【医療制度】延命やめたら医師に2000円?「後期高齢者終末期相談支援料」とは
平成20年4月1日から開始された後期高齢者医療制度は、その実態が一般に知れ渡るにつれ、ますます批判が強まっているようです。政府はあわてて「長寿医療制度」などという別名をつけましたが、一部では「平成姥捨て山制度」などと揶揄されているようです。それにしても「長寿医療制度」というのもセンスのない名前で、口にするのが恥ずかしい感じがしますね。昔の「E電」を思い出します。え、「E電」なんて知らない? 知らない方は例えばこちらをどうぞ。
後期高齢者医療制度の問題点は既にいろいろと挙げられていますが、最近話題になったのは「後期高齢者終末期相談支援料」で、週刊ポスト(2008年5月9・16日号)が「後期高齢者の終末医療『延命やめたら医師に2000円』」というセンセーショナルなタイトルでスクープしております。
「後期高齢者終末期相談支援料」とは、以下のようなものです(厚労省のこちらのページのなかにあるこちらのpdfファイルの一番最後にあります)。
B018 後期高齢者終末期相談支援料 200点 注 保険医療機関の保険医が、一般的に認められている医学的知見に基づき回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者である患者に対して、患者の同意を得て、看護師と共同し、患者及びその家族等とともに、終末期における診療方針等について十分に話し合い、その内容を文書等により提供した場合に、患者1人につき1回に限り算定する |
これだけではよくわからないと思いますが、細かな運用に関しては「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」(保医発第0305001号)に書かれています。厚労省のこちらのページのなかにあるこちらのpdfファイルの33ページにあります。リンクを辿るのも大変でしょうから、ちょっと長いですけど全文引用しておきましょう。
B018 後期高齢者終末期相談支援料 (1) 後期高齢者終末期相談支援料は、後期高齢者である患者が、終末期においても安心した療養生活を送ることができるよう、医師等の医療関係職種から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者が終末期における療養について十分に理解することを基本とした上で、診療が進められることを目的としたものである。 (2) 一般的に認められている医学的知見に基づき終末期と保険医が判断した者について、医師、看護師その他の医療関係職種が共同し、患者及びその家族等とともに、診療内容を含む終末期における療養について、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」( 平成18年5月21日医政発第0521011号)、「終末期医療に関するガイドライン」(日本医 師会)等を参考として、患者の十分な理解を得るために話し合い、その内容を文書(電子 媒体を含む。)又は映像により記録した媒体(以下、この区分において「文書等」という。)にまとめて提供した場合に患者1人につき1回に限り算定する。とりまとめた内容の提供に当たって交付した文書等の写しを診療録に添付すること。 (3) 患者の十分な理解が得られない場合又は患者の意思が確認できない場合は、算定の対象とならない。また、患者の自発的な意思を尊重し、終末期と判断した患者であるからといって、保険医は患者に意思の決定を迫ってはならない。 (4) 話し合う内容は、現在の病状、今後予想される病状の変化に加え、病状に基づく介護を含めた生活支援、病状が急変した場合の治療等の実施の希望及び急変時の搬送の希望(希望する場合にあっては搬送先の医療機関等を含む。)をいうものであること。 (5) なお、入院中の患者については、患者及び家族等と話し合いを行うことは日常の診療においても必要かつ当然のことであることから、特に連続して1時間以上に渡り話し合いを行ったうえで、患者の十分な理解を得ること。 (6) 時間の経過、患者の病状の変化、医学的評価の変更、生活の変化に応じて、また、患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明し患者の十分な理解を得ること。ただし、変更があった際の文章等の作成に係る費用については所定点数に含まれ、別に算定できない。 (7) 入院中の患者については退院時又は死亡時、入院中以外の患者については死亡時に算定する。 |
この制度に関しては、日本ALS協会も4月24日、見直しを求める見解を表明しております。例えば毎日新聞2008年4月25日のこちらの記事をどうぞ。「見解」の全文はちと見つかりません。日本ALS協会のサイトにでもアップしていただけるといいのですが。ちなみに記事のなかに出ている全日本病院協会作成の意思表示の文書は、たぶんこのpdfファイルだと思います。
終末期をどう迎えるかというのは大変複雑でデリケートな問題です。十分に話し合いが行われたか、医師の情報提供が適切に行われたか、患者や家族(それに医師も!)の複雑な思いが切り捨てられてしまうのではないか、あとで気持ちが変わったときに相談しにくいのでは、などの心配があります。また終末期が近づいた患者さんは精神的に弱って、ときにはうつ状態になったりします。そういった状態では正しい判断ができない恐れもあります。また、家族に迷惑をかけるのを申し訳なく思い、自分の希望に反して延命を断るかもしれません。こうした問題を抱えた状態で、制度化のみが一人歩きして行くのは危険に思われます。
反発にあわてた厚労省は、平成20年4月28日に厚生労働省保険局医療課の事務連絡というかたちで、「患者の希望が確認できない場合等には、「不明」、「未定」等とすることで差し支えない」と、事実上の修正を発表しました(こちらのページのこちらのpdfファイル)。
事 務 連 絡 地方社会保険事務局長 平成20年4月28日 都道府県民生主管部(局) 国民健康保険主管課(部)長 殿 都道府県高齢者医療主管部(局) 高齢者医療主管課(部)長 厚生労働省保険局医療課 後期高齢者終末期相談支援料の取扱いについて 標記については、「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成20年3月5日保医発第0305001号)により本年四月の診療報酬改正に伴う留意事項を定めたところであるが、当該項目についてとりまとめる文書等の取扱い等は下記のとおりであるので、遺憾のないよう関係者に対し周知徹底を図られたい。 記 後期高齢者終末期相談支援料の算定にあたっては、病状が急変した場合の治療等について、医師、看護師その他の医療関係職種が共同し、患者及びその家族等とともに話し合い、その内容を文書等にとりまとめることとしているが、「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成20年3月5日保医発第0305001号)にあるように、後期高齢者終末期相談支援料は、終末期においても安心した療養生活を送ることができるよう、患者が終末期における療養について十分に理解することを基本とした上で診療が進められることを目的としたものであるため、患者の自発的な意思を尊重し、患者に意思の決定を迫ってはならず、病状が急変した場合の治療方針や急変時の搬送の希望等について、患者の希望が確認できない場合等には、「不明」、「未定」等とすることで差し支えないものである。 |
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