« 【歌舞伎】松也の弁天小僧なかなかやるじゃん。2015年3月京都南座午後の部 | トップページ | 【温泉】明治後半の建物が残るアットホームな宿。三浦屋@肘折温泉・山形県(★★★★★) »

2015/03/19

【オペラ】東日本大震災の記憶とシンクロして涙「マノン・レスコー」新国立劇場

 マノンとデ・グリューが誰もいないルイジアナの荒野で渇きに苦しみながら息絶えていく。オペラ「マノン・レスコー」の第4幕が、ぽん太のなかで東日本大震災の記憶と交錯し、涙をそそりました。公式サイトはこちらです。
 そもそも今回の公演は、もとは2011年3月に行われる予定でしたが、震災のために中止になったといういわくの演目。
 喉の渇きに苦しむ荒野と水が押し寄せる津波とでは、ある意味状況は正反対ですが、圧倒的な自然の力の前に人が命を失うという点では共通しております。
 このオペラ、幕ごとに場面が飛んで分かりにくいことで有名ですが、当時の観客は『マノン・レスコー』のストーリーを良く知っていたので、このような大胆な省略が可能だったそうです。それにしても、フランスの港からアメリカに向けて船が出発するという第3幕に続いて、いきなり第4幕ではルジアナの荒野をマノンとデ・グリューがさまよっているというのはあまりに唐突で、違和感を覚えます。しかし東日本大震災では、平凡な日常が津波によって一瞬にして破壊され、瓦礫の山と化したのでした。唐突に現れた荒野の場面に、ぽん太は言い知れぬ恐怖を感じました。
 さらにぽん太のなかでシンクロしたのは、先日の東日本大震災追悼式での、あの遺族代表の女子大生のスピーチです。テレビでも繰り返し放映されましたが、彼女のスピーチで衝撃を受けた人は多かったのではないかと思います。とても凄まじくて怖い体験を、感情を交えず簡潔に語っており、ぽん太は柳田国男の『山の人生』の、二人の子供の首をまさかりで斬って殺した話しを思い出しました(こちらの青空文庫の冒頭近く、「一 山に埋もれたる人生あること」の最初に書かれています)。「震災の悲しみ」や「前向きに頑張る」という言葉が、ぽん太が全く想像してなかった重い意味を持っていることを、彼女のスピーチで知ることができました。
 第4幕の舞台は、何もない床の上にまるで小さな島のように赤い砂と岩が配置されていたのですが(舞台写真はこちら)、それが津波に囲まれたがれきの山を思わせました。舞台上の二人が、女子大生とその母親と重なり、一人取り残されたマノン・レスコーが歌うアリア「一人さびしく」に、がれきに埋もれて亡くなっていった母親の気持ちを歌っているように思われました。

 このオペラ、第1幕から第3幕までは正直退屈ですね。マノンとデ・グリューがデレデレしてるのを見ていると、電車の中でいちゃつくバカップルを見てる感じで、ちっとも感情移入できません。「勝手にしろ!」と言いたくなります。特に今回の演出では、このあたりがコミカルに表現されているので、なおさらでした。第4幕になると突然劇的になり、プッチーニの音楽も見違えるような素晴らしさです。「プッチーニさん、ほんとは第4幕だけ描きたかったんとちゃうんかい!」と言いたくなりました。

 デ・グリューのグスターヴォ・ポルタは、極めてイタリア的なロレった歌い方(専門用語不明)で声量も豊かで、ぽん太の好きなタイプなのですが、ちょっと声のきめに荒さがあるので、若い騎士の学生よりも、経験豊富な壮年っぽく聞こえました。マノン・レスコーのスヴェトラ・ヴァッシレヴァも、新国立らしい美人さんですが、声質がちょっと硬いので、おばかなマノンちゃんという感じではありませんでした。しかし二人とも第4幕にはぴったりの声で、感動を誘いました。レスコーのダリボール・イェニスも、性格俳優的な存在感が良かったです。
 妻屋秀和が芝居っけたっぷりにジェロントを好演。エドモンドの望月哲也は、今回はなぜか声が通らなかったです。
 ピエール・ジョルジョ・モランディが指揮した東京交響楽団の演奏は、感情がこもっていて良かったと思います。特に第2幕のエンディングの迫力、間奏曲のすすり泣くような美しさが印象に残りました。

オペラ「マノン・レスコー」/ジャコモ・プッチーニ
Manon Lescaut/Giacomo Puccini
2015年3月15日
新国立劇場オペラパレス

指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
演出:ジルベール・デフロ
装置・衣裳:ウィリアム・オルランディ
照明:ロベルト・ヴェントゥーリ

マノン・レスコー:スヴェトラ・ヴァッシレヴァ
デ・グリュー:グスターヴォ・ポルタ
レスコー:ダリボール・イェニス
ジェロント:妻屋秀和
エドモンド:望月哲也
旅籠屋の主人:鹿野由之
舞踏教師:羽山晃生
音楽家:井坂 惠
軍曹:大塚博章
点灯夫:松浦 健
海軍司令官:森口賢二

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

|

« 【歌舞伎】松也の弁天小僧なかなかやるじゃん。2015年3月京都南座午後の部 | トップページ | 【温泉】明治後半の建物が残るアットホームな宿。三浦屋@肘折温泉・山形県(★★★★★) »

精神医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/61286095

この記事へのトラックバック一覧です: 【オペラ】東日本大震災の記憶とシンクロして涙「マノン・レスコー」新国立劇場:

« 【歌舞伎】松也の弁天小僧なかなかやるじゃん。2015年3月京都南座午後の部 | トップページ | 【温泉】明治後半の建物が残るアットホームな宿。三浦屋@肘折温泉・山形県(★★★★★) »