【仏像】夜になると目を閉じる!重文の千手観音立像・寿宝寺(京都府山城)
今年の2月の京都山城仏像の旅、次に訪れたのは寿宝寺です。ここに祀られている十一面千手千眼観音立像(重文)は、実際に千の手を持ち、さらに千の目(?)を持ち、また素木(しらき)であるという珍しい仏様です。
【寺院名】高野山真言宗金剛峯寺派 開運山 寿宝寺
【住所】京都府京田辺市三山木塔ノ島20
【拝観】要事前連絡。拝観料300円
【仏像】
十一面千手千眼観音立像 像高180cm 檜 一木造 素木 平安時代後期 重要文化財 写真
降三世明王 素木 写真1、写真2
金剛夜叉明王 素木 写真
【ホームページ】ホームページはなさそうなので、京田辺市観光協会のサイトにリンクしておきます。
仏様は、本堂とは別の収蔵庫に安置されております。庫裡で拝観を申し出ると、扉を開けて案内してくれます。正面に十一面千手千眼観音、その向かって左に降三世明王、右に金剛夜叉明王がおります。
観音様は、像高180cmでほぼ等身大。実際に千の手を持っております。この仏像以外では、奈良の唐招提寺や、大阪の葛井寺などがあるそうです。
彩色や金箔のない素木(しらき)の仏様で、手のひら一つひとつに墨で目が書いてあったため、十一面千手千眼観音と称されているそうです。現在は、一部の手のひらに目を認めることができます。また、唇にも朱が入ってますが、これは平安時代に作られた当初のものだそうです。
実際に千の手がありながら、いわゆるウジャウジャ感はなく、すっきりとした優美な造形となっております。上半身はややがっしりしておりますが、千の手を支えるためには必要なのかもしれません。お顔もふっくらしていて、切れ長目尻のつり上がった逆三日月型の目、唇の厚いおちょぼ口で、やや厳しい表情に見えます。
しかし、収蔵庫の扉を閉めて上からの蛍光灯だけで眺めると、あら不思議、両目を閉じたとても穏やかで慈悲深い表情に変化します。
本堂の前には昔は鶴沢の池という池があり、そこにうつる月を愛でるという風習があったこともあり、いつしかこの仏様は夜にお参りするようになったそうです。みんなやはり夜の優しいお顔を好んだんでしょうね。
素木の仏様も珍しい気がしますが、この仏様は、古くは神宮寺(神仏習合の考え方に基づき神社に造られたお寺)の、ご本尊ではない仏様だったため、素木が普通である神像にならって、彩色や漆箔がおこなわれなかったと考えられています。そのお寺は明治の廃仏毀釈で廃寺となり、寿宝寺に仏様が移されたそうです。
二体の明王も素木の像で、やはり神宮寺から移されたものです。
向かって左の降三世明王は、顔が三つ、腕が八本、胸の前で手背をあわせて指を絡ませたような「降三世印」を結んでおります。そしてなによりもの特徴は、シヴァ神とその奥さんを踏んづけていること。天邪鬼を踏みつけている仏像は多数ありますが、神様を踏んでるのは降三世明王だけです。この像では、だんながごろんと横になり、奥さんがちゃっかり座っているのが、不思議な造形です。
右側の金剛夜叉明王は目が四つあるのが特徴ですね。写真だと腫れぼったい目に見えますが。こちらもちょっと素朴な感じの仏様です。
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