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2019/02/04

【仏像】伊豆に国重文や平安仏がずらり・かんなみ仏の里美術館(静岡県函南町)付:桑原薬師堂、桑原三十三所観音霊場

 箱根のちょっと南に、平安仏や、重要文化財の仏像がある美術館があるのを知ってますか。ぽん太は以前から気になっていたのですが、こんかいご縁があって訪れることができました。
 場所は、熱海と三島の間にある静岡県函南町。ぽん太は以前、地表に現れた丹那断層を見に訪れたことがあります(【伊豆の不思議スポット】丹那断層公園(国指定天然記念物))。

【博物館名】かんなみ仏の里美術館
【公式サイト】・http://www.kannami-museum.jp
【住所】静岡県田方郡函南町桑原89番地の1
【拝観日】2019年1月24日
【拝観】毎週火曜日休館(※火曜日が休日の場合は、直後の平日)、拝観料300円
【仏像】 ◎国指定重要文化財 ●県指定 ◯町指定
◎阿弥陀如来及両脇侍像 鎌倉時代 實慶作
   中尊 檜 割矧造  像高89.1cm
●薬師如来座像 割矧造 像高110.0cm 平安中期
●十二神将立像 檜 割矧造 像高91.5cm〜105.4cm 平安時代/鎌倉時代/南北朝〜室町/江戸時代
 菩薩立像(?) 江戸時代
 菩薩立像(?) 江戸時代
◯不動明王像 木造 室町以降
●地蔵菩薩像 木造 平安時代
●聖観音像 木造 平安時代
●毘沙門天像 木造 平安時代
◯経巻上人像 木造 江戸時代以降
◯空海上人像 木造 江戸時代以降
【写真】公式サイトの中にあります。 ・所蔵品のご紹介|かんなみ仏の里美術館

Img_1708
 山間の小さな町のなかに、モダンな建物が見えてきます。伸びやかで雅な感じがあり、いい建物です。写真には写っておりませんが、お堂のような四角錐の屋根がついてます。
 美術館の公式サイトに建物の紹介ページがあるのですが、設計者は書いてありません。ググってみると、「栗生明 + 栗生総合計画事務所」の設計のようです(かんなみ仏の里美術館|栗生明 + 栗生総合計画事務所)。ぽん太は初めて聞いた名前ですが、Wikipediaを見ると有名な人みたいですね。平等院鳳翔館は、ぽん太も行ったことがあります。
 こちらの真泉洋介氏のプラスマイズミアーキテクトのサイトに、栗生総合計画事務所在籍時担当物件としてかんなみ仏の里美術館が出ております。実質的な設計担当は真泉氏だったのかもしれません。
 竣工は2011年とのこと。けっこう新しいんですね。

 受付でチケットを買うと、無料でボランティア・ガイドさんが解説してくれるというので、よろこんでお願いいたしました。仏様や仏像についての基本知識はもちろんのこと、展示されている仏像の来歴や、この美術館が造られた経緯など、細かく分かりやすく説明していただきました。とっても参考になりました。ありがとうございます。足の手術、うまくいくように祈っております。

 展示室はガラスを多用したモダンな空間で、暗闇の中に、スポットライトに照らされた仏さまが浮かび上がるような感じ。

 中央に安置された平安時代の薬師如来さまの存在感がはんぱないです。回り込んで360度から見ることができます。
 像高1mちょっとでそんなに大きくははないのですが、顔から上体にかけての前後の厚みがあって、重厚感があります。お顔は丸顔でふくよか、肉髻も大きいです。衣紋の流れはけっこう様式的ですが、翻波式はみられません。でも彫りは全体に浅めな感じもあり、定朝様の影響が少し入り始めた頃の仏様さまのような気がします。素晴らしい仏さまだと思われます。

 薬師如来様の背後の壁に、十二神将が安置されております。像高1m前後と大きく、12体揃っているのが立派です。ただし造られた時代は、鎌倉、南北朝〜室町、江戸時代とまちまちです。どれがどうだか、メモしておかなかったらわからなくなってしまいましたが、やはり鎌倉時代のものが表情やポーズが躍動的で素晴らしく、時代が下がるにつれてポーズがぎこちなくなり、表情もマンガ的になっていきます。なぜ仏像の表現が鎌倉をピークに衰えていったのか、ぽん太はいまだにわかりません。

 そして国重文の鎌倉時代の阿弥陀三尊像。これも素晴らしいです。
 一見して慶派独特のはつらつさがあり、肉付きの良さ、空間感覚も見事です。しかし運慶のような躍動感や、快慶のような荘厳さはなく、柔らかく曲線的な印象です。お顔はなかなかの美形です。口元が引き締まっておりますが、威圧感はなく、普通の人のような穏やかな表情です。
 全体に金箔はほとんど剥げて、黒い漆の下地になっているのですが、観音菩薩の左手の肘から先だけ、金色に光っております。なんでも、壊れてしまった仏様の部分ぶぶんが保存されていたのですが、間違って違う仏様に取り付けられていたりしたものもあり、観音様の左手は最近正しく付け直されたため、色合いが異なるんだそうです。
 阿弥陀如来の墨書、両脇侍の朱書きにより、作者は運慶の兄弟弟子にあたる實慶(じっけい)であることがわかっております。
 實慶の名は、国宝の「運慶願経」のなかに記されておりましたが、彼が作った仏像は長い間みつかりませんでした。ところが昭和59年(1984)に修禅寺の大日如来の解体修理が行われた際、實慶という名前の記された墨書が見つかり、大騒ぎになりました。そしてさらに、この阿弥陀如来の中からも實慶の名前が出て来て、再びびっくり仰天となったそうです。
 この署名の写真が美術館に展示されているのですが、「運慶じゃないの?運慶にしちゃえ!」ってな感じで、「實」の字にしんにょうが付け加えられているのが面白いです。

 江戸時代の二躯の菩薩立像(観音と勢至か?)がありましたが、アフリカのお面のようなお顔で、ちと残念でした。
 室町以降に造られたの不動明王も、痩せこけていて、ポーズも固く、いまいちな印象。
 平安時代の聖観音と地蔵菩薩、毘沙門天は、素朴な地方仏で悪くありません。
 江戸時代の空海上人像と経巻上人像もありました。


 なかなか素晴らしい仏さまでしたが、ではなんで現在この地に、このような立派な仏さまたちがいらっしゃるのか、という疑問が湧いて来ます。
 ガイドさんの説明では、ここ桑原は箱根山から連なる尾根のひとつの傍にあり、箱根神社との繋がりがあったのではないか、ということでした。
 ぽん太の考えでは、現在も近くに国道1号線が走っており、交通の要所からちょっと離れた山あいという立地が関係しているようにも思えます。同じく東海道の近くにある、滋賀県甲賀の櫟野寺と、立地が似ている気がします。
 建久二年(1191)に作られた『筥根山縁起并序』という巻物があり、箱根山開創以来の歴史が記されております。原本は失われてしまいましたが、室町時代の写本があり、そのひとつは箱根神社の宝物館に展示されています。ここには、現在美術館がある桑原地区に、七堂伽藍を備えた小筥根山新光寺という大寺院が、弘仁8年(817)に建立されたと記されているそうです。この記述が事実かどうかはわかりませんが、薬師如来像はこのお寺の御本尊だったと言われているそうです。
 また、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には、石橋山合戦で戦死した北条宗時(北条時政の嫡男)の墳墓堂桑原にあったという記載があり、阿弥陀三尊は、このとき時政が造らせたものだと考えられているそうです。
 地元の人たちが大切に守って来た仏さまたちですが、明治維新の廃仏毀釈のおりには、あちこちに分散して保管せざる終えませんでした。そして明治30年代後半、地元の有志が資金を出し合って、美術館から5分ほどのところに桑原薬師堂を建設し、散りぢりになっていた仏さまたちを一堂に集めました。
 そして平成4年(1992)に阿弥陀三尊像が重文に指定されたこともあり、平成20年(2008)には薬師堂の仏像24躯が函南町に寄贈され、美術館が平成23年(2011)にが作られました。
 仏さまたちを守って来た地元の人たちの信仰心と熱意は素晴らしいですね。だからこの美術館の名前は、かんなみ仏の美術館ではなく、仏の「里」美術館なのでしょう。
 ただ、信仰を集めて来た仏さまたちが、美術品として展示されているのは、ちょっと残念な気もします。

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 こちらが桑原薬師堂です。立派なお堂ですね。

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 背後の山の斜面には、「桑原三十三所観音霊場」があり、10分ほどの順路に石仏が並んでおります。
 約200年前(文化三年・1806年)に作られたものだそうで、西国三十三所観音巡りを実際にすると日数がかかり、農作業に影響が出るので、有志がお金を出してこのミニ霊場を作ったんだそうです。
 いくつか崩れているものもありますが、全体に保存がいいです。
 山頂には、西国三十三所には入っていない善光寺如来、勢至菩薩、伊豆七不思議の一つを刻んだ手石如来があり、必見です。でも写真は撮り忘れました。

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