山本純美『江戸の火事と火消』で加賀鳶のお勉強(付:へ・ら・ひ組はあったのか?)
先月、歌舞座で「加賀鳶」を見て江戸時代の「火消」に興味を持ったぽん太は、山本純美の『江戸の火事と火消』(河出書房新社、1993年)を再読してみました。いつものとおり、ぽん太が面白かった点の抜き書きです。
まず江戸の消防組織には、定火消(じょうびけし)、大名火消、町火消の三つの系統がありました。定火消は幕府直轄で江戸城周辺を受け持ちました。また大名火消は大名の自営消防組織で、加賀鳶はこれに属します。町火消は町人地を受け持ち、「いろは組」で有名です。
大名屋敷は、上屋敷・中屋敷・下屋敷など、数カ所に分散しているのが常で、ぽん太もなんでだろ〜と思っていたのですが、火事のさいに全焼を免れるためというのが一つの理由だったそうです。
大名火消は、派手な衣装を着て華美を争う傾向があったようで、なんども簡素化のおふれを出したにもかかわらず、なかなか改まらなかったそうです。天保年間には、火災現場の指揮中に、火事そっちのけで三度も装束を着替えた者もいて、それを見るために大勢の見物人が集まったそうです。
なかでも加賀鳶は華美を極めたそうです。まず頭の武士は馬に乗り、両側に四人の馬脇侍を従え、錏頭巾(しころずきん)をかぶき、火事羽織には赤地に一寸ほどの金角継をつけ、これが光り輝いていたそうです。
なんのこっちゃ、全然ぽん太にはわからんぞ。錏(しころ)というのは兜の下側に垂れている首筋を守る部分ですから、錏頭巾というのは首を覆うような頭巾だと思いますが、金角継というのはググってもわかりません。
さて、鳶の頭の服装は、大きく染め出された雲に稲妻が交差するという派手な長半纏(ながばんてん)に、背中に斧を交差させた紋を白抜きで染めたネズミ色の革羽織を着て、ネズミ色の股引に白紐の脚絆を、青縞の足袋を履いていたそうです。手には手鍵という小型の鳶口を持っていたそうですが、これは実践用というよりは指揮用だったようです。
また、平鳶は、そろいの半纏に青縞股引、白紐の脚絆、青縞の足袋、茶色の革羽織を着ていたといいますから、鳶頭とほぼ同じ服装でしょうか?股引がネズミ色じゃなくて青縞なのは、ホントか誤植か?髪型は半締という海老の腰のような形で刷毛先を散らしていたといいますが、これもよくわかりません。鳶口の長さは五尺(1.5m)と鳶頭よりも長いようでした。
ぽん太が歌舞伎で見たときは、雲に稲妻の派手な長半纏は記憶しておりますが、革羽織ではなく普通の布の羽織だったような……。股引や脚絆、足袋、髪型などは覚えておりません。平鳶が長い鳶口を抱え、退場のときに花道の七三でくるりとまわしていましたが、鳶頭の菊五郎の鳶口の長さはどうだったかな、覚えてません。次に見るときには注意してみたいと思います。
こちらの消防防災博物館のサイトで、二代目歌川豊国による「加賀鳶繰出之図」(「加賀鳶行列の図」などとも呼ばれるようです)を見ることができます(小さいですが)。う〜ん、どこかで加賀鳶を描いた浮世絵の実物を見てみたいものだわい。上の絵は、一部は早稲田大学の演劇博物館にあるらしいけど……。
ところで町火消といえば「いろは組」で有名ですが、「へ・ら・ひ・ん」はなくて、代わりに「百・千・万・本」が加えられたという豆知識が有名です。ちなみにそれらが除かれた理由(とくに「ら」)を知りたい方は、各自ググってみて下さい。
ところがこちらのサイトを見てみると、「へ・ら・ひ組」は存在したと書かれています。むむむ、どちらが正しいんじゃ。
今回読んだ本に書いてありました。それによれば、町火消が作られたのが1718年(享保3年)。これが1720年(享保5年)に再編成されていわゆる「いろは組」が誕生しました。このときは「へ・ら・ひ」はあったようで、「ん」は(この本からは)不明です。そして1728年(享保13年)に「へ・ら・ひ」が廃されて「百・千・本」が作られたと書いてあります。「万」については書かれていません。ひょっとして「ん」→「万」?
なんか細かいところがはっきりしませんが、「『へ・ら・ひ』組は初めはあったが、後に廃止された。最終的には『へ・ら・ひ・ん』はなく『百・千・万・本』が存在した」というあたりまでは正しそうです。
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