先週観た『ナポリ』は「う〜ん、まあよかったんじゃない?」という感じでしたが、『ロミオとジュリエット』はホントにすばらしかったです。とはいえバレエ初心者のぽん太、ノイマイヤーがすごいのか、プロコフィエフがすごいのか、ダンサーがすごいのか、ちっとも判断がつきません。おそらくすべてすごいのでしょう。NBSの『ロミオとジュリエット』の公式サイトはこちらです(ハイライト動画もあり〼)。
幕開きのキャピュレット家とモンタギュー家の争いのあたりは、なんだかバタバタして舞台上がすっきりしていない印象がありましたが、だんだんと引き込まれ、バルコニーのパ・ド・ドゥではうっとり放心状態、ラストシーンでは涙が止まりませんでした。
バルコニーのシーンは、テレビのルグリ先生でやったヌレエフ版の表現力と超絶技巧が頭に焼き付いていたので、「あれに比べれば大したことないだろうな〜」と高をくくって観ていたのですが、勝るとも劣らぬすばらしさでした。初恋に胸をときめかす若い男女の初々しい情愛を余すところなく表現し、「わしも昔はこんな時期があったの〜なつかしいの〜」という感じでした。
ジュリエットのスザンネ・グリンデルは見目麗しく、かつ役者的な表現力が豊かでした。ロミオのセバスティアン・クロボーは、難しそうなリフトを見事にこなしておりました。上の公式サイトには、「コール・ドながらソリスト役を任されている」と書いてありますが、彼がコール・ド・バレエってほんと?デンマーク・ロイヤル・バレエの公式サイトを見てみたら、ちゃんとソリストのようです。あゝびっくりした。
ノイマイヤーは、以前に観た『人魚姫』もそうでしたが、バレエを演劇的に表現するのがうまいです。また音楽の細かいニュアンスを大切にして振付けており、例えば3幕の幕開きで、悲しげな葬送の音楽が不協和音を奏でた瞬間に、葬列の女性のひとりが思わずしゃがみ込みます。音楽の不協和音化と感情の爆発とが、見事に呼応しておりました。僧ローレンスがジュリエットに眠り薬を使ったトリックを説明する時も、古典バレエだと長々とマイムが入るところですが、二人のストップモーションのシルエットと、人形劇(?)を使った演出が鮮やかでした。ラストで自分のお腹をナイフで刺したジュリエットが、がっくりと死ぬでもなく、ロミオと天国で一緒になる喜びにひたるのでもなく、傷の痛みと、これから訪れる死に対する不安な表情を浮かべながら、ロミオの亡がらに身を寄せるという演出も驚きました。また普通「ロミオとジュリエット」は、両家の対立と愛とが対比されるのですが、ノイマイヤーの演出では、ロボットのような動きで表されたキャピュレット家の因習的な世界と、ロミオとジュリエットの自由な愛の世界が対比されていました。これがノイマイヤー29歳のときの振付けというから驚きです。
プロコフィエフの音楽も初めて全曲聞きましたがすばらしかったです。ソフトバンク・モバイルのCMの曲が『ロミオとジュリエット』だったとは知りませんでした。また途中で古典交響曲の第3楽章が使われているのも初めて知りました。グラハム・ボンド指揮、東京シティ・フィルの演奏も叙情的で厚みがあり、とてもよかった気がします。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団「ロミオとジュリエット」
2009年5月24日(日) 東京文化会館
キャピュレット家
キャピュレット夫人:ギッテ・リンストロム
キャピュレット公:モーエンス・ボーセン
ジュリエット:スザンネ・グリンデル
ロザライン:エイミー・ワトソン
ヘレナ:セシリー・ラーセン
エミーリア:ディアナ・クニ
ティボルト:マス・ブランストルップ
乳母:イェッテ・ブックワルド
ピーター:イェンス・ヨアキム・パレセン
モンタギュー家
モンタギュー夫人:ルイーズ・ミヨール
モンタギュー公:フレミング・リベア
ロミオ:セバスティアン・クロボー
ベンヴォーリオ:アレクサンダー・ステーゲル
バルタザール: オリヴィエ・スタロポフ
キャピュレット家の使用人
サンプソン:アルバン・レンドルフ
グレゴリー:クリスティアン・ハメケン
ポットパン:バイロン・マイルドウォーター
ルチェッタ:エレン・グリーン
グラティアーナ:ブリジット・ローレンス
カミーラ:ヒラリー・ガスウィラー
ウルスラ: ホリー・ジーン・ドジャー
ネル:マティルデ・ソーエ
スーザン:エリザベット・ダム
モンタギュー家の使用人
アブラハム:ジェイムズ・クラーク
アンジェロ:グレゴリー・ディーン
マルコ:エリアベ・ダバディア
シルヴィア:エスター・リー・ウィルキンソン
フランシス:レベッカ・ラッベ
マルガレータ:サラ・デュプイ
ポーリーナ:レナ=マリア・グルベール
リヴィア:アマリー・アドリアン
マリア:ジュリー・ヴァランタン
ほか、ロザラインの召使い、キャピュレット家の護衛、キャピュレット家の舞踏会の客、モンタギュー家の護衛
僧ローレンス:コンスタンティン・ベケル
エスカラス(ヴェローナ大公):エルリング・エリアソン
マキューシオ:モーテン・エガト
パリス伯爵:マルチン・クピンスキー
娼婦
イモーガン:キジー・ハワード
ヴィオレンタ:マリア・ベルンホルト
旅芸人の一座
イザベラ: ティナ・ホイルンド
ヴァレンティン:ジャン=リュシアン・マソ
ルシアーナ:アナスタシア・パスカリ
ラヴィニア:ジョルジア・ミネッラ
アントーニオ:クリストファー・リッケル
ビアンカ:キジー・ハワード
セバスティアン:セバスティアン・へインズ
ほか、ヴェローナの市民、花娘、元老議員、商人、守衛、会葬者、司祭、修道士、修道女
デンマーク・ロイヤル・バレエ学校の生徒 協力:東京バレエ学校
指揮:グラハム・ボンド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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