Bプロは、ガラのように次々と有名なダンスが踊られるというものではなく、考え抜かれた上質なプログラムでした。
なんといっても、ルグリとギエムの15年ぶりの競演が見所。まさしく至芸という感じで、ただただ感動して見とれるばかりです。「優しい嘘」は、幕開きの静止から、ルグリがいきなり動き出す時の一瞬のきらめきからして素敵です。「三人姉妹」でも、ルグリのジャンプは特に高いわけではないのに、すごくうれしそうな気持ちが伝わってくるから不思議です。ギエムも、これまでぽん太は力強さの印象ばかりありましたが、「三人姉妹」の柔らかくしっとりした踊りは新発見でした。カーテンコールのかわいらしい笑顔はいつも通り。「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」では、フォーゲルの怪我の功名で、初めて東京バレエ団の高岸直樹の踊りを見ることができました。大きさがあるし、回転も安定して、なかなかの技術でしたが、ルグリの表現力にはかないません。先日見た新国立の川村真樹の「白鳥」もそうでしたが、日本人ダンサーは技術的にはある程度のレベルに達しているけど、その一歩上の表現力には欠けるようです。その違いがいったい何なのかは、ぽん太にはさっぱりわかりません。
今回のもうひとつのお目手はフォーゲル。「モペイ」はユーモラスなダンスで、ぽん太はなぜか「クレヨンしんちゃん」の「ケツだけ星人」を思い出しました。「フォーゲルも役者やのう」という感じですが、背中の筋肉の美しさがあらばこそ踊れる踊りです。自分で自分の頬をぴちぴちと平手打ちする振付けがありましたが、まさかこれで首を痛めたのではないでしょうね。Youtubeの動画をリンクしておきます。
Aプロの主役だったド・バナも、ルテステュと踊ると大人の渋さが漂い、特に「マリー・アントワネット」は、ゴージャスでありながらも人形のような動きが悲哀を漂わせておりました。オグデンとコテのカナダ・ペアは、若々しく爽やかでよかったです。
ヘレナ・マーティン「ハロ」はいわゆるスペイン舞踏で、今回のプログラムのなかではちょっと異質でした。おそらくはクラシック・バレエ・ファンと推測される観客には目新しく写ったのか、拍手喝采を浴びておりましたが、ぽん太からすると、なるほどショールの使い方などすばらしかったですが、ルグリが今回のプログラムにこの踊りを入れた意図がよく理解できませんでした。コテとホールバーグの「失われた時を求めて」も、肌色全身タイツがアブナくってよかったです。そのうち原作も読みたいです。
《マニュエル・ルグリの新しき世界》Bプロ
ルグリと輝ける世界のスターたち
2009年2月9日 ゆうぽうと
【第1部】
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
ヘザー・オグデン ギヨーム・コテ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
「モペイ」
フリーデマン・フォーゲル
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:C.P.E.バッハ
「スリンガーランド」
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:ギャビン・プライアーズ
「アザー・ダンス」
オレリー・デュポン デヴィッド・ホールバーグ
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:フレデリック・ショパン
「優しい嘘」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ
振付:イアン・キリアン
音楽:クラウディオ・モンテヴェルディ、カルロ・ジェズアルド、グレゴリオ聖歌
【第2部】
「マリー・アントワネット」
アニエス・ルテステュ パトリック・ド・バナ
振付:パトリック・ド・バナ
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
「ハロ」
ヘレナ・マーティン
振付:ヘレナ・マーティン
音楽:アラ・マリキアン、ホセ・ルイス・モントン
「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」
上野水香 高岸直樹
振付:マニュエル・ルグリ
音楽:ガエターノ・ドニゼッティ
「失われた時を求めて」 "モレルとサン・ルー"
ギヨーム・コテ デヴィッド・ホールバーグ
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ
「三人姉妹」
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ピュートル・I・チャイコフスキー
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