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2019/01/18

【歌舞伎】海老蔵の俊寛の慟哭 2019年1月新橋演舞場夜の部

 勸玄くんと麗禾ちゃん目当てに、新橋演舞場夜の部に行って来ました。

 まずは「鳴神」。この演目、ぽん太はこれまで海老蔵とかで見ていて、ちょっとエッチでなんかバカっぽい変な芝居だと思っていたのですが、こんかい艶やかでしっかりし演技の右團次と、古風な雰囲気のある児太郎で見て、初めて古風でおっとりした歌舞伎演目であることがわかりました。エッチなところも、性に対するおおらかさの現れだったんですね。右團次の「毛抜」も見てみたくなりました。

 さて、お待ちかねの「牡丹花十一代」。町衆や芸者衆が集う中、ほろ酔い気分の鳶頭の海老蔵が登場。お決まりの「待ってました」の掛け声に対し、「待ってましたとはありがてえ。でも、お客さんたちが待っているのは、おれじゃあねえだろ〜」と返し、場内大笑い。手古舞姿と鳶頭姿の麗禾ちゃん・勸玄くんが登場すると、割れんばかりの拍手。かわゆいです。終始照れてるみたいな笑顔を浮かべてました。セリフも踊りもしっかりとできました。このおもちゃ、うちにも欲しいです。

 続いて海老蔵の「俊寛」。これはちょっとびっくりというか、とっても感動したのですが、不思議な感動でした。
 海老蔵の俊寛、衰弱しているわりには眼光鋭く、よろよろしているのに、時々力強く見えてしまいます。前半のやりとりはさしたることもなく経過。迎えの船が来て、瀬尾兼康が俊寛に、妻の東屋が殺されたことを告げるシーン。海老蔵がどんな表情を見せるかと双眼鏡で見ていたのですが、ここもさしたる芝居はありませんでした。千鳥のくどきがあって、俊寛が、自分が島に残って代わりに千鳥を船に乗せようと、船から飛び出してくるところからがすごがったです。海老蔵、泣きじゃくってました。悟りの境地に妻を失った哀し身を滲み出させる、というような演技ではなく、感情丸出しの演技でした。妻のいない都に戻ったとしても、何の喜びもない。自分は島に残るから、千鳥が船に乗ってくれ。それはまさに慟哭といえるような、心の底から湧き上がってくる叫び声でした。
 もちろんぽん太はそれに、妻の麻央さんを失った海老蔵の心情を重ねました。実際の海老蔵は、取り乱した様子は見せませんでしたが、本当は泣き叫びたかったんだろうな。いや、人がいないところで泣き叫んでいたのかもしれない。
 瞬間を残して船が出ていく場面。ここでは、滑り去る船の艫綱をつかもうとする場合と、しない場合があって、ぽん太はこれまで、つかもうとするのは未練がましくてちょっとやだな〜などと思っていたのですが、今回は、綱をつかんで、それがピンと張るまで握りしめる演技がしっくり来ました。出航する船をとどめようとしたのではなく、この世から去っていく妻の魂を離すまいとしたのだと感じました。そのあとの、船を追い、大声を出しながら手を振り、そしてよろけるように岩山に登って船を見つめるあたりも、妻を失った孤独と不安を感じました。
 最後の見所はラストの表情。勘三郎などはちょっと笑みを浮かべるなど、あざとい演技をしましたが、海老蔵はどういう表情をするのか。
 海老蔵の瞬間は、次第に表情を失って、動かなくなりました。吉右衛門の場合は「石のように無に」なりますが、眼光鋭い海老蔵の場合、最後は石の彫像のようでした。
 ぽん太も泣きじゃくり。これが海老蔵の演技の力なのか、ぽん太が現実と重ね合わせたからなのか、素人のぽん太には判断がつきません。でも、歌舞伎の感動というのは、舞台に限定された演技からのみ生まれるのではなく、役者の一人の人間としての人生も重なってくることがよくわかりました。

 最後は「春興鏡獅子」で、海老蔵が一転して女方の舞踊と獅子を演じました。でも、女形はあんまり色気を感じませんでした。獅子となってからは、すごい迫力。
 胡蝶の精が誰かと思ったら、大向こうさんが「福太郎、福之助」と、紹介のような声をかけてくれました。海老蔵の部屋子なんですね。可愛らしく、踊りも頑張ってました。

初春歌舞伎公演

新橋演舞場
平成31年1月9日

公演案内|歌舞伎美人

夜の部

一、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)

    鳴神上人 右團次
    雲の絶間姫 児太郎

  十一世市川團十郎生誕百十年
二、牡丹花十一代(なとりぐさはなのじゅういちだい)

    鳶頭 海老蔵
    手古舞 堀越麗禾
    鳶頭 堀越勸玄
    鳶頭 右團次
    差配人 男女蔵
    芸者 児太郎
    鳶の者 男寅
    芸者 廣松
    鳶の者 九團次
    差配人 市蔵
    茶屋女房 齊入
    世話役 家橘
    芸者 孝太郎

  近松門左衛門 作
  平家女護島
三、俊寛(しゅんかん)

    俊寛僧都 海老蔵
    海女千鳥 児太郎
    丹波少将成経 九團次
    平判官康頼 男女蔵
    瀬尾太郎兼康 市蔵
    丹左衛門尉基康 右團次

  福地桜痴 作
四、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)

    小姓弥生後に獅子の精 海老蔵
    老女飛鳥井 齊入
    家老渋井五左衛門 家橘

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