感情表出(EE)を下げていきいき家族(その5)
家族の感情表出(EE)と統合失調症の再発について勉強をしてきた、みのぽん太の「おもいッきりブログ」、今回が最終回です。
まず、これまでのおさらいをいたしましょう。
感情表出(EE)とは、 家族が表す次の三つの悪い感情 批判 敵意 巻き込まれ |
で、こうした悪い感情を家族が持っていると、統合失調症の再発率が上がるんでしたね。
統合失調症患者の9ヶ月後の再発率は 家族が低EEだと約1〜2割 家族が高EEで、週に35時間以上接していて、 服薬も不規則だと約9割 |
ですから、ご家族のEEを下げ、過剰に患者さんと接触しすぎないことが大切なんでしたね〜。
EEを下げるには、 統合失調症の正しい知識を身につける 患者さんに対する接し方や対応を学ぶ 患者さんの気持ちを受け入れる 患者さんに関わりすぎず、うまく距離をとる |
さて、まとめは以上です。今回は、会場の奥樣方から質問をお受けして、お答えしたいと思います。さあ、どなたでもどうぞ。
「みのぽん太さんの話しを聞いていると、ようするに家族が悪い、家族が悪いから子どもの統合失調症が悪化するということですか?」
いえいえ、違います。家族が病気の悪化の「原因」なのではありません。「患者さんの病気が良くならないのは、患者さんの努力が足らないからではない」とぽん太は申し上げました。同じように、「患者さんの病気が良くならないのは、家族の努力が足らないからではない」と申し上げたいと思います。確かに家族のEEが高いと、患者さんの再発率は上がります。しかし「家族のEEが高い理由は、家族の努力不足や落ち度ではない」のです。
EEが高くなるのは、重い慢性疾患の患者を家族に抱えたことに対する、正常な反応でもあります。これまで順調に育って来たお子さんが、病気によって「普通」の生活ができなくなることは、患者さんにとっても、ご家族にとっても、たいへん苦しいことです。
病気の知識がないことでもEEは高くなりますが、それは主治医からの説明が不十分だったり、病気について学べる機会が少ないことが原因です。お子さんの病名さえ知らされていない家族もいっぱいいるのです。
家族の孤立も高EEの原因となります。周囲のひとたちの偏見や誤解を恐れ、誰にも相談することができない家族も多いのです。家族会など、家族の思いをひとに話し、わかってもらえる場を増やすことが必要です。また、世間の偏見や誤解を正していくことも大切なのです。
このように、家族のEEを下げるには、ご家族だけが努力すればいいのではなく、社会全体が取り組む必要があるのです。
「要するに腹が立っても感情が顔に出ないようにすればいいのですか?」
いえいえいえ、怒りを押し殺して笑っている表情ほど、恐いものはありません。感情というものは、ことばにしなくても相手に伝わるのです。「怒っていても顔に出さないようにする」のではなく、「怒らないようになる」ことが大切です。そのためには、これまで述べてきたように、家族教室などで病気について学んだり、家族会に参加したりすることがよいでしょう。
「巻き込まれないほうがいいとおっしゃいましたが、子どもが何をしても好きにやらしておけばいいんですか?」
いえいえいえいえ、過干渉もいけませんが、無関心もまたいけません。放っておくのではなく、「暖かく見守って」下さい。思い出してください。お子さんがまだ小さくて、やっと歩けるようになったころ、お子さんにどのように接していました? 転ぶと危ないからといって歩かせずに抱っこしていたら、お子さんは歩けるようになりません。かといって放っておいたら、転んで怪我をしたり、階段から落ちたりするかもしれません。お母さんたちは、子どもが転びそうになるのをハラハラしながらも、暖かく見守っていたはずです。そして本当に危ないときは、手を出して助けたはずです。患者さんたちにも、そのときのことを思い出して接していただきたいと思います。
さあ、そろそろ時間となりました。これで「おもいッきりブログ」は終了します。また機会がありましたら、みのぽん太とお会いしましょう。
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