【舞踏】勅使川原三郎の踊りと美術はすばらしかったが舞台全体としては?「鏡と音楽」
勅使川原三郎を初めて観てきました。勅使川原のダンスはすばらしかったですが、公演全体としては、ちと不満が残りました。
ちなみに、こちらが新国立劇場の「鏡と音楽」の過去の公演ページで、こちらが 特設サイト、そしてこちらが勅使川原三郎・KARASの公式サイトです。
冒頭、暗転した舞台に爆音が鳴り響くと、タービンから漏れるような回転するストロボ状の光によって、モロッコの民族衣装風のフード付きの上着をまとい、白い面を着けた人物が二人浮かび上がります。しばらくして光の方向が変わると、今度は舞台の奥に立っている何人かのダンサーが照らし出されます。近未来の廃墟的な雰囲気で、なかなか出だしは好調です。しかしその後、この冒頭シーンが展開されて行くことはありませんでした。部分ぶぶんのアイディアはすばらしいのですが、全体的な統一性というか、発展性が感じられませんでした。
とはいえ、初めて観た勅使川原三郎の舞踏はすばらしかったです。全身を柔らかく連動させる動きは太極拳を思わせ、あたかも波に揺られる海藻のように揺らめき、ゆっくりそして時に素早く動く両手のひらは、泳ぎ回る小魚のようにも見えました。
勅使川原と比べて、残念ながら「コール・ド・バレエ」は実力差がありすぎました。激しく両手を動かしてはいるものの、足先から頭までの連動した体幹の動きがいまいちです。また勅使川原のダンスには、何かに手を伸ばしたり、ふっと力が抜けたり、希望に満ちて立ち上がるかと思うと、アンニュイの底に沈むといった「情動」が感じられるのですが、その他のダンサーには「動き」は感じても「情動」が感じられませんでした。
また題名にある「鏡」というのがどのように舞台に現れているのか、ぽん太にはわかりませんでした。
影と光を使った舞台美術は視覚的にとても美しく、センスがありました。新国立劇場独特の舞台の奥行きが生かされていて、舞台奥の暗がりのなかにダンサーがフェイドアウトしていくのも、ちょっと衝撃的な視覚体験でした。
今度は、勅使川原のソロのダンスを見てみたいと思いました。
勅使川原三郎 鏡と音楽
2009年9月27日、新国立劇場中劇場
【振付・演出・美術・照明・衣裳】勅使川原三郎
【キャスト】勅使川原三郎・佐東利穂子
川村美恵・ジイフ・鰐川枝里・高木花文・加見理一・林誠太郎・西塚大樹・ケティングナイル
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