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ちょうど洞爺湖サミットが開かれた7月上旬、ぽん太とにゃん子は北海道に幌尻岳登山に行ってきました。
【山名】幌尻岳(2052.8m)
【山域】北海道
【日程】2008年7月8日〜7月9日
【メンバー】ぽん太、にゃん子
【天候】(7/7)晴れ、(7/8)晴れ、山頂付近ガス
【コース】(7/7)登山口(10:53)…幌尻山荘(15:43)(泊)
(7/8)幌尻山荘(4:08)…幌尻岳山頂(8:08)…幌尻山荘(11:35)…登山口(15:53)
【マイカー登山情報】振内の国道237号線からの曲がり角には目立つ看板があります。しばらくは舗装道路ですがやがて未舗装の林道になります。しかし、そんなに悪路ではなく、小型バスなども入ってました。駐車スペースはけっこう広いです。
【注意!!】幌尻山荘は完全予約制で、かつ小屋の周囲も含めて幌尻岳全域でテント設営も禁止です。日帰りで行くのでなければ、必ず山小屋の予約が必要です。予約方法は下記のリンクに書いてあります。
【参考リンク】
・http://www1.ocn.ne.jp/~frenai/index.html
幌尻岳:幌尻岳の案内全般。幌尻山荘の申し込み方法もあり。
・http://www5.ocn.ne.jp/~biratori/
幌尻岳2053:幌尻岳の案内全般。
・http://yamachizu.mapple.net/mt01-0008/
「幌尻岳」山と高原地図Web:登山地図でおなじみの昭文社のサイト
【見た花】(登山口〜幌尻山荘)サンコタケ(初)、オカトラノオ、キツリフネ、ハナシノブの一種(初)、オオバミゾホウヅキなど
(幌尻山荘〜山頂)ウズラバハクサンチドリ(初)、シナノキンバイ、アオノツガザクラ、エゾノツガザクラ、イワヒゲ、オオイワツメクサ、タツナミソウの一種、エゾカンゾウ、ツバメオモト、ウコンウツギ、チシマヒョウタンボク、ミヤマハンショウヅル、コケモモ、イソツツジ、ミヤマダイコンソウ、チシマフウロ、ミヤマアズマギク、チングルマ、ヨツバシオガマ、ムカゴトラノオ、エゾミヤマクワガタ、エゾノハクサンイチゲ、エゾノタカネヤナギ、ムシトリスミレ(初)、ナンブイヌナズナ、イワウメ、キバナシャクナゲ、ミヤマチドリ(?)など
初日は山荘までの行程なので、民宿をゆっくり出て、11時前に登山開始。しばらくは単調な林道歩きで、標高が600〜700mと低いためとても暑くて閉口しました。取水口を過ぎて少し行くと、有名な徒渉の繰り返しが始まります。持参した運動靴に履き替え、ズボンの裾をまくって徒渉開始。水が冷たくて気持ちがいいです。ここ数日天気がよかったので水量も少なく、深いところで太腿くらいでした。
地面から悪魔の手が! あとで調べたら、サンコタケというキノコだそうです。
ハナシノブの一種だと思うのですが、よくわかりません。涼やかな花です。
幌尻山荘はこじんまりとして清潔な山小屋で、完全予約制だけあってゆったりと寝ることができます。水場の水は(神経質な人でなければ)エキノコックスを気にせずに湧かさないで飲むことができます。また、フトンも食事もありませんが、ビールはあります(ただし売切れ御免)。明日の長丁場に供え、みな早寝をしていました。
翌日、下りの人はまだ夢のなかですが、登りの人たちは3時頃からみなゴソゴソと起きだして山荘を後にして行きます。ぽん太も4時頃に出発。もうすっかり夜が明けていました。
急登を延々と登って行くと、やがて稜線に出て、広々としたカールが目に飛び込みます。残念ながら山頂付近はガスっていて見えません。お花畑のなかの稜線歩きはまるで天国のようです。
ただのハクサンチドリに見えますが、葉っぱの点々に注目。ウズラバハクサンチドリだそうです。
エゾミヤマクワガタがあちこちに咲いていました。
ムシトリスミレです。小さな紫の花ですが、ぽん太は初めて見ました。
頂上はあいにくガスのなか。時々カールが見えました。
同じ道を下山し、山荘に着いたのが11時半。すでに行動時間7時間半、十分普通の登山一回分です。しかしここからさらに4時間近く歩かないと行けません。最後の林道歩きはヘロヘロでした。
感想:とにかく長い。幌尻岳で百名山完登を迎えるひとが多いそうで、この日も百登目を祝っているひとがいましたが、林道歩きや徒渉もあり、行程の長いこの山が最後に残ってしまうのはよくわかります。でも、苦労する甲斐のあるすばらしい山でした。
7月24日の夜に上野にアメリカン・バレエ・シアターの「白鳥」を観に行ってきました。こちらが今回のABT日本公演の公式サイトです。
この日しか予定が開いていなかったので切符を取ったのですが、その後、同日の昼にアナニアシビリとカレーニョによる追加公演が決定! しょ、しょ、ショック。さすがに昼・夜と連続して「白鳥」を観る気にはならんがね。仕方ないのでニーナは泣く泣くパスしました。
ABTの「白鳥」といえば、なんといってもマッケンジー版の演出が見物。今回はなんと日本初演だそうです。公式サイトの情報によれば、マッケンジー版の初演は1993年、現行の改訂版は2000年初演だそうです。
目をつぶって序曲を聞いてたら、いつの間にかプロローグが始まっていました。ところで東京ニューシティーフィル、もうちょっと頑張ってほしいものです。いいところで三回も音を外しおって! せっかく世界最高のバレエを観てるのに、オケがこれでは……。
で、プロローグは、よくあるようにオデットがロットバルトによって白鳥に変えられるシーンなのですが、おっ、なんかオデットとロットバルトがいい雰囲気。無理矢理さらわれたのではなく、オデットもロットバルトに気がある感じです。しかしまてよ、年齢にかなりの開きがあるはず。もともと「白鳥」は、王子のジークフリートがマザコンなので有名ですが、オデットもファザコンという設定でしょうか。さて、ロットバルトがいよいよオデットに魔法をかけ、二人は幕の裏へ。ここで白鳥の姿に変身したオデットが出てくるのかと思ったら、ロットバルトが白鳥の人形を持って登場。白鳥の首をぐいぐい締め上げます。ロットバルトが首から手を離すと、首がぐったりとしなだれます。どうやら首の骨が折れているようです。これは動物虐待か、それともDVか? むむむ、恐ろしい。
しかもロットバルトの格好、プロローグでははっきりとは見えないのですが、第2幕でよくみると、定番のフクロウではなくて、ディズニーにでも出てきそうなグロテスクな怪物です。
第1幕は道化なしバージョン。ぽん太は「白鳥」の道化が好きなのに、ちょっと残念です。貴族や農民達の踊りは、整然とした幾何学的な群舞ではなく、舞台の中央と右と左で異なる踊りを踊っていたりしながら、全体として美しくまとまっているのが見事でした。それとは対照的に、第2幕の白鳥たちの踊りは幾何学的になっていました。
ジークフリートはかなりの女好きのようで、自分も踊りの輪に加わり、一人の女性に声をかけて一緒に踊り出します。まわりは「をを、王子はあの娘に気があるのか」と動揺します(あとで再び触れますが、この場面は第3幕で反復され、そこではロットバルトが女王の手に口づけをすると、来客たちが「をを」と動揺します)。その後王子は一人の娘ではものたらず、次々と相手の女性を変えて踊ります。ナンパ成功かと思ったところにお母ちゃんが登場。遊んでばかりいないで結婚することを命じ、弓矢を与えます。弓矢がペニスを象徴しているというのは俗流精神分析の常識です。やがて日も落ちてきて、王子の友人たちはあちらに二人こちらに二人とカップル状態。ひとり取り残された王子は「マザコン王子の憂うつ踊り」を舞い、弓を持って夜の町に女買い、もとい、夜の湖に白鳥狩りにでかけます。
第2幕はプティパ/イワノフ版にほぼ忠実。
すごいのは第3幕です。第3幕は花嫁選びの舞踏会のシーンで、チャールダーシュ(ハンガリー)、スペイン、ナポリ、マズルカ(ポーランド)の4つの民族舞踊が踊られます。一般的なプティパ/イワーノフ版の演出では、チャールダーシュ・ナポリ・マズルカは舞踏会を盛り上げるために呼ばれた舞踏団で、スペインはロットバルトがつれて来た悪の舞踏団という設定です(ちなみにブルメイステル版では舞踏団はすべて悪魔の手先)。ところがマッケンジー版では、花嫁候補がハンガリー・スペイン・イタリア・ポーランドの4人の王女(通常は6人)で、各々がそれぞれの国の舞踏団をつれて来たという設定です。ハンガリー・スペイン・イタリア・ポーランドの王女のなかから花嫁を選ぶなどという大それた発想をするとは、さすが世界を仕切っていると自認するアメリカ人です。この王子が、アメリカを象徴していることがは明白です(ちなみに原作では、ジークフリートという名前からわかるとおり、ドイツのとある王国の王子です)。驚くやら呆れるやら、ジークフリートがそんなすごい国の王子様だと初めて知りました。
そこに登場するのは黒鳥を連れたロットバルト。ここで珍しくもロットバルトがソロを踊るのですが、そのとき使われるヴァイオリンの曲が、な、な、なんと、チャイコフスキーの原曲にありながら滅多に使われることのない「ロシアの踊り」です。つまり、アメリカが世界を支配しようとするのをロシアが邪魔をしに来るわけです。うう〜、ここまであからさまとは。
そうした観点から見てみると、ロットバルトは冷徹で知性的で狡猾な面と(第3幕)、暴力的な怪物の面(第2幕)を持っており、これはアメリカ映画でロシアを描く時の常套パターンです。一方の王子とオデットは、異性に関心があったりするフツーの(アメリカの)若者ですが、最後には民主主義的に力を合わせることで、悪の帝国を滅ぼします。ハリウッド映画で使い尽くされた常套的な設定です。
マッケンジー版の「白鳥」は、もうひとつ別の観点から見ることも出来ます。第3幕でロットバルトは、各国の王女達を魅了してたちまち手玉に取り、ついには女王の隣の席(つまり王=父親の位置)を占めます。先に書いたように、これは、第1幕で王子が女の子と仲良くしようとしたのに、母親に禁じられてできなかったことと対比されています(どちらのシーンも、男性が女性の手に触れるとまわりが「をを」と動揺することで、対比が強調されています)。
精神分析の中心概念であるオイディプス・コンプレックスとは、父親を殺して母と結ばれたいという無意識の構造です。ロットバルトは「母親と結ばれる」という王子の欲望を体現しているわけです。
しかし王子は、母親を奪い返そうとせず、変わりにオデットの愛を勝ち取ります。マッケンジー版では、プロローグでオデットとロットバルトが「できて」いるわけですから、ロットバルトを父親とするならオデットは母親ということになります。するとまさしく「白鳥の湖」は、父親から母親を奪い取って結婚する物語であることになります。
さて、バレエの感想ですが、全体としていまいちな印象でした。コールドバレエもあんまり揃ってなかったです。ん? いま気がつきましたが、先に述べた第1幕の自由な群舞は自由主義を表し、第2幕の白鳥たちの整然とした群舞は、北朝鮮のマス・ゲームのような社会主義・全体主義を表しているのでは!? ということは、コールドバレエが揃っていないのは、社会主義に対するレジスタンスか? なんか考え過ぎのような気がします。それから民族舞踊もあまりぱっとしなかったし、ナポリは二人のダンサーが交互に回転ジャンプ(すみません、バレエの用語を知りません)をするのが眼目なのでしょうが、肝心の回転ジャンプがよろけていては困ります。ロットバルトのロマン・ズービンも、すごいというほどではありませんでした。
そのなかで光っていたのが、オデット/オディールのイリーナ・ドヴォロヴェンコ。顔立ちからして黒鳥向きかな、と思っていましたが、黒鳥の魅惑的で挑発的な踊りのすばらしさはもとより、白鳥の清楚で悲し気な踊りも見事でした。フェッテはスピードこそ速かったですが、全部シングルだったのが少しものたりなかったです。
実のご主人という王子役のマキシム・ベロセルコフスキーも、第1幕はいまいちな感じでしたが、だんだんとよくなり、第3幕のソロは優雅さと大きさもあって、黒鳥に胸をときめかせる気持ちが伝わってきました。
カーテンコールで、第3幕のかっこいいロットバルトと、第2幕・第3幕の化け物ロットバルトが同時に出て来たのでびっくり。別々のダンサーだったのか……。よく見るとちゃんとキャスト表に書いてあるがね。公式サイトの情報によれば、化け物ロットバルトの着ぐるみの着脱にえらく時間がかかるため、ロットバルトを二人で踊り分けることになったのだそうです。
「白鳥の湖」プロローグと4幕
2008年7月24日(木) 、東京文化会館
振付 : ケヴィン・マッケンジー
原振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワーノフ
音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置・衣裳 : ザック・ブラウン
照明 : ドゥエイン・シューラー
指揮 : チャールズ・バーカー
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団
オデット/オディール : イリーナ・ドヴォロヴェンコ
ジークフリード王子 : マキシム・ベロセルコフスキー
王妃 : ナンシー・ラッファ
家庭教師 : クリントン・ラケット
王子の友人 : ブレイン・ホーヴェン
ロットバルト : ロマン・ズービン,ゲンナジー・サヴェリエフ
【プロローグ】
ロットバルト : ロマン・ズービン,ゲンナジー・サヴェリエフ
オデット : イリーナ・ドヴォロヴェンコ
【第1幕】
パ・ド・トロワ : メリッサ・ト?マス,シモーン・メスマー,ブレイン・ホーヴェン
貴族たち : マリーヤ・ブイストロワ,ニコラ・カリー,カリン・エリス=ウェンツ,ニコール・グラニーロ, エリザベス・マーツ,ルチアーナ・パリス,レナータ・パヴァム,ジャクリン・レイエス, ジェシカ・サーンド,クリスティーン・シェヴチェンコ,サラ・スミス,リーヤン・アンダーウッド, グラント・デロング,ヴィターリー・クラウチェンカ,ダニエル・マンテイ,ルイス・リバゴルダ, アロン・スコット,アイザック・スタッパス
農民たち : ユン・ヨン・アン,ジェマ・ボンド,イザベラ・ボイルストン,ローレン・ポスト,サラワニー・タナタニット, デヴォン・トイチャー,メアリー・ミルズ・トーマス,ジェニファー・ウェイレン,グレイ・デイヴィス, ケネス・イースター,トーマス・フォースター,ミハイル・イリイン,パトリック・オーグル, ジョゼフ・フィリップス,アレハンドロ・ピリス=ニーニョ,エリック・タム
【第2幕】
小さな白鳥 : ジェマ・ボンド,サラ・レイン,アン・ミルースキー,マリア・リチェット
2羽の白鳥 : クリスティ・ブーン,カレン・アップホフ
白鳥たち : ユン・ヨン・アン,イザベラ・ボイルストン,マリーヤ・ブイストロワ,ニコラ・カリー,ツォンジン・ファン, ニコール・グラニーロ,メラニー・ハムリック,イサドラ・ロヨラ,アマンダ・マグウィガン,エリザベス・マーツ, エリーナ・ミエッティネン,ルチアーナ・パリス,ローレン・ポスト,ジャクリン・レイエス,ジェシカ・サーンド, クリスティーン・シェヴチェンコ,サラ・スミス,サラワニー・タナタニット,デヴォン・トイチャー, メアリー・ミルズ・トーマス,リーヤン・アンダーウッド,キャサリン・ウィリアムズ
【第3幕】
式典長 : クリントン・ラケット
ハンガリーの王女 : ミスティ・コープランド
スペインの王女 : サラ・レイン
イタリアの王女 : ジェマ・ボンド
ポーランドの王女 : イザベラ・ボイルストン
チャールダーシュ : マリアン・バトラー,パトリック・オーグル
ニコール・グラニーロ,エリーナ・ミエッティネン,ローレン・ポスト,サラ・スミス
トビン・イースター,ルイス・リバゴルダ,アロン・スコット,エリック・タム
スペインの踊り : メラニー・ハムリック,ヴィターリー・クラウチェンカ
サラワニー・タナタニット,アレクサンドル・ハムーディ
ナポリの踊り : ジョゼフ・フィリップス,トビン・イーソン
マズルカ : ニコラ・カリー,ルチアーナ・パリス,デヴォン・トイチャー,メアリー・ミルズ・トーマス
: グレイ・デイヴィス,ロディ・ドーブル,トーマス・フォースター,ショーン・スチュワート
ロットバルト : ゲンナジー・サヴェリエフ
黒鳥のパ・ド・ドゥ : イリーナ・ドヴォロヴェンコ,マキシム・ベロセルコフスキー
【第4幕】
オデット : イリーナ・ドヴォロヴェンコ
ジークフリード王子 : マキシム・ベロセルコフスキー
ロットバルト : ロマン・ズービン
猛暑のなか歌舞伎を観に行きました。いつも通り11時スタートのつもりで歌舞伎座に行ったら、なんと今月は11時30分のスタートでした。
昼の部は、海老蔵の源九郎狐と玉三郎の静御前による「義経千本桜」! 平成18年11月の新橋演舞場で、海老蔵が源九郎狐を初役で演じた時は、発声と口調がヘンテコで、「佐藤忠信は実はオカマの狐だった」という画期的な新解釈かと思われました。最近なかなか良くなっている海老蔵、今回はどのような源九郎狐を演じてくれるか楽しみです。
さて「鳥居前」では、揚幕からの声がすでに、例のくぐもった高音が朗々と響き渡り、先行きを心配させます。しかし忠信の荒事はいつものがらの大迫力。
ぽん太が一番気に入ったのは、実は次の「吉野山」でした。玉三郎のすばらしさは言うまでもありませんが、海老蔵の忠信は実に美しい若侍で、静御前とは主従の関係でありながら、男女の情感の漂う道行きでした。踊りながらの海老蔵の表情の変化が、気持ちの細かな動きを浮かび上がらせていました。今回は清元を入れずに竹本だけの上演だそうで、華やかさには欠けましたが、古風さと格式が感じられたような気がします。海老蔵ってしゃべらないとカッコいいのにな〜。
さて問題の四の切(川連法眼館)ですが、「狐ことば」がかなり省略されている感じでした。声の調子も安定していたので、客席からの笑い声は少なかったです。また前回は、平舞台からひとっ飛びで二重に飛び乗るというジャンプ力を披露しましたが、今回はその技は封印していました。確かに狐の正体を現したあとで、義経や静御前がいる二重に登るというのは、恐れ多い感じがします。階段の途中までしか登らない今回の演技が本筋でしょう。総じてケレンを抑制し、心情表現を深めることで、両親を失った源九郎狐と、兄に追われる身となった義経の悲しみが共鳴するという、この演目本来のテーマが明確になったような気がします。でも、せっかく涙がこぼれそうになると、海老蔵の台詞や仕草に笑ってしまうのは残念です。
玉三郎はホントにすばらしいです。「四の切」で、本物の忠信を見定めようと、近づいて「ほれ、姿を見せてみよ」とばかりにセンスで欄干を軽く叩くしぐさなど、歌舞伎初心者のぽん太は具体的にどこがどういいのか言うことはできませんが、とにかく絶品でした。
夜の部も楽しみです。
歌舞伎座 七月大歌舞伎 (平成20年7月)
昼の部
一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
鳥居前
吉野山
川連法眼館
市川海老蔵宙乗り狐六法相勤め申し候
鳥居前
佐藤忠信実は源九郎狐 海老蔵
源義経 段治郎
静御前 春 猿
早見藤太 市 蔵
武蔵坊弁慶 権十郎
吉野山
佐藤忠信実は源九郎狐 海老蔵
静御前 玉三郎
川連法眼館
佐藤忠信/源九郎狐 海老蔵
源義経 門之助
川連法眼 寿 猿
妻飛鳥 吉 弥
駿河次郎 薪 車
亀井六郎 猿 弥
静御前 玉三郎
アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の公演を上野に観に行ってきました。公式サイトはこちらです。演目は「海賊」でした。バレエ初心者のぽん太は、「海賊」を観るのは2回目。前回はKバレエカンパニーで、熊川哲也が膝を故障して急きょ代役が立ったときで、以前の記事に控えめに感想を書いてあります。またもうすぐKバレエの「海賊」があり、熊川哲也がアリを踊る日のにチケットをとってありますが、今度は怪我をしないで欲しいものです。
「海賊」といえば目玉はアリですが、今回はスティーフェル。金髪で容姿端麗、カーテンコールで盛大な拍手を得ていましたが、ぽん太の感想ではいまいちでした。もうちょっとジャンプ力があるとか、演技力があるとか、観客を引きつける魅力があるといいのですが。今回のダンサーのなかでぽん太が一番引きつけられたのは、コンラッド役のホールバーグでした。手足が長いのはもとより、とても大きな踊りで、存在感がありました。メドーラ役のヘレーラは、技の切れはいまいちでしたが、柔らかい安定した踊りと豊かな表現力が魅力。見せ場の回転では前半一回おきにダブルを入れていましたが、危なげありませんでした。ちなみにスティーフェルは回転の途中で時々ジャンプを入れていました。身体のキレではギュリナーラ役の レイエスが見事。アラベスクなども美しく、今後に期待したいです。ランケデムのコルネホは、回転やジャンプの技術がすばらしかったです。
しかしこの「海賊」のストーリー、最後の船が難破してコンラッドとメドーラが生き残る落ちっていらないですよね。ランケデムらを振り切って逃げるところで終わってもいいような気がします。また「海賊」の音楽も、いろいろな作曲家の曲の寄せ集めでいまいち。
オケの東京ニューシティーはちょっともたついていたか?
というところで、全体としては、「ん〜悪くはないけど、もうひとつ!」という感じでしょうか。
あとABTは「白鳥」を観に行く予定です。
7/20の18:30「海賊」キャスト
2008年7月20日(日) 6:00p.m〜8:35p.m. 東京文化会館
「海賊 」プロローグ, 3 幕とエピローグ
演出 : アンナ=マリー・ホームズ
振付・台本改訂 : コンスタンチン・セルゲーエフ
原振付 : マリウス・プティパ
音楽 : アドルフ・アダン,チェーザレ・プーニ,レオ・ドリーブ,
リッカルド・ドリゴ,オリデンブルク公爵
ジュール=アンリ・ド・サン=ジョルジュ,ジョゼフ・マジリエ
装置・衣裳 : イリーナ・コンスタンチノヴナ・チビノワ
衣裳デザイン補足 : ロバート・パージオラ
照明 : メアリー・ジョー・ドンドリンガー
指揮 : オームズビー・ウイルキンス
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団
コンラッド (海賊の首領) : デイヴィッド・ホールバーグ
ビルバント (コンラッドの友人) : カルロス・ロペス
アリ (コンラッドの奴隷) : イーサン・スティーフェル
ランケデム (市場の元締め) : エルマン・コルネホ
メドーラ (ギリシャの娘) : パロマ・ヘレーラ
ギュリナーラ (パシャの奴隷) : シオマラ・レイエス
セイード・パシャ (コス島の総督):ヴィクター・バービー
海賊の女 : カリン・エリス=ウェンツ
海賊たち : アレクセイ・アグーディン,ヴィターリー・クラウチェンカ,ダニエル・マンテイ,パトリック・オーグル,ルイス・リバゴルダ,アロン・スコット,ショーン・スチュワート,ロマン・ズービン
海賊の女たち : ジェマ・ボンド,ツォンジン・ファン,エリザベス・マーツ,ルチアーナ・パリス,ジャクリン・レイエス,サラ・スミス,サラワニー・タナタニット,カレン・アップホフ
オダリスク : シモーン・メスマー,クリスティ・ブーン,レナータ・パヴァム
赤い服の衛兵 : ケネス・イースター,ジェフリー・ガラデイ,ジョゼフ・フィリップス,アレハンドロ・ピリス=ニーニョ
商人たち : グレイ・デイヴィス,トーマス・フォースター,ブレイン・ホーヴェン,エリック・タム
市場の女たち : ユン・ヨン・アン,ニコール・グラニーロ,イサドラ・ロヨラ,アマンダ・マグウィガン,エリーナ・ミエッティネン,ローレン・ポスト,クリスティーン・シェヴチェンコ,デヴォン・トイチャー,メアリー・ミルズ・トーマス,キャサリン・ウィリアムズ
オダリスク : シモーン・メスマー,クリスティ・ブーン,レナータ・パヴァム
海賊の踊り : カリン・エリス=ウェンツ,カルロス・ロペス,海賊たち
フォルバン : カリン・エリス=ウェンツ,カルロス・ロペス
ジェマ・ボンド,ルチアーナ・パリス,アレクセイ・アグーディン,ショーン・スチュワート
パシャの助手 : アレハンドロ・ピリス=ニーニョ
黄色い服の女たち : イザベラ・ボイルストン,マリアン・バトラー,マリーヤ・ブイストロワ, メラニー・ハムリック,アン・ミルースキー,メリッサ・トーマス
オレンジ色の服の女たち : カリン・エリス=ウェンツ,ニコール・グラニーロ,ルチアーナ・パリス,メアリー・ミルズ・トーマス,メリッサ・トーマス,ジェニファー・ウェイレン
赤い服の女たち : ユン・ヨン・アン,ジェマ・ボンド,ニコラ・カリー,イサドラ・ロヨラ,エリーナ・ミエッティネン,エリザベス・マーツ, ローレン・ポスト,ジャクリン・レイエス,ジェシカ・サーンド,サラ・スミス,デヴォン・トイチャー,リーヤン・アンダーウッド
子どもたち : バレエ シャンブルウエスト (指導:今村博明,川口ゆり子)
井内あかね,木浦愛,細川晶羽,松田彩奈,高橋采弓,橋本泉萌,穴戸響生,
柴田実樹,出井龍之介,石原稔己,中嶋こころ,高橋奏音
パシャの妻たち : ユン・ヨン・アン,ジェマ・ボンド,ニコール・グラニーロ,イサドラ・ロヨラ,アマンダ・マグウィガン,エリザベス・マーツ, エリーナ・ミエッティネン,ローレン・ポスト, ジェシカ・サーンド,サラ・スミス,デヴォン・トイチャー,メアリー・ミルズ・トーマス,リーヤン・アンダーウッド,カレン・アップホフ,ジェニファー・ウェイレン,キャサリン・ウィリアムズ
海の日の月曜日、ぽん太とにゃん子は横浜まで小澤征爾音楽塾の「こうもり」を観に行ってきました。7月30日には東京文化会館での公演もあるのですが、その日はあいにく都合がつかないため、はるばる神奈川県民ホールまでの遠征となりました。結論からいえば、わざわざ時間をかけて出かけて行ったかいがありました。
小澤征爾音楽塾は(公式サイトはこちら)、若い演奏家や声楽家をオペラの上演を通して育成しようというものだそうです。外国の一流歌手をソリストに迎え、若手にとってはまたとない経験の場です。
7月21日は、全国で5回行われる公演の初日でした。小澤征爾は椎間板ヘルニアで5月末から活動を休止していたので、今回の公演もどうなるか心配しておりましたが、元気に指揮をしておりました。
ヨハン・シュトラウスはワルツ王の異名をとり、「美しく青きドナウ」を初めとする数々の名曲で有名ですが、彼のオペレッタを観るのはぽん太は生まれて初めてでした。とにかくすべての曲が流麗で美しく、脚本もおもしろく、舞台も楽しく華やかで、シュトラウスの才能には感服いたしました。
開演前から、オケのメンバーはオーケストラピットで一生懸命に練習。開演のブザーが鳴り、会場が暗くなって、観客が小澤征爾を固唾をのんで見守っていると、意外にも向かって右から小澤が登場。観客の熱狂的な拍手が彼を迎えます。有名な序曲の演奏が始まります。若いオケは細かいニュアンスをきっちりと演奏しておりましたが、「習った通り頑張ってます」という感じで、余裕というか、ゆとりというか、味というか、シュトラウスの流麗さ、華やいだ雰囲気までは出ていませんでしたが、それは仕方のないこと。序曲が終わると自然に盛大な拍手が起こりました。観客は、若いオケのメンバーに、そして彼らを支援しようという小澤の心意気に、心からの声援を送ったのだと思います。小澤もそれがわかっていたようで、オケを全員立たせて拍手に応えました。
ソリストたちは歌はもちろんのこと演技もすばらしく、滑稽な場面には会場が爆笑でした。楽しく明るく、ウィーンの華やいだ雰囲気が伝わって来ました。日本だと、クラシックというのはしかつめらしく高尚なものと思われていますが、海外の歌手はこのような演技が身体に染み付いているように思われました。きっとこれがホントのオペラ歌手なのでしょう。
「こうもり」のあらすじはこちらが簡単でわかりやすいです。登場人物全員がお気楽です。これから刑務所に収監されるというアイゼンシュタインはこっそりと舞踏会へ、妻のロザリンではその間に昔の恋人と逢い引き、小間使いのアデーレは伯母が病気と偽って舞踏会へ。三人が表向きは辛い悲しいといいながら、心の中ではうきうきしている様子を描いたメロディは序曲にも使われていますが、こんな意味のメロディだとは思いませんでした。今後「こうもり」序曲を聞くと、これまでとはまったく違った意味に聴こえそうです。ヨハンシュトラウスは有名な曲がいっぱいあって、どの曲がどの題名だかわからないのが多かったのですが、「こうもり」序曲はもう絶対忘れません。
登場人物たちが、その場を取り繕うために他人を装うことで、嘘が嘘を呼びながら物語が展開していくさまは、三谷幸喜の芝居を思い出しました。
ところで19世紀末のウィーンといえば、精神科医のぽん太はフロイトとの関係が気になってきます。ヨハン・シュトラウスは1825年のウィーン生まれ。フロイトは1856年生まれですから、約30歳年上になります。「こうもり」は1874年初演ですから、フロイト18歳の頃。この当時のウィーンが、オペレッタに描かれているようなお気楽な都市だったのか、それとも実は頽廃や虚無感につきまとわれていたのか、興味があるところです。このようなオペレッタを観に来ていたのがどのような階層の人々なのか、フロイトはヨハン・シュトラウスをどう思っていたのかなど、ぽん太の興味はつきません。そのうちみちくさしてみたいと思います。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトIX
J.シュトラウスII世:喜歌劇「こうもり」
[全3幕]<原語上演/字幕付>
2008年7月21日、神奈川県民ホール
スタッフ
音楽監督・指揮:小澤征爾
演 出:デイヴィッド・ニース
装 置:ヴォルフラム・スカリッキ
衣 裳:ティエリー・ボスケ
照 明:高沢立生
振 付:マーカス・バグラー
サンフランシスコ・オペラ・アソシエーション所有プロダクションを使用
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
合 唱:小澤征爾音楽塾合唱団
出演
ロザリンデ:アンドレア・ロスト
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ボー・スコウフス
アデーレ:アンナ・クリスティ
アルフレート:ゴードン・ギーツ
オルロフスキー公:キャサリン・ゴールドナー
ファルケ博士:ロッド・ギルフリー
フランク:ジョン・デル・カルロ
ブリント博士:ジャン=ポール・フシェクール
フロッシュ:小迫良成
7月になってほとんどブログを書いていないぽん太ですが、では何を書いていたのかというと、障害年金の診断書を書いていました。
人間の世界ではまさかそんなバカなことはないと思いますが、タヌキの世界では、2年前にも書きましたが、国民年金の障害年金の診断書が7月にまとめてくるので大忙しです。ぽん太の弱小クリニックでも、十数人の書類を書かなくてはなりません。この書類、A3の裏表あり、まじめに書くと1枚につき30分近くかかります。15枚書くとして、30*15=450分=7時間30分で、ほぼ一日分の診療時間に匹敵します。書類書きのためにまる1日休診しているのと同じで、このために30人以上の患者さんの診察ができない計算になります。(追記:平成21年7月に、実際に書いた書類の実例は → こちら)。
医師不足と世間が騒いでいる状況で、まったくもったいない話しです。
この診断書は数年ごと(病状によって異なる)に出すのですが、これまでの病歴など、前回とまったく同じ部分が9割を占めています。ですから前回に比べて変わったところだけを書くだけなら、十分の一の時間ですみます。450/10=45分で、これなら患者さん3〜4人の診察時間で済みます。
あるいはパソコンで書けるようなフォーマットになっていれば、前回の診断書を一部修正するだけで済みます。さまざまな書類を電子化するのは莫大な費用がかかると思いますが、パソコンで書けるようなフォーマットに変更し、フォーマットをダウンロードできるようにするだけで、相当な事務処理の効率化につながるのではないかと思うのですが……。でもその際、Wordのフォーマットだけでなく、AppleWorksのフォーマットでもお願いしますね。Macユーザーのぽん太はWordのために高いソフトを買うのは嫌ですし、公務員が特定のOSを推奨するのはおかしいと思います。でも実際は、(タヌキの)東京都のホームページにある申請書などで、WordやExcelの形式が多くみられるのが事実です。
近年タヌキの世界では、医師による書類作成の負担が予想以上に増加しております。事務作業のために医師の多大な時間を割くのはもったいないと考えられるようになり、医療クラーク(医療秘書)に事務作業を分担させようという動きが出て来ています。今年の4月の診療報酬の改定でも、病院の場合、医療クラークを配置すると診療報酬に加算がつくようになりました(たとえばこちらのニュースを参照して下さい)。
ぽん太のような診療所にはこのような加算はありませんが、それでもぽん太の負担を軽減するため、多くの書類において、前回に比べて変わったところだけをぽん太が書き、あとは事務員さんに書き写してもらうことにしました。これでとっても楽になりました。なんせ先ほど言ったように、9割は前回と同じなのですから。医療クラークに加算をつけるまえに、書類のパソコン・フォーマットを作るだけで、多額の医療費を節約できると思うのですが……。
とにかく(タヌキの世界の)書類は煩雑で、同じことを何度も書かなくてはならず、めんどくさいです。ところが市役所の職員に「ホントにめんどくさいですよね〜」などとグチをこぼしても、「そうですね〜」という返事が返ってきません。そのことが前から気になっていたのですが、ある日突然わかったのですが、彼ら(彼女ら)は、この煩雑な事務処理がなければ自分たちの仕事がなくなることを熟知しているのです。ですから彼ら(彼女ら)は、無意味に複雑な書類に文句も言わずに対応しているのです。
ついでに以前の記事で書いたことを繰り返せば、自立支援医療費(精神通院)で、月額の上限額を計算するために、医療機関と薬局で書類のやりとりをするのも、とても煩雑です。ぽん太のクリニックで月額の上限を超えるのは多くて10人程度。それ意外のひとたちは上限を越えず、実質的には無意味な書類のやりとりを、100人近くで行わなくてはなりません。その事務の負担や、上限管理票の印刷や配布の手間などを考慮した場合、経済的に意味があるのでしょうか? 以前にも書いたように、病院は病院、薬局は薬局でそれぞれ上限を決めれば、こような書類のやりとりは省略でき、自院のレセコンで処理できるのですが……。コンピューターの時代に、コンピューターで処理できない制度を編み出し、自分たちの仕事を確保しようという(タヌキ界の)公務員の根性は大したものです。
先日『シルヴィア』を観た英国ロイヤル・バレエ団、本日は『眠れる森の美女』を観に行ってきました。こちらがNBSのサイトです。
今回も前回同様ヌニュスとソアレスが主役なのは、まったくの偶然です。
『眠れる森の美女』も『シルヴィア』同様「少女が性に目覚める」というストーリーですが、シルヴィアが男勝りのお転婆な女の子だったのに対し、オーロラ姫はセレブの箱入り娘。シルヴィアを見事に踊ったヌニュスが、どんなオーロラ姫を見せてくれるかが楽しみでした。結果としてヌニュスの踊りは期待以上。両親にかわいがられて育てられたかわいらしいお嬢さんという感じで、第1幕で彼女がはち切れんばかりの笑顔で踊っているのを観ていると、おじさんまで笑顔になってきます。ヌニュスはブエノスアイレス生まれとのこと。アルゼンチンに行ってみたくなりました。
ソアレスは『シルヴィア』ではオリオンという野性的な悪者の役でしたが、今回は王子様。体型や踊りは悪くなかったですが、縮れ毛でニカッと笑われるとルパン三世を思い浮かべてしまい、ノーブルさにはちと欠けます。王子様というより、「若い二人の恋愛を周囲の大人たちが暖かく見守る」という雰囲気でした。
日本公演だったからか知りませんが、日本人ダンサーが活躍していました。リラの精のお付きの騎士の平野亮一は上手。フロレスタンの蔵健太はスタイルがよく健闘。青い鳥の佐々木陽平はがんばってましたが、いかんせん体型のため、軽々と浮かんでいるというよりびよんびよん跳ねている感じでした。みんな頑張れ!応援してます。
バレエ初心者のぽん太は、『眠れる森の美女』を観るのは2回目なので、振付けや演出を云々することはできません。メッセルの原典版によるという美術は美しく、幕を何枚も利用して表現した深い森の風景など、すばらしかったです。全体としてロマンティック・バレエ的な雰囲気を感じました。乗り物やネズミも登場して、日曜日ということで会場を埋めていた子供たちも大喜びだったことでしょう。
でも、思わずみとれてしまったのはヌニュスぐらいで、その他のダンサーは「悪くはない」とい感じでしょうか? 全体としてはとっても満足いく舞台でした。
東京シティフィルの演奏は手慣れていて安心できました。
英国ロイヤル・バレエ団2008年日本公演
『眠れる森の美女』
2008年7月13日(日) 東京文化会館
演出・振付:マリウス・プティバ/モニカ・メイソン
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
美術:オリバー・メッセルの原典版による
国王フロレスタン24世: クリストファー・サウンダース
お妃: エリザベス・マクゴリアン
オーロラ姫: マリアネラ・ヌニェス
フロリムント王子: ティアゴ・ソアレス
式典長/カタラビュット: アラステア・マリオット
カラボス: ジェネシア・ロサート
リラの精: イザベル・マクミーカン
プロローグ
澄んだ泉の精: 崔由姫
お付きの騎士: リカルド・セルヴェラ
魔法の庭の精: ローレン・カスバートソン
お付きの騎士: フェルナンド・モンターニョ
森の草地の精: ヘレン・クロウフォード
お付きの騎士: ヨハネス・ステパネク
歌鳥の精: イオーナ・ルーツ
お付きの騎士: ジョゼ・マルティン
黄金のつる草の精: ラウラ・モレーラ
お付きの騎士: エルンスト・マイズナー
リラの精のお付きの騎士: 平野 亮一
妖精のお付きたち、貴族、伝令官、カラボスの手下: 英国ロイヤル・バレエ団
第1幕
フランスの王子: デヴィッド・マッカテリ
スペインの王子: マーティン・ハーヴェイ
インドの王子: ジョシュア・トゥイファ
ロシアの王子: トーマス・ホワイトヘッド
オーロラ姫の友人: ヘレン・クロウフォード、セリーサ・デュアナ、
カロリン・ダプロット、ベサニー・キーティング、崔由姫、
イオーナ・ルーツ、エマ・マグワイヤー、サマンサ・レイン
編み物をする女たち、ガーランド、ワルツ、貴族: 英国ロイヤル・バレエ団
第2幕
伯爵夫人: ジリアン・レヴィ
王子の側近: ジョシュア・トゥイファ
王子の随員、狩りの一行、妖精たち: 英国ロイヤル・バレエ団
第3幕
フロレスタンと姉妹たち: 蔵 健太、ヘレン・クロウフォード、サマンサ・レイン
長靴を履いた猫と白い猫: ジョナサン・ハウエルズ、エリザベス・ハロッド
フロリナ王女と青い鳥: ローレン・カスバートソン、佐々木 陽平
赤ずきんと狼: イオーナ・ルーツ、ヘンリー・セント=クレア
グラン・パ・ド・ドゥ: マリアネラ・ヌニェス、ティアゴ・ソアレス
おとぎ話の主人公たち、妖精のお付きたち、小姓たち: 英国ロイヤル・バレエ団
協力: 東京バレエ学校
指揮: ワレリー・オブシャニコフ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ぽん太とにゃん子は英国ロイヤル・バレエ団の『シルヴィア』を観てきました。NBSのサイトはこちら。
バレエ初心者のぽん太は、英国ロイヤル・バレエ団も『シルヴィア』も、どちらも初めてです。英国ロイヤル・バレエ団と聞いても、熊川哲也や吉田都がかつて所属していたことぐらいしか知りません。また『シルヴィア』と聞いても、「別れても好きな人」と族車しか思い浮かびません。ともあれ、音にぞ聞く「ロイヤル・スタイル」とはどんなものか、とっても楽しみです。
『シルヴィア』のストーリーですが、まるでオールドミスのような、男女交際にきびしい母ちゃんに育てられたシルヴィアは、恋愛などバカにするお転婆な女の子です。でもその割には母ちゃんは、しっかりシルヴィアを産んでいる。これはかつて男性にひどい目に会わされたのだろうなと想像してしまいますが、案の定若い頃羊飼いに恋をしたことがバレエの最後で明らかになります。さてシルヴィアに純朴な羊飼いのアミンタが言い寄りますが、シルヴィアは知らん顔。しかしエロスが放った矢によって、シルヴィアも男に目覚めます。ところがシルヴィアは、ストーカーのオリオンにさらわれてしまいます。シルヴィアは、オリオンを酔いつぶしてしまおうと、色っぽい踊りを踊ります。これまで男性に興味がなかったくせに、たちまち誘惑的な仕草ができるところが、女のすごさです。というか、いかにも男が作ったストーリーですね。まんまとオリオンを酔いつぶして逃げ出したシルヴィアは、エロスのお導きで、めでたくアミンタと結ばれます。以上、かなりぽん太の独断の混ざった、『シルヴィア』のストーリーでした! ちゃんとしたストーリーを知りたい方は、たとえばこちらをどうぞ。
シルヴィアのヌニェスは、小柄でとてもかわいらしかったです。第一幕はおきゃんな(死語か?)感じで、第二幕でオリオンを酔わせようとする踊りも妖艶ではなく、子供が一生懸命色っぽく振る舞う感じ。そして第三幕のアミンタとの踊りでは、初恋をした少女を初々しく踊ってくれました。アミンタのマッカテリは、まだウブで頼りない素朴な若者という感じで、「若い羊飼い」という設定にはあっているかもしれませんが、王子様っぽいノーブルさに欠けるのがちと残念。オリオンのソアレスは力強く豪快でした。
アシュトンの振付けによるロイヤル・スタイルがどういうものなのか、無知なぽん太にはよくわからないのですが、男のジャンプだとか女性の回転だとか、運動能力というか、観客が「を〜」と言うような技術を見せつけるような振付けがないようでした。ダンサーもひとつひとつの動きを丁寧に踊っているような印象を受けました。
それから、世界各地のダンサーがいるのもびっくりしました。ヌニュスはアルゼンチン、マッカテリはグルジア、ソアレスはブラジル人とのこと。黒人もいれば、もちろん日本人もいました。
ドリーブの音楽もすばらしかったです。ドリーブというと『コッペリア』の一部の曲ぐらいしか知りませんでしたが、第一幕のニンフたちの音楽などは、ワグナーの『ワルキューレ』を思わせる迫力でした。
オケの東京シティ・フイルは、序曲はちょっと不安定な気がしましたが、本編に入ってからは熱演で盛り上げていました。
ロイヤルは『眠れる森の美女』も行く予定。楽しみです。
英国ロイヤル・バレエ団『シルヴィア』
2008年7月3日(木) 東京文化会館
演出・振付:フレデリック・アシュトン
音楽:レオ・ドリーブ
シルヴィア(ディアナのニンフ): マリアネラ・ヌニェス
アミンタ(羊飼い): デヴィッド・マッカテリ
オリオン(邪悪な狩人): ティアゴ・ソアレス
エロス(愛の神): マーティン・ハーヴェイ
ディアナ(狩り、純潔の女神): マーラ・ガレアッツィ
第1幕
シルヴィアのお付き: 崔 由姫、ヘレン・クロウフォード、
フランチェスカ・フィルピ、ヴィクトリア・ヒューイット、
小林ひかる、ローラ・マカロッチ、イザベル・マクミーカン、サマンサ・レイン
水の精、木の精、森の精、 牧神、農民: 英国ロイヤル・バレエ団
第2幕
オリオンの女官: ヴィクトリア・ヒューイット、サマンサ・レイン
奴隷: 蔵 健太、ヨハネス・ステパネク
第3幕
山羊: イオーナ・ルーツ、ポール・ケイ
シルヴィアのお付き: 崔 由姫、ヘレン・クロウフォード、
フランチェスカ・フィルピ、ヴィクトリア・ヒューイット、小林ひかる、
ローラ・マカロッチ、サマンサ・レイン、ララ・ターク
ケレスとイアセイオン: イザベル・マクミーカン、トーマス・ホワイトヘッド
ペルセフェネとプルート: カロリン・ダプロット、ベネット・ガートサイト
テレプシコーラとアポロ: シンディ・ジョーダン、ヴァレリー・ヒリストフ
ミューズ、春の使い、夏の使い、ラッパ手、シルヴィアのお付: 英国ロイヤル・バレエ団
指揮: グラハム・ボンド
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ぽん太がまだ人間嫌いの陰鬱な若者だった頃、ドビュッシーが大好きでした。その頃ぽん太は、人間を描かず自然ばかりを描いているドビュッシーもおそらく人間嫌いに違いないと信じておりましたが、ホントのところはどうなのか今でも知りません。
ドビュッシーにのめり込んでいたぽん太ですが、『ペレアスとメリザンド』だけはさすがに苦手でした。DVDもビデオも普及していなかった当時、歌詞も筋もわからぬまま曲だけ聞いても、おもしろくもなんともないのは仕方ないことでした。
あれからウン十年、綾小路きみまろ(YouTube動画)ではありませんが、ついに『ペレアスとメリザンド』を観ることができました。ううう、感激です。
とはいえ今回は「コンサート・オペラ」。コンサート・オペラってなんじゃ? 「演奏会形式のオペラ」とどこがちがうんじゃ? 本来「オペラ」というのは、オーケストラピットでオーケストラが演奏し、舞台上にはセットが組まれ、衣装を着て化粧をした歌手が演技をしながら歌うものです。一方、「演奏会形式のオペラ」というのは、舞台の上にオーケストラも歌手もいて、歌手が扮装も演技もせずに歌うもののようです。場合によっては、衣装を着たり、多少の演技をしたりすることもあるそうです。「演奏会形式……」などと気取ってますが、要するにお金をケチっているだけなのでは……。たしかにこの『ペレアスとメリザンド』の公演もたった2日間。外国のオペラ公演のように、あるいは日本の歌舞伎のように、1ヶ月間ぶっ続けでやって連日客が入るのなら、豪華な衣装やセットもそろえることができましょう。でもたった2日のために多額の経費を使うわけにはいかないですもんね。海外でも「演奏会形式のオペラ」はあるの? 日本だけでしょうか? この動画(YouTube)を観ると、外国にも「演奏会形式のオペラ」はあるみたいですね。ただただお金をケチためるだけではなく、アリアや合唱を純粋に音楽的に楽しみたいという要求に応えるものでもあるようです。
で、今回の「コンサート・オペラ」ですが、パンフレットの解説に寄れば、芸術監督の若杉弘の新企画だそうです。オケはオーケストラ・ピットのなか、舞台上には抽象的で簡素なセットが組まれ、歌手は衣装を着ないで女性はドレス・男性はタキシード(少年役のソプラノ歌手はタキシードでした)、ちょっとした小道具も用い、簡単な演技をしながら歌っていました。
ううう、やっぱり物足りない。近頃歌舞伎にはまっているぽん太には、セットや衣装や演技がないと感情移入できません。舞台上に美術的なセットがあり、演出家の意図のもとに俳優が演技することでドラマが生じ、その結果、個々の歌の意味合いや感情が決まってくるのではないでしょうか? 「演出」がないと「歌いっぱなし」という気がしてきます。ま、しかし、このようなかたちでの公演だったからこそ、マイナーなオペラを観れたということもあるのですから、難しいところです。
今回の舞台は、回り舞台の上に立体状の抽象的なセットが組まれ、それが場面場面によってぐるぐるまわるというもの。なんだかペーター・コンヴィチュニーの『皇帝ティトの慈悲』のパクリっぽいです。ここまでやるのなら、もひとつオペラ全体を統一する意思というか、具体的に言えば「演出」があればいいのに。ちゃんと演出家がいて、簡素な舞台装置を使った、「日本式」のお金のかからないオペラはできないでしょうか?
で、『ペレアスとメリザンド』に戻りますが、象徴主義的・幻想的でありながらも、虚無感・閉塞感に満ちた、興味深いオペラでした。このオペラの初演は1902年ですが、ドビュッシーは1893年にオペラ化の権利を得て、2年後に曲を完成させたそうです。なるほど世紀末的な雰囲気があるわけです。大まかな筋は妻が浮気をするというとても単純なものですが、メリザンドが正体不明の女性で髪が伸びたり、地下の恐ろしい洞窟を覗く場面があったり、ペレアスが「明日は出発する」と何度も繰り返しながら何のためにどこに行くのかわからなかったりと、非現実的・象徴主義的な美しさに満ちています。ドビュッシーの、旋律がはっきりせず、曖昧模糊とした情緒を醸し出す音楽も、とてもあっていました。
歌手ではゴロー役の星野淳が、最後までメリザンドの浮気を問いただすというしょうもない男の役でありながら、人間の業を醸し出して熱演。メリザンドの浜田理恵は好演ながら、メリザンドの妖しくも神秘的な雰囲気までは出なかったか。ペレアスの近藤政伸は、rの発音が巻き舌でフランス語がなんだかイタリア語っぽかったのと、タキシードを着ると普通のおじさんぽく見えてしまったのが残念。ぜひ衣装を着た本格的なオペラで観たかったです。指揮の若杉弘は、ぽん太がまだ人間嫌いの陰鬱な若者だった頃、読売日本交響楽団を振った「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」の組曲のレコードを持っていました。すっかり腰の曲がったおじいさんになっていて、「年とったなな〜」という感じでしたが、年はすべての人類が平等にとるので、自らに流れた時間も感じました。演奏の善し悪しまではぽん太にはちとわかりませんでした。
ちなみに皆様には常識かもしれませんが、このオペラの元になった戯曲を書いたメーテルリンクは、チルチルとミチルで有名な『青い鳥』の作者でもあります。蛇足ですがぽん太は、小学校の学芸会でチルチルの役をやったことがあります。
『ペレアスとメリザンド』の動画(YouTube)を観たい方はこちらをどうぞ。
最後に繰り返しになりますが、長期の公演を行うことが難しい日本では、お金をかけたオペラの公演が困難なのはわかりますから、いい演出家を使って簡素なセットや衣装を用いた、日本式のオペラ公演のスタイルを編み出してほしいです。
コンサート・オペラ『ペレアスとメリザンド』Pelléas et Mélisande
【フランス語上演/字幕付】
新国立劇場・中劇場
【作 曲】クロード・アシル・ドビュッシー
【原 作】モーリス・メーテルリンク
【指 揮】若杉 弘
【芸術監督】若杉 弘
キャスト
【ペレアス】近藤政伸
【メリザンド】浜田理恵
【ゴロー】星野 淳
【アルケル】大塚博章
【イニョルド】國光ともこ
【医師/羊飼い】有川文雄
【ジュヌヴィエーヴ】寺谷千枝子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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