べて見たら薪車じゃないの。あれ、薪車って確か、自分は歌舞伎に向いてないとか言って、竹三郎から芸養子を解消されて破門になったんじゃなかったっけ(「歌舞伎の坂東薪車さん、芸名失う 師匠と疎遠に」朝日デジタル、2014年5月28日)。市川九團次(4代目)- Wikipediaによると、破門後、2014年9月に市川海老蔵の門弟となり市川道行を名乗り、今回の舞台で市川九團次を襲名したんだそうな。なんだ、歌舞伎が嫌になって辞めたんじゃなかったんだ。実はぽん太が好きな役者の一人なんですが、とりあえず良かった。実際のところ、いったい何があったんでしょう?
松竹創業120周年
初春花形歌舞伎
平成27年1月15日・新橋演舞場
石川五右衛門(いしかわごえもん)
石川五右衛門 市川 海老蔵
ワンハン 中村 獅 童
豊臣秀吉 市川 右 近
加藤段蔵/悪龍の精 市川 猿 弥
女将軍櫻嵐女 市川 笑三郎
侍女花里 大谷 廣 松
ヌルハチ 道行改め市川 九團次
アイ将軍 片岡 市 蔵
局押小路 市川 右之助
前田利家 市村 家 橘
茶々 片岡 孝太郎
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コメント
海老蔵が、ぐだぐだに許容があるって事なんでしょう。破門された方にも、サクっと名跡あげちゃうし。愛之助もツバメンコに許容があるみたい。
投稿: 通りすがり | 2017/09/05 04:13