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2019/02/07

【文楽】近松の作劇術に感動!「大経師昔暦」2019年2月国立劇場第2部

 「大経師昔暦」(だいきょうじむかしごよみ)は初めて観る演目で、もちろん歌舞伎でも観たことがありません。

 脚本は近松門左衛門。いや〜さすが近松!面白かったです。
 ストーリーは不義密通物の悲劇、といったらありきたりなんですけど、その不義密通が暗闇での人違いでやむなく起こったというところがアイディアですね。
 冒頭近く、女房おさんと女中の玉が雄猫たちの鳴き声に身を焦がす三毛猫をあやす場面で、おさんが「男を持つなら一人にするものだ。間男すれば磔になる。粟田口(の刑場)に行きたいのか」と三毛を諭します。ここで近松が、「後の我が身を魂が、さきに知らせて」と、これからの悲劇的な展開を予告しているあたりがウマイです。

 もっともこの話、1683年(天和3年)に処刑された密通事件が題材で、1686年(貞享3年)に発刊された井原西鶴の「好色五人女」にも取り上げられ、誰もが知っている話だったようです。この人形浄瑠璃は、1715年(正徳5年)、三十三回忌を当て込んで上演されましたが、不義密通は意図したものではなかったというところが、冒頭にも述べたように近松の新機軸でした。

 玉と入れ替わって寝ているおさんのところに、茂兵衛が夜這ってきて、屏風の陰の布団に入っていくあたりまできっちり演じられるのにもちとびっくり。江戸時代の日本人の性に対する大らかさが伺えます。

 その後、玉の叔父・赤松梅龍のお玉に対する愛、そしておさんの両親のおさんへの愛のしどころが泣かせます。
 別れの時、物干しの柱にすがるおさんと茂兵衛が夕日に照らさ、磔になったかのような影が映ります。そして戸から顔を出したお玉の影は、まるで獄門首。あっと驚くような演出です。

 奥丹波に隠れ住んでいたおさんが、旅の万歳師に見破られ、急展開していきます。「万歳師の知り合いはいない」というおさんに対し、「そりゃそうでしょうけど、こちらは良く覚えてます。奥様は、高いところで立派な布団を敷いて、腰元を大勢引き連れてご覧になってましたなあ」というあたりも、サスペンスドラマそのまま。

 赤松梅龍が、おさん・茂兵衛の罪を晴らそうと、討ち取った玉の首を持ってかけつけますが、代官から大事な証人の首を斬るとはなんと早まったことを、と咎められ、事態はどん底に。え?代官って悪者じゃないんだ、公正な裁きが行われてたの?と、ぽん太は少しびっくり。
 やりきれない雰囲気の中、二人は引き立てられていって幕となります。

 ただ原作では、刑場に黒谷の和尚が駆けつけ、二人を救い出すというハッピーエンドが付いているそうです。


 呂太夫の語る、おさん両親と、おさんとのやりとりが、心にしみ渡りました。
 こんかいは最前列の席だったので、人形の細かい動きや、人形遣いさんの表情が見れて、とても面白かったです(そのかわり字幕はぜんぜん見えず、あわててパンフレットを買い、床本集を見ながら観劇しました)。


 ちとわからなかったのは、お玉の伯父・赤松梅龍が、お玉を「本縄」に縛ったことで助右衛門を咎め、棒で打ち据えるシーン。確かにお玉ちゃんは、歌舞伎でよくあるようにくるっと一周しばるのではなく、縄が体の前で交差するような形でがっちり縛られてました。捕縄術 - Wikpediaを見ると、「本縄は主に犯罪者の護送・謁見の際に用いられ、身分や職業、性別、用途によってそれぞれ異なる縛り方が用意されている」と書いてありますが、本縄をかける権利や、状況なども、いろいろと決まりごとがあったのかもしれません。

平成31年2月文楽公演
東京・国立劇場

2019年2月6日観劇

2月文楽公演|国立劇場
特設サイト

第二部

「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」
  近松門左衛門 作

大経師内の段
  中  希太夫
     清丈
  奥  文字久太夫
     藤蔵
岡崎村梅龍内の段
  中  睦太夫
     友之助
  奥  呂太夫
     團七
奥丹波隠れ家の段
  茂兵衛、梅龍  三輪太夫
  おさん、助右衛門  南都太夫
  萬歳、役人  咲寿太夫
     清友

  女房おさん  和生
  下女玉  簑紫郎
  手代助右衛門  勘市
  大経師以春  玉勢
  おさん母  簑一郎
  手代茂兵衛  玉志
  下男七介  勘次郎
  下男伝吉  玉彦
  赤松梅龍  玉也
  岐阜屋道順  勘壽
  萬歳  玉誉
  役人  亀次

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