【歌舞伎】菊五郎・菊之助の芸に歌舞伎っていいなァと思う。2015年2月歌舞伎座昼の部
二月の歌舞伎座、昼の部は菊五郎の「毛谷村」と、菊之助・幸四郎の「関の扉」。やはり歌舞伎は実力がある役者が演じると面白さが全然違うことを痛感しました。公式サイトはこちらです。
まず最初の演目は「吉例寿曽我」。歌昇が曽我五郎、萬太郎が十郎を演じましたが、「寿曽我対面」と異なり、見せ場があまりないのが残念。「吉例寿曽我」は、それぞれがポーズを決めてセリから上がってきたときが、まるでフィギュアのような美しさですが、その後はさしたるやりとりもなく、昼ひなか富士山が見える野っ原でなぜかダンマリになるという不思議な演目。ということで見せ場は少なかったですが、歌昇の曽我五郎はなかなか迫力がありました。萬太郎の十郎が、和事風の柔らかさが乏しく、江戸の町人風に見えてしまったのが残念。
で、次の「毛谷村」の菊五郎の六助が、初役とは思えない素晴らしさでした。こういう好人物の役はホントにぴったりで、人のよさそうな表情でぽーっと立っているだけで、「いいなァ」と感動してしまいます。仕草といい、セリフ回しといい、リズム感といい、きまりきまりの表現といい、どれをとってもお見事という感じですが、具体的にどこがどう良いのか言えないのは、素人のあさましさ、お許し下さい。おそらく、さまざまな工夫が盛り込まれてるんでしょうね。時蔵のお園は、女丈夫の時と、急にしおらしくなったときの変化がも少し大げさでも良かったか。團蔵の微塵弾正と東蔵のお幸はしっかりしていました。左團次の杣斧右衛門がごちそう。
「関の扉」は、常磐津の大曲にのせた有名な舞踊でありながら、ぽん太はこれまで毎回寝倒してきました。そこで今回は詞章を予習していったところ、十分にはわからないながらも、大変面白く見ることができました。皆さんも詞章を読んでいくことをお勧めします。関の扉の詞章は例えばこちらの「てぬぐいぶろ」というサイトにありますし、またこちらの常磐津の家元の息子・小文字太夫さんのサイトにも後半の詞章がのってます。小野小町の逸話やその他の物語を踏まえているんだと思いますが、その辺りのみちくさはまたの機会に。
前半で絶世の美女の小野小町を演じた菊之助が、後半、小町桜の精(傾城墨染)として出てきたとき、まさに薄墨のような実体性のなさ、この世のものではない雰囲気、哀れさがはっきりと伝わってきて、見事に対比された表現に、芸術的な感動を覚えました。ぽん太はバレエの「ジゼル」を思い出しました。踊りの大好きな明るい女の子ジゼルちゃんが心臓麻痺で死んでしまい、ウィリという化け物になってしまうのですが、ウィリの親玉に操られてクルクル回り出したりするのを見ると、「あゝ、あのジゼルちゃんも化け物になっちゃったんだな」と哀れさをさそうのでした。「関の扉」では前半の小野小町と後半の小町桜の精は同一人物ではありませんが、小町桜の精も出てきたところでクルクル回ってましたね。幸四郎の関守関兵衛は、妖しいというよりも、ちょっと滑稽な感じで良かったです。
う〜ん、ちと飽きてきた気がしてたけど、やっぱり歌舞伎はいいですね。夜の部の「一谷嫩軍記」も見ればよかったな……。
歌舞伎座
二月大歌舞伎
平成27年2月112日
昼の部
一、吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
鶴ヶ岡石段の場
大磯曲輪外の場
近江小藤太 又五郎
八幡三郎 錦之助
化粧坂少将 梅 枝
曽我五郎 歌 昇
曽我十郎 萬太郎
朝比奈三郎 巳之助
喜瀬川亀鶴 児太郎
秦野四郎国郷 国 生
茶道珍斎 橘三郎
大磯の虎 芝 雀
工藤祐経 歌 六
二、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
毛谷村
毛谷村六助 菊五郎
お園 時 蔵
微塵弾正実は京極内匠 團 蔵
お幸 東 蔵
杣斧右衛門 左團次
三、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
関守関兵衛実は大伴黒主 幸四郎
小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精 菊之助
良峯少将宗貞 錦之助
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