『法華経』を読む(1)ーーSFX映画を思わせるスペクタクルな導入部
ぽん太は宮沢賢治が好きなこともあって、『法華経』は一度読んでみたいと思っていましたが、ついに初めて読む機会を得ました。今回読んだのは、坂本幸男、岩本裕訳注の岩波文庫版です。鳩摩羅什が漢訳した『妙法蓮華経』、その読み下し文、そしてサンスクリット語原点からの邦訳の三点セットに、解説も充実!、かなりお得です。
出だしがいきなりドラマチックです。霊鷲山(りょうじゅせん)に滞在する仏陀のまわりにもろもろの修行者、もろもろの神々、もろもろの信者が集まっています。おもむろに仏陀は瞑想に入ります。すると天上の花々が降り注がれ、大地は震動します。『百年の孤独』で花が降り注ぐ場面が思い出されます。ちなみに『百年の孤独』はガルシア・マルケスの小説であって、焼酎の名前ではありません。ちなみにぽん太は焼酎の『百年の孤独』も大好きです。
次いで仏陀は、眉間にある毛の環(ほくろみたいなやつです)から光線のビームを放ちます。するとその光は、無数の仏が導く無数のパワレルワールドをくまなく照らし出します。それぞれの国で、地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天の六道をもろもろの生き物が輪廻する様子、修行に励む人々、仏たちが説く教えなどが、すべてくっきりと見通せるのです。あらゆる時間と空間を超えて全宇宙が同時に現れるのです。まさに最新のSFX技術を駆使して映画化したくなるようなスペクタクルです。
さて、この奇跡を見たマイトレーヤはマンジュ=シュリーに、なぜ仏陀がこのような奇跡を行ったのかと問います。マイトレーヤとは、広隆寺の弥勒菩薩で有名な弥勒菩薩ですね。そしてマンジュ=シュリーは文殊菩薩です。「三人寄れば文殊の知恵」などというように、智恵の菩薩として有名ですが、ナトリウム漏洩事故を起こした高速増殖炉もんじゅに勝手に名前を使われて、迷惑しているようです。
智恵のあるマンジュ=シュリーはマイトレーヤの問いに答えます。すなわち、はかり知れない昔、チャンドラ=スールヤ=プラディーパという同じ名前を持つ完全なさとりに達した阿羅漢(あらかん:完全な悟りに達した者)、相次いで二万人この世に現れた。そして、その最後のチャンドラ=スールヤ=プラディーパが、まさに今の仏陀と同じような瞑想に入り、同じような奇跡を行った。そしてその後、『正しい教えの白蓮』という教えを説いた。だからこれから仏陀も、『正しい教えの白蓮』を説くであろう。そしてチャンドラ=スールヤ=プラディーパが『正しい教えの白蓮』を説いたときにそれを聞いて完全なさとりに達した弟子とは、実は私(マンジュ=シュリー)だったのだ。そしてそのとき、教えをまったく覚えることができない怠け者だった弟子がマイトレーヤだった。以上のようにマンジュ=シュリーは答えるのです。
無限、反復、遠い過去と現在の因縁。気を失いそうになるほど遠大です。地の文が詩によって反復される構成、とても芸術的です。
さてぽん太たちも、仏陀が説く『正しい教えの白蓮』に耳を傾けることにしましょう。
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