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2016/08/19

【仏像】りりしい若者のようなお顔。木造文殊菩薩騎獅像(重文)@薬王寺(福島県いわき市)

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 6月下旬、ぽん太とにゃん子は、福島県はいわき市にある薬王寺に、国の重要文化財・木造文殊菩薩騎獅像を拝観しに行ってまいりました。
 文殊菩薩といえば、「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもあるように、知恵の神様として知られています。しかしこの知恵は、悟りを開くための「智慧」であって、勉強ができるとか知識が多いとかいう意味ではありません。そのあたりを勘違いして、たかだか技術者ごときが作った原発に、畏れ多くも「もんじゅ」などと仏様の名前をつけるという傲り高ぶりの結果、重大事故が繰り返されて人類を危険に陥れていることは、よく知られております。
Img_1626 薬王寺は、福島県はいわき市内から7〜8km北方に位置します。
 ホームページもなく、いわき観光情報サイトの案内も通り一遍です。素晴らしい文殊菩薩さまがいるのにもったいない!
Img_1627 大同年間(806〜809)に徳一(とくいつ)大師によって開山されたとのこと。ということは、開山当初は法相宗だったのでしょう。徳一は、若くして都を離れ東北に仏教を広め、最澄とも論争したことなどで知られております。
 文安2年(1445)には真言宗奥州総本山として中興開山され、一時は多くの伽藍が立ちならんで隆盛を極めたようです。
 しかし、戊辰戦争で堂宇は全焼。幸いいくつかの仏様や、書画・器物等が被害を免れました。
 Img_1629 門を入ると右手に数多くの石碑や石仏が並んでいます。市指定史蹟の「板石塔婆」(いたいしとうば)です。
Img_1630 長い石段を上ります。
Img_1647 鐘楼に鐘はなく、まわりの竹は延び放題。戊辰戦争とそれに続く廃仏毀釈のあおりをもろに受けた感じです。
Img_1631 小さな本堂があります。
Img_1644 文化財はこちらの収蔵庫に安置されております。
Img_1634 そして……ジャーン!す、素晴らしい文殊菩薩様です。
 いまにもうなり声が聞こえてきそうな写実的な獅子の上に座っておられます。座り方は、安倍文殊院五尊像などでは左足を下にたらした半跏踏下坐(はんかふみさげざ)ですが、この文殊さまは右足を前にして結跏趺坐をしておられます。本来は右手に利剣、左手に経典を乗せた青蓮華を持っているはずですが、右手は手首から先が失われ、左手の持物もありません。
 鎌倉時代のもので、運慶作とも伝えられているそうですが、はっきりしたことはわかりません。
 もんじゅ - Wikipediaによると、高速増殖炉もんじゅは、「『文殊、普賢の両菩薩は、知慧と慈悲を象徴する菩薩で、獅子と象に乗っている。それは巨獣の強大なパワーもこのように制御され、人類の幸福に役立つのでなければならない』と願いを込めて命名された」と書かれていますが、このお姿を見て、文殊菩薩が獅子をコントロールしていると感じ、原子力を人間が制御している様子に重ね合わせた感性には、唖然とするほかありません。
Img_1643 少しふっくらしたお顔。きりっとした口元、前を見据えた目など、心の中に決意というか、思いを秘めた若者のように見えます。
Img_1637 珍しい後ろ姿。木材で補強されているのがわかります。
 なんで文殊菩薩が獅子に乗っているのか、という疑問が湧いてきますが、ぐぐってみたけどよくわかりません。
 安倍文殊院の文殊菩薩も獅子に乗っております。優填王(ゆうてんのう)、仏陀波利三蔵(ぶつだはりさんぞう)、最勝老人(さいしょうろうじん)、善財童子(ぜんざいどうじ)を伴っており、仏教を広めるための旅の途中を表したもので、渡海文殊(とかいもんじゅ)と呼ばれるそうです。これは中国の五台山を舞台とした「文殊説話」が元になっているそうですが、具体的にいつのどういう説話なのかまではわかりません。
 「陀羅尼集経」(だらにじっきょう)という経典の「「獅子に乗ず」という記載に基づくと書いているサイトも多く見受けられました。陀羅尼集経は7世紀頃に作られたお経のようですね。東京大学の大蔵経テキストデータベースで一応見ることができまして、こちらのページから「乘於師子」で検索をかけていただき、検索結果から「陀羅尼集經 (0901)」の[show]をクリックして下さい。すると
 「T0901_.18.0790a29: 文殊師利菩薩。身皆白色頂背有光。七寶瓔
  T0901_.18.0790b01: 珞寶冠天衣。種種莊嚴乘於師子。右邊畫作」
となっており、確かに「乘於師子」と書いてあります。
 全体の意味を理解する力はぽん太にはありません。しかしすぐあとに、
 「T0901_.18.0790b02: 普賢菩薩。莊嚴如前。乘於白象於其師子。白」
というのがありますが、普賢菩薩が白象に乗ってるには、ここから来たのかしら。ぐぐってみると、「法華経」に書いてあるという説もあるみたいですね。こちらはまたの機会にみちくさすることにいたしましょう。

Img_1640 こちらの「絹本著色弥勒菩薩像」も国の重文です。
Img_1642 箱の中の厨子入金銅宝篋印舎利塔も重文ですが、写真を撮る前にしまわれてしまいました。
Img_1641 絹本著色涅槃図は市指定の文化財です。


薬王寺(真言宗智山派 延寿山教王院薬王寺)
福島県いわき市四倉町

木造文殊菩薩騎獅像 鎌倉時代 国指定重文

絹本著色弥勒菩薩像 鎌倉時代 国指定重文
厨子入金銅宝篋印舎利塔 南北朝 国指定重文

絹本著色涅槃図(附)図涅槃幀讃井序 市指定

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