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2009年10月の11件の記事

2009/10/30

【歌舞伎】吉右衛門の碇知盛に泣いたぜ・2009年10月歌舞伎座夜の部

 夜の部は『義経千本桜』の通しでした。通しと言っても「碇知盛」と「狐忠信」で、「鮓屋」はなし。
 なんといっても「碇知盛」がすばらしかったです。吉右衛門の明るさが、恨みに取り憑かれた知盛の性格には合わないんじゃないかと思ったのですが、富十郎の義経、玉三郎の典侍の局と役者がそろうと、リアルさとは違う次元の歌舞伎の様式的な美しさが現れてきます。吉右衛門は、怨念に駆られた知盛を見事に表現するとともに、その明るさは舞台に華やかさを与えていました。三人とも背が高いので、とても芝居が大きく見えました。富十郎の義経も、明るく朗々としており、格の大きさが感じられました。玉三郎も、「洗濯のしゃべり」もあまり世話物っぽく滑稽にしないなど、押さえて古風に様式的に演じていたように思います。しかし仕草しぐさでのかたちの美しさにはため息が出てきます。大物浦に知盛が戻ってからも、勢いと迫力で押し通すのではなく、最後まで芸を見せてくれたように思います。死んでいく知盛に共感して涙が出そうになったのは、ぽん太は初めてです。
 「狐忠信」は、菊五郎が忠信で、菊之助が静御前。千穐楽なので菊五郎がなにかやってくれるのではないかと期待しておりましたが、ぽん太にはわかりませんでした。菊五郎の全身全霊を注ぎ込んだ演技がすばらしかったです。「吉野山」では若侍の美しさとほ押さえた色気が心地よく、源九郎狐は文字通り汗びっしょりになっての熱演でした。
 夜の部は、いつものように途中で眠くなることもなく、最初から最後まで目がはなせませんでした。ぽん太は大満足です。


歌舞伎座さよなら公演
芸術祭十月大歌舞伎
平成21年10月 夜の部

通し狂言 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

  渡海屋
  大物浦
  吉野山
  川連法眼館

  渡海屋・大物浦
     渡海屋銀平実は新中納言知盛       吉右衛門
        女房お柳実は典侍の局       玉三郎
              相模五郎       歌 六
              亀井六郎       種太郎
              伊勢三郎     尾上右 近
              駿河次郎       隼 人
              片岡八郎       巳之助
              入江丹蔵       歌 昇
             武蔵坊弁慶       段四郎
               源義経       富十郎
  吉野山
        佐藤忠信実は源九郎狐       菊五郎
               静御前       菊之助
              逸見藤太       松 緑
  川連法眼館
   佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐       菊五郎
               源義経       時蔵
               静御前       菊之助
              亀井六郎       権十郎
             法眼妻飛鳥       秀 調
              駿河次郎       團 蔵
              川連法眼       彦三郎

2009/10/28

【東京湾ディナー・クルーズ】こんな近場で、美しい夜景を見ながら大人の時間が楽しめるとは!

Pa070014 ちと以前の10月上旬、ぽん太とにゃん子は東京湾ディナークルーズに行ってきました。なんですって?タヌキとネコにはもったいないって?そのとおり、とても自腹で行く気になりません。クレジットカードのポイントを利用したのです。お世話になったのは、株式会社シーライン東京のシンフォニー東京湾クルーズ。公式サイトは こちらです。
 おりしも史上最大の台風が接近中。確認したところ船は出るとのことだったので、しっぽを隠し、葉っぱを使ってそれなりの服装に身を包み、日の出桟橋に向かいました。待合室で待っていると、なにやら観光バスの団体や、会社の宴会とおぼしきスーツ姿の一団が。せっかく静かな大人の時間を過ごそうと思って来たのに、まさか団体と一緒では?まわりでスピーチとか三本締めとかやられたらやだぞ。ぽん太の脳裏には、 地中海クルーズのおぞましい記憶が甦ってきます。
Pa070001 こちらが「モデルナ」号。なかなかいい感じです。もひとつ「クラシカ」という船もあるようです。
Pa070004 ぽん太とにゃん子が通されたのは「フォーシーズン」という部屋でした。いくつが部屋があり、団体とはちゃんと分けてくれたようで、他のお客さんもカップルばかりで、静かな落ち着いた雰囲気でした。ピアノの生演奏を聴きながらディナーの始まりです。
Pa070075 メニューはイタリア料理のコース。まずはアンティパストの盛り合わせです。ワインもリーゾナブルな値段でおいしかったです。
Pa070082 ツブ貝とズッキーニのパストトマト風味です。
Pa070087 メインは厳選牛肉の香りパン粉焼き。
Pa070090 最後はデザートです。とてもおいしかったのですが、だいぶ間があいたので、一つひとつの感想は失念してしまいました。ごめんなさい。
Pa070013 あいにくの雨でしたが、窓から見る東京のベイエリアの夜景はとてもきれいでした。コースは、こちらの クルーズマップにあるように、レインボーブリッジをくぐり、中央防波堤の北側を東に向かい、東京ディズニーリゾートの近くまで行きます。本来ならそこから南に向かうのですが、台風の影響で波があったせいか、本日は来た道を戻りました。夕食後はデッキに出たり、売店を覗いたりして過ごしました。
 なかなかムードがあってよかったです。みなさんもデートにお使いください。次は屋形船に乗りたいです。

2009/10/25

【歌舞伎】「女殺油地獄」の与兵衛とお吉に恋愛感情はあるのか?

 数日前に教育テレビで、仁左衛門の「女殺油地獄」を放映しておりました。疲れていたし、うちの画面の小さいテレビで見ても迫力がないので、最初だけ見て寝てしまいました。
 その前の仁左衛門のインタビューがとてもおもしろかったです。特に、仁左衛門がインタビュア−に「与兵衛とお吉のあいだには恋愛感情があるのでしょうか」と聞かれ、「恋愛感情はありません」ときっぱりと否定していたこと。関西ではこういう男女関係が普通にあるのであって、また、「恋愛感情がない」という設定でないと近松門左衛門にならない、というようなことを言っておりました。
 テレビで放映された仁左衛門の舞台は、実はぽん太も実際に見に行っており、そのときの感想は こちらの記事に書いてあります。そこでぽん太は、「孝太郎のお吉もよかったですが、ちょっとしっかりしすぎていて色気がなく、与兵衛とお吉のちとアヤシい関係が感じられませんでした」と書いたのですが、いま思うと恥ずかしい限りです。だってそもそも仁左衛門の考えでは、与兵衛とお吉のあいだに恋愛感情がないのですから……。
 確かに19世紀の鶴屋南北ならいざ知らず、元禄時代の近松門左衛門では、二人のあいだに恋愛感情がないのが本道かもしれません。

2009/10/21

【バレエ】さるやんごとなきお方も見に来たKバレエ版「ロミオとジュリエット」

 熊川哲也の振付けの「ロミオとジュリエット」を観て来ました。公式サイトはこちらでございます。
 ぽん太は、Kバレエ版振付けの特徴は、ストーリー性の重視と、オリジナルへの回帰だと思っているのですが、なにしろ「ロミオ」はデンマーク・ロイヤル・バレエ団でノイマイヤー版を観ただけなので、ぽん太には皆目見当がつきません。オリジナルの「ロミオ」がどのようなバレエだったのか、そのうちみちくさしてみたいです。
 で、今回もストーリーは確かにわかりやすかったのですが、「ロミオ」はよく知られた話しなので、筋を追うことに汲々とせず、大胆なカットをしてもよいのではないか、とも思いました。熊川の振付けは全体に品よくきれいにまとまっており、そこが奥樣方に愛される由縁なのでしょうが、前衛的なところが乏しいのがタヌキのぽん太にはちと不満に思えます。オケの演奏もおとなしめで、プロコフィエフ一流の不協和音が目立たないように演奏している感じがしました。とはいえ、プロコフィエフの音楽はホントにすばらしいですね……。
 有名なバルコニーのシーン。熊川のロミオは、ジュリエットに会えた喜びを踊りで見事に表現していたのですが、ジュリエットはリフトされるばかりでした。もっと二人が絡んで踊って、愛の高まりを表現する感じが欲しかったです。
 それから、今回の舞台はやけに人が刺されて死ぬ気がしたのですが、ロミオに計略を伝えに行く僧やパリスは、ふつう死ぬんでしたっけ。
 熊川哲也のパフォーマンスはすばらしかったです。膝はもう大丈夫なのでしょうか?ジャンプの高さや回転の安定性はあいかわらず。ルグリみたいな感情表現があるといいのですが、そこまで望むのは欲張り過ぎか?
 ロベルタ・マルケスは初めて観ましたが、とてもキュートでチャーミングなジュリエットでした。小柄なので、熊哲の膝への負担も少ないか。
 会場でミンクさんを見かけました。彼女のブログによると既に一回観に行っているように思えるのですが、2回目でしょうか?さすがです。ミンク仲間で話していたので、タヌキのぽん太は近寄りがたく、声をかけるのを遠慮いたしました。
 第2幕が始まる前、何台ものビデオカメラが客席を狙っていました。なんじゃいなと思っていると、さるやんごとなきお方の入場です。ぽん太が先日ビオラを弾いているのを見たさるやんごとなきお方のお母様であるやんごとなきお方です。バレエがお好きなのでしょうか?


Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY 10周年記念全国ツアー
ロミオとジュリエット Romeo and Juliet
2009年10月18日(日) Bunkamuraオーチャードホール

■ロミオ Romeo 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
■ジュリエット Juliet ロベルタ・マルケス Roberta Marquez
■マキューシオ Mercutio 橋本直樹 Naoki Hashimoto
■ティボルト Tybalt 遅沢佑介 Yusuke Osozawa
■ロザライン Rosaline 松岡梨絵 Rie Matsuoka
■ベンヴォーリオ Benvolio 伊坂文月 Fuzuki Isaka
■パリス Paris 宮尾俊太郎 Shuntaro Miyao
■キャピュレット卿 Lord Capulet スチュアート・キャシディ Stuart Cassidy
■キャピュレット夫人 Lady Capulet ニコラ・ターナ Nicola Tranah
■乳母 Nurse 樋口ゆり Yuri Higuchi
■僧ロレンス Friar Laurence ブレンデン・ブラトーリック Brenden Bratulic'
■僧ジョン Friar John 小林由明 Yoshiaki Kobayashi
■モンタギュー家の若者たち Montague young men
浅田良和 Yoshikazu Asada / ビャンバ・バットボルト Byambaa Batbold /西野隼人 Hayato Nishino
■キャピュレット家の娘たち Capulet young women
浅野真由香 Mayuka Asano / 木島彩矢花 Sayaka Kijima / 松根花子 Hanako Matsune
岩淵もも Momo Iwabuchi / 三井英里佳 Erika Mitsui
■キャピュレット家の若者たち Capulet young men
ニコライ・ヴィユウジャーニン Nikolay Vyuzhanin / 内村和真 Kazuma Uchimura /
合屋辰美 Tatsumi Goya / 浜崎恵二朗 Keijiro Hamasaki / 高島康平 Yasuhira Takashima
■ヴェローナの娘たち Verona girls
白石あゆ美 Ayumi Shiraishi
中島郁美 Ikumi Nakajima / 副智美 Satomi Soi / 井上とも美 Tomomi Inoue
中村春奈 Haruna Nakamura / 松岡恵美 Emi Matsuoka
■ジュリエットの友人たち Juliet Friends
日向智子 Satoko Hinata / 渡部萌子 Moeko Watanabe / 梶川莉絵 Rie Kajikawa
中谷友香 Yuka Nakatani / 山口愛 Ai Yamaguchi
■マンドリンカップル Mandolin couples
神戸里奈 Rina Kambe / 湊まり恵 Marie Minato
荒井英之 Hideyuki Arai / 長島裕輔 Yusuke Nagashima
Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY 10 周年記念全国ツアー
●照明 Lighting Design  足立恒 Hisashi Adachi
●指揮 Conductor 福田一雄 Kazuo Fukuda
●演奏 シアター オーケストラ トーキョー THEATER ORCHESTRA TOKYO
●芸術監督 Artistic Director  熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
●舞台美術・衣裳アソシエイト Associate Set and Costume Design マシュー・ディーリーMatthew Deely
●衣裳アソシエイト Associate Costume Design アラン・ワトキンス Allan Watkins
●演出・振付 Production/ Choreography 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
●音楽 Music セルゲイ・プロコフィエフ Sergei Prokofiev
●舞台美術・衣裳 Set and Costume Design ヨランダ・ソナベンド Yolanda Sonnabend

2009/10/19

【歌舞伎】三津五郎の『毛抜』、藤間大河くん初お目見得・2009年10月歌舞伎座昼の部

 まず初めは『毛抜』。推理ドラマの筋立て、磁石を使ったトリック、若衆や腰元に言い寄る主人公の豪放な性格など、歌舞伎十八番に数えられる演目にしては、近代っぽい雰囲気があります。それもそのはず、元々は1742年(寛保2年)に初演されましたが、ながらく上演されなかったものを、1909年(明治42年)に復活上演したのだそうです。現行の芝居の、どこが初演当時のもので、どこが明治後期に付け加えられたものなのか、無知なるぽん太にはまったくわかりません。初役の三津五郎の粂寺弾正は、バカっぽさや途方もない大きさには欠けますが、かわりに古風な味わいがあり、細かいところまで神経が行き届いている感じで、とても良かったです。
 この演目には、雨乞いに使う小野小町の歌の短冊が出て来ますが、これは以前の記事に書いた「雨乞小町」の話しを踏まえています。小野小町が詠んだ雨乞いの歌は、「ことわりや日の本ならば照りもせめ さりとてはまた天が下とは」というものです。この歌の意味は、例えばこちらに書いてありますが、それによれば、「我が国は日の本といいますから、陽が照るのも理屈でしょう。でも、天(雨)が下ともいいますから、降ってもいいでしょうに」というものだそうです。
 次は玉三郎の『蜘蛛の拍子舞』。源頼光の土蜘蛛退治を世界とした舞踊劇です。「玉三郎の踊りはさすがにいいな〜」などと思っているうちに、日頃の疲れに昼食後も重なって、意識を消失。意識が戻ると、舞台上にはでっかい蜘蛛がいました。なかなかよくできています。その後、玉三郎が女郎蜘蛛となって登場し、最後は三津五郎の坂田金時の押し戻しまで付いて、なかなかのごちそうです。でもホントは最初の舞踊が見たかった。
 続いて藤十郎の「河庄」。原作の『心中天網島』は近松門左衛門の代表作のひとつですが、ぽん太は初めて観ました。藤十郎はうまいといえば確かにうまいのですが、段四郎とのやり取りがくどくて、ちょっと辟易しました。歌舞伎の和事が脈々と受け継がれて吉本新喜劇に至ったのかな〜などと思いながら見てました。また藤十郎の紙屋治兵衛は、なんかコドモみたいな世間知らずのぼんぼんに見えるのですが、そんなもんなんでしょうか?時蔵の小春はいつもながら絶品。
 最後の「音羽嶽だんまり」は、菊五郎、富十郎、吉右衛門、魁春、菊之助などが顔を揃えた豪華な一幕。お目当ては松緑の長男の藤間大河(たいが)君(3歳)の初お目見得です。おっきなお声でごあいさつ。可愛かったです。なんかユキヒョウの赤ちゃんを見に行ったときを思い出しました。


歌舞伎座さよなら公演
芸術祭十月大歌舞伎
平成21年10月・昼の部

一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
              粂寺弾正       三津五郎
       小原万兵衛実は石原瀬平       錦之助
              小野春風       松 也
               錦の前       梅 枝
              秦秀太郎       巳之助
              八剣数馬       萬太郎
              腰元若菜       吉 弥
               秦民部       秀 調
              八剣玄蕃       團 蔵
              小野春道       東 蔵
              腰元巻絹       魁 春

二、蜘蛛の拍子舞(くものひょうしまい)
  花山院空御所の場

  白拍子妻菊実は葛城山女郎蜘蛛の精       玉三郎
              碓井貞光       松 緑
               渡辺綱       萬太郎
              ト部季武     尾上右 近
               源頼光       菊之助
              坂田金時       三津五郎

三、心中天網島
  玩辞楼十二曲の内 河庄(かわしょう)

             紙屋治兵衛       藤十郎
            紀の国屋小春       時 蔵
            江戸屋太兵衛       亀 鶴
             五貫屋善六       寿治郎
             丁稚三五郎       萬太郎
            粉屋孫右衛門       段四郎
             河内屋お庄       東 蔵

四、音羽嶽だんまり(おとわがたけだんまり)
  藤間大河初お目見得

            音羽夜叉五郎       菊五郎
              奴伊達平       松 緑
              稚児音若  初お目見得藤間大河(松緑長男)
            大内息女大姫       菊之助
              大江三郎       権十郎
             結城左衛門       錦之助
            白拍子仏御前       萬次郎
              鎌田蔵人       團 蔵
              夕照の前       魁 春
              局常盤木       田之助
              畠山重忠       吉右衛門
            雲霧袈裟太郎       富十郎

2009/10/17

【京劇】初めて観てすっかり魅了されました。北京京劇院・三国志「呂布と貂蝉」

 ここんとこちと忙しく、少し以前の話しになりますが、ぽん太とにゃん子は生まれて初めて京劇を見て来ました。京劇の専門用語はまったくわかりませんので、以下、めちゃくちゃな用語を使うと思いますが、ご容赦ください。
 「TOKYO 京劇フェスティバル2009」という企画で、中国から4つの劇団がやってきて、4演目を上演するというものです。こちらが公式サイトです。もう公演は終わったので、もうすぐリンク切れになると思われます。まったく予備知識のないぽん太は、たまたま予定があいていたという理由で、北京京劇院による「呂布と貂蝉」(りょふとちょうせん)を選びました。偶然に選んだのですが、初京劇の演目としては大正解だったようで、美男子あり、美女あり、踊りあり、笑いあり、ドラマあり、立ち回りありと、もりだくさんでとても楽しめました。
 ぽん太は三国志に関してもまったくの無知、「呂布と貂蝉」の話しもまったく知りませんでした。暴虐な董卓は、勇猛果敢な武将である養子の呂布の働きによって、絶大な権力を手に入れつつあります。絶世の美女貂蝉(ちょうせん)は我が身を犠牲にして、董卓と呂布の二人に言い寄り、二人を仲違いさせようとします。この「連環の計」は成功して、ついに呂布は董卓を殺してしまうのです。もう少し詳しいあらすじをを知りたい方は、たとえばこちらのWikipediaなどをご覧下さい。
 さて、幕が開くと、舞台美術は以外と質素。出張公演だからでしょうか、それとももともとこんなものなんでしょうか。状況を表す小芝居が終わったところで、いよいよ主役の呂布が下手から登場。若々しくも美しい武将です。絢爛豪華な衣装に身を包み、頭に触覚みたいな羽飾りがついています。調べると「翎子」と言うそうな、読み方はわからん。動きに連れてなびいたり、ぷるぷると小刻みに震えたりして、感情表現を増幅いたします。また翎子を手で持って、歌舞伎でいう見得を切ったりします。俳優の李宏図は、貂蝉への愛、そして義父に対する嫉妬と怒りといった演技はもとより、歌声もすばらしく、立ち回りも見事でした。芝居の最後で「連環の計」の策略にはまって父を殺してしまうのですが、本来は悪役なのでしょうけれど、騙されて父を殺してしまう呂布がとても哀れに見えました。
 貂蝉(ちょうせん)役の郭偉は容姿端麗、身体もほっそりとしております。指の動きがとても繊細で美しかったです。衣装も何度も着替え、ある時は国のために犠牲になることを泣きながら決意し、またある時は媚を売りながら妖艶な踊りを舞い、さらには美しい歌声も聞かせます。
 ところで貂蝉役の俳優郭偉って、女性?男性?京劇でも、歌舞伎と同じように、男優が女性を演じると聞いたような気もしますが、郭偉はウェストがすごく細いし、指も細いので、女性のような気がします。女性か男性かで、ぽん太の「思い入れ」も違ってきます。しかしあまりに基本的な疑問のためか、プログラムを見てもどこにも書いてありません。あとで調べたところによると、昔は男優が女性を演じていたそうですが、現在は女優が演じるそうで、郭偉も女性だそうです。
 芝居が感極まって、歌舞伎ならば義太夫が出てくるところで、京劇の場合は役者が歌います。この点ではオペラやミュージカルに似てますね。一方様式的な動作や、「見得」のようなキメが入るところは、歌舞伎にそっくりです。そういえばこれまで歌舞伎はいろいろ見て来ましたが、歌舞伎と京劇の関係というのは考えたこともなかったし、聞いたこともありませんでした。実際のところどうなっているのでしょうか?交流があったと考える方が自然な気がしますが……。
 立ち回り(?)は歌舞伎より上か?とってもスピーディーで迫力があります。三階さん(?)だけでなく、主役の役者も、空手のように足を高く蹴り上げたりして、見事に立ち回りを演じます。
 音楽はドラ(?)や鐘(?)がシャンカンシャンカン鳴る例のやつです。楽隊が舞台袖にいて観客から見えないのは、歌舞伎やオペラと異なるところ。頭に玉のいっぱいついた冠を付け、金ぴかの衣装を着けた俳優たちがシャンカンシャンカン出てくるのを見ると、バリ島などの東南アジアの演劇・舞踏が頭に浮かびます。両者にどのような関係があるのか、これもぽん太は全く知りません。
 京劇は、日本の歌舞伎やヨーロッパのオペラに近い芸術と思われますが、同じ時期に成立したと考えてよいのでしょうか?プログラムによれば、京劇は清の乾隆帝(在位1735年〜1795年)の時代に成立したそうで、近松門左衛門の『曾根崎心中』が1703年、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』が1825年、モーツァルトの『フィガロの結婚』が1786年と、大雑把にいえば同じ年代、近世の舞台芸術と言えましょう。細かく言うとどう違うのかは、ぽん太にはわかりません。
 京劇の衣装は袖が長いです。歌舞伎の長袴は裾が長いのですが、なんだか日中の対比が面白いです。女性が袖をたぐって手を出す仕草は様式的で、とても色っぽくて美しいです。
 ラストは、義父を殺した呂布が貂蝉を抱き寄せ、一同勢揃いして終わり。このあと呂布は貂蝉に騙されたことを知るはずですが、そこまでいかずに途中で止めるあたりは、歌舞伎の終わり方と似ています。
 初めて観た京劇はとても面白かったですが、知らないことが多すぎます。機会があったらみちくさしてみたいです。


TOKYO 京劇フェスティバル2009
三国志「呂布と貂蝉」(りょふとちょうせん)
北京京劇院

2009年10月4日 東京芸術劇場中劇場

呂 布……李宏図(一級俳優)
貂 蝉……郭 偉
王 允……韓勝存(一級俳優)
董 卓……陳俊傑(一級俳優)
李 儒……黄柏雪(一級俳優)

2009/10/09

【軽井沢】有島武郎が心中した別荘・浄月庵をみちくさ

P9240105 以前のブログに書きましたが、有島武郎が心中した軽井沢の別荘は、移築されて保存されております。こんかい松茸ツアーの帰りに軽井沢を通りかかったので、みちくさして参りました。それは軽井沢タリアセンというところで、地図はこちらにあり、現在は喫茶店として使われているようです。木造洋館風で、山小屋の雰囲気もある瀟洒な建物です。
 タリアセンのサイトの解説によると、もともとは有島武郎の父が建てたもので、武郎は1916年(大正5)年からここで夏を過ごしました。1918年には『生れ出る悩み』の一部もここで執筆したそうです。そして1923年(大正12年)6月、人妻の波多野秋子とここで心中しました。ちなみに喫茶店の前にあった案内板には、有島武郎終焉の建物であることは書かれていましたが、「心中」であることは書いてありませんでした。
 Wikipediaによれば、二人が溢死したのは6月9日、発見されたのは7月7日ということで、ご遺体は相当傷んでいたそうです。
 ところで、浄月庵は移築されたと書きましたが、もともとどこにあったのでしょう。三笠に有島武郎終焉の地碑というものがあるようで、ここが浄月庵があった場所だそうです(地図はこちら)。

2009/10/07

【登山】信州の鎌倉塩田平にそびえる独鈷山

P9230067 松茸を食べに上田にやってきたぽん太とにゃん子ですが、食べるだけではメタボになってしまうので、どこか山に登ろうとということになりました。しかし、登山ガイドに出ている山には手頃な山がみつかりません(例の荒船山などは場所とコースタイムは手頃なのですが、あんなことがあったばかりだし……)。そこでネットで探して、独鈷山(とっこさん)に決めました。標高1,266メートルの低山です。

【山名】独鈷山(1266m)
【山域】信州
【日程】2009年9月23日
【メンバー】ぽん太、にゃん子
【天候】曇り
【コース】宮沢登山口12:14…独狐山山頂14:09…宮沢登山口15:20
ルート図と標高グラフ
【参考リンク】
信州うえだ観光ナビ:コースガイドあり。プリントして持参しましょう。
信州山歩きマップ:美しい手書きのイラストで登山道を紹介。
【マイカー登山情報】上の「コースマップ」の駐車場マークのあたりには、駐車場は見当たりませんでした。登山道を少し登ったところ、254号線よりちょっと北に入ったところに千本桜と呼ばれるところがあり、そこに車を停めることができます。上の「手書きイラスト」には書いてあります。


P9230074 千本桜のところには、コスモスとひまわりが植えられていて、とても見事でした。立て札に寄るとこと場所は、真田幸村の弟である真田信忠(昌親)(1583年(天正11)-1632年(寛永8年))の屋敷があったところだそうです。関ヶ原の戦いでは徳川方につきましたが、1618年(元和8年)に上田城主の真田信之にお預けとなり、この地を去ったそうです。
 登山道は沢に沿って登って行きます。登山道の右側は、ビニールの紐で囲ってあり、侵入禁止の標識が下がっています。奥の方には赤松の林が見え、どうやら松茸山のようです。登山道周辺にも、ところどころ赤松が生えておりますが、残念ながら松茸は見つかりませんでした。沢の底は、一枚岩の岩盤になっており、この山の内部が岩で、うっすらと表土が覆っているだけであることが想像できます。この痩せた土壌が、赤松に好適な環境を作っているのでしょう。
P9230063 
 沢を遡る道によくあるように、最後は稜線に向けての急登となります。上でリンクしたコースガイドに「滑落注意」と書いてありますが、登山道の片側が切れ落ちているわけではなく、滑りやすい急斜面のジグザグの道を登って行くのです。普通に登山をしている人なら、気をつけて歩けばまったく問題ありませんが、子供の遠足とかでは確かに危ないかもしれません。
 頂上には小さな祠がありました。曇っていたので展望はありませんでしたが、北を見ると信州の鎌倉と歌われる塩田平の美しい田園風景が見えます(冒頭の写真)。あちこちにあるため池が、降水量の少なさを表しています。
P9230079 下山して車で別所温泉に向かう途中、塩田平から振り返った独狐山です。ギザギザの稜線を左右に延ばし、独特の存在感があります。

2009/10/05

【グルメ】松茸小屋という風俗を初体験して満足満足・上田「城山園」

P9230086 みなさんは「松茸小屋」という言葉をご存知でしょうか?なんでも信州の上田の南側では、シーズンのあいだだけ営業する山のなかの小屋で、松茸をリーゾナブルなお値段でたらふく食べられるのだそうな……。そんな噂を小耳に挟んだぽん太とにゃん子は、ネットで下調べをした結果、城山園(じょうやまえん)に行ってきました。
 松茸小屋はいくつかあるようで、最近テレビなどでも盛んに取り上げられていますが、ホームページが地味なこと、40年以上の歴史があり松茸小屋の先駆けであること、別所温泉に近くて送迎してくれることから、ここを選びました。こちらが城山園の公式サイトです。
P9230082 送迎の車は、どんどん坂を上って行きます。やがて道路はダートの林道となり、松茸を食べにいくというよりも、山登りをする気分です。ようやく車が泊まりましたが、ここからさらに5分ほど山道を歩かなくてはなりません。
P9230084 やがて目の前に現れたのは、山小屋あるいは海の家のような質素な(失礼!)建物です。
P9230085 内部も場末の観光地の食堂のようで(失礼!)とても簡素です。ところがテーブルの上には、いきなり松茸が山盛り乗った鍋が(冒頭写真)……。松茸と地鶏の鍋です。
P9230087 こちらは松茸の茶碗蒸し。コンビニに付いてくるようなプラスチックのスプーンがすばらしい。松茸様をこのように粗末に扱っていいものでしょうか?こうして余分なところにお金をかけないことで、おいしい松茸を安価でいただけるのでしょう。
P9230090 松茸と言えば土瓶蒸し。よっと味は濃いめです。
P9230092 お次は揚げたての天ぷらです。松茸はもちろんのこと、他の野菜もみずみずしくておいしかったです。
P9230093 松茸の銀むしです。アルミホイールで包んで蒸したものですが、今回のメニューのなかで、香りが一番濃厚でした。
P9230096 〆は松茸ご飯と松茸のお吸い物。もうちょっとお金を出すと松茸の姿焼きも付くのですが……。今回は断念いたしました。なお、松茸ご飯は食べきれなかったので、お持ち帰りいたしました。
P9240103 今回宿泊したのは、別所温泉の和泉屋さんです。こちらが公式サイトです。一泊朝食のみのいわゆるB&Bのプランがあり、お値段もリーゾナブルで、松茸小屋に行くのに適しております。城山園さんも送迎してくれるので、松茸料理をいただきながらお酒を楽しむこともできます。従業員も明るくフレンドリーで、気持ちがいいです。
P9240098 残念ながら和泉屋さんのお風呂は別所温泉の天然温泉ではないのですが、向かいに共同温泉の大湯があるので便利です。古風な造りの建物ですが、内部はとても近代的で清潔です。
 松茸をリーゾナブルな値段で腹一杯食べることができました。珍しい「松茸小屋」という風俗を味わえてよかったです。

2009/10/03

【多摩動物公園】とってもやんちゃなユキヒョウの赤ちゃん

P9220015 シルバーウィークはどこへ行っても混みそうだったので、遠出を避けて多摩動物園にユキヒョウの赤ちゃんを見に行ったのですが、ここも子供連れの家族で大混雑でした。ユキヒョウといえば、ぽん太とにゃん子は先日円山動物公園でユキヒョウの赤ちゃん公開の初日を見たばかりです。とてもかわいかったのに味をしめて、多摩動物公園にも行ってみることにしました。こちらが多摩動物公園の公式サイトです。
 円山動物公園の双子のユキヒョウが生まれたのが2009年5月2日、見に行ったのが7月3日ですから、約2ヶ月のときに見たことになります。多摩動物公園のユキヒョウが生まれたのは2009年7月2日で、見に行ったのが9月22日ですから、2ヶ月と20日ぐらいとなり、前回よりちょっと年長ということになります。
P9220004 名前は「ユキチ」君だそうです。円山動物公園のユキヒョウよりも1ヶ月ほどたっていることもあって、やんちゃな感じがします。おかあちゃんが寝ている台になんとか登ろうとするのですが、うまくいかずに落っこちてしまいます。
P9220009 こんどは崖を登ろうとしています。真剣な顔がりりしいです。
P9220006 ところが足を滑らして転がり落ちてしまいました。「ギャーッ」と叫ぶユキチ君。「まったくお前はなにやってるのよ」とお母さん。
P9220034 お母さんに見守られながら、真剣な表情でじゃれついているユキチ君です。ホントにキカンボウで、匍匐前進から狙いを定めてお母さんに飛びかかったりします。飛びかかられたお母さんは、無視したりしないで、ひらりを身をかわして逃げます。高いところに逃げたお母さんを、ユキチ君が一生懸命追いかけようとします。遊びのなかで、野生動物として生きるための英才教育が始まっているようです。
P9220047 さて、多摩動物公園の見所はユキヒョウだけではありません。こちらはぽん太の仲間のタヌキさん。集団で健やかに寝ています。タヌキとしての英才教育が始まっているようです。
P9220043 こちらはコアラ君。もしも〜し。ちょっと暗い感じです。
P9220052 ライオンの雄は、「の」の字になって寝ています。すでに英才教育が始まっているようです。
P9220051 ロバですって?失敬な。「モンゴルノウマ」です。ちなみに「モンゴルの馬」ではなく、「モンゴル野馬」だそうです。ぽん太とにゃん子も、うっかり通り過ぎそうになりましたが、ボランティアのおじさんの解説によると、人の手が入っていない純粋な野生の馬で、とても珍しいそうです。動物園の「通」は、これを目当てに多摩動物公園を訪れるそうです。やはり少しのことにも先達はあらまはしけれ。

2009/10/01

【蕎麦】細打にあくまでこだわる松本の「野麦」(★★★★)(付:浮世絵博物館)

P9120007 槍ヶ岳から下山後新穂高温泉谷旅館で一泊して疲れを癒したぽん太とにゃん子は、松本市内の蕎麦屋「野麦」に立ち寄りました。公式サイトはこちらです。駐車場はありませんが、近くに有料駐車場がいくつかあります。
 店構えは素っ気なく、なかも狭くて席数はあまりありません。メニューも基本的には「そば」と「かけそば」のみ。
 細打の蕎麦が、豪快なざるに乗って出て来ます。細打ですが、香りは豊かです。つゆはちょっと薄めですが、細いお蕎麦がつゆをよく含むので、食べるとちょうど良い味かげんとなります。
 ただ細打のため、どうしても蕎麦特有のヌメリが出て来てしまうという欠点を感じました。それでも店主は、細打にこだわっているそうです。
P9120008 蕎麦のふくよかな香りは絶品です。細打のためヌメリが気になるものの、それでも細打ちにこだわる店主の心意気に共感し、ぽん太の評価は4点です。

P9260109 蕎麦屋に寄る前に、松本インター近くの日本浮世絵博物館に寄りました。こちらが公式サイトです。一勇斎国芳の展覧会をやっていましたが、近頃歌舞伎にはまっていて江戸時代にこだわりのあるぽん太には、とてもおもしろかったです。複製ですが、歌川広重や東洲斎写楽の有名な浮世絵を観られたのもよかったです。学芸員のおじさんのスライドを使っての解説も洒脱でおもしろく、また浮世絵に添えられた解説はいくつか問題形式になっていて、当てるとポスターがもらえます。ぽん太は、小野小町に関する問題に見事に正解し、写真のポスター(500円なり)をゲットしました。詳しくは述べませんが、こちらの記事で勉強したのが役にたちました。雑学のお勉強がお金になって、にゃん子の見る目も少しは変わったか?500円ではだめか……。

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