「ローマ皇帝カエサルは帝王切開で生まれた」は間違い
前回の記事でぽん太が取り上げた山田規畝子『壊れた脳 生存する知』(講談社、2004年)でぽん太が気になったのは、次の文章です。本書の本筋とはまったく関係のない細部ですが、このブログは『ぽん太の「みちくさ」精神科』ですから許してくださいね。
さて、著者が長男を出産する際に、脳出血を起こさないように帝王切開を行ったというくだり。著者は「帝王切開はその名のとおり、皇帝の子どもが生まれるくらい大事をとるときに行う出産法だから、これより安全な産み方はない」(78ページ)と書いています。
しかしぽん太の記憶では、帝王切開はローマ皇帝カエサルが「生まれた」ときに行われたのであり、カエサルという名をとってドイツ語でKaiserschnittと呼ばれるため、「帝王」切開という日本語に訳されたはずです。だから子どもは安全だけど、腹を切られた母親のほうはかえって危険だったんじゃないの?
このように心のなかでツッコミを入れたところ、次々と疑問がわいてきました。ひょっとしたら医学の発達していないローマ時代のことだから、腹を切られた母親はそのまま死んじゃったのかしら? 母親を殺してまで子どもの安全をはかるなんて残酷なことが本当におこなわれていたのだろうか? だいいち、カエサルが帝王切開で生まれたというのは本当なの?
そこで調べてみたところ、まず「カエサルはローマ皇帝ではない」という衝撃的な事実に行き当たりました。ひょっとしてみなさんには常識ですか? ぽん太は世界史は苦手でまったく知りませんでした。カエサルは独裁的権力を得ましたが、三頭政治のひとりにすぎず、はじめて皇帝(imperator)となったのはアウグストゥス(=オクタビアヌス)だったそうです。だからタイトルの「ローマ皇帝カエサルは帝王切開で生まれた」は、「ローマ皇帝カエサル」という時点で、すでに間違っているわけですね。ぽん太は2005年2月28日の記事「2月だけ28日なのはアウグストゥス皇帝のわがままのせい」のなかで「シーザーがローマ皇帝になったころ」と書きましたが、シーザー(=カエサル)がローマ皇帝になったことはただの一度もありませんでした。
さて、「帝王切開」の問題に戻りましょう。帝王切開はドイツ語ではKaiserschnitt、ラテン語ではsectio caesareaです。ぐぐってみると、カエサルは帝王切開で生まれたのではないということは、ほぼ確実なようです。
なぜなら、当時の医学技術でお腹を切って、赤ちゃんもお母さんも助けることができたとは考えられないからです。カエサルの母親がお産のときに亡くなっていないことは、のちにカエサルが母親に宛てて書いた手紙が残っていることから、確かと考えられるといいます。ただ、ぽん太自身はソースを確認していませんので、エビデンスがあるとはいえません。カエサルについて書いた本でも読んでみようかな。
すると次に問題になるのは、「カエサルが帝王切開で生まれた」という伝説あるいは誤解がいつどこで生まれたのか、ということになります。これに関しては、ネット上ではさまざまな説が流布しているようです。これも話しだすと長くなりそうなので、次の機会に・・・。
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