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2005/06/18

ジオンゴ『川をはさみて』に思わず感動

 山の話題を続けていたぽん太ですが、アフリカのことを忘れていたわけではありません。ケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴの『川をはさみて』(北島義信訳、門土社、2002年)を読んでみました。
 舞台は1920〜1930年代のケニア。ナイロビ北部に広がる先祖伝来のギクユ人の土地に、キリスト教会を拠点に白人が侵入しつつあります。住人の一部はキリスト教に帰依し、民族の慣習を捨てて信仰を広めようとします。偉大な予言者の血を引く若者ワイヤキは、キリスト教の精神や白人の文化を認めつつも、民族の伝統と尊厳を守る必要を感じます。ワイヤキは独立学校を設立し、ギクユ人に教育を与えることに熱中します。しかし、キリスト教を信仰する住民と、伝統的な慣習を重んじる住民との対立は次第に高まり、憎しみへと変化していきます。ワイヤキは、ギユク人同士が対立せず、団結して白人と闘うべきであると人々に説くのですが・・・。やるせない結末は現在にいたっても続くアフリカの混乱を思わせます。
 植民地支配をしようとする白人と、伝統社会との対立を描いた小説は、よくあるパターンとも言えますが、ぽん太は思わず感動してしまいました。
 ぽん太が以前のブログで書いたように、ヘミングウェイが最初にアフリカを訪れたのは、ちょうどこの小説の舞台となっている1933年から1934年にかけてでした。しかしヘミングウェイはこうした西洋とアフリカ社会との問題には関心を持たず、金持ちの娘と結婚して安楽な生活を送りつつもヒット作を書けないでいる自分の悩みに没頭していただけでした。
 作者のグギ・ワ・ジオンゴは1938年にケニアに生まれた作家で、現在はアメリカの大学で文学の教授をしているそうです。斉藤龍一郎さんのホームページで、顔写真も見ることができます。『川をはさみて』はジオンゴが大学在学中の1961年に書いた作品です。
 この時代について宮本正興他編『新書アフリカ史』(講談社現代新書、1997年、439〜443ページ)で調べてみると、1950年代のケニアは「ケニア土地自由軍」が白人に対する戦闘を繰り広げた時代であり、それが1964年の自治国としての独立へとつながっていきました。ところがこの闘いは西洋では「マウマウ団の反乱」と呼ばれ、アフリカ人による白人皆殺し運動と見なされています。ケニア土地自由軍の資料は、イギリス軍によって持ち去られ、ケニア独立時のイギリスとの密約によって、2013年まで公開されないことになっているそうです。

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