「ロスの病院、患者捨てる 救急車で安宿街に」というタイトルの記事が、2006年10月25日の朝日新聞に出ていました。
その記事によると、「米ロサンゼルスの民間病院を退院した患者5人が、救急車に乗せられて市中心部近くの安宿などが集まる地域に置き去りにされたことが24日、ロサンゼルス市警の調べでわかった。病院のほか近所の行政機関までが貧しい患者らを「捨てに来る」として日ごろから問題になっていた。現場をビデオに収めた市警は、患者の保護を定めた連邦法違反などの疑いで捜査に乗り出した」のだそうです。
つまり、病院に入院して治療を行い、病気がある程度改善して入院の必要はなくなったけれども、退院先や受け入れ先がない患者を、病院が車で運んで安宿街に放置しているのです。
記事によれば、こうした行為は複数の病院が以前から行っていたものだそうです。
入院治療の必要がなくなったにもかかわらず、家庭で介護できない、施設が空いていないなどの理由で、退院できずに入院を続けていることを、「社会的入院」といいます。日本では医療制度改革の一環として、社会的入院の解消が声高に叫ばれています。社会的入院を減らすことは、患者さんの人権という視点からも、医療費の削減という視点からもいいことのように思えますが、どっこい現実はそう簡単ではありません。退院した患者さんの受け皿がホントにあるのかという問題があるからです。
社会的入院の解消は、身体疾患や高齢者に関しては、「療養病床の削減」というかたちで進められています。たとえばこの2006年10月6日の朝日新聞の記事にもあるように、全国に38万床ある療養病床のうち約6割を、平成12年度までに削減しようと言うのが政府の方針です。この削減する23万床分の受け皿があるのかどうかが問題になっており、行き場を失った「医療難民」、「介護難民」が出現しないとも限りません。2006年10月26日の朝日新聞の記事にあるように、中央社会保険医療協議会では、アンケートをもとに約4万人の患者が介護難民になりかねないと主張する日本医師会と、データの解釈に偏りがあるとする健康保険組合側が、真っ向から対立している状態です。
精神障害の領域では、2003年(平成15年)から実施されている新障害者プランにおいて、条件さえ整えば退院可能な社会的入院患者が全国で7万2千人いるとされ、10年間で解消することが目標に掲げられました。こちらに関しても、受け皿が不十分なのではないかと言われてきました。今年になって厚労省は、2006年8月24日の朝日新聞の記事にあるように、精神科病院の一部を「退院支援施設」に転用することを認めるという秘策を打ち出しました。患者さんが入院していた病棟が、名前だけ「退院支援施設」に変わり、いつの間にか退院したことになるという画期的(?)な制度ですが、当然障害者団体からは反発の声が上がっています。
どうなるにせよ、アメリカのようにだけはなってほしくないというのが、ぽん太の願いです。
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