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2008年8月の16件の記事

2008/08/31

【佐渡】「長浜荘」はお魚が美味しい民宿です(★★★★)

 8月後半、甲斐駒・仙丈の登山を予定していたぽん太とにゃん子ですが、あいにくに例のゲリラ豪雨。「当日」になって計画を一から立て直し、佐渡にダイビングに行ってきました。予約していた宿や山小屋をキャンセルし、佐渡の宿やダイビングサービスやフェリーをネットで調べて予約し、今シーズン初めてのダイビングの準備を整えて出発しました。あ〜大変だった。キャンセルに応じて下さった皆様、ありがとうございました。
 ぽん太は、生まれて初めて佐渡島を訪れました。

P8270107_1 まずは宿のご紹介。佐渡では二泊しましたが、一泊目の宿は民宿・長浜荘。こちらが公式サイトのようですが、ちと見にくい上に誤字もあります。例えばこちらのフォートラベルのページを参照して下さい。佐渡島の西側の海に面しており、海に沈む夕日がとてもきれいです。
P8270105_1 食堂には生け簀があります。新鮮なお魚が売りの宿で、食堂としても利用できます。
P8260098 こちらが夕食です。刺身やイカ、セイコガニ(ズワイガニの雄)など、佐渡の海の幸をとても美味しくいただけます。鳥の唐揚げはちと余計な気がして、仕事で宿泊している人用かな〜などとも思ったのですが、食べてみるとイヤな脂身がなくて肉が締まっていて、とても美味しかったです。以前にも書きましたが、ぽん太とにゃん子は鶏肉に関しては、外国でよくあるような脂身がなくてパサパサしているのが好きです。
P8270104_1 こちらが朝食。シンプルですが美味しゅうございました。ご飯もうまかったです。
 リーゾナブルな値段で民宿に泊まって、佐渡の新鮮な魚介類を味わいたい方にお勧めです。

2008/08/29

【バレエ】ポリーナ凄すぎます・東京バレエ団「ドン・キホーテ」

 先日ぽん太とにゃん子は、ポリーナを観に上野に行ってきました。
 バレエ初心者のぽん太とにゃん子は、昨年4月の「白鳥の湖」ですっかりポリーナのファンになりました。ポリーナは、今年の2月の「マラーホフの贈り物」ではロビンズ版の「牧神の午後」で官能的な踊りを見せてくれましたが、今回の「ドン・キホーテ」では、若さ全開、元気いっぱいのキトリが期待されます。
 今回の公演は、ポリーナのキトリの全幕デビューとのこと。ネット感想を見ると、初日はちょっと硬くなっていたようですが、本日はのびのびと踊っていたようで、表情もとっても豊かでした。期待した通り、ポリーナの若さがストレートに出て、とってもすばらしい舞台でした。スタイルもいいし、ジャンプも高いし、バランスもいいし、回転も軸がぶれないし、柔軟性もあるし、美人だし、おっぱいも大きいし、ぽん太は言うことなしです。
 ウヴァーロフ(バジル)は初めて見ましたが、スタイルがよくて背が高く、長身のポリーナと釣り合いが取れていました。序幕の二人のやりとりの最中に、東京バレエ団員が出て来たときは、ちっちゃく見えて子役かと思いました。リフトも高く、片手リフトも拍手喝采をあびていました。
 対する東京バレエ陣は残念ながらやや物足りなく感じました。後藤晴雄(エスパーダ)はダンディさに欠けていて、「ドン・キホーテ」ではホントはバジルが若造でエスパーダが導き役のはずですが、バジルの方が風格がありました。井脇幸江(メルセデス)は雰囲気があってよかったです。乾友子と高村順子は、それぞれに個性があってよろし。奈良春夏のジプシーは、凄いと言えば凄いのですが、なんだか暴走という感じで、そこだけ浮いてる感じがしました。個人的にはキューピッドの佐伯知香がかわいらしくて柔らかくて軽くて、ぽん太はすっかり魅了されました。
 ソトニコフと東京シティ・フィルも好演。
 全体として大満足!すっかりいい気分になりました。

「ドン・キホーテ」
2008年08月24日、東京文化会館

演出・振付:ウラジーミル・ワシーリエフ(マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴールスキーによる)
引用振付:アレクサンドル・.ゴールスキー/カシアン・ゴレイゾフスキー
音楽:レオン・ミンクス(A.シモーヌ、V.ジェロビンスキー、R.ドリゴ、J.ゲルバー、R.グリエール、E.ナブラヴニク)

キトリ/ドゥルシネア姫:ポリーナ・セミオノワ
バジル: アンドレイ・ウヴァーロフ
ドン・キホーテ: 野辺誠治
サンチョ・パンサ: 氷室友
ガマーシュ: 松下裕次
メルセデス: 井脇幸江
エスパーダ: 後藤晴雄
ロレンツォ: 平野玲

―第1幕―
2人のキトリの友人: 乾友子‐高村順子
闘牛士: 中島周、横内国弘、長瀬直義、宮本祐宜
梅澤紘貴、安田峻介、木下堅司、柄本武尊
若いジプシーの娘: 奈良春夏
ドリアードの女王: 西村真由美
3人のドリアード: 吉川留衣、渡辺理恵、川島麻実子
4人のドリアード: 森志織、福田ゆかり、村上美香、阪井麻美
キューピッド: 佐伯知香

―第2幕―
ヴァリエーション1: 高村順子
ヴァリエーション2: 乾友子

協力: 東京バレエ学校

指揮: アレクサンドル・ソトニコフ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2008/08/24

【歌舞伎】亀蔵は死体の演技をいったいどこで学んだの?(2008年8月歌舞伎座/第一部・第二部)

 本日は第二部・第三分を続けて観劇。午前11時に始まって、終了が夕方の5時45分。その間、三階の窮屈な席に座り続けなければならず、だんだんと体が痛くなり、意識も遠のいてきました。
 そんななか、とにかく笑ったのが「らくだ」でした。原作は言わずと知れた落語の「らくだ」。ぽん太も何度も聞いたことがある演目で、今回も「あゝ『らくだ』ね」とたかをくくっていましたが、亀蔵の「死体」の演技にやられました。これまでぽん太が耳で聞いて頭の中に思い浮かべていたものとは、比べ物にならないすばらしい「死体」ぶりで、笑いが止まりませんでした。あとでにゃん子に「大声で笑い過ぎ」と叱られました。周りの皆さん、ごめんなさい。
 まず、寝ているときから、死体の肌の色が黄色いのがイヤです。シロ塗りだと「象徴的に死体」という感じですが、黄色いとなんか生々しいです。芝居ではフグに当たって死んだということになっていますが、肝硬変かなんかで黄疸でも来ていたのでは?と思えます。
 これが三津五郎の半次に操られて「カンカンノウ」を踊ったりするわけですが、もちろん芝居ですから、死体役の亀蔵が自ら立って動いているのですが、まったくそのようには見えず、まるで三津五郎に操られているように感じられます。時々急激に動いてびっくりさせたりする時も、自ら飛び跳ねた印象がなく、フワリと移動します。それでいて、他の登場人物にぐったりとのしかかったりするときは、死体の重みを十分感じさせます。このような演技というか、身体の動きを見たのはぽん太は生まれて初めてで、大笑いするとともに、とても感動しました。急に練習してできる動きとは思えません。まさか歌舞伎役者の修行のなかに「死体」役の修行なんてないですよね。人形振りの動きかなんかの応用なのかしら。それとも過去の上演のなかで練り上げられた伝統芸なのでしょうか?
 前から亀蔵はどんな役でもできてすごいな〜と思っていたのですが、死体までこなすとは驚きでした。

歌舞伎座・歌舞伎座百二十年
八月納涼大歌舞伎・平成20年8月
第一部
一、女暫(おんなしばらく)
             巴御前  福 助
          手塚太郎光盛  三津五郎
            轟坊震斎  勘太郎
     女鯰若菜実は樋口妹若菜  七之助
            木曽次郎  松 也
           木曽駒若丸  巳之助
             紅梅姫  新 悟
            猪俣平六  亀 蔵
            成田五郎  市 蔵
          清水冠者義高  高麗蔵
           蒲冠者範頼  彌十郎
             舞台番  勘三郎
二、三人連獅子(さんにんれんじし)
             親獅子  橋之助
             子獅子  国 生
             母獅子  扇 雀
三、眠駱駝物語 らくだ
           紙屑買久六  勘三郎
         家主女房おいく  彌十郎
          駱駝の馬太郎  亀 蔵
          半次妹おやす  松 也
           家主左兵衛  市 蔵
           手斧目半次  三津五郎
第二部
一、つばくろは帰る(つばくろはかえる)
           大工文五郎  三津五郎
          八重菊おしの  扇 雀
           弟子三次郎  勘太郎
            舞妓みつ  七之助
           弟子鉄之助  巳之助
             安之助  小 吉
           小僧よし吉  宜 生
            舞妓小蝶  新 悟
            舞妓豆花  松 也
            掏摸お銀  高麗蔵
           蒲団屋万蔵  彌十郎
          祗園芸妓君香  福 助
二、大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)
            酒呑童子  勘三郎
          濯ぎ女 若狭  福 助
           同なでしこ  七之助
           同 わらび  松 也
            卜部季武  巳之助
            碓井貞光  新 悟
            坂田公時  勘太郎
             渡辺綱  亀 蔵
            平井保昌  橋之助
             源頼光  扇 雀

2008/08/23

【歌舞伎】「野田版 愛陀姫」は意外とシリアスな本格歌舞伎(2008年8月歌舞伎座・第三部)

 8月の歌舞伎座は三部制。ぽん太とにゃん子は本日第三部を観て、明日は第一部・第二部を続けて観る予定です。
 第三部の演目は定番の「紅葉狩」と、野田秀樹の脚本・演出による新作歌舞伎「野田版 愛陀姫」です。昨年の8月納涼歌舞伎で演じられた渡辺えり子の新作歌舞伎「舌切雀」はとんでもないオフザケだったので、今年の野田秀樹もオアソビかと思って歌舞伎座に足を運んだのですが、どうしてどうして、冒頭こそ滑稽なやり取りで始まったものの、シリアスでスケールの大きい本格的な芝居でした。
 「愛陀姫」(あいだひめ)とは変な名前ですが、ヴェルディのオペラ「アイーダ」の翻案とのこと。舞台は織田信秀と斎藤道三の争いに移し替えられ、アイーダは織田信秀の娘・愛陀姫、エジプト王女のアムネリスは斎藤道三の娘・濃姫(のうひめ)、そしてラダメスは木村駄目助左衛門……きむら・だめすけざえもん……きむ「らだめす」けざえもん、です。
 「アイーダ」といえば、ぽん太は今年の4月にペーター・コンヴィチュニー演出のオペラを観ましたが、オチャラケながらも斬新ですばらしい舞台でした。野田はコンヴィチュニーを超えられるのか、という興味もありました。
 脚本は、もともとの「アイーダ」のストーリーに加えて、初めは濃姫が利用していたインチキ祈祷師が次第に力を持つようになり、ついには濃姫を追い落とすに至るという話しと、織田方からさらわれて斎藤方の下女となった愛陀姫と同じように、濃姫自身が戦略結婚によって織田方に嫁ぐことになるという話しが重ねられ、より複雑になっていました。
 オペラだと、アリアという大きい単位で感情が表現されますが、今回の歌舞伎では台詞の一言ひとことでの心理の動きがきめ細かく表現されていました。
 野田お得意の言葉遊びは控えめでした。しかし、愛陀姫が故郷を思う独白や、愛陀姫・濃姫・駄目助左衛門の掛け合い(どの場面だっけ?)など、野田秀樹一流の郷愁溢れる美しい台詞がありました。
 ペーター・コンヴィチュニーが乱痴気騒ぎのパーティーにしてしまった有名な凱旋シーンは、透明ビニールのでっかいゾウさんがかわいかったです。合戦シーンの影絵によるドタバタの趣向も悪くなし。
 野田秀樹には、古典歌舞伎っぽく見せようという意思はなかったようで、「歌舞伎」というよりは、「歌舞伎劇団」を使った「野田演劇」という印象でした。
 音楽はオペラ「アイーダ」の音楽を主に使っていましたが、最後のシーンだけマーラーの交響曲第5番のアダージェット。どうして最後だけマーラーなんだ!どうせなら全部「アイーダ」の音楽にすればいいのに。最後をマーラーにするのなら、逆に途中も「アイーダ」以外の音楽を使えばいいのでは?
 最後の場面で風船が上がって行く演出は余計。抱き合う二人にスポットが当てられただけで十分に美しく崇高でした。

歌舞伎座・八月納涼大歌舞伎
平成20年8月・第三部

一、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
     更科姫実は戸隠山の鬼女  勘太郎
              山神  巳之助
           従者右源太  高麗蔵
           同 左源太  亀 蔵
            侍女野菊  鶴 松
            腰元岩橋  市 蔵
             局田毎  家 橘
         余吾将軍平維茂  橋之助

二、野田版 愛陀姫(あいだひめ)
              濃姫  勘三郎
             愛陀姫  七之助
        木村駄目助左衛門  橋之助
          鈴木主水之助  勘太郎
              高橋  松 也
           多々木斬蔵  亀 蔵
            斎藤道三  彌十郎
           祈祷師荏原  扇 雀
           同  細毛  福 助
            織田信秀  三津五郎

2008/08/17

【映画】おじさんたちへの応援歌「ザ・マジックアワー」

 お盆休みでやることがないので、映画を観に行ってきました。三谷幸喜の「ザ・マジックアワー」です。こちらがオフィシャルサイトです。
 三谷幸喜はテレビで見てファンになり、ぜひとも生の舞台を見たいと思いつつなかなか切符が取れずにいました。昨年、念願かなって本多劇場で「社長放浪記」を観ることができ、腹の底から大笑いしました。
 で、三谷の映画を見るのは実は今回が初めてです。ネタは三谷得意の「誤解物」でした。客層は昨日の「ポニョ」と違っておじさん・おばさんばかり。みんなで声をあげて大笑いです。
 あらすじや見所は省略。
 大河ドラマ「風林火山」で武田信玄を演じた歌舞伎の市川亀治郎がチョイ役で出演(しかも歌舞伎のようなヘンテコな演技で)。また女形のお大御所市村萬次郎を生真面目な会計士役に起用。三谷さん、歌舞伎役者の引き抜きもいい加減にして下さいよ、と思いつつも、歌舞伎役者が有名になることで少しは歌舞伎の人気も上がれば……という期待もあります。江洞潤役の香川照之が三代目市川猿之助の息子(とうことは亀治郎といとこ同士)ということを初めて知りました。
 しかし、大御所や二枚目が、三谷の手にかかって次々とコメディアンになってしまってよいのだらうか。
 昨日の「崖の上のポニョ」が子供たちへの応援歌なら、今日の「ザ・マジックアワー」は大人への応援歌でありました。

脚本・監督:三谷幸喜
音楽:荻野清子
キャスト
佐藤浩市(村田大樹)、妻夫木聡(備後登)、深津絵里(高千穂マリ)、綾瀬はるか(鹿間夏子)、西田敏行(天塩幸之助)、小日向文世(長谷川謙十郎)、寺島進(黒川裕美)、戸田恵子(マダム蘭子)、伊吹吾郎(鹿間隆)、浅野和之(清水医師)、市村萬次郎(菅原虎真)、柳澤愼一(高瀬允)、香川照之(江洞潤)、甲本雅裕(太田垣直角)、近藤芳正(今野貴之介)、梶原善(西さん)、阿南健治(野島)、榎木兵衛(なべさん)、堀部圭亮(バンビ)、山本耕史(愚痴る男)、市川亀治郎(カメ)、市川崑(監督)、香取慎吾(−)、中井貴一(磐田とおる)、鈴木京香(小夜子)、谷原章介(ニコ)、寺脇康文(ワンチャイ・バンダラビカル)、天海祐希(喪服の女)、唐沢寿明(ゆべし)
製作:フジテレビ 東宝 2008年

2008/08/16

【映画】なんでワルキューレなの?「崖の上のポニョ」

 お盆休みでやることがないので、ぽん太とにゃん子は人気映画「崖の上のポニョ」を観に行きました。映画館で映画を観るのは実に数年ぶりです。公式サイトはこちらです。森を描かしたら右に出る者がない宮崎監督が、海をどのように表現するのか楽しみです。

 まわりは子供連れの家族ばかりですが、ぽん太は生ビール片手に鑑賞です。ぽん太のまわりにはアルコールの臭いが立ちこめ、まわりのお父さんたちも、「畜生、俺だって飲みたいのを我慢してんのに……」と内心思っていたことでしょう。でも、売店で売ってんだから飲んでもいいじゃない。

 上映に先立ち、「携帯の電源を切る、会話禁止、撮影録音禁止、前の人の椅子を蹴らない」といった注意を何度も何度も流していました。その効果か、ちびっ子たちも行儀よく映画を鑑賞していました。先日のKバレエの観客のマナーの悪さを見ると、これからはバレエやクラシック演奏会でも、このような注意をしなければならないのでしょうか?。

 さて「ポニョ」ですが、出だしの様々な海洋生物が画面にあふれるシーンから、宮崎ワールド全開で、画面に見とれてしまいます。ぽん太とにゃん子はダイビングをするのですが、ポニョと妹たちがわらわらと穴から出てくるシーンなど、卵から孵ったばかりの幼魚が群れている様子にそっくりです。その他にも魚の群れ方や、海の中から海面を見上げた様子など、実際に海の中を見たことがないと描けないと思われました。Wikipediaの「崖の上のポニョ」によると、宮崎駿監督は瀬戸内海の鞆の浦に滞在して構想をねったとのこと。なるほど、それならうなづけます。

 それから、ポニョを持った宗介を波が襲ってポニョを取り返すシーンや、ポニョが魔法の力を借りて荒波とともに地上に戻ってくるシーンなどでは、ぽん太の無意識の奥底にある海に対する恐怖感が刺激され、とても恐ろしかったです。

 ポニョの本名はなんと「ブリュンヒルデ」とのこと。ワグナーの『ニーベルングの指輪』かい、などと思ったら、ポニョが荒波の上を走りながら戻ってくるシーンの音楽(こちらのサイトで視聴できます。なんとその題は「ポニョの飛行」)は、「ワルキューレの騎行」(MIDIファイルは例えばこちら)にそっくりです。これは久石譲がパクったのではなく、確信犯的な「引用」ですな。よくみたら公式サイトにしっかり書いてあって、ポニョを眠らせ、世界の崩壊を回避しようとする父親フジモトはヴォータンになぞらえているそうです。

 しかし本来こうした「引用」は、和歌でいえば「本歌取り」のようなものですから、引用元の作品を参照することによって、元の作品の世界を新たな作品のなかに呼び起こし、さらに元の作品にどのような変更が加えるかによって作者の創造性を表現するものです。ところが「子供向き」の映画である「崖の上のポニョ」において、ワグナーを引用するというのはどういう意味があるのか、ぽん太には疑問でした。まさか「ポニョ」を見にくる普通の子供たちが「お、これはワルキューレだ」などとわかるはずはないし……。映画コンクールの審査員目当てなのか、それとも大人も楽しめるようにするためのシカケなのか、あるいはパクったと思われると嫌なのであらかじめ引用先を明示しておいたのか、ぽん太は宮崎監督がどういう人なのかよく知らないので判断がつきません。

 「引用」とえいば、この映画はアンデルセンの「人魚姫」を下敷きにしています。「人魚姫」のあらすじは例えばこちらをどうぞ。「泡になってしまう」、「血をなめる」などの原作の要素をうまく用いながら、悲しい人魚姫の物語を、すばらしいハッピーエンドに作り替えた宮崎監督の技は見事です。

 ところで、太田裕美の「赤いハイヒール」(Youtubeの動画はこちら)で、「おとぎ話の人魚姫はね、死ぬまで踊る、ああ赤い靴」という歌詞があったような……。よく考えてみたら、死を覚悟しながら足の痛みをこらえて踊りを踊った人魚姫と、死ぬまで踊る呪いをかけられた童話の「赤い靴」が混ざっているのか……。いままで、何の疑問も持たずにカラオケで歌っていました。

 人物のキャラや状況の設定、筋の劇的な盛り上がりなどは、いまいちでした。フジモトのキャラは「チャーリーとチョコレート工場」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップみたいだったし、最後の「ひまわりの家」のシーンも「未知との遭遇」や「コクーン」を思い出しました。子供向きだから文句を言っても仕方ないかもしれませんが……。とはいえ、宮崎駿のすばらしいイメージを楽しむことができただけでただただ大満足でした。所ジョージさんはじめ声優陣も大活躍。

声の出演:
リサ: 山口智子
耕一: 長嶋一茂
グランマンマーレ: 天海祐希
フジモト: 所ジョージ
ポニョ: 奈良柚莉愛
宗介: 土井洋輝
婦人: 柊 瑠美
ポニョのいもうと達: 矢野顕子
トキ: 吉行和子
ヨシエ: 奈良岡朋子
プロデューサー: 鈴木敏夫

原作・脚本・監督: 宮崎 駿
制作: 星野康二
音楽: 久石 譲
主題歌:
「海のおかあさん」
作詞: 覚 和歌子 宮崎 駿 (覚 和歌子作「さかな」より翻案)
作曲・編曲: 久石 譲
歌: 林 正子
「崖の上のポニョ」
作詞: 近藤勝也 補作詞: 宮崎 駿
作曲・編曲: 久石 譲
歌: 藤岡藤巻と大橋のぞみ
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
徳間ジャパンコミュニケーションズ

作画監督: 近藤勝也
美術監督: 吉田 昇
色彩設計: 保田道世
映像演出: 奥井 敦
編集: 瀬山武司
整音: 井上秀司
音響効果: 笠松広司
録音演出: 木村絵理子
スタジオジブリ 日本テレビ 電通 博報堂DYMP ディズニー 三菱商事 東宝 提携作品
製作担当: 奥田誠治 福山亮一 藤巻直哉
特別協賛: アサヒ飲料
特別協力: ローソン 読売新聞
配給: 東宝
カラー / ビスタサイズ / デジタルシネマ対応 /
ドルビーデジタルサラウンドEX・dts−ES(6.1ch) / 上映時間:101分

2008/08/14

【展覧会】雪舟の「恵可断臂図」や写楽の実物が見れてよかったな「対決—巨匠たちの日本美術」

 お盆休みでやることがないので、上野の国立博物館まで「対決—巨匠たちの日本美術」の展覧会を見に行く。
 会期が8月17日までで終了間際だし、お盆だから混んでるかな〜?でも、きっとみんなフェルメールの方に流れるから案外空いてるかな〜、などと思いながら行ったのですが、やはり大混雑で入場制限をしており、炎天下に30分並んでようやく入館できました。中も大混雑で、ゆっくり芸術鑑賞という雰囲気ではありませんでした。運慶vs快慶、雪舟vs雪村などと二人ずつ対比させて展示されており、ぽん太のような素人には分かりやすく、興味ももてて、よい企画だと思いました。公式サイトはこちら、東京国立博物館のサイトはこちらです。

 今回うれしかったのは、まず雪舟の国宝「恵可断臂図」(えかだんぴず)です。禅宗の開祖・達磨が少林寺で座禅をしているところに、恵可(慧可)という僧がやってきて弟子にして欲しいと頼みますが断られ、恵可が自分の腕を切り落として差し出すことで決意を表している場面です。重苦しい緊迫感に満ちた77歳雪舟晩年の名作です。ちなみに雪舟自身も禅宗の僧ですね。
 恵可が腕を差し出しながら達磨とした会話が、「無門関」に書かれています。有名な「達磨の安心(あんじん)」という問答です。

達磨面壁(めんぺき)す。二祖雪に立つ。臂(ひじ)を断(き)って云く、「弟子は心未だ安からず。乞う、師安心せしめよ」。磨云く、「心を将(も)ち来れ、汝が為に安んぜん」。祖云く、「心を覓(もと)むるに了(つい)に不可得なり」。磨云く、「汝が為に安心し竟(おわ)んぬ」。
 ぽん太が勝手にタヌキ語訳してみます。
精神科医の達磨先生は机に向かって何やら考えているようでした。患者の恵可さんは椅子にも座るのも忘れて診察室にたたずんでいました。恵可さんはリストカットした手首を見せながら、達磨先生に言いました。「私は心が不安で不安でたまりません。お願いします、先生、私の心を治療して下さい」。達磨先生は言いました「その心とやらをここに持って来て出して下さい。そうしたら治療してあげますよ」。恵可さんは答えました、「心を探し求めてみたんですが、どうしても心を捉えることができません」。すると達磨先生は言いました、「はい、治療終了」。
 ぽん太も達磨先生のようなあざやかな治療を行いたいものですが、なかなかこの域には達しません。
 「心未だ安からず」を不安と訳したのは正確ではなく、恵可は禅宗二代目になるくらいの能力の高い僧ですから、僧として心をどうとらえ、どう扱えばいいのか深いレベルで悩んでいたはずで、単なる不安感ではないでしょう。無門関では、達磨に「心を持って来てみろ」と言われた恵可は、ただちに「心が捉えられない」と答えたように書かれていますが、実際は恵可はここでしばし考えたことでしょう。あるいは実際は、心を探し求めて、何日間も座禅を続けたのかもしれません。しかし恵可は、心をどうしても捉えることができず、途方に暮れてしまい、達磨にそのことを告白します。実は恵可はこのとき既に真理に到達していたのですが、それに気づいていません。あとは達磨先生の一言です、「心は捉えることができない、心は実体がない、それが答えなのだ。お前はもう答えを見つけてるじゃないか」と言うのです。
 ちなみに「心不可得」というのは仏教ではとても大切な考え方で、ぽん太のブログでも以前に『金剛般若経』に関してちょっと触れたことがあります(こちら)。
 あまり指摘されたことがないように思いますが、恵可は自分の腕を切って差し出すことはできましたが、心は差し出すことはできなませんでした。「身体」と「心」が本質的に異なるものであるということが、この話しにはうまく表現されている気がします。
 一休さんのとんち話で、屏風の絵の虎を退治するよう言われた一休さんが、「捕まえますから虎を絵から出して下さい」と言った話しがありますが、「達磨安心」と似ています。もっとも同じような「〜を持って来てみろ」というパターンの問答は、「達磨安心」以外にもいくつかあるようです。

 話しを元に戻して、今回の展覧会でもうひとつよかったのは、大好きな写楽の実物を生まれて初めて見れたことです。やはり図録を見るのと実物を見るのは大違いで、有名な「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」も、顔の大きさに比べて身体が貧弱で、左手のデッサンは狂っているのがよくわかり、とてもアンバランスな印象を受けます。今回の展覧会が歌麿との「対決」という企画だったのでよけいに感じられたのですが、歌麿の絵が細工の細かい工芸品のように繊細で美しいのに対し、写楽はどこかグロテスクです。写楽が10ヶ月で消えてしまったのは、役者の顔をリアルに描きすぎたのが原因だなどと言われていますが、そもそも絵が「キモイ」のがホントの理由だったのではないでしょうか。しかしそのキモさが、また写楽の魅力に思えます。
 
特別展「対決-巨匠たちの日本美術」
会 期 2008年7月8日(火)~8月17日(日)
会 場 東京国立博物館 平成館 (上野公園)
 展示作品一覧

2008/08/12

【ジャズ】カサンドラ・ウィルソン@Blue Note(付:青山脳病院跡地の碑)

 日曜日、Blue Note TOKYOにジャズを聴きに行きました。とはいえぽん太はジャズはまったく不案内。ジャズ好きのにゃん子が選んだライブに、言われるがままにくっついていくだけです。
 表参道は、スタイルもよくてファッションもきまった人ばかりなので、短足オヤジ体型でユニクロに身を固めたぽん太は苦手です。こんどはせめて無印良品でシックにキメようかと思っています。

 ちょっと早めに着いたので、以前の記事で宿題になってた青山脳病院の跡地に行ってきました。斎藤茂吉の父親の斎藤紀一が1907年(明治40年)に設立した精神病院で、巨大なローマ式建築は、人々の度肝を抜いたようです。青山脳病院の写真は、たとえばこちらのサイトにあります。残念ながらこの建物は1924年(大正13年)に焼失。跡地は現在マンションになっていて、一角に斎藤茂吉の句碑があります。カメラを持ってなかったので、かわりにこちらのGoogleストリートビューをご覧下さい。ネットの噂によると、青山脳病院の模型が世田谷文学館にあるとのこと。またこんどみちくさしてみます。

 さて、Blue Noteで聴いたのは、カサンドラ・ウィルソン。ソウルっぽい雰囲気の女性ヴォーカルで、とてもよかったです。ギターのマーヴィン・スーウェルがとても気に入りました。Blue Noteはちと高いけど、大人の空間という感じで、たまに来てみたくなる場所です。

CASSANDRA WILSON
カサンドラ・ウィルソン
2008 8/7 thu. - 8/11 mon.

Cassandra Wilson(vo)
カサンドラ・ウィルソン(ヴォーカル)
Orrin Evans(p)
オリン・エヴァンス(ピアノ)
Marvin Sewell(g)
マーヴィン・スーウェル(ギター)
Kenny Davis(b)
ケニー・デイヴィス(ベース)
EJ Strickland(ds)
イージェー・ストリックランド(ドラムス)
Lekan Babalola(per)
レカン・ババロラ(パーカッション)

1ST
1.CARAVAN
2.SLEEPIN' BEE
3.BLACK ORPHEUS
4.ST.JAMES INFIRMARY
5.WHICHITA LINEMAN
6.GOD BLESS THE CHILD
7.DUST MY BLOOM
8.'TIL THERE WAS YOU
9.DEATH LETTER
10.ARERE

2008/08/10

【温泉】十勝岳温泉凌雲閣は温泉力はあるがちと割高

 7月上旬の北海道旅行、最後の夜は十勝岳の中腹にある一軒宿、十勝岳温泉湯元凌雲閣に泊まりました。公式サイトはこちらです。上富良野から西に入り、十勝岳に向かってどんどん登って行きます。道のほとんど終点、標高1280mのところに宿があります。ところが着いてびっくり。「あれ、ここ来たことがあるぞ……?」昔、十勝岳登山のおり、下山後に日帰り入浴で汗を流した旅館でした。
P7100141 前回は日帰り入浴でしたが、今回は宿泊です。ロビーがなんか雑然としているのが気になります。荷物やら子供の遊具やら観葉植物が無秩序に置かれています。でも部屋はこぎれいな和室でした。あいにくガスがかかっていて、十勝岳や富良野岳などの雄大な景色が見えなかったのは残念です。
P7100139 浴室は、男女別に内湯と露天があります。茶色く濁ったお湯で、温泉力がありそうです。源泉が二つあり、やや透明な方がぬるく、茶色が濃い方が扱ったような気がします。内湯も広く、露天風呂からは天気がよければ山々が見渡せるはずです。温泉はかなり得点が高いです。
P7090355 夕食は、地元の食材や北海道の幸がいただけて、なかなか美味しかったです。
P7100364 朝食はバイキングでしたが、特に北海道らしさがなく、やや物足りない印象でした。
P7090136 温泉力はなかなかすばらしく、食事も夕食はなかなかおいしいのですが、安い部屋が塞がっていたのか、さすがに一人につき一万五千円弱はさちと割高。北海道でこの料金なら、もっといい宿がいっぱいあるように思えます。日帰り入浴で温泉力を堪能する方がいいのかもしれません。

2008/08/09

【バレエ】すべてがすばらしい夢の饗宴/エトワール・ガラ2008(付:青春のロシア・アヴァンギャルド)

 オーチャードホールに「エトワール・ガラ」を観に行ってきました。公式サイトはこのBunkamuraのサイトになるのでしょうか?
 パリ・オペラ座バレエ団では、団員がランク分けされており、その最高位に位置するのが「エトワール」です。つまりブランデーでいえば「ナポレオン」みたいなもんですね。「エトワール・ガラ」は、このエトワールを中心に行われるガラ公演です。
 先日Kバレエの熊川哲也が膝の半月板を損傷して「海賊」を降板しましたが、「エトワール・ガラ」でも出演予定だったダンサーが何人か降板。とくにエルヴェ・モローが来られなくなったのは残念です。その代わりにルグリが出演することになったのはよかったです。
 今回のガラは、それぞれの演目が個性的でどれもすばらしく、とても満足いたしました。特に強く印象に残ったのはルンキナの「ジゼル」です。バレエ初心者のぽん太には、「まるで体重がないかのような」という月並みな形容しか思い浮かばないのですが、軽さと柔らかさが感じられ、ウィリの悲しみが神聖さ、崇高さにまで高められていた気がします。お相手のエイマンは、以前に観た時は飛んだり回ったり元気な子供のような印象でしたが、こんかいは優雅さが感じられました。身体能力とテクニックのしばらしさはあいかわらず。
 「メリー・ウィドウ」は今回の公演のために新たに振り付けされたもので、世界初演とのこと。アニエスの衣裳に仰天しました。ぽん太はファッション史はドシロウトですが、アール・デコだかバウハウスだか、20世紀前半風の絢爛豪華で大げさなドレスのような気がします。今回使われた「メリー・ウィドウ・ワルツ」は聞き慣れた曲ですが(Youtubeの動画はこちら)、原作のレハール作曲のオペレッタはあいにく観たことがありません。あらすじはたとえばこちら。メリー・ウィドウ・ワルツは、第1幕の最後に、意地を張り合うハンナとダニロが踊るワルツで、フィナーレにも使われるようですが、今回のバレエは設定が違うように思われます。金持ちのマッダームと若い二枚目のシャレたダンスという感じで、アニエスの貫禄と、ガニオの美しさが光っていました。ガニオはスタイルもよければ顔もよく、にゃん子は大喜びでした。
 設定がわからないといえば、アッツォーニ(ハンブルク・バレエ団)とブベニチェク(ドレスデン・バレエ団)の「ハムレット」。アイビー・ルックの男性が、恋人と会った喜びもつかの間、革のトランクを抱えて旅に出るという話しのようですが、シェイクスピアの『ハムレット』のどの場面に相当するのかまったくわかりませんでした。
 ガニオはもうひとつ、「ロミオとジュリエット」の「マドリガル」を、ユレルと踊りました。未来のエトワールのユレルは、ロミオと会えてうれしくてたまらないジュリエットを初々しく踊っていました。ガニオもあいかわらずすばらしかったですが、ヌレエフ版の「ロミオとジュリエット」といえばヌレエフ自身が踊ったDVDを見慣れているぽん太には、ガニオの踊りが大きすぎるように感じてしまいました。
 バンジャマン・ペッシュは、昨年の「ルグリと輝ける仲間たち」で、ぽん太の大好きな「牧神の午後」をとんでもない振付けで踊ったにっくきヤツですが、今回のガラのアーティスティック・オーガナイザーであり、三曲も踊って大活躍でした。昔のことは水に流してやろう。
 リアプコ(ハンブルク・バレエ団)は、「ベラ・フィギュラ」ではキリアンの無機的な世界を表現しましたが、一方「バーンスタイン・ダンス」はジーン・ケリーやフレッド・アステアのようなアメリカ風の楽しいダンスでした。
 〆はなんといってもルグリ先生。バッハの無伴奏チェロソナタの生演奏に乗せてのソロでしたが、ときには険しい表情で荘厳に、最後は明るく陽気に踊ってくれました。この踊りの「表情」は、ルグリ先生の真骨頂です。赤いジャージ姿でしたが、できれば片足をまくってほしかったです。
 会場でバレエ・ファン(特にパリオペラ座バレエ団)のミンクさんに会いました。自分のブログで昨日行われた同じプログラムの感想を書いていたので、「あれ?同じプログラムをまた見るんですか」と聞いたら、「5日間全部観るのよ、ほほほ」とのこと。

 すばらしいバレエを満喫したのち、地下のBunkamuraザ・ミュージアムで「青春のロシア・アヴァンギャルド−−モスクワ市近代美術館所蔵
シャガールからマレーヴィチまで」を見ました。Bunkamuraのサイトの特集ページはこちらです。今回はピロスマニの絵が10点見れたのがよかったです。「アエリータ」(1924、ソ連)という映画の一部をプロジェクターで上映していましたが、今見ると、カッコいいようで滑稽なようで微妙でした。


エトワール・ガラ2008  Aプログラム
2008年8月7日(木)14:00 オーチャードホール

1)「ハムレット」第2幕より パ・ド・ドゥ(振付:J.ノイマイヤー 音楽:M.ティペット)
シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェク

2)「ジゼル」第2幕より(振付:M.プティパ、J.コラリ、J.ペロー 音楽:A.アダン)
スヴェトラーナ・ルンキナ、マチアス・エイマン

3)「椿姫」第1幕より(振付:J.ノイマイヤー 音楽:F.ショパン)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ/ピアノ:上田晴子

4)「メリー・ウィドウ」 ※世界初演 (振付:P.ラコット 音楽:F.レハール 衣裳:P.ラコット)
マリ=アニエス・ジロ、マチュー・ガニオ

5)「ラ・バヤデール」第1幕より(振付:M.プティパ  音楽:L.ミンクス)
スヴェトラーナ・ルンキナ、バンジャマン・ペッシュ

6)「ロミオとジュリエット」第1幕より“マドリガル”(振付:R.ヌレエフ 音楽:S.プロコフィエフ)
メラニー・ユレル、マチュー・ガニオ

7)「思いがけない結末 Unintended Consequence」 ※世界初演 (振付:J.ブベニチェク、マリ=アニエス・ジロ 音楽:E.クーパー)
マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

8)「ベラ・フィギュラ Bella Figura」(振付:J.キリアン 音楽:G.B.ペルゴレージ、A.ヴィヴァルディ)
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

9)「カンツォーニ Canzoni」 ※日本初演 (振付:M.ビゴンゼッティ 音楽:N.ケイヴ)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

10)「バーンスタイン・ダンス」より“Part1 Wrong Note Rag”(振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.バーンスタイン)
アレクサンドル・リアブコ

11)「ダンス組曲」(振付:J.ロビンス 音楽:J.S.バッハ)
マニュエル・ルグリ/チェロ:宇野陽子


2008/08/07

【宿・観光】平取町の民宿チセに泊まってアイヌに思いをはせる

 ぽん太とにゃん子が7月初めに幌尻岳に登ったとき、お世話になったのが民宿チセです。ネットで適当に予約したのですが、行ってみたら大正解!とってもすばらしい民宿でした。公式サイトはなさそうなので、たとえばこちらの平取町商工会のページにリンクしておきます。

P7090087 不思議なオブジェがお出迎え。かなり巨大です。実はアイヌの神様なんだそうです。ぽん太はまったく知らなかったのですが、平取町(びらとりちょう)、特にここ二風谷(にぶたに)は、古来からアイヌ民族が生活してきた大切な土地なんだそうです。そして民宿チセのお父さん・お母さんももちろんアイヌ人です。この神様はノヤイモㇱといい、普通はヨモギで作られるものだそうです。また「チセ」とはアイヌ語で「家」という意味だそうです。

P7090088 こちらがチセさんの建物です。こざっぱりとしていて民宿としては申し分ありません。周囲の花はこまめに手入れがされています。この宿は幌尻岳に登る人がよく利用するのだそうですが、宿のお父さんは、麓に住んでいながら幌尻岳には登ったことがないそうです。というのも、この地域に住むアイヌ人にとって、幌尻岳は神様と考えられてきたのであり、神様を足で踏みつけて登ることは畏れ多くてできないそうです。山菜を採りに幌尻岳の裾野に入るときも、お酒を地面に撒いて「幌尻岳さま、少しだけ山菜を分けて下さい」とお祈りを捧げるのだそうです。その他にもお父さんにさまざまな話しを聞かせてもらいましたが、最近よくいう「自然との共存」ではなく、アイヌの人たちの、さらに一歩引いて自然を畏れ、敬い、感謝する生き方に、ぽん太は感動いたしました。ふつつかもののぽん太とにゃん子ですが、幌尻岳登山の折りは、幌尻山荘でお酒をちょっとだけ地面にまき、「幌尻岳さま、明日は登らせていただきます、よろしくお願いします」と手を合わせました。

P7060137 洞爺湖サミット妨害容疑で軟禁されて、夜の8時頃にへとへとになって宿に着いたぽん太とにゃん子を迎えてくれたのは、野外でのジンギスカンです。羊の肉の厚さに御注目下さい。とても新鮮で、いわゆる羊独特の臭みがまったくありません。また、お父さん特性のタレがとてもおいしかったです。

 

P7080278 チセさんには、幌尻岳に登る前日と、下山して来て日と、二泊お世話になりました。こちらが二泊目の夕食です。朝食ではありません。これに羊の肉と山菜のみそ汁がつきますが、ジンギスカンとはうってかわって質素です。
 ところがいただいてみると、とても美味しいです。シシャモは目の前を流れる沙流川(さるがわ)に遡上して来た天然物。シシャモが川を遡上するとは知りませんでした。Wikipediaを見てみると、世界中でも北海道南部の太平洋沿岸でしかとれないんですね。かつては取りきれないほどのシシャモが川に登って来たそうですが、今は海で乱獲されるため、遡上してくるシシャモはわずかになってしまったそうです。それから他のお惣菜も、お父さん・お母さんが春に山に入ってとった行者ニンニクやニリンソウなどの山菜を、手間ひまかけて調理したもので、アイヌの人たちが食べて来たものだそうです。う〜ん、美味しいに決まってます。でも、若い人にはちと物足りないかも。山で良く見かけるニリンソウが食べられるとは初めて知りました。でもニリンソウは、毒のあるトリカブトと葉っぱが似ているため、細心の注意(と愛情)で採って来たものだそうです。

P7090091 さて、平取町にはアイヌに関連するさまざまな観光スポットがあります。興味がある方は、こちらの平取町のホームページのなかの観光ガイドをご覧下さい。写真は萱野茂二風谷アイヌ資料館です。萱野茂氏は、アイヌで初めての国会議員になった人だそうです。そういえば、テレビで見た記憶があります。「なんだ議員さんの自己宣伝かい」と思ったらそうではなく、萱野氏は生涯をアイヌの研究や民具・民話の収集に捧げた立派な人なのだそうです。
 現在収集品の多くは、新しく造られた平取町立二風谷アイヌ文化博物館に納められているようです。民宿チセのお母さんが作ったアイヌ模様を刺繍したヘアバンドもありました。また、口承で伝えられた叙事詩ユーカラのテープが流れておりましたが、これが言葉といい口調といいすごい迫力でした。素朴で力強い言葉はホメロスの『イーリアス』を思わせます。きっと『イーリアス』もこのように詠われたのでしょう。

 アイヌ文化博物館の裏手には二風谷ダムがあります。アイヌの聖地を水没させたこのダムの建設には、多くのアイヌが反対し、萱野茂氏もその運動に関わりました。反対を押し切って建設されたこのダムは、建設後十年ちょっとで既に大部分が土砂で埋まり、ダムの役割を果たせなくなっているそうです。

P7090096 さて、国道沿いにはこんな建物もありました。洞爺湖サミットが行われたザ・ウィンザーホテルをかたどったものと思われますが、なかなかキッチュです。

 

P7090285 キッチュといえば、こちらの「山菜直売所」も得点が高いです。ペイントされた浮きが不気味な雰囲気を醸し出します。

 

 

P7090095 こちらは義経神社です。義経が実は北海道から大陸に渡り、ジンギスカンになったという伝説は有名です。しかしぽん太がGWにウズベキスタンを旅行したとき、美しいオアシス都市であったサマルカンドをジンギスカンがめちゃめちゃに破壊したことを知りました。義経がそんなひどいことをするはずはないと思うので、義経がジンギスカンになったというのはあり得ないでしょう。

 ところでこの義経神社、創建が寛政11年(1798年)と比較的新しいものです。神社に併設された義経資料館の展示には、次のように書いてありました。

(近藤)重蔵が蝦夷地に入り、寛政十年(一七九八)沙流を通過する時、この地の人たちが刀剣や甲冑を秘蔵し祀っていることを知って「汝等が祀っているものは、源九郎判官義経公のものである。私が次回この地に来る時には必ずその義経公の御神像を持って来て、汝等に授けよう。」と約束をし、再び蝦夷地を訪れ平取の地に奉祀され、以来この地の人たちの尊崇を受けております。

 ということは、義経伝説は、もともとあったものではなく、近藤重蔵がアイヌ人に押し付けたものではないか!!しかも偶像まで持参して。これはあやしい。近藤重蔵といえば幕府の命を受けて蝦夷を探検した人物。幕府がアイヌを支配するために、義経伝説を利用して、アイヌ古来の信仰を弱めようとしたのではないのか!?義経・ジンギスカン伝説は、幕府の蝦夷支配と関係があるのでしょうか。う〜ん、奥が深そうです。そのうちみちくさしてみたいです。

P7090105 二風谷よりやや北にある振内には、振内鉄道記念館があります。建物は立派ですが、大した展示品はありません。錆びたD51が保存されていました。

2008/08/06

【バレエ】熊川降板は残念だけれど都ちゃんが観れて感動(Kバレエカンパニー「海賊」)

 先日ブログに書いたように、熊川哲也が半月板損傷で「海賊」を降板。ひょっとして1年前の記事ではないかと思いましたが、何度確認しても今回の公演とのこと。とっても残念です。このさい無理せず、しっかりと膝を治して欲しいです。
 で、今回のアリ役は遅沢佑介。あまりよく知らないダンサーですが、過去に「白鳥」のスペインで観ているようです。そしてメドーラには吉田都ちゃんが登場です。前回Kバレエの海賊を見たときも吉田都がメドーラでしたが、今回も楽しみです。

 Kバレエの「海賊」の特徴は(というよりKバレエの演目全般の特徴かもしれませんが)、ドラマティックなストーリー展開にあります。メドーラとグルナーラを姉妹とし(どっちがお姉さん?)、海賊船の難破は最初に持ってきて、最後はアリが殺されて終わります。「白鳥の湖」ではハリウッドばりのストーリー展開を見せたアメリカン・バレエ・シアターでも、「海賊」ではストーリーが破綻していました。がしかし、歌舞伎でもそうですが、古典的な舞台は現代人からみると、矛盾していたりバランスを欠いたりしている場合が多く、それが逆に古典の魅力になっています。確かに勘三郎のコクーン歌舞伎は現代人にとってとても面白くて興奮するのですが、江戸時代の観客はまったく別の観点で歌舞伎を楽しんでいたように思えるのです。そういう意味で、Kバレエの「海賊」も、ドラマチックでスピーディーな展開で面白くて興奮するのですが、一方で筋が破綻した昔ながらの「海賊」もぽん太は好きなのです。

 熊川哲也に代わってアリを踊った遅沢佑介は、普通の小柄なアリと違って、長身で手足も長く、踊りが大きくてダイナミックです。さらに存在感というか、観客を引きつける魅力が出てくるといいのですが。一方コンラッドがスチュアート・キャシディで、ノーブルというよりは男らしい海賊風でしたが、これはこれで遅沢のアリとバランスが取れているのかもしれません。メドーラの吉田都ちゃんのすばらしさは言うまでもなし。動きが柔らかく、正確で安定しています。普通のダンサーだと、「うんしょ、どうだ、すんごいだろ、がんばってるよ」というところを、力まず軽々と簡単に踊ります。質量がないかのようです。格というかレベルが一段階違う気がします。
 荒井祐子はウェストが細い。パ・ド・トロワの 東野泰・樋口ゆり・副智美はそれぞれに持ち味があって魅力的。宮尾俊太郎が海賊軍団の一人というのがごちそうで、ジャンプや回転が集団のなかで光り輝いていました。
 シアターオーケストラトーキョーの演奏は悪くなく、鈴木晶先生のブログによれば、指揮の福田一雄氏の尽力で珍しい曲が多く使われていたそうです。
 夏休みの日曜日だったためか、熊川哲也の降板によって払い戻されたチケットを関係者にばらまいたせいか(推測)、マナーの悪い観客が多かったのは残念です。隣りの二人連れが、吉田都が登場した場面で、ヒソヒソ声ではなく普通の声で会話をし始めたときは、さすがのぽん太も注意させていただきました。ついにモンスター・オーディエンスというものも出始めたようです。

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY
2008 Summer
「海賊」Le Corsaire
2008年8月3日(日)18:30 文京シビックホール

メドーラMedora 吉田都Miyako Yoshida
コンラッドConrad スチュアート・キャシディStuart Cassidy
アリAli 遅沢佑介 Yusuke Osozawa
グルナーラGulnara 荒井祐子Yuko Arai
ランケデムLankedem 輪島拓也Takuya Wajima
ビルバントBirbanto ビャンバ・バットボルトByambaa Batbold

サイード パシャSeid Pasha ルーク・ヘイドンLuke Heydon

ギリシャの少女達 Greek Girls
東野泰子Yasuko Higashino/樋口ゆり Yuri Higuchi/神戸里奈 Rina Kambe/小林絹恵Kinue Kobayashi
仙頭由貴Yuki Sento /副智美 Satomi Soi/柴田有紀 Yuki Shibata/白石あゆ美 Ayumi Shiraishi
日向智子 Satoko Hinata/木島彩矢花 Sayaka Kijima/中谷友香 Yuka Nakatani/渡部萌子 Moeko Watanabe

海賊の男達 Male Pirates 杜海 Du Hai ニコライ・ヴィユウジャーニンNikolay Vyuzhanin
橋本直樹 Naoki Hashimoto/宮尾俊太郎 Shuntaro Miyao
小林由明 Yoshiaki Kobayashi/ピョートル・コプカPiotr Kopka
安西健塁 Takeru Anzai/荒井英之 Hideyuki Arai
ピエトロ・ペリッチア Pietro Pelliccia/内村和真 Kazuma Uchimura
石黒善大 Yoshihiro Ishiguro/スティーブン・ウィンザー Steven Windsor
【第1幕2場(市場)Act I Scene 2 (Market)】
物乞い Beggar 小林絹恵Kinue Kobayashi
アレクサンドル・ブーベルAleksandr Buber
【第2幕1場(洞窟)Act II Scene 1 (Cave)】
パ・ド・トロワPas de Trois 第1ヴァリエーション1st Variation 東野泰子Yasuko Higashino
第2ヴァリエーション2nd Variation 樋口ゆりYuri Higuchi
第3ヴァリエーション3rd Variation 副智美Satomi Soi

鉄砲の踊り Gun Dance 中島郁美Ikumi Nakajima
内冨陽子 Yoko Uchitomi/松根花子Hanako Matsune
杜海 Du Hai/ピョートル・コプカPiotr Kopka

パシャの夢の中の娘達/トルコ軍/市場の住人達/女奴隷達/金持ち達
Girls in Pasha’s Dream /Turkish army/Market dwellers/Female Slaves/Rich People
K-BALLET COMPANY ARTISTS

◆芸術監督 Artistic Director 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
◆演出・再振付 Production,Additional Choreography 熊川哲也Tetsuya Kumakawa
◆原振付 Original Choreography マリウス・プティパ Marius Petipa
◆台本改訂 Scenario 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
◆舞台美術・衣裳 Set and Costume Design ヨランダ・ソナベンド Yolanda Sonnabend/レズリー・トラヴァース Leslie Travers
◆音楽 Music アドルフ・アダンほか Adolphe Adam etc. ◆照明 Lighting Design 足立恒Hisashi Adachi
◆指揮 Conductor 福田一雄 Kazuo Fukuda ◆演奏 シアターオーケストラトーキョー THEATER ORCHESTRA TOKYO

2008/08/05

【サーカス】派手な演出より実力で勝負だぜ(2008国立ボリショイサーカス横浜公園)

 以前にシルク・ドゥ・ソレイユのドラリオンを観てサーカスに目覚めたぽん太とにゃん子は、サーカスといえばボリショイサーカスだとばかり、はるばる横浜まで出かけてきました。こちらがボリショイサーカスの公式ホームページです(動画もあるよ)。
 中華街で点心をつまみにビールを飲んで、会場の横浜文化体育館へ。会場に入ると、大人のカップルが多かったシルク・ドゥ・ソレイユとはかなり客層が異なり、子供連れの家族ばっかりです。ぽん太とにゃん子が取れた席は、真正面のアリーナ席の前から2列目。後ろには小学校低学年と思われる子供が座っていますが、われわれが邪魔になって見えないのではないかと心配です。座高の高いぽん太ですが、少しでも背を低くして座り続けました。子供たちには申し訳ないが、これも大人買いの一種かと。ごめんなさい。
 で、会場は、シルク・ドゥ・ソレイユのお洒落な雰囲気とは異なり、昔ながらの円形の舞台がしつらえてあり、足場などが丸見えで、チープな場末の雰囲気が漂います。フェデリコ・フェリーニの「道」が思い出され、悲しいトランペットのメロディ(Youtubeの動画はこちら)が頭の中に響き渡ります。そしてまた、「社会主義」という懐かしい言葉も浮かんできました。
 がしかし、外見はみすぼらしいですが(失礼!)、実力はすごいです。特にボリショイといえば動物系。動物系といえばボリショイです。でっかい猫のサーカスや、ふさふさの毛がかわいらしい白い犬の軍団のサーカスなど、可愛さ満点です。熊のサーカスでは、足で大きな棒をまわしたり、綱渡りをしたりの大活躍。そして虎のサーカスは、可愛くて怖いです。
 空中ブランコも、高さとスピードと迫力満点。手に汗を握ります。やっているひとが意外とがっしりとした体格をしていて、重そうなのに驚きました。三回転は2度チャレンジして失敗だったのが残念!
 また、シーソーを使ってジャンプするシーソー・アクロバットは、さすがプロと思わせるバランス感覚と正確さでした。
 いい席を大人買いした罰として、ピエロに絡まれて会場中の笑い者になるというおまけつき。良い子のみんな、喜んでくれたかな?

 ところで楽しいことは楽しかったけれど、「ロシア国立」にしてはしょぼすぎないか? 上記の公式サイトの解説によれば、ボリショイサーカスのロシアでの正式名称はロシア連邦サーカス公団で、約8000人の団員、6600頭以上の動物、約100カ所の劇場を持つそうです。ソビエト連邦時代は、当然すべてのサーカスは国立だったのでしょうけれど、ロシアになってからも国立のままなのでしょうか? 1978年の段階で、ソビエト連邦サーカス公団には、サーカス公団61、移動サーカス15、動物サーカス13、氷上サーカス2、水上サーカス、レビューサーカス等が所属していたそうです。つまりロシア国内の100近くのサーカスが、海外で公演するときはボリショイサーカスを名乗っているのだと思われます。今回ぽん太とにゃん子が観たのは、そのうちのひとつということになりますが、ロシアのサーカスの中のどこで活躍するどういうランクのサーカスなのかは、公式サイトを見てもよくわかりません。

 サーカスは西洋では見せ物として扱われてきましたが、ロシアでは芸術として高い評価をされていたという話しを昔聞いたことがあります(真偽不明)。バレエに関しても、発祥の地ヨーロッパでは、19世紀後半には女の子の足をながめるための「風俗」に成り下がりましたが、ロシアで芸術として発展しました。ロシア・バレエは20世紀初頭にバレエ・リュスという名でフランスに逆輸入され、以後世界にバレエが広まったそうです。ロシア人がバレエを大事にしたことと、サーカスを尊重したことは、関係があるようにぽん太には思えます。

 つぎは中国雑技団を観たいです。

2008/08/03

【歌舞伎】玉三郎・海老蔵の「高野聖」は少し不満が残りました(2008年7月歌舞伎座夜の部)

 7月の歌舞伎座夜の部は、お楽しみ玉三郎と海老蔵の「高野聖」と、「夜叉ケ池」の再演です。ワクワクしながら観に行ったのですが、残念ながら不満が残る結果となりました。

 「高野聖」の原作は、言わずと知れた泉鏡花(1873〜1939)の同名の小説です。昭和29年(1954年)に歌舞伎として上演されたこともあるそうですが、今回は石川耕士と坂東玉三郎が新たに演出したものだそうです。
 玉三郎演ずる「女」は、美しくて落ち着きのある年増で、次郎や獣に対して邪険ともとれる態度をとる一方で包み込むような優しさがあり、気品と妖艶さを併せ持つというものでした。泉鏡花の描いた「女」の一面をよく演じていたと思います。しかし「女」のもう一方の面、非現実的な魔境に棲む妖女という面があまり感じられず、ちょっと世話物っぽくい印象を受けました。ポスターの写真の方が、妖艶さや魔性の雰囲気があったように思います。とはいえ、小説では観念的イメージにすぎない「女」を、生身の身体で表現した玉三郎には拍手を送りたいと思います。
 蛇や猿、蛙やコウモリ、ムササビなどの獣は、黒衣さんたちがすごく頑張ってリアルに演じていましたが、気味悪く不気味というよりも、滑稽でかわいらしく感じられました。馬も機械仕掛けが目立ち過ぎで、普通に人が入っている方がよかった気がします。また舞台がやたらとぐるぐる回るのもわずらわしかったです。
 原作では、ヒルの森などの描写によって、現実から魔境に入って行く境界がわかりやすいのですが、舞台では不明瞭だった気がします。
 玉三郎と海老蔵の混浴、もとい一緒に水浴びするシーンも、「お客様サービス」という感じで、妖艶な雰囲気はなく、客席からも照れ笑いが起こってました。ちなみにぽん太とにゃん子の席は前の端の方だったので、岩陰で着物を脱いだ海老蔵のふんどし姿が見え、にゃん子は喜んでおりました。
 今回の舞台がいまひとつ面白くなかった理由として、もともと独白形式の小説を演劇化する難しさがあったような気がします。
 劇の構成としては、後半の親仁の台詞が長過ぎます。この台詞はとっても大切なもので、これによって「女」の来歴や魔力がすべて明らかになるという、この話しの核心なのですが、それが一人の長台詞で解き明かされるのでは、劇として破綻しています。歌六の台詞まわしは実に見事で、この長台詞をちっとも飽きさせませんでしたが、登場人物のやり取りで表現して欲しいものです。
 また、心の中を文章で表現できる小説と異なり、演劇では外的な言動でしか表現できないので、高野聖がどう感じて何を考えていたかという内面がわかりませんでした。これも海老蔵の演技力の問題だけでなく、脚本の問題でもありましょう。
 ちなみに『高野聖』を書いた当時の泉鏡花は、桃太郎という名の芸伎(本名:伊藤すず)との愛を育んでいました。しかし当時の日本社会では、芸伎はあくまでも遊び相手であり、生まれ育ちのよい妻をめとって立派な家庭を築くのが男子たるものの本懐であると考えられており、鏡花の師匠の尾崎紅葉は二人の交際をかたく禁じたのでした。しかし尾崎紅葉の死後、ふたりは夫婦となります。つまり現実には、小説の結末とは異なり、高野聖は「女」のところへ戻って行ったのです。しかし今回の公演では、「心根の美しい若い僧に惚れた年増が応援する」という話しになってました。
 尾上右近の次郎は、最初サッカーの小野伸二かと思いましたが、好演。木曽節では見事な喉を聞かせ、六代目菊五郎のひ孫で、七世清元延寿太夫の息子である血筋を見せつけました。
 ちなみに、聖が女に出会った天生峠(あもうとうげ)をぽん太が訪れたときの話しは、こちらです。残念ながらぽん太は妖女には出会いませんでした。
 
 「夜叉ヶ池」は平成18年7月に歌舞伎座で行われたときとほぼ同じメンバーによる再演でした。夜叉ヶ池の主である白雪姫が、実は昔雨乞いの生け贄にされて池に身を投げた娘・白雪であるという下りが、今回は前回よりわかりにくかった気がするのですが、台詞がいくらか変わっていたのでしょうか? そこを押さえないと、人間界と魔界という二つの世界があり、百合と萩原が人間界から魔界へ移行するという話しが見えにくくなり、欲得を求める村人が懲らしめられるという教訓になってしまいます。
 ちなみに、夜叉ヶ池の白雪姫に恋文を寄せたのは白山の千蛇ヶ池の主ですが、ぽん太も白山に登ったことがありますが、そんな名前の池はあったっけ。調べてみると、山頂付近のお池めぐりなかのひとつよのうです。しまった、写真を見直してみましたが、千蛇ヶ池の写真はありませんでした。残念!

歌舞伎座・七月大歌舞伎(平成20年7月)
夜の部
一、夜叉ヶ池(やしゃがいけ)
              百合    春 猿
             白雪姫    笑三郎
             萩原晃    段治郎
            穴隈鉱蔵    薪 車
           畑上嘉伝次    寿 猿
           黒和尚鯰入    猿 弥
             万年姥    吉 弥
            山沢学円  市川右 近
二、高野聖(こうやひじり)
               女    玉三郎
              宗朝    海老蔵
              薬売    市 蔵
              次郎  尾上右 近
              猟師    男女蔵
              百姓    右之助
              親仁    歌 六

2008/08/02

【オペラ】歌もさることながら演出が見事でした(青ひげ公の城/消えた男の日記・パリ国立オペラ)

 ぽん太とにゃん子がオーチャードホールに行くと雨が降る、というジンクスはついに途絶え、じっとりと蒸し暑かったとはいえ雨は降りませんでした。

 さて、今回はパリ国立オペラの初来日公演とのこと。どの演目を観に行くか大いに迷いましたが、「トリスタン」は昨年ベルリン国立歌劇場で観たばかりだったので、「青ひげ公の城/消えた男の日記」という渋い演目にしてみました。もちろんぽん太は初めてです。
 ちなみに今回のパリ国立オペラ初来日公演の公式サイトはこちらです。動画も見れます。
 歌もさることながら、演出や美術がすばらしく、先日のパリオペラ座バレエでも感じましたが、斬新でオシャレで、いかにもフランスという印象でした。

 まずは「消えた男の日記」。ヤナーチェックのピアノ伴奏による連作歌曲を、指揮を担当したグスタフ・クーンがオーケストレーションをしてオペラ化したもので、今回が初演だそうです。ヤナーチェクは、昔LPのB面でオペラ「利口な女狐の物語」の組曲を聞いていた記憶があります。ロシア的な金管の響きと、東欧の森を思わせる神秘的な雰囲気のある音楽だったような気がします。1854年にチェコのモラヴィアで生まれ、1928年にオストラヴァで死んだようです。モラヴィアといえば、精神分析の創始者のフロイトが生まれたところですね。彼が生まれたのは1856年ですから、ヤナーチェックの2歳年下ということになります。
 今回の座席は、なんと前から5列目。最高の席です。ところが幕があいて歌声は響いてきますが、舞台の上には誰もいません。しばらくして首を動かしてみると、前の人の頭の陰に、舞台から首だけ出している歌手がいました。舞台が進行するにつれて、胸まで出て来てクロールみたいに地面を掻いたりし、最後は穴からスッポンと出てきましたが、前の人の頭が邪魔でよく見えません。あとは登場人物は、娼婦風の女性と、客席の下手前方で歌う三人のコーラスだけ。途中で十数名の男女が地面を這うように出てきましたが、これもぽん太の席からだと低すぎてほとんど見えず。二階席からだったらよく見えたのでしょうけれど……。しかもたったの30分で終了。なんだこりゃ。金返せ!
 などとも思いましたが、若い農夫が森のなかでジプシーに恋をして、家と世間を捨てて出て行くという物語はが、ちょっと不気味でおどろおどろしい雰囲気で描かれていて、おもしろかったです。

 次いでバルトークの「青ひげ公の城」。こちらは名前だけは聞いたことがあります。登場人物は青ひげ公とユディットの二人だけ。
 物語のあらすじはググっていただくことにして、要するに「知」を望んだ女が「愛」を失うという話しでした。もとになった「青ひげ公」という物語には、さまざまなヴァージョンがあるようですが、今回はみちくさいたしません。
 作曲者のバルトーク(1881〜1945)は、ハンガリーの民族音楽を取り込んだ前衛的な音楽を作る人だと思っていたのですが、このオペラは和声的にも普通でわかりやすく、強烈なリズムもありません。このオペラが創られたのは1911年でバルトーク30歳の頃。リヒャルトシュトラウスの後期ロマン派などの影響も受けていた時期のようです。
 さて、すばらしいのは演出です。何枚ものスクリーンとプロジェクターを使って、これまで見たことのない光の空間を、舞台上に作り出していました。オペラの演出というよりそれ自体が別のジャンルの芸術のようで、「こんなのありか?」という感じでした。演出は、ラ・フラ・デルス・バウスというスペインの演劇集団だそうです。
 歌手では、青ひげ公のサー・ウィラード・ホワイトが、優しくもあり残酷でもある謎の人物青ひげ公を好演。オケの善し悪しはぽん太にはわかりません。
 観客の反応は悪くなく、熱狂的な拍手喝采とまではいきませんでしたが、渋い演目ですからやむを得ません。

 公式サイトにあるパリ国立オペラのジェラール・モルティエ総裁のインタビューによると、今回の日本公演のテーマは「愛と欲望」とのこと。今回の二つの演目も、まさしく「愛と欲望」を描いたものでした。ところでつい先日、歌舞伎で泉鏡花の『高野聖』を観たのですが、これもまた「愛と欲望」がテーマであり、さらに海老蔵と玉三郎が肩から上だけ出して水浴するシーンは「消えた男の日記」を彷彿とさせ、シンクロにシティーにぽん太は驚きました。

パリ国立オペラ初来日公演
2008年7月30日 オーチャードホール

音楽監督/指揮:グスタフ・クーン
企画:ラ・フラ・デルス・バウス
演出:アレックス・オレ/カルロス・パドリッサ(ラ・フラ・デルス・バウス)
装飾/衣装:ジャウメ・プレンサ
演出補:ヴァレンティナ・カラスコ
映像プロデューサー:エマニュエル・カルリエ
照明:ピーター・ヴァン・プラート

消えた男の日記
 作曲:レオシュ・ヤナーチェック
 男:ミヒャエル・ケーニッヒ
 女:ハンナ・エステル・ミニュティロ
 女性たちの声:リー・ヘヨン、レティティア・シングルトン、コルネリア・オンチョイウ

青ひげ公の城
 作曲:ベラ・バルトーク
 青ひげ公:サー・ウィラード・ホワイト
 ユディット:ジャンヌ=ミシェル・シャルボネ

2008/08/01

【テロ?】北海道で洞爺湖サミットを妨害する

 ぽん太とにゃん子は、7月上旬に北海道に登山に行ってきました。ところが、ちょうど洞爺湖サミットと日程がぶつかり、いろいろと大変でした。P7060134 7月6日の夕刻に新千歳空港に到着。レンタカーの送迎の運転手さんが、「あれがブッシュの専用機ですよ」と教えてくれました(写真の左はじ)。
P7060001 空港でレンタカーを借りて、日高方面へ。沿道のあちこちに警察官がいて、物々しい警備体制です。でもぽん太とにゃん子は、「洞爺湖の方には行かないから大丈夫だろ」などとたかをくくっておりました。夕方だったので早く宿に着きたいと、北海道では不要の高速をわざわざ利用したのが間違いのもと。千歳ICから苫小牧東ICまでのわずか11.9km(所要時間8分)の間で悲劇は起こったのです。
 千歳ICから高速に入って、道央自動車道を南下して行くと、うしろにパトカーが一台ぴったりと追走してきます。そこで「いつもの通り」法定速度の時速100kmで走行。
 別に悪いことはしていませんが、ずっとパトカーに追いかけられるのも気分がよくないので、抜いてもらおうと思って、速度を80kmぐらいに落としました。すると、パトカーから拡声器で怒鳴り声が……。
 「スピードを上げなさい!!」
 ぽん太とにゃん子はパニックです。スピードを落とせというのならわかりますが、スピードを上げろと怒られるのは生まれて初めてです。状況が理解できません。

 混乱していると、業を煮やしたのかこんどはパトカーが並走。路肩に停止させられました。
 「何にも聞いてないんですか!? 100キロで着いて来なさい」とのこと。
 ぽん太とにゃん子は何にも聞いてないよ〜。高速入口も普通に入れたし……。

P7060003 パトカーに先導されて、美沢PAに入らされました。
P7060135 先客の車がもう一台停まっています。おまわりさんの話しでは、何でもこれから高速を要人が通過するので、その間ここで車から出ずに待機していなくてはならないとのこと。車一台に警察官一人の監視つきです。ちなみにおまわりさんは京都府警とのこと。ご苦労様です。

 ここから先は撮影禁止。しばらくすると、白バイとパトカーに先導されて、何台かの黒塗りの車がすごいスピードで通過。イタリアのベルルスコーニ首相だそうです。珍しいものを見れてよかった。さあ、民宿へいってビールでも飲もうっと。
 これで解放されると思いきや、次の要人の車が高速に入ったとのこと。さらに軟禁は続きます。誰だか忘れましたがさらに二人の要人が通過し、結局1時間近くパーキングエリアに缶詰にされました。
P7060004 ようやく釈放されて、警備車両だらけのパーキングエリアからおさらばです。

 つまり、要人を通すためにパトカーが先導していたら、前をのろのろと走っているぽん太とにゃん子がいたので、「もっと速く走れ」と指示したのでした。たしかに、後ろからイタリア首相の車が追いついてしまったら大変ですものね。ぽん太もそんなんでワイドショーのネタになりたくないです。
 でもそれなら、高速の入口を閉鎖しておいてくれればいいのに。ぽん太とにゃん子は何も知らずにすんなりと入ってしまいました。
 後で知ったことには、なんでも本来はヘリで移動するはずだったのが、霧のために急きょ車に変更になったそうで、警備も混乱していたのかもしれません。

 滅多に体験できない事件で、おもしろかったです。迷惑かけてすみません。

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