「世帯」の範囲が見直されるようです/自立支援医療費
自立支援医療費の自己負担額は、「世帯」の収入によって決まる仕組みになっています。この「世帯」の解釈に関して、2005年4月13日に以下のようなニュースが流れました。
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所得控除受けなければ免除 障害福祉利用料の家族負担
政府・与党は13日、今国会に提出中の障害者自立支援法案に盛り込まれた福祉サービス利用料の親やきょうだいなどの家族負担について、税制度で所得の障害者控除を受けないなどの条件で、負担を免除する方針を固めた。現在、親やきょうだいは成人障害者の扶養義務者から外れており、制度変更による大幅な家族負担増を懸念する障害者団体などの声に配慮した。
法案ではサービス利用料の1割を本人が負担し、負担能力は世帯単位で決まる。本人が払えない場合は実質的に同一世帯の家族負担となる。
この家族負担について、障害者控除を受けない場合や本人を医療保険の被扶養者にしないことなどを条件に、親、きょうだい、子どもの負担を免除。控除などを受けている場合は負担を求め、どの制度を使うかは選択できるようにする。配偶者にはこうした条件にかかわらず負担を求める。
(共同通信) - 4月13日19時10分更新
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「世帯」の範囲を少し狭める方向で考えているようです。ただそのかわり家族の障害者控除を認めなかったり、医療保険を別々にさせるなどするようで、どちらが得になるのかの判断が非常に複雑になるような気がします。
「世帯」の収入によって医療費の自己負担額が決まることは、以前から問題にされてきました。なぜならそれは、実質的には障害者の家族に負担を強いることであって、たとえば複数の障害者を抱えた家族は大きな負担となるからです。
障害者の家族の負担を減らし、社会全体で支えていこうというのが、福祉の大きな流れです。老人の「介護保険」は、これまで家族が担ってきた介護を、保険で助け合って社会全体で支えて行こうという制度です。同じ流れのなかで精神障害の「保護義務者」も平成5年には「保護者」と改められ、「自傷他害防止監督義務」も平成11年になくなりました。
ところが自立支援医療費を「世帯」で決定するということは、この流れに逆行し、再び家族の負担を増加させるものです。たしかに福祉にもある程度のコスト意識を持ってもらうことは大切だと思います。しかし、小泉さんの「自己責任」の考えを福祉の分野に広げ、障害者に過大な「自己責任」を要求したり、さらには家族の「連帯責任」を強いるのは間違っているとぽん太は考えます。
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