お盆休みでやることがないので、ぽん太とにゃん子は人気映画「崖の上のポニョ」を観に行きました。映画館で映画を観るのは実に数年ぶりです。公式サイトはこちらです。森を描かしたら右に出る者がない宮崎監督が、海をどのように表現するのか楽しみです。
まわりは子供連れの家族ばかりですが、ぽん太は生ビール片手に鑑賞です。ぽん太のまわりにはアルコールの臭いが立ちこめ、まわりのお父さんたちも、「畜生、俺だって飲みたいのを我慢してんのに……」と内心思っていたことでしょう。でも、売店で売ってんだから飲んでもいいじゃない。
上映に先立ち、「携帯の電源を切る、会話禁止、撮影録音禁止、前の人の椅子を蹴らない」といった注意を何度も何度も流していました。その効果か、ちびっ子たちも行儀よく映画を鑑賞していました。先日のKバレエの観客のマナーの悪さを見ると、これからはバレエやクラシック演奏会でも、このような注意をしなければならないのでしょうか?。
さて「ポニョ」ですが、出だしの様々な海洋生物が画面にあふれるシーンから、宮崎ワールド全開で、画面に見とれてしまいます。ぽん太とにゃん子はダイビングをするのですが、ポニョと妹たちがわらわらと穴から出てくるシーンなど、卵から孵ったばかりの幼魚が群れている様子にそっくりです。その他にも魚の群れ方や、海の中から海面を見上げた様子など、実際に海の中を見たことがないと描けないと思われました。Wikipediaの「崖の上のポニョ」によると、宮崎駿監督は瀬戸内海の鞆の浦に滞在して構想をねったとのこと。なるほど、それならうなづけます。
それから、ポニョを持った宗介を波が襲ってポニョを取り返すシーンや、ポニョが魔法の力を借りて荒波とともに地上に戻ってくるシーンなどでは、ぽん太の無意識の奥底にある海に対する恐怖感が刺激され、とても恐ろしかったです。
ポニョの本名はなんと「ブリュンヒルデ」とのこと。ワグナーの『ニーベルングの指輪』かい、などと思ったら、ポニョが荒波の上を走りながら戻ってくるシーンの音楽(こちらのサイトで視聴できます。なんとその題は「ポニョの飛行」)は、「ワルキューレの騎行」(MIDIファイルは例えばこちら)にそっくりです。これは久石譲がパクったのではなく、確信犯的な「引用」ですな。よくみたら公式サイトにしっかり書いてあって、ポニョを眠らせ、世界の崩壊を回避しようとする父親フジモトはヴォータンになぞらえているそうです。
しかし本来こうした「引用」は、和歌でいえば「本歌取り」のようなものですから、引用元の作品を参照することによって、元の作品の世界を新たな作品のなかに呼び起こし、さらに元の作品にどのような変更が加えるかによって作者の創造性を表現するものです。ところが「子供向き」の映画である「崖の上のポニョ」において、ワグナーを引用するというのはどういう意味があるのか、ぽん太には疑問でした。まさか「ポニョ」を見にくる普通の子供たちが「お、これはワルキューレだ」などとわかるはずはないし……。映画コンクールの審査員目当てなのか、それとも大人も楽しめるようにするためのシカケなのか、あるいはパクったと思われると嫌なのであらかじめ引用先を明示しておいたのか、ぽん太は宮崎監督がどういう人なのかよく知らないので判断がつきません。
「引用」とえいば、この映画はアンデルセンの「人魚姫」を下敷きにしています。「人魚姫」のあらすじは例えばこちらをどうぞ。「泡になってしまう」、「血をなめる」などの原作の要素をうまく用いながら、悲しい人魚姫の物語を、すばらしいハッピーエンドに作り替えた宮崎監督の技は見事です。
ところで、太田裕美の「赤いハイヒール」(Youtubeの動画はこちら)で、「おとぎ話の人魚姫はね、死ぬまで踊る、ああ赤い靴」という歌詞があったような……。よく考えてみたら、死を覚悟しながら足の痛みをこらえて踊りを踊った人魚姫と、死ぬまで踊る呪いをかけられた童話の「赤い靴」が混ざっているのか……。いままで、何の疑問も持たずにカラオケで歌っていました。
人物のキャラや状況の設定、筋の劇的な盛り上がりなどは、いまいちでした。フジモトのキャラは「チャーリーとチョコレート工場」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップみたいだったし、最後の「ひまわりの家」のシーンも「未知との遭遇」や「コクーン」を思い出しました。子供向きだから文句を言っても仕方ないかもしれませんが……。とはいえ、宮崎駿のすばらしいイメージを楽しむことができただけでただただ大満足でした。所ジョージさんはじめ声優陣も大活躍。
声の出演:
リサ: 山口智子
耕一: 長嶋一茂
グランマンマーレ: 天海祐希
フジモト: 所ジョージ
ポニョ: 奈良柚莉愛
宗介: 土井洋輝
婦人: 柊 瑠美
ポニョのいもうと達: 矢野顕子
トキ: 吉行和子
ヨシエ: 奈良岡朋子
プロデューサー: 鈴木敏夫
原作・脚本・監督: 宮崎 駿
制作: 星野康二
音楽: 久石 譲
主題歌:
「海のおかあさん」
作詞: 覚 和歌子 宮崎 駿 (覚 和歌子作「さかな」より翻案)
作曲・編曲: 久石 譲
歌: 林 正子
「崖の上のポニョ」
作詞: 近藤勝也 補作詞: 宮崎 駿
作曲・編曲: 久石 譲
歌: 藤岡藤巻と大橋のぞみ
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
徳間ジャパンコミュニケーションズ
作画監督: 近藤勝也
美術監督: 吉田 昇
色彩設計: 保田道世
映像演出: 奥井 敦
編集: 瀬山武司
整音: 井上秀司
音響効果: 笠松広司
録音演出: 木村絵理子
スタジオジブリ 日本テレビ 電通 博報堂DYMP ディズニー 三菱商事 東宝 提携作品
製作担当: 奥田誠治 福山亮一 藤巻直哉
特別協賛: アサヒ飲料
特別協力: ローソン 読売新聞
配給: 東宝
カラー / ビスタサイズ / デジタルシネマ対応 /
ドルビーデジタルサラウンドEX・dts−ES(6.1ch) / 上映時間:101分
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