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2015/09/18

【文楽】かわいそうなお三輪ちゃん「妹背山婦女庭訓」/2015年9月国立劇場第二部

 今回の「妹背山婦女庭訓」は、これまでぽん太が文楽でも歌舞伎でも観たことがない「井戸替の段」、「杉酒屋の段」、「入鹿誅伐の段」が付いての通し上演。公式サイトはこちらです。
 とは言えこれでも、全五段の中の四段目を上演したに過ぎません。まことにスケールの大きい長大な物語ですね。歌舞伎では三段目の「吉野川」もたまに上演されます。
 「妹背山婦女庭訓」に関しては、こちらの文化デジタルライブラリーのサイトが詳しいです。このサイト、よく使わせてもらうのですが、どうも微妙に税金の無駄遣い感が漂うのが気になるところ。でも、便利でありがたいです。

 「井戸替の段」は、お三輪の家の杉酒屋での井戸替えの風景が描かれます。借家に住む求馬は、井戸替えを手伝わなかったことを責められますが、知らなかったのなら仕方ないと許されます。荒々しい借家人たちの飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎが楽しいです。
 「杉酒屋の段」では、求馬のところに美しいお姫様が来ていることをお三輪が知ります。お三輪は、七夕にそなえた赤い苧環を求馬にもたせ、自分が白い苧環を持つことで恋を確かめようとしますが、お姫様が求馬を連れて行こうとして争いになります。
 「入鹿誅伐の段」では、お三輪ちゃんの犠牲によって霊力を得た笛の力を借りて、蘇我入鹿は討ち取られます。三種の神器も取り戻されて、めでたしめでたし。

 通しで観ると、ストーリーも面白く、実ハもあって、道行きの踊りもあれば立回りもあり、なかなか見応えがあります。歌舞伎でもぜひ通しでやって欲しいと思うのですが、女性が二人とも可哀想な目にあうので、あまり上演しないのかもしれません。お三輪ちゃんは、恋人に裏切られ、さんざん女官にいたぶられたあげく、鱶七によって殺されながらも、「私のような卑しい女が、淡海様のお役に立てて幸せです」と死んで行きます。橘姫は、求馬への愛ゆえに兄入鹿を裏切って十握の宝剣を盗み出しますが、実はそれは偽物で、兄入鹿に斬りつけられます。五段目で、橘姫は生きていることがわかり、求馬(=淡海)の妻となるのですが、四段目を見る限り、二人の女性が、男たちの自分勝手な政略のために犠牲になる話のように取れます。

 文楽初心者のぽん太の感想ですが、「井戸替の段」で描かれた庶民の生きいきとした日常生活が楽しかったです。「道行恋苧環」は、三角関係の恋模様が面白く、また「姫戻りの段」で、橘姫と求馬とお三輪が、苧環でつながりながら出てくる理由がわかりました。「入鹿誅伐の段」、勧善懲悪で気持ちがすっきりするし、入鹿の首が宙を舞うあたりは、文楽ならではでした。
 義太夫では、「金殿の段」の千歳大夫の迫力ある語りが印象的でした。人形遣では、玉男の求馬が、ちょっと陰鬱な現代の若者っぽくて、主人公でありながら主人公らしくないというか、まわりに流されたり、自分の行動が周りに及ぼす波紋を憂えている雰囲気が良かったです。和生の橘姫も品格がありました。勘十郎のお三輪ちゃんが、とっても可愛くて、とっても哀れで、ぽん太はすっかり惚れてしまいました。

 ところで、この物語のなかにはいくつかの地名や神社名が出てきます。たとえばこちらで「妹背山婦女庭訓」の床本を見ることができますが、こちらの「姫戻りの段」の最後の方に、「小田巻塚」や「横笛堂」といった名前が見られます。こちらのサイトによると、小田巻塚は奈良の桧原神社にあり、横笛堂は同じく奈良の法華寺にあるそうです。またこちらによると、お三輪ちゃんゆかりの神社が大神神社(おおみわじんじゃ)で、杉酒屋のモデルは今西酒造(こちら)だそうです。
 


平成27年9月 文楽公演
国立劇場
2015年9月8日

第二部

「妹背山婦女庭訓」

井戸替の段
      松香大夫
      清友

杉酒屋の段
      咲甫大夫
      團七
  
道行恋苧環
  お三輪 呂勢大夫
  橘姫  芳穂大夫
  求馬  靖大夫
      小住大夫
      亘大夫
      清治
      清志郎
      龍爾
      清公
      清允
鱶七上使の段
  口   咲寿大夫
      寛太郎  
  奥   文字久大夫
      藤蔵
姫戻りの段
      睦大夫
      清志郎
金殿の段
      千歳大夫
      富助  
入鹿誅伐の段
  鎌足  津国大夫
  求馬  南都大夫
  入鹿  始大夫
  橘姫  芳穂大夫
  玄上太郎・金輪五郎 咲寿大夫
  宮越玄蕃・荒巻弥藤次 文字栄大夫
      団吾 

丁稚子太郎 簑一郎
土左衛門  勘市
五州兵衛  文哉
藤六    玉翔
野平    玉誉
お三輪母  文昇
求馬実は藤原淡海 玉男
家主茂次兵衛 文司
橘姫    和生
お三輪   勘十郎
宮越玄蕃  亀次
荒巻弥藤次 紋秀
蘇我入鹿  玉輝
漁師鱶七実は金輪五郎 玉也
豆腐の御用 勘寿
藤原鎌足  文司
玄上太郎  文昇

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