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2017/03/29

【オペラ】グラスハーモニカで歌うオルガ・ペレチャッコ=マリオッティのベルカント「ルチア」新国立劇場

 「ベルカントの新女王」と呼ばれるというオルガ・ペレチャッコ=マリオッティの歌と、グラスハーモニカという珍しい楽器の音色を聞けて、満足のいく公演でした。全体にとっても質の高い企画で、芸術監督の飯守さんの意気込みを感じました。この公演のの公式サイトはこちらです。

 話題のオルガ・ペレチャッコ=マリオッティは、ベルカントといっても軽くて甘い歌い方ではなく、ちょっと芯があるドラマチックな歌声。1830〜1840年代の舞台設定ながら、ルチアの衣装が乗馬服風のスラックスだったのも、彼女の雰囲気に合わせたのかもしれません。狂乱の場も、魂を失ったかのような歌い方ではなく、血だらけの白い室内着を着て、アルトゥーロの生首を突き刺した槍を片手に、迫力ある歌い方でした。歌舞伎の碇知盛みたいでした。
 歌唱テクニックはすばらしく、単に小節が回るだけでなく、ぽん太がこれまで聞いたことのないような声色もあり、声というより楽器みたいな節回しもあり、歌声を聞いているだけで酔いしれました。そのうえスタイルもよく、なかなかのべっぴんさん。いいものを見ました。

 狂乱の場の伴奏には、ドニゼッティが指定した楽器のグラスハーモニカが使われました。現在ではフルートで代用されることが多いようですが、今回の公演ではあえてオリジナルの楽器を使ったようです。
 もちろんぽん太は初めて聞きましたが、まさに天国的な魅力的で不思議な音色でした。
 原理は、水を入れたワイングラスのふちを手でこすって、ホワ〜〜〜ンという音を出す、アレです。
 ワイングラスをいっぱい並べ、水の量を調節して音階が出るようにしたものが、「グラスハープ」です。
 しかし、これでは場所を取るし、水の量の調節も大変なので、様々な大きさのお椀型のグラスを入れ子状に重ね合わせ、さらに中心軸で回転するようにして演奏しやすくしたのが、「グラスハーモニカ」です(写真)。
 今回使ったのはさらに異なる「ヴェロフォン」という楽器で、様々な長さのガラスの円柱を並べたもので、さらに高音用にワイングラスの形状のものを加えて使っておりました。マイクも使わず、4階席までしっかり音が届いておりました。新国立劇場ホームページにある下の動画をご覧下さい。

 「ルチア」はイタリアの作曲家ドニゼッティが1835年に作曲したオペラ。原題は「ランメルモールのルチア」(Lucia di Lammermoor)です。
 ランメルモールて何だ?ということになるのですが、原作がスコットランドの作家ウォルター・スコットが1825年に発表した小説「ランマーモールの花嫁」(The bride of Lammermoor)とのこと。こちらは英語読みですから、「ランマーモール」になります。英語版ウィキペディア(The Bride of Lammermoor - Wikipedia)を見ると、Lammermoorは、スコットランド語の地名Lammermuirを英語表記したものだそうで、Lammermuir Hillsはエジンバラの東の海沿いの丘陵のようです。
 スコットの「ランマーモールの花嫁」には狼岩という城が出てくるのですが、そのモデルは実在のFast Castleだそうです(Fast Castle - Wikipedia)。海に突き出た岩の上にお城があったそうで、今回のオペラの舞台装置とちょっと似てますね。
 で、ドニゼッティは、「ランマーモールの花嫁」から「ランメルモールのルチア」(Lucia di Lammermoor)にしたんでしょうけど、これは殉教者の「シラクサのルチア」を意識したんでしょうか?ぽん太にはよくわかりません。

 ドニゼッティの特色なのか、この頃の音楽はみんなそうだったのかわかりませんが、暗い場面でも音楽が明るいですね。第2部第1幕のラストの緊迫した六重唱も、目をつぶって聞いていると楽しい音楽に聞こえます。ここぞという悲惨な場面で、三拍子のワルツになるのも不思議。ぽん太は三拍子を聞くと「楽しい」と思ってしまいますが、ドニゼッティの頃は「精神的な動揺」だったんでしょうか。
 第一部第二場冒頭のハープの音楽も、なんかハープというよりギターっぽくて面白かったです。

 演出はジャン=ルイ・グリンダ。舞台装置は、中央に大きな岩があり、手前が海になっていて、打ち寄せる波がプロジェクションで表現されています。岩の割れ目に波が駆け上がって行くところなどとてもリアルで、どういうしくみになってるのかな、と思いました。こういうプロジェクションを使った演出は、長い人類の歴史の中で、この十数年に新しく登場したものですから、なんか感激しますね。で、この岩が、いろいろな角度から、オペラを通じて現れます。「すべては岩と海が見ていた」みたいな感じか。
 奇をてらわないオーソドックスな演出は良かったのですが、上にも書いた、狂乱の場の碇知盛の演出はやり過ぎか。ラストシーンでエドガルドがオルガの亡骸のマネキンを持って歌うシーンもあり、最後の見せ場がなんかリアリティがなく、嘘っぽくなってしまいました。
 カーテンコールでアルトゥーロ役の小原啓楼が、首をさすりながら出てきたのには笑いました。

 今回は、第二部第二幕冒頭のエドガルドとエンリーコが決闘を決意する場面が、珍しく上演されるんだそうですが、ぽん太にはありがたみがよくわかりませんでした。
 
 エドガルドのスマエル・ジョルディは、出だしは声が安定しませんでしたが、その後は明るく繊細な声を聞かせてくれました。エンリーコのアルトゥール・ルチンスキーもドスがきいていて迫力ありました。二人とも役柄にぴったりでした。


オペラ「ルチア」/ガエターノ・ドニゼッティ
Lucia di Lammermoor / Gaetano DONIZETTI
【共同制作】モンテカルロ歌劇場

2017年3月26日
新国立劇場 オペラパレス

指揮 ジャンパオロ・ビザンティ
演出 ジャン=ルイ・グリンダ
美術 リュディ・サブーンギ
衣裳 ヨルゲ・ヤーラ
照明 ローラン・カスタン
舞台監督 村田健輔

ルチア オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ
エドガルド イスマエル・ジョルディ
エンリーコ アルトゥール・ルチンスキー
ライモンド 妻屋秀和
アルトゥーロ 小原啓楼
アリーサ 小林由佳
ノルマンノ 菅野 敦

合唱指揮 三澤洋史
合唱 新国立劇場合唱団

管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
【グラスハーモニカ】サシャ・レッケルト

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