藤田みどり『アフリカ「発見」』を読むーーやはり日本人も奴隷売買されていた
『アフリカ「発見」 日本におけるアフリカ像の変遷』(藤田みどり著、岩波書店、2005年)を読んでみました。日本人がアフリカとどのように関わり、どのようなイメージを抱いてきたか、それらは時代のなかでどう変わってきたかが書かれています。
そもそも黒人が初めて日本に来たのは、ポルトガル人が種子島に漂着してからわずか3年後の1546年だそうです。この黒人はヨーロッパ船の船員か下僕だったと思われます。好奇心の強い日本人は、黒人にかなりの興味をいだいたようで、遠くは百キロも離れたところから見物にきたそうです。
織田信長は、宣教師の一行が信長に謁見を申し入れたとき、同行の黒人見たさに予定より二日も早く本能寺に招きました。信長は、黒い肌を目の前にしても本物だと信じられず、上半身を裸にしたうえに洗わせて確認し、子どもたちを呼び寄せて見物したそうです。
ところで以前の記事でぽん太は、ヨーロッパ人が黒人を奴隷売買したのなら、日本人も奴隷売買したのではないかと書きましたが、本書には日本人の奴隷売買のことが書かれています。
はやくも1550年代には、日本人は奴隷として海外に売り飛ばされていました。インドのゴアではポルトガル人よりも日本人奴隷の方が多かったと言われており、また天正の少年使節も、同胞が海外にあちこちに安値で売りさばかれて使役されているのを見て、憐憫の情を抱いたと証言しています。
1587年九州に出兵した秀吉は、そこで初めて日本人の奴隷売買の実態を知って激怒します。日本人奴隷は手足に鎖をつけられ、男女を問わず舟底に押し入れられ、さながら地獄のようであったといいます。秀吉は奴隷売買の禁止令を出しますが、以後も奴隷売買は跡をたたなかったようです。
さて、その後ヨーロッパ諸国に肩を並べようとしていった日本は、ヨーロパ人のアフリカに対する偏見をそのまま受け入れて行ったようです。本書を通じて、アフリカ人に対する日本人独自の視点といったものは特に見られませんでした。また本書では、近代以降の分析が小説や映画を素材にして行われているのが少し物足りなく思いました。政治的・経済的な関わりも含めて論じて欲しかった気がします。
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