カテゴリー「芸能・芸術」の740件の記事

2019/04/18

【オペラ】フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ 新国立劇場

 新国立劇場オペラのダブルビル新作公演は、「感動する」まではいかなかったけど、楽しめる公演でした。どちらの演目も、ぽん太は初めてでした。

 GW前で地味な作品ということで、客の入りが少なくてチケットをばら撒いたのか、オペラ公演に不慣れな感じのお客さんが多かったです。カテコを写メでバシバシ撮りまくってる人もいました。

 公演に先立ち、新国立劇場の職員がマイクを持って登場。こういう場合、たいていいい話はありません。『フィレンツェの悲劇』のシモーネ役のレイフェルクスが体調不良だけど、予定通り出演しますということでした。実際は、初めて聞く演目である上、朗々と歌うようなアリアもなかったので、どこが調子が悪いのかあんまりわかりませんでした。

 『フィレンツェの悲劇』を作曲したツェムリンスキーは、無学なぽん太は初めて名前を聞きましたが、オーストリアの作曲家・指揮者。1871年生まれということで、リヒャルト=シュトラウスの7歳年下になりますね。音楽も似ていて後期ロマン派風ですが、ツェムリンスキーの方が聞きやすい分、ちょっと面白みもないという感じでしょうか。リブレットに合わせて曲想を変え、丹念に曲を作っている感じですが、もうちょっと歌の聴かせどころがあるとよかったです。
 内容は、オスカー・ワイルド原作のドロドロ風。グイードの死体の前で、シモーネとビアンカが初めて互いに惹かれ合うという「オチ」は、違和感満載です。こんど原作も読んでみたいです。
 拍手もちょっとまばらで、カテコの途中で拍手が消えそうになり、ちと気の毒でした。
 粟國淳演出の舞台は、空間を一部射影幾何学的に歪めたおどろおどろしいもので、悪くありませんでした。


 続いてプッチーニの唯一の喜劇『ジャンニ・スキッキ』。幕の裏側に第一幕のおどろおどろしい建物が透けて見えて、あれ?と思ったらそれが二つに割れ、間に新しい舞台がせり出してきました。その舞台は、本やら羽ペンやら文房具が置かれた机になっていて、登場人物が小人たちのように見えるという趣向。遺産を奪い合う親戚たちの「小ささ」を表現しているそうです。
 楽しいドタバタの舞台でしたが、上演時間1時間というのはやはりちょっと短すぎる感じもしました。
 ジャンニ・スキッキ役のカルロス・アルバレスは歌も良かったし、喜劇的な演技もうまかったです。この演目は外人歌手は彼一人だけ。カルメンのミカエラ役でおなじみの砂川涼子の「私のお父さん」は、清楚で愛らしくて良かったですが、やはりここは外人歌手で聞きたかったです。そういえばラウレッタは演出家によって、清楚な娘であるという設定と、お父さんにおねだりをしているワルという設定があるようですが、今回は前者でした。
 最後にスキッキは、「この悪戯のおかげで私は地獄行きになりました。当然の報いです。でも皆さん、もし今晩を楽しくお過ごし頂けたのなら、あの偉大なダンテ先生のお許しを頂いた上で、私に情状酌量というわけにはいかないでしょうか。 」という口上を述べるのですが、このオペラの原作はダンテの『神曲』なんですね。こちらの《「地獄の底のジャンニ・スキッキ」イタリア研究会(2010年7月27日) 》が詳しいです。

 沼尻竜典指揮の東京フィルの演奏も悪くなかったと思います。




オペラ「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」
Eine florentinische Tragödie / Gianni Schicchi

『フィレンツェの悲劇』/アレクサンダー・ツェムリンスキー
全1幕<ドイツ語上演/字幕付>
Eine florentinische Tragödie / Alexander ZEMLINSKY

『ジャンニ・スキッキ』/ジャコモ・プッチーニ
全1幕<イタリア語上演/字幕付>
Gianni Schicchi / Giacomo PUCCINI

2019年4月17日
新国立劇場 オペラパレス

公演案内|新国立劇場

 指揮 沼尻竜典
 演出 粟國 淳
 美術 横田あつみ
 衣裳 増田恵美
 照明 大島祐夫
 舞台監督 斉藤美穂

フィレンツェの悲劇
 グイード・バルディ ヴゼヴォロド・グリヴノフ
 シモーネ セルゲイ・レイフェルクス
 ビアンカ 齊藤純子

ジャンニ・スキッキ

 ジャンニ・スキッキ カルロス・アルバレス
 ラウレッタ 砂川涼子
 ツィータ 寺谷千枝子
 リヌッチョ 村上敏明
 ゲラルド 青地英幸
 ネッラ 針生美智子
 ゲラルディーノ 吉原圭子
 ベット・ディ・シーニャ 志村文彦
 シモーネ 大塚博章
 マルコ 吉川健一
 チェスカ 中島郁子
 スピネッロッチョ先生 鹿野由之
 アマンティオ・ディ・ニコーラオ 大久保光哉
 ピネッリーノ 松中哲平
 グッチョ 水野秀樹

 管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

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2019/04/12

【歌舞伎】仁左衛門の盛綱陣屋、勘太郎と眞秀くんも出たよ。2019年3月歌舞伎座夜の部

  近江源氏先陣館
一、盛綱陣屋(もりつなじんや)
    佐々木盛綱  仁左衛門
    篝火  雀右衛門
    信楽太郎  錦之助
    早瀬  孝太郎
    四天王  廣太郎
    四天王  種之助
    四天王  
    四天王  千之助
    高綱一子小四郎  勘太郎
    盛綱一子小三郎  寺嶋眞秀
    竹下孫八  
    伊吹藤太  
    古郡新左衛門  調
    北條時政  
    微妙  秀太郎
    和田兵衛秀盛  左團次

二、雷船頭(かみなりせんどう)
    女船頭 猿之助
    雷 弘太郎

  河竹黙阿弥 作
三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
  浜松屋見世先より
  稲瀬川勢揃いまで
    弁天小僧菊之助  幸四郎
    南郷力丸  猿弥
    鳶頭清次  猿之助
    忠信利平  亀鶴
    赤星十三郎  笑也
    浜松屋伜宗之助  鷹之資
    番頭与九郎  橘三郎
    狼の悪次郎  錦吾
    浜松屋幸兵衛  友右衛門
    日本駄右衛門  白鸚

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2019/04/10

【歌舞伎】「関扉」の菊之助と梅枝が見もの・2019年3月国立劇場

20190320_140219

 3月下旬、国立劇場に歌舞伎を観に行きました。

 時は春、桜は八分咲き、ということで、ロビーには加山又造の陶板画「おぼろ」が飾ってありました。

 今回は、なんと小劇場での公演。歌舞伎座では、予算の関係で、いつも4階から観ているぽん太とにゃん子。久々に間近で舞台を観て、役者さんたちの細かな仕草や表情がつぶさに見え、「やはり歌舞伎は近くでみなくっちゃ」と実感しまた。

 最初の演目は、「元禄忠臣蔵」から「御浜御殿」。理屈っぽくて、ぽん太は苦手としている演目ですが、近くで見ると、駆け引きに伴う細かな心情の動きを役者さんたちが演技で表現しているのがわかったのですが、それでもやっぱり理屈っぽくて苦手でした。
 歌昇の富森助右衛門、まっすぐ正直に体当たりで演じておりましたが、まだ頑張ってる感が伝わってきてしまうのはいたし方なし。
 綱豊卿は扇雀で、さすが貫禄の演技。美しさもあり、激しさもありで、格調が感じられました。
 お喜世役の虎ノ介って誰じゃ?と思ったら、扇雀の息子さんですか。初めて観ました。なんか壱太郎くんに似ているね。

 続いて「積恋雪関扉」。これはなかなか見応えがありました。
 常磐津の大作と言われながら、筋がよくわからず、自然に眠くなるという演目。
 しかし今回は、あらかじめ詞章を読んで予習をしていたので、眠らずに最後まで観ることができました。予習の結果の詳細は、機会があったら日を改めて描きたいと思いますが、要するに六歌仙を世界とした歌舞伎で、六歌仙にかかわる様々な伝承や、和歌、能などを踏まえて作られているようです。われわれにはちんぷんかんぷんですが、当時の人たちは普通にわかったのでしょうか?

 関守関兵衛実ハ大伴黒主の菊之助、なんかこれまでは顔に可愛らしさがあったが、今回の表情には貫禄というか風格が感じられ、男っぽい凄みが感じられました。
 梅枝の小野小町姫・傾城墨染実ハ小町桜の精も凄かった。近くで見ると、全身を極限まで使ってのポーズや、微妙な表情、細かな指の動きなど、見とれっぱなし、感心のしっぱなしでした。
 萬太郎は、さすがに良峯 少将宗貞の気品と貫禄はでず。

 常磐津では久々に巴瑠幸太夫が出演していて、艶のある喉を聴かせてくれました。

 

 

3月歌舞伎公演「元禄忠臣蔵」「積恋雪関扉」
国立劇場小劇場
2019年3月20日

公演案内|特設サイト
公演案内|国立劇場公式サイト

  真山青果=作
  真山美保=演出
元禄忠臣蔵 (げんろくちゅうしんぐら)  二幕五場
    御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)
       伊藤熹朔=美術
       中嶋八郎=美術
 第一幕 御浜御殿松の茶屋
 第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
       同      入側お廊下
       同      元の御座の間        
       同      御能舞台の背面

  宝田寿来=作
積恋雪関扉
 (つもるこいゆきのせきのと)   常磐津連中
   国立劇場美術係=美術

(主な配役)
『元禄忠臣蔵』
徳川綱豊卿                 中村扇雀
富森助右衛門               中村歌昇
中臈お喜世                 中村虎之介
新井勘解由                 中村又五郎
                             ほか
『積恋雪関扉』
関守関兵衛実ハ大伴黒主      尾上菊之助
良峯少将宗貞                中村萬太郎
小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精  中村梅枝

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【オペラ】アリアは良かったけどストーリーがな〜「ウェルテル」新国立劇場

 3月下旬に新国立劇場で「ウェルテル」を鑑賞。

 以前にも新国立劇場で観ましたが、なんかストーリーに盛り上がりがなくてつまらないな〜という印象でした。こんかい久々に観ましたが、やはり同じ印象でした。もちろん、マスネの音楽、特に弦楽器の叙情的な響は素晴らしかったのですが。

 ということで、それぞれのアリアは楽しめたのですが、全体としては、ちと退屈しました。

 ウェルテルのサイミール・ピルグは明るく伸びやかな歌声で、パヴァロッティに学んだというだけあって、初めは「ウェルテル」の舞台ってイタリアかいな?と思うくらいでしたが、後半では悲劇的な歌い方に変えたようでした。声質を微妙に変化させるのが美しく、思わず聴き惚れました。
 シャルロットの藤村実穂子は、日本人ながら声量があって悪くなかったです。

 幸田浩子のソフィーは愛らしかったですが、声量にかけるのが難点。黒田博のアルベールも悪くありませんでした。

 ポール・ダニエル指揮の東京交響楽団の演奏も、パンチもあり、感傷的な弦の響も美しく、よかったと思います。

 日曜だったせいか、フライイングや歌の途中で拍手をする人がいたのは残念でした。

 

オペラ「ウェルテル」/ジュール・マスネ
Werther / Jules MASSENET

新国立劇場オペラパレス
2019年3月24日

公演案内|新国立劇場

指揮 ポール・ダニエル
演出 ニコラ・ジョエル
美術 エマニュエル・ファーヴル
衣裳 カティア・デュフロ
照明 ヴィニチオ・ケリ
再演演出 菊池裕美子
舞台監督 大仁田雅彦

ウェルテル サイミール・ピルグ
シャルロット 藤村実穂子
アルベール 黒田 博
ソフィー 幸田浩子
大法官 伊藤貴之
シュミット 糸賀修平
ジョアン 駒田敏章

合唱指揮 三澤洋史
合唱 新国立劇場合唱団
児童合唱 多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽 東京交響楽団

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2019/03/11

【舞踏】アイディアの数々と素晴らしいスペクタクル 「ヤン・リーピンの覇王別姫〜十面埋伏〜」

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 有名なヤン・リーピンを初めて観に行きました。とはいっても、本人は踊らず演出だけ。

 面白いアイディがいくつもあり、またはっとするような美しいビジュアルが随所に見られました。
 なんとカテコは撮影可。スマホで必死に撮ったのが上の写真です。

 天井には無数のハサミが吊り下げられ、舞台上手では女性がハサミで紙を切っており、切られた紙がうず高く積まれております。この女性は、冒頭から最後まで紙を切り続けておりますが、時々観客に向かって切った紙を広げて見せるのですが、それが漢字になっていて、テロップというか表題になってたりします。最初の「静」というのは、始まるのでご静粛に、という意味か。ちょっと受けました。戦いのシーンでは紙をちぎっては投げたりして暴れてました。

 虞美人は京劇の伝統にならって男性が踊りましたが、最初は白いパンツだけで登場して身体の動きの美しさをしばらく見せ、そのあと舞台上で衣装をつけて役に入っていくのも面白かったです。

 ラストの、舞台に敷き詰められた赤い羽根を舞い上げながらの踊りも、これまで見たことがないスペクタクルで、ゆっくりと落ちてくる羽によってまるで水の中にいるかのような不思議な感覚が生まれました。長い袖を使って羽をバッと巻き上げるのも凄い!

 音楽は、琵琶や琴、太鼓の生演奏。特に琵琶が素晴らしかったです。

 次々と登場する人物の衣装も美しく、照明によって素晴らしい効果を生み出していました。

 身体的には、中国の武術や、京劇の動きやテクニックが使われているように思いました。バク宙や回転回し蹴り(?)は見もの。
 ダンスとしては、上述の虞美人が見応えありました。

 ただ全体として見ると、ぽん太には、なんか芸術というよりはエンターテイメントに見えました。なんでかわらかないけど。動きに「統一性」がないからかしら? 武術的な動きも、最初は驚くけど、目が慣れてくるとちと飽きてきます。

 ぽん太は、項羽と劉邦の話をほとんど知らないので(虞や、虞や、汝をいかんせん、というのは学校でならった気がするが)、ストーリーについていけなかったのが残念です。中国人にとっては誰もが知っているストーリーでしょうから、ストーリーをドラマチックに表現するというよりは、有名な場面をいかに面白く表現するかということに力が向けられていたのかもしれません。

 遅ればせながら『史記』の現代語訳を読んで見たのですが、それでもさっぱりわからず、次に司馬遼太郎の『項羽と劉邦』を読み始めたらとても面白かったのですが、長くていつ読み終わるのかわかりません。

 パンフレットは買ってないのですが、チラシや公式サイトを見ても、それぞれのダンサーの名前すら出てないのが、不思議に感じました。

 次はヤン・リーピンが踊るのも見てみたいです。

「ヤン・リーピンの覇王別姫〜十面埋伏〜」

Bunkamuraオーチャードホール
2019年2月21日

公式サイト

芸術監督・演出・振付:ヤン・リーピン

美術指導・衣裳・舞台デザイン:ティム・イップ
舞台美術(はさみ):ベイリー・リュウ

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2019/03/10

【バレエ】熊哲、まだまだ踊れるじゃん!「カルメン」Kバレエカンパニー

 熊川哲也が踊るというので、久々にKバレエカンパニーを観に行きました。演目は「カルメン」。

 熊川が踊るのを見るのは何年振りでしょう。どうやら3年前の「白鳥の湖」が最後だったようです。
 いったい何歳になるんだろう。1972年生まれですから47歳ですか。すごいですね。イチローやカズ、ジャンプの葛西紀明など、日本人では年齢が上がっても体力がキープできる遺伝子があるんでしょうか。
 さすがに目の覚めるようなジャンプや、高速のピルエットは影をひそめましたが、安定した優雅な踊りで、まだまだ踊れるじゃん!という感じでした。

 Kバレエの「カルメン」は、2014年以来2回目。
 前回と比べて、どこがどう変わったとか言えるほど、ぽん太の記憶力は良くありません。
 ただ前回は、とても感動して、熊川の振り付けの能力を見直した記憶があります。

 こんかい観ても、ダンサーの演劇的な表現力、ストーリーのわかりやすさ、セットや衣装の美しさなどは素晴らしく、振り付けも面白かったです。

 ただやっぱり、ダンサーのテクニックをたっぷりと見せる部分や、しっとりとしたパ・ド・ドゥなども観たかったです。

 それから、ドン・ホセがピストル自殺をしようとするシーンから始まることからもわかるように、カルメンよりドン・ホセに焦点が当てられておりました。これじゃあタイトルは「カルメン」じゃなくて「ドン・ホセ」? オペラでは、カルメンは束縛を嫌い、自由を求める女として描かれており、それゆえ初演時にはニーチェも絶賛したわけですが、こんかいのバレエでは、ふしだらで浮気っぽくて道徳心が乏しい女性として描かれておりました。というわけで、ドン・ホセという真面目な男が悪い女にひっかかって人生を台無しする、というストーリーになってしまい、ちょっと残念でした。

 ダンサーもだいぶ入れ替わったみたいで、知らない人ばかりでした。
 カ矢内千夏さん、カルメンを色気たっぷりに熱演。踊りも演技も上手でした。ミカエラの成田紗弥さん、美人で清楚でこの役にぴったり。
 エスカミーリョ:の遅沢佑介、モラレスの伊坂文月、スニガのS・キャシディなどは、懐かしい顔ぶれ。
 民衆の男三人組(?)のなかに素晴らしいジャンプをする人がいた気がするけど、名前がわかりません。

 しかしビゼーの音楽はいいですよね〜。序曲を聞いているだけで、悲しい結末が思い浮かんで胸が痛んできます。井田勝大指揮のシアター オーケストラ トーキョー、残念ながら音が薄い。もっと小さいハコならいいのかもしれないけど。もっとねっとり感や迫力が欲しかったです。

熊川哲也Kバレエカンパニー Spring Tour 2019
『カルメン』

Bunkamura オーチャードホール
2019年3月6日

Kバレエ公式サイト

芸術監督:熊川哲也

カルメン:矢内千夏
ドン・ホセ:熊川哲也
エスカミーリョ:遅沢佑介
ミカエラ:成田紗弥
モラレス:伊坂文月
スニガ:S・キャシディ

[指揮]井田勝大
[管弦楽]シアター オーケストラ トーキョー

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2019/02/08

【歌舞伎】吉右衛門、魁春の「熊谷陣屋」に思わずうなる。2019年2月歌舞伎座夜の部

 吉右衛門と魁春の「熊谷陣屋」が素晴らしかったです。

 「ワンピース」もいいけど、やっぱりこういう舞台が本格的な歌舞伎で、芸の極みですね〜。吉右衛門の熊谷直実に匹敵する演技をできる役者は他にいないし、今後もしばらく現れないんじゃないでしょうか。
 吉右衛門の直実は何度も見ているけど、それでもやはり感心するやら感動するやらで、引き込まれて涙は出てくるし、歌舞伎を見ている悦びが沸き起こって来ます。

 魁春も、幕開けの、息子を思う気持ちと、陣中に来たことで直実に叱られないかという不安、直実を迎えるために階段の横に身を縮こまらせている様子など、一つひとつが素晴らしい。そこに直実が戻って来て、花道七三で数珠を握りしめて決まると、自然に客席から拍手が沸き起こります。妻を見つけて両手で袴をバーンと叩くところでは、息子を身代わりにしているのに妻が来てしまい、これから起こることへのやるせなさや、何で来てしまったのかという妻への憤りともいえない思いが詰まっています。
 その後もずっとこんな感じで、一つひとつの所作やセリフが身にしみますした。

 藤の方の雀右衛門が見劣りしない演技。義経の菊之助も立派でした。弥陀六は歌六が手慣れた名演。義経のお供に菊市郎、菊史郎。


 
 「當年祝春駒」は、曽我の対面で、十郎・五郎が春駒売りという設定の華やかな舞台。松緑の息子の左近が、五郎をキビキビとした動きで演じおりました。

 「名月八幡祭」は、初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言と銘打って、松緑が縮屋新助を演じましたが、あんまり感心しませんでした。
 なんか松緑って、セリフが棒読みでうまくない。美代吉にだまされたとわかって泣き叫ぶところも、なんか昨年末の「あんまと泥棒」の中車の演技がうつっちゃったみたいで、泣かそうとしているのか笑わそうとしているのか、ぽん太よくわかんない。
 ラストの花道で担ぎ上げられての大笑いも、なんか深みがない。笑いの中に、ざまあみろやってやったという気持ちや、それでも美代吉を思う気持ち、だまされた自分をあざ笑う気持ち……などが感じられないといけないんじゃないでしょうか。
 仁左衛門の三次、玉三郎の美代吉という名コンビは流石にうまい。仁左衛門、こういうダメンズ役は(役も!)最高ですね〜。起こりまくってるところから一転「な〜んだ、そうだったのか〜悪かったな〜」とデレデレするあたり、男のぽん太から見ても可愛らしく、もうDVでもなんでもしてっ!て感じですね。
 玉三郎も、ちょっと滑舌がもっさりするところは相変わらずで、二日目ということでセリフも出にくそうなところもあちましたが、卓越した芸でカバーして、気っ風のいい深川芸者を見事に演じてました。
 梅玉の藤岡慶十郎は、梅玉の人柄そのものの鷹揚で優しいお殿様。


二月大歌舞伎

歌舞伎座
平成31年2月3日

公演情報|歌舞伎美人

夜の部

  一谷嫩軍記
一、熊谷陣屋(くまがいじんや)

    熊谷直実 吉右衛門
    藤の方 雀右衛門
    源義経 菊之助
    亀井六郎 歌昇
    片岡八郎 種之助
    伊勢三郎 菊市郎
    駿河次郎 菊史郎
    梶原平次景高 吉之丞
    堤軍次 又五郎
    白毫弥陀六 歌六
    相模 魁春

二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

    工藤祐経 梅玉
    曽我五郎 左近
    大磯の虎 米吉
    化粧坂少将 梅丸
    曽我十郎 錦之助
    小林朝比奈 又五郎

  初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
  池田大伍 作
  池田弥三郎 演出
三、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

    縮屋新助 松緑
    芸者美代吉 玉三郎
    魚惣 歌六
    船頭長吉 松江
    魚惣女房お竹 梅花
    美代吉母およし 歌女之丞
    藤岡慶十郎 梅玉
    船頭三次 仁左衛門

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2019/02/07

【文楽】近松の作劇術に感動!「大経師昔暦」2019年2月国立劇場第2部

 「大経師昔暦」(だいきょうじむかしごよみ)は初めて観る演目で、もちろん歌舞伎でも観たことがありません。

 脚本は近松門左衛門。いや〜さすが近松!面白かったです。
 ストーリーは不義密通物の悲劇、といったらありきたりなんですけど、その不義密通が暗闇での人違いでやむなく起こったというところがアイディアですね。
 冒頭近く、女房おさんと女中の玉が雄猫たちの鳴き声に身を焦がす三毛猫をあやす場面で、おさんが「男を持つなら一人にするものだ。間男すれば磔になる。粟田口(の刑場)に行きたいのか」と三毛を諭します。ここで近松が、「後の我が身を魂が、さきに知らせて」と、これからの悲劇的な展開を予告しているあたりがウマイです。

 もっともこの話、1683年(天和3年)に処刑された密通事件が題材で、1686年(貞享3年)に発刊された井原西鶴の「好色五人女」にも取り上げられ、誰もが知っている話だったようです。この人形浄瑠璃は、1715年(正徳5年)、三十三回忌を当て込んで上演されましたが、不義密通は意図したものではなかったというところが、冒頭にも述べたように近松の新機軸でした。

 玉と入れ替わって寝ているおさんのところに、茂兵衛が夜這ってきて、屏風の陰の布団に入っていくあたりまできっちり演じられるのにもちとびっくり。江戸時代の日本人の性に対する大らかさが伺えます。

 その後、玉の叔父・赤松梅龍のお玉に対する愛、そしておさんの両親のおさんへの愛のしどころが泣かせます。
 別れの時、物干しの柱にすがるおさんと茂兵衛が夕日に照らさ、磔になったかのような影が映ります。そして戸から顔を出したお玉の影は、まるで獄門首。あっと驚くような演出です。

 奥丹波に隠れ住んでいたおさんが、旅の万歳師に見破られ、急展開していきます。「万歳師の知り合いはいない」というおさんに対し、「そりゃそうでしょうけど、こちらは良く覚えてます。奥様は、高いところで立派な布団を敷いて、腰元を大勢引き連れてご覧になってましたなあ」というあたりも、サスペンスドラマそのまま。

 赤松梅龍が、おさん・茂兵衛の罪を晴らそうと、討ち取った玉の首を持ってかけつけますが、代官から大事な証人の首を斬るとはなんと早まったことを、と咎められ、事態はどん底に。え?代官って悪者じゃないんだ、公正な裁きが行われてたの?と、ぽん太は少しびっくり。
 やりきれない雰囲気の中、二人は引き立てられていって幕となります。

 ただ原作では、刑場に黒谷の和尚が駆けつけ、二人を救い出すというハッピーエンドが付いているそうです。


 呂太夫の語る、おさん両親と、おさんとのやりとりが、心にしみ渡りました。
 こんかいは最前列の席だったので、人形の細かい動きや、人形遣いさんの表情が見れて、とても面白かったです(そのかわり字幕はぜんぜん見えず、あわててパンフレットを買い、床本集を見ながら観劇しました)。


 ちとわからなかったのは、お玉の伯父・赤松梅龍が、お玉を「本縄」に縛ったことで助右衛門を咎め、棒で打ち据えるシーン。確かにお玉ちゃんは、歌舞伎でよくあるようにくるっと一周しばるのではなく、縄が体の前で交差するような形でがっちり縛られてました。捕縄術 - Wikpediaを見ると、「本縄は主に犯罪者の護送・謁見の際に用いられ、身分や職業、性別、用途によってそれぞれ異なる縛り方が用意されている」と書いてありますが、本縄をかける権利や、状況なども、いろいろと決まりごとがあったのかもしれません。

平成31年2月文楽公演
東京・国立劇場

2019年2月6日観劇

2月文楽公演|国立劇場
特設サイト

第二部

「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」
  近松門左衛門 作

大経師内の段
  中  希太夫
     清丈
  奥  文字久太夫
     藤蔵
岡崎村梅龍内の段
  中  睦太夫
     友之助
  奥  呂太夫
     團七
奥丹波隠れ家の段
  茂兵衛、梅龍  三輪太夫
  おさん、助右衛門  南都太夫
  萬歳、役人  咲寿太夫
     清友

  女房おさん  和生
  下女玉  簑紫郎
  手代助右衛門  勘市
  大経師以春  玉勢
  おさん母  簑一郎
  手代茂兵衛  玉志
  下男七介  勘次郎
  下男伝吉  玉彦
  赤松梅龍  玉也
  岐阜屋道順  勘壽
  萬歳  玉誉
  役人  亀次

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2019/02/02

【展覧会】「ワイングラス」と「取り持ち女」を初めて見ました「フェルメール展」東京の森美術館

 フェルメールの現存35作品のうち、9点が来日するというフェルメール展。残念ながら展示替えがあり、「赤い帽子の娘」は見れませんでした。もっともこの作品は、フェルメールの大家・小林頼子女史によれば偽物とのこと。そんなら、まあいいか。
 しかし、近年の日本でのフェルメール人気はものすごく、今回は初めて時間指定のチケットが導入されました。おかげで会場は超混雑まではいかず、大混雑ですみました。
 ただ、無料で借りられる音声ガイドは、たいして内容がありませんでした。

 で、こんかい観れた8作品のうち、ぽん太が初めてだったのは、「ワイングラス」と「取り持ち女」の2点です。

 「取り持ち女」は1656年という制作年がわかっており、フェルメールが24歳の時に描いた初期の作品。これまで宗教画や物語画を描いていたフェルメールが、風俗画を描き始めた頃のものだそうです。画面右下4分の1を占める布の色彩はどぎつく、人物の表情も下卑ていて、おっぱい鷲掴み。観客の「こんなの、僕たちが好きなフェルメールじゃない!」という声が聞こえてくる感じで、この絵だけあんまり混んでませんでした。

 「ワイングラス」は、1661年から1662年頃の作品というので、29から30歳頃。初期から中期への過渡期の作品になるのだそうです。構図はおなじみのフェルメール・スタイルで、向かって左に窓があって光が差し込み、テーブルがあり、人がいて、奥の壁には絵画、床にはフェルメール・タイル
 でも、リュートや、ステンドグラスの手綱を持った女性など、ちょっと小道具が多くて雑多な気がします。また色彩も、後年の淡さがなく鮮やかで、ちょっとどぎつい印象があります。男性が女性にワインを勧めるという題材も、「僕たちが好きなフェルメールとちょっとだけ違う」というところか。後年は隠す工夫をした、歪みが目立つ右奥のタイルも、まだあらわですね。

 そのほか良かったのは、「牛乳を注ぐ女」と「真珠の首飾りの女」です。
 「牛乳を注ぐ女」は、パンやミルクの容器の上の点々が光り輝いてますよね。絵の具じゃなくって、石英の破片とかが散りばめられているんじゃないかと思うほどです。また「真珠の首飾りの女」は、女性にふりそそぐ淡い光、所々に置かれたホワイト、夢見るような女性の表情が素敵でした。
 

 大阪展では「恋文」が出品されるようですが、これもぽん太は観たことがありません。大阪まで観に行こうかな?

フェルメール展

上野の森美術館
2018年10月5日〜2019年2月3日
(2019年1月17日鑑賞)

公式サイト

【フェルメールの出品作品】
(2019.1.17現在)

・牛乳を注ぐ女
The Milkmaid
1658-1660年頃 | 油彩・カンヴァス | 高45.5×幅41cm
アムステルダム国立美術館

・マルタとマリアの家のキリスト
Christ in the House of Martha and Mary
1654-1655年頃 | 油彩・カンヴァス | 高158.5×幅141.5cm
スコットランド・ナショナル・ギャラリー

・手紙を書く婦人と召使い
Woman Writing a Letter, with Her Maid
1670-1671年頃 | 油彩・カンヴァス | 高71.1×幅60.5cm
アイルランド・ナショナル・ギャラリー

・ワイングラス(日本初公開、ぽん太初見)
The Wine Glass
1661‐1662年頃 | 油彩・カンヴァス | 高67.7×幅79.6cm
ベルリン国立美術館

・手紙を書く女
A Lady Writing
1665年頃 | 油彩・カンヴァス | 高45×幅39.9 cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

・リュートを調弦する女
Woman with a Lute
1662-1663年頃 | 油彩・カンヴァス | 高51.4×幅45.7 cm
メトロポリタン美術館

・真珠の首飾りの女
Woman with a Pearl Necklace
1662-1665年頃 | 油彩・カンヴァス | 高56.1×幅47.4 cm
ベルリン国立美術館

・取り持ち女(ぽん太初見)
The Procuress
1656年 | 油彩・カンヴァス | 高143×幅130cm
ドレスデン国立古典絵画館

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2019/02/01

【オペラ】聖女のごときリエネ・キンチャのエリーザベト「タンホイザー」新国立劇場

 2007年演出の再演となる新国立劇場の「タンホイザー」。このオペラ、ぽん太も3回目の鑑賞となり、だいぶ聴きどころがわかってきて、楽しめるようになってきました。

 けっこう感動して、ラストは涙が溢れてきました。何が良かったかって、やっぱり、「どうしょうもない男が、女の愛で救われる」という、よくあるけど普遍的なストーリーかな? 
 タンホイザーは、ヴェーヌスの愛欲に溺れたかと思うと、それも飽きて現実に戻りたいと言い出し、歌合戦ではエリーザベトにさかんに投げキッスをし、同僚を傲慢にあざけり笑ったりし、皆に非難されるとュンとなり、エリーザベトに救われてローマへの苦行の旅を決意するものの、法王の許しを得られずに、またヴェーヌスの元に戻ろうとしたりします。かなりひどいヤツです。「タンホイザー」はまさに「悪人正機」の物語ですね。
 とはいえ、最後に杖に新緑が芽吹いて、タンホイザーが救われると、なんだか涙が流れてくる。チコちゃんによると、年とって、ぽん太の脳のブレーキが緩んだからだそうです。

 ヴァグナーはこういう人物が好きだったんでしょうか。「指環」のジークフリートも、悪人とはいえ自分を育ててくれたミーメに、ひどい仕打ちをしたりします。


 タンホイザー役は、新国立で何回か歌っているトルステン・ケール。いつもの4階席だったせいか、最初、倍音ばっかり響いてきてちょっと閉口しましたが、だんだんと地声が聞こえるようになりました。「ローマ語り」はなかなか良かったです。
 エリーザベトのリエネ・キンチャは、第2幕冒頭の「殿堂のアリア」では、恋に胸を焦がす女性の喜びを生き生きと歌い上げましたが、ちょっと声が定まりませんでした。しかし第2幕最後の毅然とした歌声は心に響き、第3幕の「エリーザベトの祈り」は心に沁みました。彼女の風貌と、真っ白な衣装があいまって、まさに絵画に描かれた聖女のようでした。
 ヴェーヌスのアレクサンドラ・ペーターザマーは、グレートマザー風。迫力がありました。
 ヴォルフラムのローマン・トレーケルは、誠実さが滲み出ており、「夕星の歌」は表情豊かな歌声で美しかったです。

 アッシャー・フィッシュ指揮の東京交響楽団の演奏は、4階席だったせいか、初日だったせいなのか、序曲で音が定まらず、迫力もなくて心配しましたが、だんだんと暖まってきたようでした。ホルンがちょっと不安定だったのが残念。
 新国立劇場合唱団はあいかわらず素晴らしく、第1幕のセイレーンの呼び声も幻想的でしたし、「大行進曲」も迫力がありました。
 新国立劇場バレエ団のみなさんもお疲れ様でした!でも、振り付けと、全身タイツみたいな衣装とメイクはいまいちだったかな。あんまりエロティックな感じがしませんでした。


 ぜんぜん話は飛びますが、ぽん太は今年の年末年始はイタリアに行っていたのですが、ローマのバチカン宮殿前のお土産やさんで、同じグループの人が「音楽の神様のメダルを買いたい」とガイドさんに相談したところ、「神様はひとりだけで、音楽の神様というのはいません」と言われてました。ローマ時代の神々の像が至る所にあるローマで、「神様はひとりだけ」というガイドさんの言葉は、キリスト教的にはその通りなんですけど、ちょっとびっくりしました。
 でもドイツとかではどうなんですかね。ヴェーヌスだって愛の女神だし、「指環」にもいろいろ神々が出てきますよね。ドイツではキリスト教的な一神論と、古くからの神々が、共存してるんでしょうか。無知なぽん太にはちとわかりません。

オペラ「タンホイザー」/リヒャルト・ワーグナー
Tannhäuser / Richard WAGNER

新国立劇場オペラパレス
2019年1月27日

公演情報|新国立劇場

指揮 アッシャー・フィッシュ
演出 ハンス=ペーター・レーマン
美術・衣裳 オラフ・ツォンベック
照明 立田雄士
振付 メメット・バルカン

領主ヘルマン 妻屋秀和
タンホイザー トルステン・ケール
ヴォルフラム ローマン・トレーケル
ヴァルター 鈴木 准
ビーテロルフ 萩原 潤
ハインリヒ 与儀 巧
ラインマル 大塚博章
エリーザベト リエネ・キンチャ
ヴェーヌス アレクサンドラ・ペーターザマー
牧童 吉原圭子

合唱 新国立劇場合唱団
バレエ 新国立劇場バレエ団
管弦楽 東京交響楽団

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