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2015/03/22

【歌舞伎】神々しいまでの仁左衛門の菅丞相/2015年3月歌舞伎座昼の部

 久々に「面白い歌舞伎」ではなくて、「感動する歌舞伎」を観ました。公式サイトはこちらです。
 実はぽん太、ここのところ3階席専門だったのですが、今回は演目と配役を見て、死んだ気になって1階のチケットを取ったのです。新歌舞伎座になって初めての一階席だぜ!しかもせっかくなので、最前列にしてみたのだ!わはははは。さすがに表情がよく見えて、3階とは迫力が違うぜ。
 おっほん。で、なんといっても仁左衛門の菅丞相が最高でした。品格があり、神々しくて、もうすぐ神様になるという感じが伝わってきます。ってゆ〜か、半分神様になっているかも。でも「道明寺」での娘との別れを惜しむ情愛は、人間のもの、父親のものでした。仁左衛門の目からこぼれる涙が、一階席だったのでよく見えました。しかしそれが大げさなお涙頂戴になっていないあたりが、仁左衛門ならではの節度。舞台で描かれているのは極めて特殊な状況ですが、それが普遍的な親子の情や、親しい人との別れに通じているので、客席のあちこちからすすり泣きが聞こえました。
 もちろん今回の舞台が素晴らしかったのは仁左衛門だけの手柄ではありません。その他の役者もいい仕事してました。
 まず魁春の園生の前。こういう格式ある奥方の役は本当にいいです。品格を保ちながら、戸浪への女性らしい思いやりが感じられました。
 そして秀太郎の覚寿。普段はなんかフニャフニャしたおばさん役が多いですが、今回は苅屋姫と立田の前を棒で打ちすえ、婿の宿禰太郎を刀で刺し殺すという強い気性を持った老女の役。立ち回りのあと肩でハアハア息をしているのを見て、すごい演技力だな〜と思っていたのですが、そのあと畳に座ってからもしばらくハアハアしていたので、これは演技じゃなくてホントなんだとわかりました。歌舞伎を演じるのって凄い体力が必要だと常々思ってましたが、秀太郎が体力の限界ぎりぎりまで使って演じているのを目の当たりにして、ぽん太はとっても感動しました。
 菊之助、ふっと笑ったりキッと睨んだりの表情の変化がきっちりしており、しかもそれぞれの表情が美しい。身体のしなやかな動きも素晴らしかったです。宿禰太郎の彌十郎がいつもながらうまい。滑稽な役でありながら、演技を見ているのが楽しいです。
 橘太郎の左中弁希世、松之助の贋迎い弥藤次、ともに名脇役ぶりを発揮。すばらしい仕事ぶりでした。愛之助や染五郎もしっかり仕事。ぽん太ごひいきの壱太郎は、さすがにこの役者陣のなかでは目立ちませんでした。

 ところで、途中で仁左衛門や愛之助が何回か「道真」って言ってた気が……。「菅原道真」じゃなくて「菅丞相」じゃないんかい。いい間違えか?家に帰ってからさっそく脚本を調べてみました(『菅原伝授手習鑑 (歌舞伎オン・ステージ)』白水社、1989年)。そしたら脚本にも「道真」と書いてあるやん。れれれ?これはどうしたことでしょう。
 で、さらに調べてみると、「菅丞相」というのは、「菅」原の大臣(=丞相)という意味で、菅原道真その人のことなんですね。忠臣蔵とかでは、実名は使っちゃいかんということで、「大石内蔵助」を「大星由良之助」に変えたりしてますが、「菅原伝授手習鑑」はそれとは違って、「菅原道真」を「菅丞相」という別の言い方で呼んでいるだけのようです。そう言われてみれば藤原時平も、「ときひら」を「しへい」と読ませてはいますが、本名で出てますもんね。江戸時代の人物じゃないから、本名でいいのかしらん。

 それからもひとつ。菅丞相が、木造が動いたことについて過去の例をあげている部分。
 「例(ためし)は本朝名高き絵師、巨勢(こせ)の金岡(かなおか)が書きたる馬は、夜なよな出でて萩の戸の萩を喰う。また唐土にも名画の誉れ、呉道子が墨絵の雲竜、雨降らせし例(ためし)もあり」
 巨勢金岡というのは無学なぽん太には初耳でしたが、調べてみると実在の人物で、平安時代の超有名な宮廷画家だそうです(Wikipedia)。ぽん太も訪れたことがある京都の神泉苑にもかかわり、菅原道真との親交も厚かったのですが、作品は一切現存していないそうです。ううう、残念。
 で、馬が絵から出てきた話しについてはWikipediaの「馬形障子」の項(こちら)に書かれております。鎌倉時代に成立した『古今著聞集』のなかに、平安時代の天皇の御殿であった清涼殿には、巨勢金岡が描いた三つの馬形障子(馬絵の絵が描かれた障子)があり、馬が夜な夜な絵から抜け出して萩の戸(清涼殿にあった障子だそうです)の萩を食べたので、馬をつないだ状態に描き直したら、絵から出なくなった」という話しがあるそうです。
 呉道子は、唐代のこれまた超有名な画家・呉道玄のことで、これまた作品は残っていないそうな(Wikipedia)。ただ、彼が描いた雲竜が雨を降らしたという話しは、見つけることはできませんでした。

 舞台となった道明寺は、現在は神仏分離によって道明寺(こちら)と道明寺天満宮(こちら)に分かれて残っているようです。そのうち訪れてみたいと思います。

歌舞伎座
三月大歌舞伎
平成27年3月18日
昼の部

通し狂言 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

 序 幕 加茂堤(かもづつみ)  
   桜丸 菊之助
   八重 梅 枝
   斎世親王 萬太郎
   苅屋姫 壱太郎
   三善清行 亀 寿

 二幕目 筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)  
   菅丞相 仁左衛門
   武部源蔵 染五郎
   梅王丸 愛之助
   戸浪 梅 枝
   左中弁希世 橘太郎
   腰元勝野 宗之助
   三善清行 亀 寿
   荒島主税 亀三郎
   局水無瀬 家 橘
   園生の前 魁 春

 三幕目 道明寺(どうみょうじ)
   菅丞相 仁左衛門
   立田の前 芝 雀
   判官代輝国 菊之助
   奴宅内 愛之助
   苅屋姫 壱太郎
   贋迎い弥藤次 松之助
   宿禰太郎 彌十郎
   土師兵衛 歌 六
   覚寿 秀太郎

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