カテゴリー「芸能・芸術」の659件の記事

2017/07/17

【バレエ】ロホやコラレスの超絶テクニックに観客大興奮! 「海賊」イングリッシュ・ナショナル・バレエ

 久々に思わず震えが走るような素晴らしい舞台を見ました。公式サイトはこちらです。

 あまり聞いたことがないバレエ団だけどタマラ・ロホが出るので、ということで観に行ったのですが、凄かったです。暑いなか行ったかいがありました。

 イギリスということでストーリー性があり、映画『バットマン』の衣装デザイナーであるボブ・リングウッドの美術・衣装が美しく、そしてなによりもダンサーのテクニックが傑出してました。

 圧巻は第二幕の有名なパ・ダクシオン。
 今日のお客さんは、けっこうこまめに拍手する感じで、技を繰り出すたびに拍手が沸き起こりました。ぽん太は踊りの途中で拍手するのはあんまり好きではないのですが、今回は例外。ダンサーも、拍手を聞いてさらにノリノリという感じでした。

 タマラ・ロホは若干太めの印象で、テクニックも落ちてきたんじゃないかとぽん太は思ったのですが、さにあらず。ピルエット系のスピードと安定感がすごいです。「くるくる回りながら舞台上を斜めに移動していく技」の回転速度がハンパないです。それからグラン・フェッテでも、3回転を何度も何度も入れてました。片足のポワントで踊り続けるところとか、花を3回受け取るバランスなども余裕でこなしているように見えてしまいます。超絶技巧で有名なロホですが、ぽん太はこれまえ彼女を何回か見たけれど、このようなテクニックを初めて見ました。
 もちろん表現力、演技力も素晴らしく、奴隷市場の嫌々踊る感じや、コンラッドとの愛情に満ちた踊りなど、演劇性が感じられました。

 アリのセザール・コラレスは、こんかい初めて見ましたが、けっこう長身の男性。第1幕ではさしたる見せ場もなく、大したことないのかな〜などと思ってたのですが、力をためてたんですね。「ジャンプして足を前後に開く技」や、「空中回し蹴りのような技」では、体操の白井健三ではないけれど、普通よりさらに半回転ひねっている感じ。回転ジャンプして着地した足でまた回転ジャンプする技も、さらにもう一回の回転ジャンプ。ピルエットも早くて安定してました。 
 7月14日の「海賊」公演後、プリンシパルに任命されたんだそうです。さもありなん、さもありなん。

 コンラッドのイサック・エルナンデスも、やはり第一幕ではちょっとセーブしてたようで、高いジャンプや早いピルエットを披露しました。ただ、一般的な王子さま系ではなく、海賊の首領というキャラ設定。やんちゃ感が漂ってました。

 まるで体操やフィギュアスケートの競技のように、ダンサーのテクニックを堪能しました。オーシポワとワシーリエフの「ドンキ」を初めて見たときの感動をちょっと思い出しました。
 芸術監督になったロホに触発されて、ダンサーたちがテクニックを磨きはじめたのでしょうか?

 ビルバントのヨナ・アコスタも、キレとノビがありました。
 ギュルナーラのカーチャ・ハニュコワも、妖艶さがあって良かったのですが、第1幕で脚を負傷したということで、第3幕は金原里奈が代役で踊りました。まん丸のお顔で、軽くて柔らかい踊りで、ほんとうに可愛らしいです。妖艶さはまだなく、急な代役のせいかちょっと不安定なところもありましたが、是非とも頑張って欲しいです。
 パシャのマイケル・コールマンは滑稽な演技が抜群。これもイギリスの演劇の伝統か。ギュルナーラのピルエットに合わせて、自分も腰をふりふりしながら回転していたのが可愛かったです。


 ストーリーは、海賊たちが船で航海しているプロローグのあと、奴隷市場になります。メドーラはコンラッドの恋人という設定。ギュルナーラが第2幕に全く出でこず、役割がちょっと分かりにくかったのですが、ハニュコワが負傷したせいで変更になった部分があるのかも。最後が難破で、コンラッドとメドーラが生き残るというエンディング。
 原作となったバイロンの「海賊」のあらすじを知りたい方は、こちらの記事をどうぞ【バレエの原作を読む(1)】バレエの『海賊』←バイロンの長編詩『海賊』。バレエの「海賊」の様々なストーリーに関しては、こちらの記事をどうぞ【雑学】バレエ「海賊」のストーリーの変遷


 セットもお金がかかっている感じで、色合いや奥行き感が素晴らしかったです。衣装も華やかでした。何枚もの幕を上手に使って、スピーディーに場面転換をしておりました。

 振り付けも、男性の群舞など、ちょっと現代的な動きも入っていて、迫力がありました。


 ところで、イングリッシュ・ナショナル・バレエというのは、ぽん太は初めて聞きましたが……。
 ぐぐってみると、英語の表記はEnglish National Ballet、1950年に創設されたそうです。本拠地はロンドン・コロシアム (London Coliseum)で、イングリッシュ・ナショナル・オペラも有しており、ロイヤル・オペラ・ハウスよりはチケットもやすく、気軽に行ける劇場だそうです。

 今後も来日するのでしょうか。ちょっと目が離せないですね。


イングリッシュ・ナショナル・バレエ2017年日本公演
「海賊」 プロローグ付全3幕

2017年7月17日
東京文化会館

復元振付: アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
音楽: アドルフ・アダン、リッカルド・ドリゴほか
編曲: ラース・ペイン、ギャヴィン・サザーランド
装置・衣裳: ボブ・リングウッド

メドーラ : タマラ・ロホ
コンラッド : イサック・エルナンデス
ギュルナーラ : カーチャ・ハニュコワ
ランケデム : ジンハオ・チャン
アリ : セザール・コラレス
ビルバント : ヨナ・アコスタ
パシャ : マイケル・コールマン*


第1幕 市場
オダリスク : 金原里奈、アリソン・マクウィニー、フランチェスカ・ヴェリク

指揮 : ギャヴィン・サザーランド
演奏 : 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

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2017/07/06

【バレエ】カマルゴくんと水香ちゃん「ラ・バヤデール」東京バレエ団

 にゃん子が「カマルゴくん見たいにゃ〜、見たいにゃ〜」と鳴いてうるさいので、上野まで行ってきました。公式サイトはこちらです。

 ソロルを踊ったカマルゴくん、相変わらずのイケメンですが、体は徐々に筋肉がついてがっしりしてきました。ジャンプもそこそこ高かったですが、回転の安定性が素晴らしかったです。特に第一幕での一ヶ所で回転しながらの連続ジャンプとか、第2幕だか3幕だかの、舞台上で大きく円を描きながらの勢いつけてジャンプして回転みたいなやつなど(ぽん太はテクニックの名称がわかりませんweep)。ただ、全体として振り付けがちょっとものがりないというか、せっかく出演してくれたのだから、もっとカマルゴくんのテクニックを見たかったです。
 ニキヤの水香ちゃん、やっぱり独特の雰囲気がありますね。踊りも悪くありませんでした。
 ガムザッティは川島麻実子のはずでしたが、ケガのため奈良春夏が踊りました。う〜ん、川島麻実子で見たかったな〜って、奈良春夏がダメってわけじゃないですよ。彼女の踊りはこれまでなんども見てきたし、川島は昨年「白鳥の湖」のオデット/オディールを観て、スタイルがよくて素晴らしかった記憶があるので……。
 で、奈良のガムザッティは、なんだか可愛らしかったです。もっとタカビーな感じで踊って欲しかったです。
 ブロンズ像は宮川新大。ちょっと痩せた体型なので、大仏というより菩薩という感じですが、テクニックもあるいし、仏像っぽさもあって、なかなかよかったです。衣装も綺麗ですね。
 影の王国の3人のうち、最初にヴァリアシオンを踊った人(足立真里亜か?)が、なかなかよかった気がします。

 「ラ・バヤデール」はあんまりストーリーが面白くないですよね。もうちっと盛り上がりが欲しいです。
 マカロワ版は初めて観たのですが、第三幕にもニキヤが現れます。でも、そうすると、どの幕もニキヤとソロルとが踊ってるみたいで、なんか単調に感じました。ラストはあの世でニキヤとソロルが結ばれるというパターン。

東京バレエ団
マカロワ版「ラ・バヤデール」(全3幕)

2017年7月2日
東京文化会館

振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント


◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫):上野水香
ソロル(戦士):ダニエル・カマルゴ
ガムザッティ(ラジャの娘):奈良春夏

ハイ・ブラーミン(大僧正):森川茉央
ラジャ(国王):木村和夫
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):岡崎隼也
アヤ(ガムザッティの召使):矢島まい
ソロルの友人:和田康佑
ブロンズ像:宮川新大

【第1幕】
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り): 二瓶加奈子、三雲友里加

パ・ダクシオン:
沖香菜子、岸本夏未、髙浦由美子、中島理子
伝田陽美、三雲友里加、政本絵美、崔 美実
宮川新大、ブラウリオ・アルバレス

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1): 足立真里亜
影の王国(ヴァリエーション2): 伝田陽美
影の王国(ヴァリエーション3): 政本絵美

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

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2017/06/21

【バレエ】ワシーリエフの巨体が宙を飛ぶ「パリの炎」ボリショイ・バレエ

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 ボリショイ・バレエの来日公演、最後はワシーリエフです。演目は「バリの炎」、もちろんぽん太は初めてです。元気いっぱいのバレエで、おおいに盛り上がりました。公式サイトはこちらです。

 「パリの炎」は、フランス革命を題材にしたバレエ。パンフレットは買わなかったのでぐぐってみると(→ロシア劇場チケットセンター)、1932年にキーロフ・レニングラードバレエ団(現在のマリインスキー・バレエ?)で初演。振り付けはワシーリー・ワイノーネン、台本はフェリックス・グラの「マルセイエーズ」、作曲はボリス・アサフィエフでした。こんかい上演されたのは、2008年にボリショイ劇場で初演された版で、アレクサンサンドル・ベリンスキーとアレクセイ・ラトマンスキーによる台本、ラトマンスキーの振り付けによるものだそうです。
 ということで、音楽はかなり古風。振り付けは新しいけど、コンテっぽさはないです。力強くて躍動感があり、男性的。ストーリーは、農民の兄妹がいて、妹は義勇軍のリーダーに恋をしてやがては結婚。兄は、助けてくれた貴族の娘と愛し合うなかになりますが、貴族の娘は民衆に処刑されてしまうという話し。悪くはないけど、そんなに引き込まれるストーリーではありません。宮廷舞踏会のなかに劇中劇があって、そこで古典的なバレエが踊られるあたり、ちょっと脚本が弱い気もします。ラストは「人々の犠牲のもと、革命は進んで行くのだ」みたいな感じで、これが社会主義を否定して資本主義体制に戻ったロシアで作られたあたり、なんだかロシア政府を忖度している気がしないでもありません。

 で、ワシーリエフですが、なんかでっかい。太った? 腹回りとか太ももとかすごいです。このように重量感があるものが、高々とジャンプをしたり、くるくる回ったりしているのは、それなりにスペクタクルです。安定感は人一倍あります。髭をたくわえた姿はいかにもガテン系のおっさんという感じで、これではもう王子様役はできないのではないかと心配になります。
 踊りはエネルギッシュでパワフルでした。第2幕でジャンヌとのパ・ドドゥを踊った後、舞台からはけるときの疲れきった様子が、マジなのか演技なのかちとわかりませんでしたhappy01
 対するジャンヌ役のクリスティーナ・クレトワは、溌剌とした元気いっぱいの踊りで、ワシーリエフに負けておりませんでした。
 
 劇中劇の俳優役のマルガリータ・シュライネルとダヴィッド・モッタ・ソアレスがぽん太の目を引きました。特にソアレスは柔らかく優美な踊りで、ジャンプも高かったです。シュライネルもバランスがとても良く、脚がすごく高く上がってました。

 カーテンコールでは、東京公演のラクということで、ジャパンアーツ恒例の滝のような大量の紙テープと紙吹雪による二段攻撃がありました。また来てね〜〜。
 


ボリショイ・バレエ2017年来日公演
≪パリの炎≫
東京文化会館
2017年6月15日

音楽:ボリス・アサフィエフ
台本:アレクサンドル・ベリンスキー、アレクセイ・ラトマンスキー
  (ニコライ・ヴォルコフとウラジーミル・ドミトリエフの原台本に基づく)
振付:アレクセイ・ラトマンスキー
原振付:ワシリー・ワイノーネン
美術:イリヤ・ウトキン
   エフゲニー・モナホフ
音楽監督:パーヴェル・ソローキン
照明デザイン:ダミール・イスマギロフ
音楽構成:ユーリー・ブルラーカ
舞踊監督:マハール・ワジーエフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
日本公演プロダクションサポーター:井上豊、高橋俊彦

<出演>
ジャンヌ(ガスパールとリュシルの娘):クリスティーナ・クレトワ
ジェローム(ジャンヌの兄):アレクサンドル・スモリャニノフ
フィリップ(マルセイユ生まれの青年):イワン・ワシーリエフ
アデリーヌ(侯爵の娘):アナ・トゥラザシヴィリ
コスタ・ド・ボールガール侯爵:イーゴリ・ツヴィルコ
ミレイユ・ド・ポワチエ(女優):マルガリータ・シュライネル
アントワーヌ・ミストラル(俳優):ダヴィッド・モッタ・ソアレス
ジャルカッス(侯爵に仕える老女):イリーナ・ズィヴロワ
ジルベール(マルセイユ義勇軍の隊長):アレクサンドル・ヴォドペトフ
フランス国王ルイ16世:ゲオルギー・グーゼフ
フランス王妃マリー・アントワネット:マリーヤ・ジャルコワ
ガスパール(農民):ユーリー・オストロフスキー
リュシル(ガスパールの妻):アンナ・アントローポワ

バレエ《リナルドとアルミーダ》
愛の神アモール:オルガ・カリーニナ
花嫁の幻影:ネッリ・コバヒーゼ
アルミーダの友人:アリョーナ・コワリョーワ、オルガ・マルチェンコワ、マルファ・フョードロワ、ヴィクトリア・ヤクシェワ
女神たち:エルヴィナ・イブライモワ、ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ、クセーニア・ジガンシナ、ヤニーナ・パリエンコ、ダリーヤ・ボチコーワアナスタシア・グバノワ
狩人たち(侯爵の友人):バティール・アナドゥルディエフ、マクシム・スーロフ、マクシム・オッペンハイム、セルゲイ・クズミン
オーヴェルニュの踊り:オクサーナ・シャーロワ、ヴェラ・ボリセンコワ、イワン・アレクセーエフ、ヴィタリー・ビクティミロフ
マルセイユ人の踊り:アルトゥール・ムクルトチャン、アレクセイ・マトラホフ、ゲオルギー・グーセフ
国民公会の議長:アレクサンドル・ファジェーチェフ
儀典長:アレクセイ・ロパレーヴィチ
画家ダヴィッド:ユーリー・オストロフスキー
従軍商人:エウゲーニャ・サヴァルスカヤ

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2017/06/20

【バレエ】グリゴローヴィチ版に異議あり!「白鳥の湖」ボリショイ・バレエ

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 オデット/オディールは、先日の「ジゼル」でミルタを踊ったユリア・ステパノワ。記憶にないダンサーなので、自分のブログをググってみると、2012年のマリインスキーの「白鳥」でマズルカを踊ってました。あれから5年、ボリショイに移籍し、ソロを踊るまでに成長したのでしょうか。背が高くて、ジークフリートのオフチャレンコとバランスが悪いくらいでした。踊りは悪くなかったけど、ぐっと引き込まれるまではいかなかったです。ちょっと体が固い感じもしました。白鳥のウルウル感、黒鳥の妖婉さ、まだまだ頑張って欲しいです。
 ジークフリートのアルチョム・オフチャレンコは、顔が小さくてスタイルがいいです。踊りも優雅で柔らかく、ジャンプ力もありました。
 グリゴローヴィチ版では大活躍するロットバルトのミハイル・クリュチコフは、迫力のある大きな踊り。道化のゲオルギー・グーセフも回転や高いジャンプで拍手をもらってました。
 花嫁候補ではロシアのアナスタシア・デニソワが、柔らかい可憐な踊りでぽん太を魅了いたしました。

 全体として、悪くはないけど、先日のザハーロワの「ジゼル」を観ちゃうとちょっと……という感じでした。ザハーロワは何度も観たから、とステパノワにしたんだけど、やっぱり鉄板のザハーロワにしとけば良かったかしらん。

 ボリショイの「白鳥」はグリゴローヴィチ版。振り付けは悪くないですけど、ストーリーが面白くないですね。グリゴローヴィチ版については以前に書いたことがありますが(→こちら)、王子のなかにある善と悪が戦う、みたいなコンセプトで、王子が白鳥に恋をするのもロットバルトがあやつってるみたいで純愛感がありません。ラストも王子とロットバルトの戦い、がないし、最後は白鳥ちゃんが死んじゃって、とっても暗いです。やっぱり、マザコン王子が母親からもらった弓矢を持って狩りに出かけたら、白鳥に姿を変えた美しい女性に出会い……最後は王子が命をかけてロットバルトと対決……という普通のストーリーの方がいいです。


ボリショイ・バレエ2017年来日公演
≪白鳥の湖≫
東京文化会館
2017年6月8日 マチネ
公式サイト

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本:ユーリー・グリゴローヴィチ
  (ウラジーミル・ベーギチェフとワシーリー・ゲーリツェルの原台本に基づく)
振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ、アレクサンドル・ゴールスキー、ユーリー・グリゴローヴィチ
制作:ユーリー・グリゴローヴィチ
美術:シモン・ヴィルサラーゼ
音楽監督:パーヴェル・ソローキン
照明デザイン:ミハイル・ソコロフ
舞踊監督:マハール・ワジーエフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

<出演>
オデット/オディール:ユリア・ステパノワ
ジークフリート王子:アルチョム・オフチャレンコ
悪魔ロットバルト:ミハイル・クリュチコフ
王妃(王子の母):ヴェラ・ボリセンコワ
王子の家庭教師:ヴィタリー・ビクティミロフ
道化:ゲオルギー・グーセフ
王子の友人たち:クリスティーナ・クレトワ、マルガリータ・シュライネル
儀典長:アレクサンドル・ファジェーチェフ
花嫁候補たち
ハンガリー:アナ・トゥラザシヴィリ
ロシア:アナスタシア・デニソワ
スペイン:ダリーヤ・ボチコーワ
ナポリ:ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
ポーランド:オルガ・マルチェンコワ
3羽の白鳥:オルガ・マルチェンコワ、マルファ・フョードロワ、アリョーナ・コワリョーワ
4羽の白鳥:ダリーヤ・ロフツォーワ、オルガ・カリーニナ、マルガリータ・シュライネル、ダリーヤ・ボチコーワ
ワルツ:エルヴィナ・イブライモワ、ネッリ・コバヒーゼ、ヴィクトリア・ヤクシェワ、クセーニア・ジガンシナ、ウラディスラフ・コズロフ、ドミトリー・エフレーモフ、イワン・アレクセーエフ、ダヴィッド・モッタ・ソアレス

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2017/06/19

【オペラ】「神々」が楽しみになってきたぜい「ジークフリート」新国立劇場オペラ

 飯守リングの第3夜「ジークフリート」を新国立劇場で観てきました。聴きごたえのある素晴らしい公演で、午後2時に始まって終わるのは8時頃という長丁場を、ほとんと寝ずにhappy01聴くことができました。公式サイトはこちらです。

 ハイレベルの歌手をそろえ、奇をてらわない演出。飯守さんの真面目さと、真摯に音楽に取り組む姿勢が伝わってきます。おまけに自分で指揮棒まで振って……。さぞ嬉しいことでしょう。観ているぽん太も嬉しいです。

 タイトル・ロールは新国立ではおなじみのステファン・グールド。いまさら繰り返すまでもなく、素晴らしい歌声と演技でした。しかしこのジークフリートってやつは、でっかい子供みたいで、悪いやっちゃのう。悪人とはいえ育ててくれたミーメを馬鹿にしてぶったたいたり。日本で言えばスサノオノミコとみたいなもんか?
 ヴォータンのグリア・グリムスレイは、見た目も格好よく、深みのある声もすばらしい。でも、ジークフリートに槍を折られるシーンあたりで何回かプロンプトの声が聞こえたな〜。歌舞伎ではよくあったけど(最近はイヤホン付けてるので観客には聞こえないらしい)、オペラでは初めてでした。舞台手前の小窓みたいなところから叫ぶのかしら。音楽よりワンテンポ遅れちゃうはずだけど、気がつかないようにうまく歌ってました。それとも怪しい部分をあらかじめ早めにプロンプトしてるのでしょうか。
 エルダのクリスタ・マイヤーは、雰囲気はありましたが、特定の音域でちょっと声の質が変わるのが気になりました。
 リカルダ・メルベートのブリュンヒルデもラストを盛り上げました。
 ミーメとアルベリヒのアンドレアス・コンラッドとトーマス・ガゼリは、とっても演技上手で楽しませてくれました。
 ファフナーのクリスティアン・ヒュープナーも迫力なるバスでしたが、へんてこな風船のお化けみたいな演出が気になりました。大蛇なのになんで手があるんじゃい。なんか新作歌舞伎みたい。「なんで俺はこんなものを真面目に見とるんじゃい」とふと我に返る瞬間が寒々しいです。
 小鳥さんたち……。う〜ん……。セクハラ?

 飯守さん指揮の東京交響楽団も、日本のオケとは思えない大迫力でした。

 最後は大拍手。時間が延びたせいか、カテコが短くて拍子抜けしました。もっともっと拍手を送りたかったです。

 さて、次はとうとう「神々の黄昏」。前回の新国立リングでは、用事があって「神々」だけ観ていません。今回は絶対に観るぞ!

新国立劇場オペラ

ワグナー「ジークフリート」
2017年6月7日
新国立劇場オペラパレス

指揮:飯守泰次郎 
演出:ゲッツ・フリードリヒ
美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ 
照明:キンモ・ルスケラ
演出監修:アンナ・ケロ 
演出補:キム・アンベルラ
舞台監督:村田健輔

ジークフリート:ステファン・グールド 
ミーメ:アンドレアス・コンラッド
さすらい人:グリア・グリムスレイ 
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー 
エルダ:クリスタ・マイヤー
ブリュンヒルデ:リカルダ・メルベート
森の小鳥:鵜木絵里/九嶋香奈枝/安井陽子/吉原圭子

管弦楽:東京交響楽団

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2017/06/18

【バレエ】ザハーロワのウィリに釘付け!「ジゼル」ボリショイ・バレエ

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 用事が急になくなってあわててチケットを取ったので、3階の席しかあいてなかったのですが、それでも凄かった〜。ザハーロワ、素晴らしかったです。この後に見た「白鳥」や「パリの炎」と比較してもダントツでしたから、ザハーロワの「ジゼル」を見といてよかったな〜。公式サイトはこちらです。

 第一幕はザハーロワのキャラの通り、清楚で高貴なジゼルちゃんで、若くて明るくてちょっとコケティッシュな村娘という感じではありませんでした。また衣装のせいかもしれませんが、腕や胸の痩せた感じがちと気になりました。気が触れるシーンも、まあこんなものかというところ。

 ところが第二幕のウィリとなってからが凄かったです。

 最初の突然くるくると回りだすシーン。美しいポーズのまま凄い勢いで回転したのですが、力を入れたり勢いをつけたりする感じがなく、まさに人間を超えた精霊の動きでした。
 普通だと、精霊であることを強調しすぎてカラクリ人形みたいに回るところ。またオーシポワは、回転は凄かったけど、躍動感が感じられて「人間」っぽかった記憶があります。

 その後も、ぽん太には何と表現していいいのかわかりませんが、美しいポーズとキレのある動きが見事でした。ロヂキンのサポートも良かったのか、重さがなくって宙を「漂う」かのようでした。もいちどオーシポワを引き合いに出させていただけば、彼女の場合は宙を「漂う」ではなく、「舞う」とか「飛ぶ」という感じでした。
 ぽん太はストーリーに感動するというよりも、ただただザハーロワに見とれ続けておりました。

 ザハーロワはずっと昔からトップで踊ってるけど、いったい何歳になったんでしょう?以前にザハーロワが1年間新国立で踊ってたなんて、凄いことですね。サッカーで言えばジーコが鹿島に来たようなものか。

 ロヂキンも柔らかい動きで良かったです。ジャンプの高さは上からだとわからん。ウィリたちがアラベスクで交差するシーンは、上から見てもとってもきれいでした。


 そういえば前座で安倍首相が登場しました。なんでも「ロシアの季節」という文化交流のイベントの一環だそうで、ロシアからは副首相が挨拶しましたが、女性なんですね。安倍首相、残念ながらザハーロワほどの拍手はもらえてませんでした。


ボリショイ・バレエ2017来日公演
≪ジゼル≫<全2幕>

2017年6月4日ソワレ
東京文化会館

音楽:アドルフ・アダン
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ
改訂振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
台本:テオフィル・ゴーチエ、ジュール・アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ
美術:シモン・ヴィルサラーゼ
音楽監督:アレクサンドル・コプィロフ
照明デザイン:ミハイル・ソコロフ
舞踊監督:マハール・ワジーエフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

<出演>
ジゼル(村娘):スヴェトラーナ・ザハーロワ
アルブレヒト伯爵:デニス・ロヂキン
ベルト(ジゼルの母):アンナ・アントローポワ
バチルド(アルブレヒトの婚約者):ヴェラ・ボリセンコワ
クールランド公爵(バチルドの父):アレクセイ・ロパレーヴィチ
ウィルフリード(公爵の小姓):イワン・アレクセーエフ
ハンス(森番):ヴィタリー・ビクティミロフ
ジゼルの友人たち:アナスタシア・デニソワ、クセーニア・ジガンシナ、ネッリ・コバヒーゼ、オルガ・マルチェンコワ、エルヴィナ・イブライモワ、アナ・トゥラザシヴィリ
ミルタ(ウィリの女王):ユリア・ステパノワ
2人のウィリ:ヴィクトリア・ヤクシェワ、アナ・トゥラザシヴィリ
ペザント・パ・ド・ドゥ:アルトゥール・ムクルトチャン、マルガリータ・シュライネル

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2017/05/31

【文楽】英太夫が呂太夫を襲名/国立劇場2017年5月第一部

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 5月の国立劇場の文楽は、「菅原伝授手習鑑」がかかる第一部を鑑賞。英太夫改め呂太夫の襲名披露もあります。公式サイトはこちらです。

 最初の「寿柱立万歳」は、歌と踊りのおめでたい演目で、襲名のお祝い気分を高めてくれました。

 さて、「菅原伝授手習鑑」は、歌舞伎でいう「賀の祝」と「寺子屋」。

 「賀の祝」は以前に歌舞伎で観たことがあるのですが、なんか内容がよくわかりませんでしたが、こんかい文楽で観て、(字幕があるので)よくわかりました。
 芳穂太夫が語った「茶筅酒の段」は、梅王丸・松王丸・桜丸のそれぞれの奥さんが、白太夫の70歳の祝いの準備をいそいそとする場面。ぽん太は歌舞伎でも見たことがありません。桜丸の奥さんの八重さんだけがぶきっちょで、すり鉢がグワングワンと揺れてしまったり、大根がうまく切れなかったりします。このめでたくも楽しい雰囲気が、最後には桜丸の切腹へ至るのですから、すごいストーリー展開です。
 「喧嘩の段」は、若くてちょっとイケメンの咲寿太夫と龍爾が勤めました。良くいえば若々しく、悪く言えばちょっと固い語りでしたが、全力を尽くしての熱演が、梅王丸と桜丸が張り合って喧嘩をするという場面によく合ってました。
 「桜丸切腹の段」は文字久太夫が切々と語りました。

 口上をはさんで、呂勢太夫の「寺入りの段」に続いて、いよいよ新・呂太夫が「寺子屋の段」の前に登場。緊迫したやりとりを丁寧に語りました。切は咲太夫が格調ある語りで締めました。歌舞伎の「寺子屋」は武部源蔵夫婦が主役のような印象がありますが、文楽で見ると松王丸・千代の物語ですね。泣かせてくれました。

 人形遣いでは、玉也の白太夫が味がありました。玉男の松王丸は大きくて立派。勘十郎が松王丸の女房千代、和生が武部源蔵。

平成29年 5月文楽公演

東京国立劇場小劇場
2017年5月17日
   

第一部

寿柱立万歳(ことぶきはしらだてまんざい)

  太夫  三輪太夫
  才三  津國太夫
       南都太夫
       小住太夫
       文字栄太夫
       清馗
       清丈
       清公
       錦吾
       團吾

  太夫  紋臣
  才三  清五郎

  
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

 茶筅酒(ちゃせんざけ)の段    
    芳穂太夫
    清友

 喧嘩の段
    咲寿太夫
    龍爾

 訴訟の段
    靖太夫
    錦糸

 桜丸切腹の段
    文字久太夫   
    藤蔵

 豊竹英太夫改め六代豊竹呂太夫
 襲名披露口上

 寺入りの段
    呂勢太夫
    清治

 寺子屋の段
  前 英太夫改め 呂太夫
    清介

  切 咲太夫
    燕三


    親白太夫    玉也
    百姓十作    勘市
    女房八重    簑二郎
    女房春     一輔
    女房千代    勘十郎
    松王丸     玉男
    梅王丸     幸助
    桜丸      簑助
    よだれくり    玉翔
    菅秀才     勘介
    女房戸浪    勘寿
    一子小太郎   簑太郎
    下男三助    玉彦
    武部源蔵    和生
    春藤玄蕃    文司
    御台所     簑紫郎

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2017/05/30

【展覧会】「てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-」@すみだ北斎美術館

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 5月上旬、たまたま近くで時間が余ったので、すみだ北斎美術館に初めて行ってみました。公式サイトはこちらです。

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 両国駅から東にちょっと歩いたところに、光るNの字みたいな建物が見えてきます。これがすみだ北斎美術館です。設計は妹島和世。建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞して有名になりました。建物の持つ深い意味に関しては、ぽん太にはわかりませんhappy01

 特別展で「てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-」というのをやってました。東海道五十三次と聞くと、歌川広重を思い浮かべますが、それより以前に北斎が東海道五十三次を、しかもいくつかのヴァージョンで描いてるんだそうです。ご自宅用の秘蔵版のような、小さな版画で、人々の風俗が描かれていて興味深かったです。

 常設展では、初期から最晩年にわたる北斎の作品が展示されておりました。しかも、一部の作品を除くと、フラッシュなしの撮影オーケーです。
 何度も言われていることですが、油絵も含めてさまざまな技法や様式を試みたことがわかります。で、やっぱり富嶽三十六景の大胆な構図は、目を引きますね。

 冒頭の写真は「朱描鐘馗図」(しゅがきしょうきず)(肉筆、弘化3年(1846))。北斎が87歳のときに書いた肉筆画だそうですが、現代のアニメやゲームキャラみたいですね。

開館記念展Ⅲ「てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-」

 2017年4月18日(火) 〜 2017年6月11日(日)
 すみだ北斎美術館 (東京都墨田区亀沢2-7-2)

 ・作品リスト(pdf, 294.6K)

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2017/05/17

【展覧会】こんなに細かく描きこまれてたの/ブリューゲル『バベルの塔』展(東京都美術館)

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 上野の東京都美術館に、ブリューゲル「バベルの塔」展を見にいってきました。オランダのイマンス美術館の所蔵品による展覧会です。公式サイトはこちら、東京美術館のサイトはこちらです。
 ブリューゲルは「バベル」一点と聞き、あまり期待してなかったのですが、とっても面白かったです。最初、しぶい彫刻や絵画を見せられてちょっと退屈だったのですが、1階に上がってボスの奇想天外な化け物たちが出て来ると、そのキモかわいさに徐々にヒートアップ。3階のバベルで最高潮となりました。


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 何と言ってもまずは「バベルの塔」から。写真はWikipediaからパブリックドメインのものです。ブリューゲルはもう一枚バベルの塔を描いており(1563年、美術史美術館(ウィーン))、こちらはウィーンで見たことがありますが、ボイマンス美術館の今回の絵は初めて。
 こんなに細かく描きこまれているなんて知りませんでした。クリックで写真が拡大しますので、細部をご覧ください。建物もすごく精密で、頂上の工事中の部分などは内部が露出しているのでアーチが複雑に重なり合ってます。さらに小さな人がいっぱい書き込まれております。会場には拡大写真や解説ビデオがありましたが、工事に携わっている人たちや、塔に作られた教会に参列する人など、何倍に拡大してもデッサンが乱れておりません。
 こういう絵画のあり方を、不詳ぽん太は初めて知り、とっても驚くとともに、感動いたしました。


 
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 ついでボスの「放浪者(行商人)」(1550年ごろ)。こちらも色や構図よりも、細部が面白いです。
 後ろの家は、ツボが逆さに掲げており、白鳥の看板がありますが、娼館を意味するそうです。玄関では男性が女性に言い寄ってますが、後ろには立ち小便をしている男も。木の上にフクロウもいます。

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 もう一枚のボスの絵、「聖クリストフォロス」(1550年頃)。
 男が子供を背負って渡っているうちに、耐えきれないほどの重さとなったため名前を尋ねると、実はその子供はキリストだったという話ですが、この絵も細部がヘンテコです。右のほうでは、木の上の割れた壺の中で生活している人がいますし、左のほうではクマが吊るされてます。遠景の建物は、塀の中から恐竜みたいな怪物が顔をだしています。

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 ボスやブリューゲルの版画も多数あり、ブリューゲルの「大きな魚は小さな魚を食う」や、「聖アントニウスの誘惑」などの有名作品もありました。訪れた人たちは、奇想天外な化け物やヘンテコなキャラにすっかり魅了されたようで、関連グッズ売り場では、キャラが描かれたグッズやフィギュアが売れまくってました。バベルの塔型シフォンケーキも面白かったです。ガチャも作るといいと思います。

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-

東京都美術館
2017年4月18日(火)~7月2日(日)

作品リスト(pdf, 418.0K)

主な作品
 ピーテル・ブリューゲル1世 
  《バベルの塔》1568年頃、油彩、板
  《聖アントニウスの誘惑》1556年、エングレーヴィング
  《大きな魚は小さな魚を食う》1557年、エングレーヴィング
 ヒエロニムス・ボス
  《放浪者(行商人)》1500年頃、油彩、板
  《聖クリストフォロス》1500年頃、油彩、板

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2017/05/16

【バレエの原作を読む(9)】「ダフニスとクロエ」←ロンゴス『ダフニスとクロエー』


 久々登場の「バレエの原作を読む」シリーズ。今回は「ダフニスとクロエ」です。

 「ダフニスとクロエ」は、バレエよりも、原作よりも、ラヴェルが作曲した音楽が一番有名ですね。

 1909年に「バレエ・リュス」を旗揚げしたディアギレフは、1910年に、ロンゴスの『ダフニスとクロエ』を原作とするバレエの音楽をラヴェルに依頼。台本はフォーキンでしたがラヴェルはあんまり気に入らなかったようです。それでもラヴェルは5月にはピアノ譜を完成させましたが、今度がディアギレフがそれを気に入りません。リズムよりメロディー重視だし、合唱が入ってたり……。てなことで初演が延びのびになるなか、待ちくたびれたラヴェルは第1部後半から第2部前半を1911年に「第1組曲」として初演。バレエが初演されたのは1912年になってからでした

 バレエの初演は1912年6月8日、パリのシャトレ座でバレエ・リュス(ロシアバレエ団)。振付けはフォーキン、ダフニスはもちろんニジンスキー、クロエはタマーラ・カルサヴィナ、指揮はピエール・モントゥーでした。

 フォーキン版のあらすじは、例えばこちらのブログ(バレエ音楽「ダフニスとクロエ」|liebevoll)に詳しく書かれております。フォーキン版とは書いてありませんが、たぶんフォーキン版でしょう。
 すごく大雑把にまとめると、クロエに恋心をいだくダフニス。たくましい牛飼いドルコンが「ちょっとまった〜」とクロエに近づくが、踊りが下手で物笑いにされる。ダフニスの踊りにクロエは魅せられ、甘い口づけ。二人は恋に落ちます。年増女リュセイオンがやってきてダフニスを誘惑して立ち去る。そこへ海賊がやってきてクロエを誘拐。絶望したダフニスは、ニンフの助けを得て、パンの神に助けを乞う。すきをみて逃げようとするクロエだが、海賊に手込めにされようとする瞬間、パンが現れて海賊をやっつける。再会を喜ぶ二人。パンを讃えながら、一同祝福の乱舞。

 さて、フォーキン版以外にどのような振付けがあるのか、ぽん太は申し訳ありませんがよく知らないし、調べる気力もないのですが、これまでぽん太が観たものを挙げると……

アシュトン版 英国バーミンガム・バレエ団
 だいたいフォーキンと同じストーリー。詳細は忘れましたgawk
ジャン・クリストフ=マイヨー版 モナコ公国モンテカルロ・バレエ団
 愛し方がわからない若いカップルに、成熟したカップル(リュセイオンとドルコン)が愛の手ほどきをするというエロティックなコンテ作品。
バンジャマン・ミルピエ版 パリ・オペラ座バレエ団
 だいたいのあらすじは同じだが、抽象的な衣装やセット。


 で、原作ですが、ロンゴス(Λόγγος)の『ダフニスとクロエー』(Ποιμενικά κατά Δάφνιν και Χλόηνもしくは Δάφνις και Χλόη)で、翻訳は上にアマゾンのリンクを張った岩波文庫版が手に入りやすいかと思います。

 その解説(松平千秋)によりますと、紀元前後から5世紀にかけて、地中海世界では多くの通俗的な大衆小説が作られたそうで、その大部分はギリシャ語で書かれていたそうです。しかし現在完全なかたちで残っているのはわずが5篇しかなく、ロンゴスの『ダフニスとクロエー』はそのうちのひとつだそうです。書かれたのは2世紀後半から3世紀前半、日本でいうと、邪馬台国の卑弥呼が魏に使者を送ったのが239年ですね。
 作者のロンゴスについては、確かなことはほとんどわからないそうです。
 レスボス島を舞台にした、若い男女のラブ・ストーリー。レスボス島は、エーゲ海の東側にある島で、現在のトルコの沿岸にありますが、ギリシャの領土です。

 で、あらすじですが……。
 めんどくさいけどまとめるかな〜。ゴールデンウィークで暇だし。
 ただ、小学生以下にはふさわしくない表現がありますので、中学生以上だけお読み下さい。

序  レスボス島で狩りをしていた私は、世にも美しい絵をみつけた。そこには恋の物語が描かれていて、多くの人たちがそれを見にこの島を訪れていた。私は長老の話を元にして、4巻の物語を書き上げた。


巻1
 レスボス島の町ミュティレーネーのほど近くに住む山羊飼いのラモーンは、ある日一頭の山羊が男の赤ちゃんを育てているのを見つけた。男の子はたいそう美男子で、、高価な品々を携えていた。ラモーンはこの子の出生を秘密にしたまま自分の子供として育てることにし、ダフニスと名付けた。しばらして今度は羊飼いのドリュアースが、羊が育てている女の赤ちゃんを見つけた。ドリュアースもこの子を自分の娘として育ていることにし、クロエーと名付けた。
 こうして山羊飼いとなったダフニスと羊飼いとなったクロエーは、近くで仕事をしていたこともあり、仲良く一緒に遊ぶようになった。ところがだんだんと二人はお年頃。水浴びをしているダフニスの裸を見て、体を洗ってあげていたら、何かドキドキしてきたクロエーちゃん。夜も眠れず食事もとらず、仕事もほったらかしで、泣いたかと思ったら笑い出す始末。でも恋などという言葉さえ知らないダフニスは、自分が病気になったと思うばかり。
 さて、既に恋をわきまえた荒々しい牛飼いのドルコーンが、クロエーに目を付けました。ダフニスとドルコーンは喧嘩になりますが、言い合いに勝ったダフニスに、クロエーはご褒美のキッスheart01。あらあら、大変。この日からダフニスも恋に落ちました。ほてる体を冷やそうと水浴びしても、恋の炎は燃え盛るばかり。
 しかしエロサイトなどない時代の牧人の二人。ダフニスは、クロエーのかぶっている松の冠にキスをして自分もかぶってみたり、クロエーも、水浴びをしているダフニスの服にキスをして、それを着てみたり。お互いにリンゴをぶつけあったり、髪の毛を整え合ったり。あ〜違うでしょ。あらじれったい。
 そんなある日、テュロスの海賊がやってきて、家畜からなにから略奪を行うが、ダフニスとクロエーは、牛飼いのドルコーンの身を犠牲にした助けを借りて、海賊を撃退する。

巻2
 秋になって、ダフニスとクロエーはブドウの収穫に駆り出されます。ある老人が、二人にエロース(恋)の話を聞かせます。「いいかい、若いお二人さん。恋の病に効く薬は、キスをすること、抱き合うこと、裸になって一緒に寝ることしかないんじゃ。」
 二人は自分たちが恋をしていることを知ります。そして教わった最初の二つの方法を試してみますが、最後の一つはさすがに恥ずかしくてできません。でも二人の心はさらに火がつくばかり。それからの二人は、出会うたんびに抱き合ったりキスしたり。あるとき二人は抱き合ったままバランスをくずして倒れてしまいました。でも、そのあとどうしていいかわからず、夕暮れとともにそれぞれ帰途についたのでした(あ〜〜じれったい)。
 そんなおり、メーテュナムの裕福な若者たちが小舟に乗って、村や町を訪れて遊んでおりました。彼らはダフニスとクロエーの村の近くに船を停めようとしたのですが、とも綱をなくしてしまったので、青い柳の枝で船を陸につなぎ止めました。ところがこの柳をダフニスの山羊が食べてしまったからさあ大変。船は沖に流されてしまい、怒った若者たちはダフニスを責め立て、縛り上げようとします。村人たちはこれには憤慨し、若者たちを追い返しますが、メーテュナムにようやく帰り着いた若者たちは、村人たちに船や金品を略奪されたと嘘を言います。それを聞いてメーテュナム人はミュティレーネーに戦争をしかけ、村々を襲って手当り次第に略奪を行い、あげくのはてにクロエーまでつれ立てて行きました。
 残されたダフニスはニンフの祠に行って悲しみを切々と訴えます。するとあら不思議、その夜、夢の中に三人のニンフが現れ、クロエーを助けるように勇敢な闘士でもあるパーンにお願いしたことを伝えます。実際メーテュナムの船には異常現象が次々と起こります。羊が狼のように吠えだしたり、碇を上げようとしてもびくとも動かなかったり、イルカの群れが海中から躍り出て船を壊したりします。ついには司令官の夢枕にパーンが現れ、クロエーと山羊、羊を返すように命じます。
 クロエーが無事に帰ってきたことを喜んだ村人たちは宴を開きます。再会に喜ぶ二人は、お互いに愛し続けることを誓い合ったのでした。

巻3
 冬が過ぎて、春になりました。長い冬の間に、二人は少し成長しております。ダフニスはクロエーに、老人が教えてくれた恋を癒す三つの薬のうち、だたひとつやり残していたことをしようと言います。そう、裸になって二人で寝るのです。
 「でも一緒に寝てどうするの?」とクロエー。
 「牡羊や牡山羊が牝にするようなことをするのさ。あれは楽しいことに違いないよ」とダフニス。
 二人でしばらく裸でじっと横たわったあげく、ダフニスは山羊のまねをしてクロエーに後ろからのしかかったりしましたが、結局どうしていいかよくわからず、とうとうダフニスは泣き出してしまいます。
 そこに現れたるはリュカイニオンという町から嫁いできた美人で垢抜けした女房。ダフニスとクロエーの現状はとうにお見通し。自分の欲望を満たすチャンス到来とばかりにダフニスをだまして森の中に誘い込むと、まんまと愛の手ほどき。しかしその後もダフニスは、「クロエーに同じことをしようとすると、痛がって泣き出して血だらけになる」とリュカイニオンに言われたことを心配し、あいかわらずキスと抱き合うことしかしませんでした

 夏になると、美しい娘へと成長したクロエーに、あちこちから縁談が持ち上がります。あわてたダフニスは、自分もお婿さんとして立候補しようとしますが、他の金持ちの求婚者には太刀打ちできません。すると霊験あらたかにも三人のニンフが再び夢枕に立ち、お金のありかをダフニスに教えます。
 お告げに従って大金を手にしたダフニスは、クロエーの父ドリュアースに結婚を申し出ます。大金に気を良くしたドリュアースは、自らダフニスの父ラモーンに結婚を掛け合いに行きますが、ラモーンは「自分は領地を持っているご主人様の使用人にすぎない。秋になるとご主人様がやってくるので、その許可が得られたら結婚を許しましょう」と答えます。

巻4
 秋になり、ラモーンはご主人様を迎える準備にせいを出します。
 そこに領主様より一足早く、ご主人様の息子アステュロスが、取り巻きの遊び人グナトーン(男)を伴って到着。グナトーン(男)はクロエーではなくって、なんとダフニスにご執心。ダフニスに後ろからのしかかって「自由にさせてくれ」というと、ダフニスは意味がわからず、「牡牛が牝牛に乗るのはあたりまえだが、牡牛に牡牛が乗るのは見たことがない」と逃げ出します。
 やがて主人のディオニューソファーネスが到着。裕福で、誠実なお人柄。丹精込めて手入れされた畑に満足し、ダフニスの山羊飼いとしての仕事ぶりもほめ讃えます。ラモーンはここぞとばかりダフニスの出生の秘密をみなに打ち明け、証拠の品々を示します。それを見た主人の妻が大声をあげます。なんとダフニスは主人夫妻の実の息子だったのです。皆が大喜びするなか、ダフニスは「そうだ山羊に水を飲ませにいかないと」などと言い出し、「をひをひ、この子はまだ山羊飼いのつもりでおるわい」などと、ホームドラマのような会話があったりします。
 けれどもクロエーは「ダフニスがご主人様の息子だとしたら、羊飼いの私のことなんかもう忘れてしまうに違いないわ」とただ一人嘆くことしきり。そのときクロエーの父ドリュアースは、自信に満ちた表情で、「大丈夫だ、俺にまかせろ」。お父さんかっこいー。
 翌日ドリュアースは、証拠の品々を抱えご主人様を訪ね、クロエーの出生の秘密を打ち明けました。品々を吟味した主人夫妻は、クロエーが立派な家柄の娘であることを確信し、二人の婚約を許します。着飾ったクロエーの美しさに、一同ばかりかダフニスまでもびっくり。
 クロエーは、町一番の年長者の老人の娘であることがわかりました。ダフニスとクロエーの希望で、村に戻って牧人風の結婚式をあげることになりました。ディオニューソファーネスは村人を全員呼んで豪華な宴を催しましたが、山羊たちもこれに加わったので、その匂いに町から来た人たちは閉口しました。
 結婚式の夜、ダフニスはリュカイニオンに教わったことを初めてクロエーに試みます。クロエーも、これまで長い間二人がしてきたことが、子供の遊びにすぎなかったことを初めて知ったのでした。


 う〜ん、ライトノベル顔負けのラブ・ストーリーですね〜。書いててこっちがこっぱずかしいです。
 べたなストーリーではありますが、ちょっと感動するな〜。昔のおおらかな時代というか、エロい表現が少なくないです。いろいろ事件や困難は生じますが、みななんだかいい人で、最後はめでたしめでたしみたいなところがほっとしますね〜。

 こうしてみると、もともとのフォーキン版やアシュトン版、ミルピエ版は、原作の一部をうまく利用している感じですね。マイヨー版は、恋のこの字も知らない男女の淡い恋がやがて大人の愛へと成長して行くという原作の大枠をうまく生かした読み替えと言えそうです。

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