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2010年3月の14件の記事

2010/03/27

【バレエ】嬉し恥ずかしマルティネスとルテステュ パリ・オペラ座バレエ団「ジゼル」

 もちろん「ジゼル」はすばらしかったのですが、「シンデレラ」の感動があまりに強すぎて、ちょっともの足りなく感じたのも事実です。斬新な「シンデレラ」の舞台に比べ、「ジゼル」は基本的にはシンプルでオーソドックスな演出でした。こちらがNBSの公式サイトです。時間が経ってだいぶ記憶が薄れてしまいましたが、備忘録もかねて感想を。
 ぽん太が観たのは、ルテステュとマルティネスというキャストでした。マルティネスのアルブレヒトは、一見して遊び人。やたらとジゼルの肌に触れたりして、椅子に座った時はキスしようとさえします(昨年観たレニングラード国立バレエの新演出の「ジゼル」もそうでした)。ルテステュのジゼルも生きいき溌剌としていて、病弱で内気ないつものジゼルではありません。アルブレヒトに言い寄られてまんざらではない様子。逆に甘えてみせたりします。恋に落ちた若い男女の嬉し恥ずかし状態で、こんなにいちゃつくジゼルとアルブレヒトは初めて観ました。なんだか海老蔵・真央のバカップルを思い出し、「勝手にやってろー!」と言いたくなりました。
 ウィリとなってからのジゼルは、先日のアナニアシヴィリとは正反対で、亡霊のような固く無機質な表情。双眼鏡を使ってアップで見ると、正直ちょっと恐かったです。もう少し愛と哀しみを表情に出してもいいような気もしました。表情は固かったですが、踊りは表現力豊かで、静かで軽く柔らかかったです。リフトで宙を舞うような動きも、リアルに浮遊しているようでありながらも、やり過ぎず踊りの一部として収まっておりました。
 ジローのミルタは、冷徹で神々しいというよりも、マッダームの迫力があり、それはそれで恐ろしかったです。オファルトのヒラリオンは、顔も踊りも精悍でよかったです。最初の登場の時、鳥とか花とかお土産をもってこないのが目新しかったです。コール・ド・バレエがみなスタイルも良く、技術的にもすばらしいのは「シンデレラ」で申したとおりです。

 舞台装置は、ジゼルの家と、アルブレヒトが剣を隠す家が、舞台袖ではなく正面寄りにありました。これなら端の席からも見えてグッドです。第二幕では、幕が開くとおびただしいスモークが溢れ出し、オケピが沼のようになってました。背景には教会のような建物が見え、グルジア国立バレエに続きパリ・オペラ座よお前もか、と思いましたが、よく見ると朽ち果てた教会でした。
 衣装では、ウィリたちのスカートがちょっと厚いというか、重い感じがしました。
 二幕の初めに「さいころ遊びをする人たち」が出てきて、大勢のウィリが襲いかかるという演出も初めて見ました。
 「ジゼル」が1841年にパリ・オペラ座で初演されたときの台本を見てみると[1]、第二幕の冒頭では、何人かの森番がジゼルの墓の近くで狩りを行おうとしています。そこにやってきたヒラリオンが、ここはウィリたちが踊る呪われた場所であることを教え、逃げるよう促します。おりしも零時の鐘が鳴り、どこからか幻想的な音楽が聞こえてきます。彼らは鬼火に追われながら、一目散に逃げ出します。また二幕の途中では、一人の老人を先頭にして村の若者たちが通りかかると、ウィリが彼らを取り囲み、風変わりな音楽に乗せて踊り出します。それに誘われて若者たちは踊り出し、死んでゆこうとするところ、老人が踊りの真ん中に飛び出して、若者たちが危険を冒していることを告げます。彼らはウィリの追撃を振り切り、命からがら逃げ出します。
 今回の「ジゼル」の「さいころ遊びをする人たち」は、こうした演出を踏襲しているのかもしれません。
 ウィリたちがミルタに向かって ケチャみたいに両手をのばす仕草も、ちと珍しかったです。


パリ・オペラ座バレエ団
「ジゼル」(全3幕)
テオフィル・ゴーティエ、ジュル=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュの台本による
1998年製作

2010年3月18日/東京文化会館

音楽:アドルフ・アダン
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー(1841)
改訂振付:マリウス・プティパ(1887)
パトリス・バール、ユージン・ポリャコフ(1991)
装置:アレクサンドル・ブノワ
装置製作:シルヴァノ・マッティ
衣裳:アレクサンドル・ブノワ
衣裳製作:クローディ・ガスティーヌ

ジゼル:アニエス・ルテステュ
アルブレヒト:ジョゼ・マルティネス
ヒラリオン:ジョシュア・オファルト

ウィルフリード:ジャン=クリストフ・ゲリ
ベルタ、ジゼルの母:ヴィヴィアン・デクチュール
クールランド大公:ヤン・サイズ
バチルド姫:ベアトリス・マルテル
ペザント・パ・ド・ドゥ:メラニー・ユレル、エマニュエル・ティボー
ミルタ:マリ=アニエス・ジロー
ドゥ・ウィリ:マリ=ソレーヌ・ブレ、サラ=コーラ・ダヤノヴァ

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:コーエン・ケッセル

【参考文献】
[1] 『十九世紀フランス・バレエの台本―パリ・オペラ座』慶応義塾大学出版協会、2000年。

2010/03/22

【雑学】バレエ「海賊」のストーリーの変遷

 バレエの「海賊」は、ガラやコンクールで踊られるアリのパ・ド・ドゥはすばらしいけれど、全幕としてはおもしろくないので有名です。そのためさまざまな振付家が、ストーリーに変更を加えて、少しでも面白くしようと努力してきました。そこでぽん太は、「海賊」のストーリーの変遷を調べてみました。
 まず原作のバイロンの『海賊』ですが、あらすじを以前の記事(【バレエの原作を読む(1)】バレエの『海賊』←バイロンの長編詩『海賊』)に書きましたので、参照して下さい。
 1856年にパリオペラ座で初演されたときの台本は、平林正司の『十九世紀フランス・バレエの台本―パリ・オペラ座』[1]に収録されています。

 初演時の台本は、「ジゼル」でも有名なジュル=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュと、ジョゼフ・マジリエ、そして振付けはジョゼフ・マジリエでした。そのあらすじはこれだ〜。

 最初の場面は奴隷市場。海賊の首領コンラッドは、市場の年老いた支配人イザークの被後見人であるメドラと思いを寄せ合います。そこにセード・パシャが奴隷を買いに来ます。彼はメドラを気に入ります。イザークは自らが後見している娘を売るのを拒みますが、やがて金に目がくらんでついに売ることを承諾します。しかしころあいを見計らって、コンラッドら海賊たちは、メドラをイザークもろとも奪って逃げます。
 海賊の隠れ家につれてこられたメドラは最初は怖がりますが、やがてコンラッドと愛し合うようになります。そして華やかな宴が繰り広げられますが、メドラは、囚われの娘たちの開放を請います。副首領のビルバントは反対しますが、コンラッドは彼を屈服させ、娘たちを開放します。怒ったビルバントは、イザークと結託し、メドラを奪う計画を立てます。ビルバントは花輪に睡眠薬を注ぎ、コンラッドがそれを嗅いで眠ったすきに、メドラを奪い去ります。しかしその際メドラは、覆面をしたビルバントの腕にナイフで一撃を加えました。
 さて、パシャの宮殿では、若い女奴隷ギュルナールが、他の女奴隷とパシャの寵愛を競っています。そこにイザークがメドラをつれて戻ってきます。ギュルナールとメドラは互いに理解し合い、友情が芽生えます。そこに巡礼者のキャラバンが到着し、宴が繰り広げられます。頃合いを見計らって巡礼者たちが衣を脱ぎ捨てると、彼らはコンラッド率いる海賊たちでした。メドラはコンラッドに救われ、またギュルナールも彼に保護を求めます。そのときメドラは、ビルバントが自分を襲った覆面の男であることに気がつきます。メドラがビルバントの腕を握ると、ビルバントはナイフで刺された傷の痛みにうめき声をあげます。コンラッドは彼を射殺しようとしますが、ビルバントはすきをみて逃げ去り、パシャの衛兵たちを連れて戻ってきます。これにはさすがの海賊たちも、降伏せざるを得ませんでした。
 メドラは、自分がパシャと結婚することで、コンラッドの命を救おうとします。それを知ったコンラッドは、一緒に死ぬことを決意します。しかしそこに現れたギュルナールは、秘密の計画を持ちかけます。まず結婚式では、ギュルナールがメドラの替え玉になり、替わりに結婚指輪を受け取ります。夜になって、メドラはふざけた振りをしながら、パシャの武器を奪い取り、両手を縛ります。そこにコンラッドが現れ、メドラとともに逃げ去ります。慌てるパシャに対してギュルナールは結婚指輪を見せつけ、自分がパシャの妻であり女王であることを誇らしげに宣言します。
 コンラッドとメドラそして海賊たちは、海賊船で大海原を渡っています。しかし恐ろしい嵐が船を襲い、あえなく沈没してしまいます。
 しかしコンラッドとメドラは奇跡的に遭難を免れ、陸地にたどり着き、天に感謝します。コンラッドはメドラの愛によって改悛し、海賊をやめ、永遠の平穏と幸福を得ます。

 ちょっと長めに要約して見ました。最初が奴隷市場で、最後が難破ですね。ギュルナールが計略によってコンラッドとメドラを逃がし、自分はパシャの妻の座に納まるという下りは目新しいです。また最後の「コンラッドが愛によって改悛して海賊をやめる」という結末は、なんだかな〜という感じです。バイロンの描いた、「俗世間を離れて崇高な生き方をする海賊」とは、すでに違うようです。そ、そして……。アリがいない。アリはどこだ!

 初演時の『海賊』は典型的な舞踏劇で、マイムが多くて踊りがすくなかったのだそうです。確かに初演時台本を読むと、今のバレエの感覚からするととても複雑で、どうやって聴衆に理解させたのかと思えます。コンラッド役は鬼のように恐ろしい顔をした野性的なダンサーが踊ったそうで、それが当時の海賊のイメージだったそうです。2年後の1858年、ボリショイ劇場でペロー版が初演され、このときから海賊は王子に変わったそうです。プティパは1863年に自分の版を初演し、その後もドリーブなどの曲を付け加えるなど、何度も改訂を行いました。1867年には第三幕に「動く花園」と呼ばれる抽象バレエを入れました。また1999年には、現在アリのパ・ド・ドゥとして知られているドリゴの曲が追加されました。アリのソロが踊りとして完成されたのは1930年頃で、ワフタング・チャブキアーニが自ら振付けをして踊ったそうです。ただその役名は「奴隷」だったそうです。
 「海賊」はその後ソ連でのみ演じられておりました。1962年にヌレエフがロンドンで踊ってから、パ・ド・ドゥのみ西側に広がりました。ソ連のバレエ団が、西側で「海賊」全幕を公演したとき、観客はアリが主人公じゃないのにびっくりしたそうです。ソ連では1973年にセルゲーエフ版(キーロフ・バレエ団)ができたそうです。現在ABTで踊られているものの元ですね。また難破を冒頭に持って来たのはヴィノグラードフで(キーロフ・バレエ団)、1987年のことだそうです。ABTが「海賊」全幕を初演したのが1999年、欧米のバレエ団では初めてだったそうです。

 

 う〜ん、なんかとっても中途半端だけど、バレエ素人のぽん太の調査はこれが限界か……。またいい資料に巡り会ったら、みちくさしてみましょう。
【参考文献】
[1]平林正司『十九世紀フランス・バレエの台本―パリ・オペラ座』、慶応大学出版株式会社、2000年。
[2]鈴木晶『バレエ誕生』、新書館、2002年。
[3]佐々木涼子『バレエギャラリー30 登場人物&物語図解』、学習研究社、2006年。
[4]渡辺真弓『バレエの鑑賞入門 』、世界文化社、2006年。
[5]薄井憲二によるDVD「海賊」の解説(1990年)、「キーロフ・バレエ「海賊」 」ワーナーミュージック

2010/03/21

【エベレスト街道トレッキング(6)】雪のなかエベレストに大接近(タンボチェ→シャンボチェ)

Pc310191 夕方から降り始めた雨が夜中に雪に変わったらしく、目を覚ますとあたりは一面の雪景色でした。エベレストは厚い雲に隠れて見えません。ロッジのお父さんが、素手に金属のお盆で雪かきです。寒くないんでしょうか?現地の人たちは、驚くほど寒さに強いです。ぽん太は手袋をしていても手がかじかんで来るし、カメラのシャッターを押すために手袋を取ると、あっという間に感覚がなくなり、さらに痛みを感じて来ます。
 手の皮が厚いのかと思いましたが、手に触らせてもらうと、ほかほかと暖かいです。これは手の皮が厚いとか、寒さを感じないという問題ではなく、生理学的に、血液を暖めて指先に送り込む機能が発達しているようです。いったい身体のどこでそんなに熱を産生しているのでしょうか?筋肉ぐらいしか思いつきませんが、そんなに熱が作れる物でしょうか?うう、謎です。
Pc310192 朝食前に、お寺の勤行を見学です。冷えきった本堂のなか、お坊さんたちも厚い衣を着てお経をあげます。
Pc310001 ところが神の情けか仏の慈悲か、勤行を終えてお寺から出て来ると、雲が晴れて空が晴れ渡っているじゃないですか!!すばらしい。間近に見えるエベレストです。
Pc310203 アマダブラムです。雪煙が立っています。神々しいです。
Pc310204 エベレストです。雪煙が立っています神々しいです。
 ああ、神様仏様、ありがとうございます。こんなすばらしい景色が見れて幸せです。あとはどうなってもかまいません。
 ぽん太の声が神様に届いたのか、ガイドさんが笑顔で言いました。「今日の飛行機は全便欠航になりました。明日もこの分だと危ないですね……」。
Pc310011 先のことを考えると気が重くなるので、現在だけに意識を向けて、下山にかかります。ガスのあいだからコンデリが顔をだしましたが、真っ白に雪化粧です。
Pc310403 帰り道の途中から右に折れ、クムジュンの町を通ってシャンボチェに入りました。ホテル・エベレスト・ビューのラウンジでコーヒーを飲みました。久々に文明社会に戻って来た感じです。残念ながら曇っていて、売り物のエベレスト・ビューは見えませんでした。このホテルは日本人の宮原巍(みやはらたかし)さんが作ったもので、現在はヒマラヤ観光開発株式会社が所有しています。
 館内は人気がなく、がらんとしていました。雪で飛行機が飛ばなくなり、予約がほとんどキャンセルになったのだそうです。
P1010041 われわれが泊まったのは、こちらのパノラマ・リゾート(翌日撮影)。こじんまりとした素敵なホテルです。
Pc310412 なんと夕食は和食!天ぷらに煮物、コロッケにご飯とみそ汁。煮物の味付けなど、なかなかのものでした。
Pc310414 今日は2009年の大晦日。手作りチョコレートケーキのサービスです。この山のなかで作った手間と苦労を考えると、うれしいかぎりです。

2010/03/20

【エベレスト街道トレッキング(5)】非常事態発生!?ナムチェバザール→タンボチェ

Pc300153 今日もいい天気だ、エベレストが見える!本日はここナムチェバザール(3446m)を出発し、今回のトレッキングの折り返し地点のタンボチェ(3867m)まで向かいます。標高差わずか400mですが、いったん谷まで200m下り、そこから600m登り返すので、ちと大変です。しかし、間近にエベレストが見えるとあらば、がんばるしかありません。
Pc300160 独特の形をしたアマダブラム(6812m)が近づいて来ます。アマダブラムは、「母の首飾り」という意味だと言われています。母親が子供を抱いている姿に見えませんか?
Pc310347 これまでチャイのことを書きませんでした。ネパールでは、ミルクティーをよく飲みます。トレッキングをしていると、乾燥しているので喉が渇くし、冷えた身体が暖まるうえ、疲れているので甘いミルクティーがとてもおいしいかったです。今回のツアーではソフトドリンクはサービスだったので、トレッキング中の休憩時間に、何度もチャイをいただきました。
Pc300174 材木を背負った人たちに会いました。以前にエベレスト街道の運搬手段としてゾッキョという動物をあげましたが、人間も重要な運搬手段です。冷蔵庫やベニヤ板、電線など、さまざまな荷物を運ぶ人たちにあいました。もちろん我々が歩いている道が主要道であり、ほかに自動車道路などはありません。この先、まだまだ道が続き、集落があるのですが、自給自足では得られない物資は、すべてルクラや、ナムチェバザール近くのシャンボチェの飛行場から、人間や動物が担いで運ぶのです。
Pc300165 ガイドさんが聞いたところでは、材木1本を2日間運んで700ルピーの賃金が得られるそうです。ちなみに1ルピーは約1.2円です。彼らはそれぞれの力に応じて、1人で5~6本の材木を背負っていますが、その重さは100Kg近いそうです。がんばって6本背負ったとして、700×6=4,200ルピー=5,040円。さらにここから2日分の食事代などが経費として出て行きます。ちなみにカトマンズ市内では、月に1万ルピーあれば一家4人が暮らして行けるそうです。
Pc300168 こうやって人々が自分の体を駆使して一生懸命働いているのを見ると、労働というものの原点を見た気がしました。働かない若者がたくさんいる先進国は、なにかが欠けているような気がします。「日本の若者もネパール人を見習って働け!」ということが言いたいのではなくて、「働けない若者がいっぱいいる社会って何だろう?」と疑問に思うのです。もちろんぽん太には、この疑問に答えを見つける力はありません。
Pc300172 材木を背負っていた人の背後に見えた山は、カンテガ(6799m)です。「雪の鞍」といった意味だそうですが、そのまんまですね。山頂付近が厚い雪で覆われています。
Pc300182 やがて到着したタンボチェには、この地方最大のゴンパ(仏教寺院)があります。
Pc300181 これがぽん太たちが泊まったロッジです。
Pc300343 トレッキングも折り返し地点。体調もいいので、ぽん太はハンバーグステーキを注文。にゃん子はチャーハンです。ワイン(適量)で、皆で乾杯しました。
Pc300341 このあたりのロッジには火の気がありません。客室には火の気はありません。食堂にはストーブはありますが、夕食の時など短時間焚くだけで、普段は火を入れません。もともと高所で木が少ないうえ、国立公園で木の伐採が規制されているので、薪は貴重品なのです。ですからゾッキョなどの糞を乾燥させて燃やします(モンゴルでも牛の糞を燃料にしてますね)。ですから家のなかも、基本的には寒いです。ロッジにに入ったら火で暖をとるものだと思い込んだぽん太は、寒さにびっくりするとともに、火のありがたさを痛感しました。しかし、郷に入っては郷に従え。最初から寒いものだと思って、家のなかでも外と同じように、ダウンを着込んで帽子をかぶればいいのです。

 到着時、エベレストはちらりと見えたのですが、すぐにガスがかかってきて隠れてしまいました。明日はガスが晴れるといいなあ。


 ところが翌朝、起きて外に出てみると……。




Pc310187 なんとあたり一面雪景色だ〜〜!エベレストは見えるのか!?ぽん太とにゃん子は果たして無事下山できるのか!?次回のプログを乞うご期待!!


2010/03/19

【エベレスト街道トレッキング(4)】高度順応のためナムチェバザール周辺散策

Pc290092 翌朝、まだ夜が開ける前に起床して、近くの丘に登りました。圧倒的な迫力のあるコンデリの麓で、まだ眠りから覚めないナムチェバザールの町です。
Pc290094 最初に朝日が当たってオレンジ色に染まったのは、テンギ・ラギ・タウ(6943m)です。
Pc290115 さらに日が昇ってくると……。見えました!エベレスト(8848m)。2度目の対面です。正面奥の岩山、やや左に台形状に顔を出しているのがエベレストです。画面右端のドーム状の山がアマダブラム(6856m)、左端の尖った山がタボチェ(6367m)です。
Pc290208 う、う、う、寒かった。宿に帰って朝食です。スープにチャパティ(小麦粉を発酵させずに作った生地をフライパンで焼いたものだそうです)、オムレツです。
Pc290215 朝食後、ナムチェバザールから北東に伸びる道を、ターモの手前まで散歩に出かけました。途中リンドウが咲いていました。真冬のこの時期、唯一であった花でした。ガイドさんに「ヒマラヤリンドウ」と教わったのですが、ググってもあまりヒットしないので、別の名前があるように思われます。
Pc290233 ターモ手前の折り返し点にて。はるか彼方に白い山が見えました。あの山の向こう側はチベットだそうです。
Pc290141 ナムチェバザールまでの帰り道に、小さな家を訪れました。特に看板などは出てませんが、お茶などを飲ませてくれるそうです。
Pc290139 台所の様子です。
Pc290137 チャン(どぶろく)を作っているところでした。蒸し上がった米をシートの上に広げて、さましているところです。
Pc290140 悠然と座ってチャンをちびちびやっているので、てっきり家のご主人かと思ったら、お客さんだそうです。チャンを一杯ひっかけて、これから農作業に出かけるところだそうです。
 ネパールの農民の生活は、厳しい自然のなかで生活の糧を得るために、朝から晩まで農作業をし、楽しみといったら食べること、飲むこと、友人との会話、たまにある祭りだけとのこと。映画だバレエだ、イタリア料理だ、海外旅行だと言っている自分たちは、いったい何なのだろうかと思われました。
Pc290147 さて、午後はナムチェバザールの町のなかを散策しました。まずはチベット人のバザール。中国製品を仕入れてチベットから国境(先ほど見て来た国境です)を越えて来て、テントで寝泊まりをしながら品物を売りさばき、数ヶ月後には必要な物資を買いそろえて、再びチベットに戻って行くのだそうです。帰国時期が近づいていて売れ残りが多かったせいか、品物の品質はあまりよくありませんでした。
Pc290150 町のなかには登山用品を売っている店がいくつもあり、ノースフェイスやパタゴニア、Marmotといった高級ブランド物が、格安の値段で手に入ります。こ……これは、に○ものですね。この付近では、農村の子供までノースフェイスを着ています。上のどぶろく飲んでたおじさんは、Milletを着てましたね。地元の人が着ているということは、防寒性や耐久性は確かなのでしょう。
Pc290151 なにやらゲームをしてひるひとたち。
Pc290276 夕食は、ぽん太は揚げ焼きそば、にゃん子はパスタです。

2010/03/18

【バレエ】黒海の情熱 アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ「ロミオとジュリエット」

 いや〜よかったです。「ジゼル」よりぜんぜんいいです。お客さんの反応が違ってました。何回も何回もカーテンコールが続き、最後は会場全員スタンディング・オベーションでした。公演の公式サイトはこちらです。
 「ジゼル」も悪くはなかったですけれど、なんか群舞がいまいちだったのと、南国的で雑然とした雰囲気が、ぽん太の「ジゼル」のイメージとは相容れませんでした。言い方が悪いけど「田舎のバレエ団」という印象を持ちました。しかし「ロミオとジュリエット」はもともと南国イタリアを舞台にした、燃えるような恋の話し。団員の南国風の顔立ちも、違和感がありませんでした。またシェイクスピアの原作は、決してハーレクイーン的なロマンチックなラブストーリーではなく、良家子女なら顔を赤らめるような相当猥雑な冗談が詰め込まれた、笑劇的要素を持った演劇です。そのへんがいい意味で、アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエに合ってました。ニーナはもとより、群舞ものびのびと踊っていた気がします。場面転換のたびに幕が閉められ、幕の手前で寸劇が演じられるのも、やぼったいといえばやぼったいですが、なんだか昔の演劇風で面白かったです。
 セットや衣装は、やはり「東欧〜アジアっぽくて、なんかイタリアらしくないな〜」という感じ。そういえば教会にもイコンが飾られており、カトリックではなくてグルジア正教会っぽいです。
 今回の振付けのラブロフスキー版は初めて観ましたが、第一場が、さしたる踊りもなく、入り乱れてのチャンバラで終わったときには、正直少し気持ちがうつになりました。しかしニーナのジュリエットが登場してびっくり仰天。やわらかくて可憐で、まさに少女のようでした。最大の見せ場のバルコニー・シーンは、ラブロフスキー版の振付けも悪くなく、感動で思わず目がうるうるしてきました。バルコニー・シーンなのにバルコニーがないのが、ちょっと面白かったです。
 座布団を捧げて踊る、不思議な踊りがありました。ググって見たらクッション・ダンスというそうな。 こちらのサイトで触れられています。Lina EckensteinのComparative Studies in Nursery Rhymesを、星野孝司さんという方が抄訳(?)したもののようです。引用させていただくと……

プレイフォードによる〈ジョウン・ソンダーソン あるいは クッション・ダンス〉の仔細は,以下の通り――(1)
 まず二人のダンサーがフィドル(弦楽器)の曲に合わせて,それぞれ小座布団と角杯を運んでくる。座布団を持っている方はドアに鍵を掛けて,その鍵を懐におさめ,一人で部屋を踊って回る。それから楽士を相手に,女の子を一人みつくろい是非なくダンスに出てもらう,といった旨の口上を交わす。つぎに女性たちの中から「ジョウン・ソンダーソン」が指名される。座布団持ちが選ばれた女性の前に,その小座布団を敷いてひざまづく。次に彼女も同様の所作をして,最後に角杯から酒をいただく。二人がキスを交わし,一緒に踊りだすと,同じセレモニーがそこここの男女の間でくりかえされ,各々相手が決ったものから「座布団持ち」たちの踊る後にどんどん続いてゆき,最終的には集まった者全員が踊りの輪と化すのである。
 その後ラストにいたるまで、よけいな「新演出」がないためにかえってストーリー展開が明確になって、津波のような劇的盛り上がりを生み出しました。会場全体が大興奮で、先程述べたようにカーテンコールが果てしなく続きました。
 ロミオのウヴァーロフも、新国立でザハロワと踊っているのを見た感じでは端正な貴公子という印象でしたが、今回は情熱的で思い入れたっぷりの濃い〜演技。彼の新たな一面を見たような気がしました。「ジゼル」ではニーナとの身長差がありすぎる気がしましたが、「ロミオとジュリエット」では、高々としたリフトがとてもダイナミックでした。岩田守弘がマキューシオで、安定感のあるテクニックのみならず、剣で刺されて死んでいく名演技も披露。日本人の活躍を見るのはうれしいものです。「ジゼル」の時も気になったのですが、もうひとり日本人風の顔のダンサーが、すばらしいジャンプや回転を見せてくれました。キャスト表を見るとヤサウイ・メルガリーエフという名前で、日本人ではないようです。公式サイトのブログによると、カザフスタン人とのこと。案の定「日本人ですか」という問い合わせが多かったそうです。
 演奏は東京ニューシティー管弦楽団。先日パリ・オペラ座バレエで聞いたばかり。ご苦労さまです。しかも立て続けにプロコフィエフ。「シンデレラ」よりも重々しく不協和音が目立つ「ロミオとジュリエット」ですが、厚みのある音と繊細な音色で、感動を盛り上げてくれました。
 カーテンコールにはニーナのちっちゃな娘さんが花束を持って登場。ニーナは最後のカーテンコールでは、グルジアの国旗を持って登場しました。祖国のバレエ界のために身を捧げようという彼女の思いが伝わって来ました。そういえば先日こんなニュースが……「「露軍侵攻」と偽ニュース、グルジア市民パニック」。ロシアと、かつてロシアの一部だったグルジアのあいだで、軍事紛争が続いていることはよく知られています。ニーナはグルジア人、ウヴァーロフはロシア人。で、「ロミオとジュリエット」……。これは考え過ぎのようですが、ラブロフスキー版は、原作どおり最後にモンタギュー家とキャピュレット家の和解を持ってくることによって、二人の悲恋よりも、人間同士の対立から生じる不幸に焦点を当てているように感じられ、身につまされました。
 パリから帰国したばかりの鈴木晶先生を久々におみかけしました。鈴木晶先生のブログはこちら
 今回の舞台を見て、アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエの良さがやっとわかりました。もう一度改めて「ジゼル」を見直したらどういう風に感じるだろう、などと思いましたが、もし機会があれば……。


アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ
≪ロミオとジュリエット≫ 全 3 幕
2010年3月14日(日)  ゆうぽうと

音楽 : セルゲイ・プロコフィエフ
台本 : レオニード・ラヴロフスキー,セルゲイ・プロコフィエフ,セルゲイ・ラドロフ
振付 : レオニード・ラヴロフスキー
振付改訂 : ミハイル・ラヴロフスキー
振付改訂補佐 : ドミートリー・コルネーエフ,イリーナ・イワノワ,アレクセイ・ファジェーチェフ
装置 : ダヴィッド・モナヴァルディサシヴィリ
衣裳 : ヴャチェスラフ・オークネフ
衣裳デザイン補佐 : ナティヤ・シルビラーゼ
照明 : ジョン・B・リード
照明デザイン補佐 : アミラン・アナネッリ
舞台監督 : ニアラ・ゴジアシヴィリ
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

<出 演>
ジュリエット : ニーナ・アナニアシヴィリ
ロミオ : アンドレイ・ウヴァーロフ
ティボルト(キャピュレット卿夫人の甥) : イラクリ・バフタ-ゼ
マキューシオ(ロミオの友人) : 岩田守弘
ヴェローナの太守 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
キャピュレット卿(ジュリエットの父) : ユーリー・ソローキン
キャピュレット卿夫人 : ニーノ・オチアウーリ
ジュリエットの乳母 : タチヤーナ・バフターゼ
パリス(ジュリエットの婚約者) : ワシル・アフメテリ
パリスの小姓 : テオーナ・ベドシヴィリ
ローレンス神父 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
ジュリエットの友人 : ラリ・カンデラキ
吟遊詩人 : ヤサウイ・メルガリーエフ
道化:ヤサウイ・メルガリーエフ
モンタギュー卿(ロミオの父) : マヌシャール・シハルリーゼ
ベンヴォーリオ(ロミオの友人) : ゲオルギー・ムシヴェニエラーゼ
居酒屋の主人 : ベサリオン・シャチリシヴィリ

2010/03/17

【バレエ】一言でいえば「最高!」 パリ・オペラ座バレエ団「シンデレラ」

 見て来ました見て来ました、とにかくすばらしかったです。NBSの公式サイトはこちらです。パリ・オペラ座バレエ団、前回の「ル・パルク」は、フランスのエスプリにちょっとついていけなかったのですが、今回の「シンデレラ」は心底感動しました。
 「シンデレラ」は、以前に新国立のアシュトン版を観たことがありますが、ヌレエフ版は初めて。クラシックのテクニックを基本にしてモダンな動きもあり、ヌレエフ一流の超絶技巧のパ・ド・ドゥや、複雑な群舞など、とても感動しました。一方でユーモアや洒落っ気もたっぷりで、ショーを観るかのようなハイセンスな舞台でした。ぽん太はなんかノイマイヤーの「人魚姫」をちと思い浮かべました。……。
 ダンサーたちもすばらしかったです。シンデレラを踊ったムッサンは、ぽん太は初めて観たのですが、最初は痩せててちょっと華がないな〜などと思って見てたのですが、変身後は30年代風のヘアスタイルや衣装が似合ってとても美しく、オーラにあふれてました。踊りもやらかかくしなやかで、繊細な動きに表現力がありました。タップダンスも披露して、お見事お見事。ガニオは言うまでもありませんが、ユーモラスな演技もいいですね。エイマンのダンス教師は、ジャンプや安定感など、テクニックがすばらしい。コゼットとジルベールの義姉も、とても芸達者でした。継母のファヴォランは、男性の女役はよく見かけますが、トゥ・シューズまで履いているのは初めて見た気がします。群舞にスーパーレッスンで人気を呼んだアクセル君を発見。とにかく全員の踊りがすべて上手で生き生きとしていて、お家芸というんでしょうか、自家薬籠中のものというんでしょうか、全員が踊り込んでいる感じでした。
 セットもアール・デコ調で美しく、豪華でしっかりと作り込んであります。巨大なキングコングも出現。お金がかかってます。
 「ル・パルク」でも振ったケッセル指揮の東京ニューシティー管弦楽団の演奏も、プロコフィエフらしい重厚さを聞かせつつ、スピード感やきらびやかさもあって、なかなかよかったです。
 実はぽん太は、ヌレエフ版の全幕物を観るのは初めてでした。シンデレラをハリウッドの世界に重ね合わせるのは、目新しいアイディアとは思われませんが、それが陳腐ではなく感じられるのは、ヌレエフの力でしょうか。舞台設定は1930年代のアメリカだそうですが、古き良き時代へのノスタルジックな雰囲気に満ちています。ヌレエフ版「シンデレラ」の初演は1986年とのことですから、初演の時点で、半世紀前をなつかしむものだったわけですね。ちなみに映画「キンゴ・コング」は1933年です。また、第一幕の最後の、巨大な歯車のセットから思い浮かべるチャップリンの「モダン・タイムス」は1936年ですね。
 今回の舞台は、「機械と人間が幸せな関係を結んでいた時代」が描かれています。スタジオのセットで夢のような世界を生み出す映画がそもそもそういうものですし、キング・コングや巨大な歯車など、機械仕掛けのものがいろいろと出て来ます。それに呼応して振付けでも、シンデレラがコート掛けとダンスをしたり、シンデレラと映画スターのパ・ド・ドゥでは回転椅子が効果的に使われたりします。そしてラストは、送風機がショールをなびかせます。
 日本は21世紀になって、未来はますます悪くなって行くだろうという絶望感が蔓延しており、「シンデレラ・ストーリー」など絵空事としか思えません。「シンデレラ」を見るにつけ、現在の日本の悲惨な社会状況が思い浮かんで、涙に耐えません。
 プロコフィエフが「シンデレラ」を作曲したのが1944年。プロコフィエフは1918年、27歳のときに「日本経由で」アメリカに亡命。以後、アメリカやフランスを拠点として活動いたしました。そんな彼がソ連に帰国を決意したのが1936年。公式サイトの解説によれば、ヌレエフは「1930年代というのは、プロコフィエフの人生においては、彼がソ連に帰国し、西洋へのノスタルジーに身を焦がしていた時代である。プロコフィエフの「シンデレラ」は、あまりロシア的ではない。彼の作った中で最も西洋的な作品でさえある」と語ったということです。ヌレエフ自身も1961年にソ連から亡命したことは周知の事実。ヌレエフがプロコフィエフに何を見たのかは、タヌキのぽん太の伺い知るところではありませんが、ヌレエフ版「シンデレラ」の華やかな舞台の裏側に、なにやら深い思いが隠されていることは確かでしょう。


パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「シンデレラ」(全3幕)
2010年3月13日ソワレ 東京文化会館

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
装置:ペトリカ・イオネスコ
衣裳:森英恵
照明:グイード・レヴィ
1986年 パリ・オペラ座初演

◆主な配役◆
シンデレラ:デルフィーヌ・ムッサン
映画スター:マチュー・ガニオ

二人の義姉:エミリー・コゼット、ドロテ・ジルベール
継母:ステファン・ファヴォラン
ダンス教師:マチアス・エイマン
プロデューサー:アレッシオ・カルボネ
父:ジャン=クリストフ・ゲリ

春:リュドミラ・パリエロ
夏:エヴ・グリンツテイン
秋:メラニー・ユレル
冬:ステファニー・ロンベール

演奏:東京ニューシティ管弦楽団
指揮:コーエン・ケッセル

2010/03/15

【エベレスト街道トレッキング(3)】初めてエベレストを見る(パクディン→ナムチェバザール)

Pc280097 朝食は、ガイドさんが炊いてくれたお粥に持参のお茶漬けの素をかけ、さらにオムレツを注文しました。さあ、今日も一日がんばるぞ。
Pc280045 こちらが、全行程にわたってわれわれの荷物を運んでくれたポーターさん。われわれは、手荷物だけ持って歩けば良いのです。ありがたや、ありがたや。ポーターさん(名前忘れた)は、通常二人で運ぶ荷物をひとりで持って、二倍のポーター代を稼いでいました。休むたびに、村に残した彼女に携帯電話をかけてました。かわいいですね。下にある籠は、このあたりで荷物運びに使われているものです。籠をリュックのように背負い、白い布を額に引っ掛けて持ち上げます。
Pc280047 ネパールのお酒には、チャンと呼ばれるどぶろくや、ロキシーという蒸留酒があります。写真は、農家の庭先に洗って干してあった、ロキシーを蒸留する道具です。写真左下の壁際に置いてある部品と、写真右上の薪の上に置いてある部品を重ねて、ロキシーを作るのだそうです。ただしトレッキング中は、高山病予防のため、お酒はほどほどに。
Pc280051 タムセルク(6608m)が見えて来ました。遥かかなたに見えますが、われわれは、向かって左から回り込んで、あの山の裏側まで行くのです。これから先、タムセルクをいろいろな角度から眺めることになります。
Pc280053 こちらの黒い円錐形の山は、クンビラ(5761m)です。
Pc280054 お昼ご飯は卵入り焼きそばにしてみました。
Pc280060 オレンジを売っているお姉さんたちです。疲れた体に甘酸っぱい味がおいしかったです。
Pc280065 初めてエベレストが見えるポイントです。松の木のちょうど隙間から遠くエベレストを見ることができます。山の天気は変わりやすいもの。ひょっとしたらこれがエベレストを観る最初にして最後の機会かもしれないので、一生懸命目に焼き付けました。
Pc280080 ナムチェバザールまでもう少し。だんだんと日が傾いて来ました。コンデリに夕日があたり、美しい光の芸術を見せてくれました。
Pc280085 ナムチェバザールに到着。こ、こ、これは町ですな。お店や、大きな建物が建ち並んでいます。
Pc280087 夕暮れの空に浮かび上がったタムセルクです。お月様とにらめっこ。この方角から見ると双耳峰にみえます。
Pc280090 夕食はスープとカレーです。疲れた体にカレーの辛さがのどを通りやすいです。しかし、ネパール人が食べるものとは異なり、観光客向きに辛さ控えめの味付けになっているそうです。

2010/03/14

【エベレスト街道トレッキング(2)】世界の屋根の入り口に立つ(カトマンズ→ルクラ→パグディン)

Pc270038 早朝まだ暗いうちににホテルを出て、国内線の空港に向かいます。ここからチャーター便で、エベレスト街道の玄関であるルクラまでひとっ飛び。わずか40分ほどで到着です。ちなみに車で行けるところまで行って後を歩いたとすると、ルクラまで数日かかるそうです。
 と、ところが、待てど暮らせど飛行機が飛ばない。この時期、カトマンズ盆地には朝から霧がたれ込めることが多く、日が高くなって霧が晴れるまで、飛行機は飛べないのです。次第に待合室は、カトマンズのあちこちを目指す観光客でごった返してきます。おまけに待合室が寒くて寒くて、すっかり冷えきりました。ようやく霧が晴れたのは、もうお昼前。ようやくの思いで飛行機に乗り込みます。
 カトマンズとルクラの間には定期便が飛んでおりますが、繁忙期にはチャーター便も飛びます。貨物の輸送にも使っているので、荷物と相乗りです。
Pc270007 飛行機の左手には、いい感じの山々が見えます。名前を聞いたけれども忘れました。ルクラに近づくと、飛行機は山の間を縫うように飛んで行きます。
Pc270023 これがルクラの飛行場です。滑走路みぢかっ!見てわかるように滑走路が斜面になっており、登り坂を利用して飛行機が止まります。ちなみに滑走路の端っこは壁になっております。また離陸の時は、反対に下り坂を駆け下りることによって加速して、飛び立って行くのです。ちなみに滑走路の先は断崖絶壁です。滑走路が舗装されたのはつい最近の2001年頃だそうです。
Pc270026 ルクラの街です。ロッジがいくつも並んでいます。宙に浮かんでいるように見える山はコンデリです。
Pc270065Pc270066 ロッジで少し遅いお昼ご飯をいただきました。冷えきった体を温めるためヌードル入りのスープと、モモと呼ばれるネパール風餃子を注文。おいしゅうございました。満腹になったところでトレッキングの開始です。パグディンまではだらだらとゆるい下りが続くので楽ですが、飛行機でいきなり3,000メートル近くまで来ているので、高山病にならないようにゆっくりしたペースで歩きます。
Pc270029 エベレスト街道の重要な運搬手段、ゾッキョです。ゾッキョは雄のヤクと雌の牛の雑種で、ヤクのように力持ちで、牛のようにおとなしい動物です。ちなみにヤクは気性が荒く、写真を撮ろうとしたら、ガイドさんに近寄らないよう注意されました。
Pc270032 臼と杵でなんやら穀物を突いているおじさんです。
Pc270035 水車小屋だそうです。いい味だしてます。
Pc270037 トレッキングルートのところどころで、不思議な文字を刻んだ石にであいます。これが「マニ石」です。このあたりの人々はチベット密教を信仰しており、そのお経が刻まれた石です。ここのはなかなか大きいですね。奥に見える色とりどりの旗は、チベット密教で魔除けと祈りの意味があるそうです。チベットでは「タルチョ」といいますが、ネパールでは「ルンタ」と呼ぶそうです。
Pc280044 パグディンに到着。今宵の宿はこちらのロッジです。
Pc280098 内部はご覧の通り、快適です。
Pc270092Pc270093Pc270094 夕食は、メニューから各自選んで注文するスタイル。料金はコミで、どれを頼んでも大丈夫です。基本的にネパールは物価が安いので、少しぐらいの金額は「誤差の範囲」のようです。ぽん太が注文したのは、シェルパ風スープ、モモ、チャーハンです。ここのモモは揚げてあり、ピロシキみたいな感じですね。
Pc280040 ベッドの上で、旅行社が用意してくれた寝袋を使って寝ます。ここらへんはまだ標高が低いので、寒さはまだ気になりません。残念ながらシャワーはありません。旅行者のサービスで洗面器一杯のお湯を用意してくれたので、これで顔を荒い、体を拭きました。

2010/03/13

【エベレスト街道トレッキング(1)】行程のご案内&成田→カトマンズ

Pc310207_2 もう3月となりましたが、ようやく年末年始の旅行のご報告です。ぽん太とにゃん子、今年はエベレストを肉眼で見るべく、ネパールへトレッキングに行ってきました。写真は、今回のトレッキングの折り返し点のタンボチェから観たエベレストです。正面の岩山の真ん中にちょっと顔を出しているのがエベレスト(8850m)です。真っ青な空に雪煙があがっています。崇高ですね。エベレストを隠している岩壁のような山がヌプツェ(7861m)、右側の円錐状の山がローツェ(8414m)、その右肩にあるピークが「ピーク38」(7591m)です。手前の牛のような動物はゾッキョ。え?ゾッキョって何だって?そのうちお教えいたしましょう。地面には雪が積もっています。真冬のエベレストは雪で真っ白なのかと思ったら、以外と岩肌が出てますね。
 今回お世話になったのは風の旅行社。公式サイトはこちらです。ちなみに同じ行程のGWのツアーはこちらです。また地図は、こちらのサイトのエベレスト街道トレッキング地図が見やすいです。エベレストは地図の右上の方。トレッキングの出発点のルクラは左下になります。

 まずは行程のご案内。

【1日目】東京→カトマンズ
 成田空港から、香港で飛行機を乗り継ぎ、パキスタンのカラチ経由で、ネパールの首都カトマンズへ。カトマンズのラディソン・ホテル泊
【2日目】カトマンズ→ルクラ(2,840m)→パグディン(2,610m)
 飛行機でルクラまで飛び、そこからパグディンまで約3時間のトレッキング。
【3日目】パクディン→ナムチェバザール(3,493m)
 約6時間のトレッキングです。
【4日目】ナムチェバザール 終日周辺散策。
 高所順応のため、ナムチェバザールで連泊します。朝食前に近くの丘に登り、夜明けの山々を眺めます。その後ターモ手前まで散歩。
【5日目】ナムチェバザール→タンボチェ(3,860m)
 約7時間のトレッキングで、目的地のタンボチェへ。
【6日目】タンボチェ→クムジュン→シャンボチェ
 約5時間の歩行で、シャンボチェまで下ります。
【7日目】シャンボチェ→カトマンズ
 チャーター便で一気にカトマンズまで戻る予定でしたが!
【8日目】カトマンズ終日観光→香港
 市内観光をしました。パシュパティナート、ボダナート、スワヤンブナート、ダルバール広場などを見学。夜、飛行機でカトマンズを離れます。
【9日目】香港→東京
 香港で飛行機を乗り継いで成田空港へ。お疲れまさでした。

 トランジットでしたが、香港を訪れたのは初めてでした。また、香港→カトマンズの飛行機が、パキスタンのカラチ経由。パキスタンも初めてで、地面には一歩も足を触れませんでしたが、少し感動しました。この路線は、香港→カラチ→カトマンズ→香港、と三角形に飛んでいるんだそうで、従って帰りにはカトマンズから香港まで直行となります。

2010/03/09

【歌舞伎】2010年3月歌舞伎座、第一部・第二部

 3月、4月の歌舞伎座は三部制。でも、料金はいつもと同じです。まあ、幹部クラスが大勢出ているので仕方ありませんが。ただ三部制だと、ちょっと短く感じてしまうのも事実。とくに第一部などは30分の休憩が2回もあって、ボリューム的に少々物足りなく感じました。

 第一部では、玉三郎の『女暫』が意外によかったです。「意外に」というのは、以前に見た『信濃路紅葉鬼揃』の後シテなどでは、玉三郎はやはり身体の線が細く、声もくぐもってしまって、迫力に欠けていたからです。荒事は玉三郎には会わないんじゃないかな〜と思いましたが、そんな心配は杞憂に終わり、なかなか迫力がありました。「巴御前」が、鬼や男役ではなく、勇ましいながらも「女性」であるのがよかったのかもしれません。また最後の幕外の芝居のように、可愛らしい女形が無理して荒事を演じている、という感じで通していたのがよかったのかもしれません。歌舞伎座さよなら公演にふさわしい華やかな舞台となりました。
 通しではありませんが、三月、四月で『菅原伝授手習鑑』から四つの幕が上演されます。まずは「加茂堤」から。舞台上の牛車のなかで、斎世親王と苅屋姫がエッチをするというおおらかな設定の狂言ですが、梅玉の桜丸がひょこひょこと軽い味で面白かったです。
 「楼門五三桐」は、まるで絵画のような一幕。主役はなんといっても大道具さんたちでしょう。いつもながら、満開の桜のなかの山門のせりあがりが見事でした。吉右衛門の石川五右衛門が大きくて悠々としていて、風格満点。

 第二部は、『菅原伝授手習鑑』から「筆法伝授」。ぽん太は初めて観たのですが、おかげでようやく「寺子屋」のつながりがわかりました。仁左衛門の菅丞相が格調高く、威厳と厳しさを兼ね備えてすばらしかったです。ぽん太が好きな東蔵の左中弁希世も、小物っぽい悪役振りが面白く、吉之丞の水無瀬も絶品でした。梅玉・芝雀の武部源蔵と戸浪は、明るさと華やかさがあるのがよかったです。
 「弁天娘女男白浪」。菊五郎の弁天小僧菊之助は、色気と気っ風がすばらしく、形容すべき言葉が見あたりません。豪華な顔ぶれの「勢揃い」は圧倒的な迫力があり、一人ひとりが長い芸歴をかけて作り上げた名調子に、ただただ聞き惚れるばかりでした。
 ところでぽん太がちょっとわからなかったのは、「見世先」の最後に花道で弁天小僧菊之助と南郷力丸が「坊主持ち」をしているシーンでの、南郷力丸の「新内で川流れだ」という台詞です。「坊主持ち」は、坊主と出会うたびに荷物の持ち役を変えることで、goo辞書にも出ています。「川流れ」というのは、いまでいう「お流れ」みたいなものかと思いましたが、やはりgoo辞書に出ていて、「約束を取りやめにすること」だそうです。問題は「新内」と「川流れ」の関係です。これはググってみてもでていなかったのですが、思いついたのが「新内流し」。コトバンクに出ているように、太夫と三味線の二人一組で、遊郭などを歩きながら新内を演奏するものです。動画はあまりないようで、こちらは三味線の音だけですが、なかなかいい感じです。見た目はこんな感じでしょうか。恐らくは「新内流し」のシャレで、「新内で川流れ」となったのでしょう。


歌舞伎座さよなら公演
御名残三月大歌舞伎
平成22年3月・歌舞伎座

第一部

菅原伝授手習鑑
一、加茂堤(かもづつみ)
              桜丸  梅 玉
            斎世親王  友右衛門
             苅屋姫  孝太郎
            三善清行  秀 調
              八重  時 蔵

二、楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
          石川五右衛門  吉右衛門
             右忠太  歌 六
             左忠太  歌 昇
            真柴久吉  菊五郎

三、女暫(おんなしばらく)
             巴御前  玉三郎
           蒲冠者範頼  我 當
            轟坊震斎  松 緑
            女鯰若菜  菊之助
            猪俣平六  團 蔵
            武蔵九郎  権十郎
            江田源三  彌十郎
            東条八郎  市 蔵
            根井行親  寿 猿
             局唐糸  家 橘
             茶後見  隼 人
           木曽駒若丸  萬太郎
             紅梅姫  梅 枝
            木曽太郎  松 江
            手塚太郎  進之介
          清水冠者義高  錦之助
            成田五郎  左團次
           舞台番辰次  吉右衛門

第二部

菅原伝授手習鑑
一、筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)

  菅原館奥 殿の場
  同  学問所の場
  同  門 外の場
             菅丞相  仁左衛門
            園生の前  魁 春
              戸浪  芝 雀
             梅王丸  歌 昇
            荒島主税  松 江
            腰元勝野  新 悟
            局水無瀬  吉之丞
            三善清行  秀 調
           左中弁希世  東 蔵
            武部源蔵  梅 玉

二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)

  浜松屋見世先の場
  稲瀬川勢揃いの場
         弁天小僧菊之助  菊五郎
            南郷力丸  吉右衛門
            忠信利平  左團次
            伜宗之助  菊之助
            鳶頭清次  團 蔵
          浜松屋幸兵衛  東 蔵
           赤星十三郎  梅 玉
          日本駄右衛門  幸四郎

2010/03/08

【バレエ】ウィリになっても血の通っているアナニアシヴィリの『ジゼル』・グルジア国立バレエ

 ABTを退団して祖国グルジアに戻ったアナニアシヴィリが、芸術監督を務めるグルジア国立バレエとともに来日いたしました。こちらが公式サイトです。グルジアは、アナニアシヴィリが生まれた頃は、ソビエト連邦に所属する一共和国でしたが、1991年のソ連崩壊によって独立国になりました。グルジアは、スターリンの出生地としても有名ですね。ソ連というと、北国を思い浮かべますが、地図を見るとわかるように、黒海に面し、トルコと国境で接しています。アナニアシヴィリにもそんなアジア的・南方的な雰囲気がありますが、彼女(とグルジア国立バレエ)が、『ジゼル』をどのように踊るのか、とても楽しみでした。
 幕が開くと、舞台装置はだいたい普通。森番(ハ、ハンス〜?ヒラリオンじゃないのか)は、普通はちょっと粗野な感じの無骨な男性ですが、今回はとても人のよさそうな若者でした。新国立で見慣れたウヴァーロフのアルブレヒトは、背も高いしスタイルもよく、誠実な若者で、婚約者がいながら素朴なジゼルに思わず心を奪われてしまったという感じで、ジゼルが死んだ後は本気で後悔しているようでした。ただ、ニーナとのペアでは、少し背が高すぎるような気もしました。
 剣を隠すジゼルの向かいの家から、おばあさんが出て来たのにはびっくりしました。しかも剣を預かる代償に、お金を要求したりします。なんかアジア的・南方的です。
 アナニアシヴィリのジゼルは、オペラグラスで拡大すると年齢は隠せませんが、遠目にはまったくオッケー。小ぶりでかわいらしく、上半身と手の動きがとても柔らかく、感情的表現が豊かで演技力がありましたが、弱々しさ、儚さにはちと欠けるように思いました。
 第一幕のコール・ド・バレエの衣装は、水色や黄色や赤を組み合わせた色使いや、スカートにちっちゃなエプロンみたいなのが付いているのが、コーカサスっぽかったです。ところでジゼルの第一幕の群舞って、いつもこんな振付けだっけ。なんか見慣れない感じがしたのですが。それに、ちょっとばらばらで、いまひとつでした。第一幕全体は、マイムが多いこともあって、とてもドラマチックで演劇的でした。例えばジゼルの母が「そんなに踊って死んでしまうと、ウィリになってしまうんですよ」と言う場面では、登場人物全員に緊張が走り、次の瞬間われに返るのですが、こういう演出も初めて見ました。
 第二幕では、背景に教会の屋根と塔が見えます。ジゼルの墓は、てっきり深い森のなかにあるのかと思っていましたが、教会の裏手の林のようです。してみると、ウィリがうろうろしているのが、教会の窓から丸見えなのか……。またハンスを脅かすのも、人魂のような炎ではなく、パチパチいう閃光です。さらにワイヤーで吊られたウィリが舞台を横切って飛んで行くなどの「けれん」もあり、なんか見慣れた静謐な舞台とはことなります(ちなみに「ジゼル」の初演時にも、ジゼルやウィリはワイヤーで吊られて宙を飛んだそうです)。ミルタの踊りはなかなか見事で、またウィリの群舞も、第一幕よりはよかったです。ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥはすばらしかったですが、いつも見慣れているような、純真無垢で氷のようなジゼルではなく、血が通っているジゼルに見えました。
 ということで、見慣れた北欧神話的な『ジゼル』とはちょっと違い、小芝居も混ざったアジア的・南方的なジゼルでしたが、それはそれで面白かったです。しかしよく考えてみると、以前の記事に書いたように、ウィリの伝説は北欧起源ではなく、スラブ系の起源を持つオーストリアの伝説です。ハイネはウィリたちのことを、「ぞっとするような明るい声で笑い、冒涜的なまでに愛くるしい。そして神秘的な淫蕩さで、幸せを約束するようにうなずきかけてくる」と書き、「この死せる酒神の巫女たち」と言い換えています。してみると、現在主流の純真無垢なジゼルは、必ずしも「正統的」とは言えないのかもしれません。


アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ
≪ジ ゼ ル≫ 全 2 幕
2010年3月3日 東京文化会館

音楽 : アドルフ・アダン
台本 : テオフィル・ゴーチエ,ジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ
振付 : ジャン・コラーリ,ジュール・ペロー,マリウス・プティパ
振付改訂 : アレクセイ・ファジェーチェフ
改訂振付補佐 : タチヤーナ・ラストルグーエワ
装置・衣裳 : ヴャチェスラフ・オークネフ
照明 : パウル・ヴィダル・サーヴァラング
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

<出 演>
ジゼル : ニーナ・アナニアシヴィリ
アルブレヒト : アンドレイ・ウヴァーロフ
ベルタ(ジゼルの母) : ニーノ・オチアウーリ
アルブレヒトの友人 : ユーリー・ソローキン
公爵(バチルドの父) : パータ・チヒクヴィシヴィリ
バチルド(アルブレヒトの婚約者) : マイア・アルパイーゼ
ハンス(森番) : イラクリ・バフターゼ
ジゼルの友人 : アンナ・ムラデーリ,ニーノ・ゴグア,ナティア・ブントゥーリ,エカテリーナ・スルマーワ,ニーノ・アルブタシヴィリ,エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ
パ・ド・シス : テオーナ・アホバーゼ,ニーノ・マハシヴィリ,ラーナ・ムゲブリシヴィリ,ニーノ・マティアシヴィリ,ワシル・アフメテリ,オタール・ヘラシヴィリ,メルガリエフ・ヤッサウイ
ミルタ(ウィリの女王) : ラリ・カンデラキ
ウィリたち : エカテリーナ・スルマーワ,アンナ・ムラデーリ

2010/03/07

【バレエ】もっとテクニカルな振付けで見たかった・ポリーナの『シルヴィア』

 ポリーナちゃんが踊るというので『シルヴィア』を観てきました。こちらが NBSの公式サイトです。
 背が高くて足はすらりと伸び、引き締まったボディで胸が大きのポリーナが踊るシルヴィアは、まるでワルキューレのようなドリーブの音楽もあいまって、なんとも勇ましいかぎりです。一方で第二幕でオリオンを酔わせようとしておどる踊りは、とても誘惑的で色気がありました。そして三幕では、愛するアミンタと結ばれる喜びにきらきらと輝いていました。いや〜よかったです。でも『シルヴィア』って、思わずをゝっと言うようなジャンプや回転がないですよね。ポリーナの身体能力が十分発揮されておらず、ちょっともったいない気がしました。
 アミンタのマルセロ・ゴメスは、初めて見ました。野性味あふれるダンサーでなかなかよかったですが、アミンタって「若い羊飼い」ですよね。羊飼いにしては筋肉隆々ですね。
 東京バレエ団では、高岸直樹のオリオンは、さすがに大きくて力強い踊りでゴメスに負けておりませんでした。後藤晴雄のエロスは、マントをかぶってのコミカルな動きはおもしろかったですが、ちょっと踊りにキレがないというか、重たい感じがしました。高木綾のディアナとともに、神々しさに少し欠けていた気がします。『シルヴィア』は東京バレエ団では初演とのこと。第三幕の神々の踊りなど、まだちょっと踊りこんでない感じがしました。まあ、ポリーナと比べては気の毒かもしれませんが……。
 ドリーブの音楽は、ホントにいいですね。東京ニューシティー管弦楽団は頑張ってましたが、いかんせんホルンの音程が不安定なのが、『シルヴィア』では気になりました。
 ということでなかなか楽しめた公演でしたが、飛ぶ鳥落とすポリーナには、この振り付けでは力が出し切れなかったか?


東京バレエ団創立45周年記念公演X
東京バレエ団初演
「シルヴィア」(全3幕)
2010年2月28日 東京文化会館

振付:フレデリック・アシュトン
復元:クリストファー・ニュートン
音楽:レオ・ドリーブ
振付指導:クリストファー・ニュートン、アンナ・デリシア・トレヴィエン

シルヴィア(ディアナのニンフ):ポリーナ・セミオノワ
アミンタ(羊飼い):マルセロ・ゴメス
オリオン(邪悪な狩人):高岸直樹
エロス(愛の神): 後藤晴雄 
ディアナ(狩り、純潔の女神):高木綾

【第1幕】
シルヴィアのお付き:乾友子、高木綾、奈良春夏、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、加茂雅子

【第2幕】
オリオンの女官:吉川留衣、河谷まりあ
奴隷:高橋竜太、岡崎隼也

【第3幕】
山羊:河合眞里-松下裕次
シルヴィアのお付き:乾友子、奈良春夏、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、加茂雅子、小川ふみ、二階堂由依
ケレスとイアセイオン:吉川留衣-梅澤紘貴
ペルセフォネとプルート:佐伯知香-平野玲
テレプシコールとアポロ:小出領子-長瀬直義

指揮: ベンジャミン・ポープ
演奏: 東京ニューシティ管弦楽団

2010/03/05

【バレエ】ついに観れたよ熊川哲也のアリ・Kバレエ『海賊』

 Kバレエの『海賊』を観るのは今回が3回目でした。初回は2007年。アリを踊るはずだった熊川哲也が札幌公演で前十字靭帯を損傷して降板、代役は橋本直樹、メドーラは吉田都でした。2回目は2008年。怪我から復帰した熊川のアリを観に行ったのですが、公演前の練習中に膝に違和感を感じて再度降板し、アリは遅沢佑介、メドーラは吉田都にキャスト変更となりました。そして今回が3度目の正直。どきどきしながら当日を待ちましたが、ついに熊川哲也のアリを観ることができました。よかった、よかった。
 熊哲のアリは、とにかくすばらしかったです。回転のスピートと安定性、技の切れ、どれをとっても抜群でした。さすがにジャンプ力は少し落ちたのかな〜などと観ていたら、見せ所では驚くほど高いジャンプを見せてくれました。膝の調子は良さそうですね。東洋っぽく見せるためにクネクネと体を動かしたりはせずに、きっちりと美しく正確に楷書で踊ってました。観客も熊哲のパフォーマンスに大興奮で、最後の方はジャンプのたびに拍手が起こってました。
 メドーラの浅川紫織は、以前に『ジゼル』のミルタなどを見たことがあり、神々しくも冷酷な踊りが印象に残っています。普通メドーラは、か弱くうるうるした感じが多いと思うのですが、浅川の場合ははきはきしていて、ちょっと気も強そうで、明るい現代っ子という感じでした。それはそれで悪くなかったですが……。そういう意味ではグルナーラの松岡梨絵の方がうるうると踊ってましたが、ぽん太の好みからいうと、ちょっと感情表現をしすぎか。パシャを嫌ってる風の芝居がきつすぎるように思いました。ランケデムの伊坂文月も切れのよい踊りで健闘。
 ちょっと疑問に思ったのは、カーテンコールで指揮者を舞台に呼び出すのが遅かったのと、拍手一回だけで指揮者がカーテンコールから消えてしまったこと。指揮者の体調の問題だったのかもしれませんが、ぽん太は指揮者を軽視してるような印象を受けました。ホントのところはどうなのでしょう?
 『海賊』は、アリのソロ(あるいはパ・ド・トロワ)はすばらしいけれど、全体の物語は面白くないというので有名です。メドーラを奪ったり奪われたりするのが多すぎてしつこいですよね。これまでの演出でも、なんとか面白くしようと、それぞれ苦労しているようです。熊川哲也の『海賊』では、メドーラとグルナーラの女の友情(熊哲版の設定では姉妹でしたっけ?)と、コンラッドとアリの男の友情がテーマとなっており、アリが身を挺してコンラッドをピストルから守るところが見せ場となっております。なるほど熊哲が踊るアリが、主人公というわけですね。この演出は、確かに筋が通っているのですが、ぽん太は実はあんまり好きではありません。
 『海賊』の初演時の演出、あるいはその後の演出の推移は、どうなっていたのでしょうか?ちょっとググってみると、初演時はなんとアリがいなかったとか。その後、アリが登場するようになったのですが、当初は役名がなくて「奴隷」だったとか。ヌレエフの踊りでアリのソロだけが有名になりましたが、初めて『海賊』の全幕を観た観客が、アリが主人公じゃなかったので、びっくり仰天したとか……。う〜ん、これは面白そうです。そのうちみちくさしてみます。
 というわけで、熊川哲也のテクニックは最高でしたが、演出はちょっと疑問というのが、ぽん太の感想でした。
 

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY
2010年2月25日 Bunkamuraオーチャードホール
海賊  Le Corsaire

メドーラ Medora: 浅川紫織 Shiori Asakawa
コンラッド Conrad: スチュアート・キャシディ Stuart Cassidy
アリ Ali: 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
グルナーラ Gulnara: 松岡梨絵 Rie Matsuoka
ランケデム Lankedem: 伊坂文月 Fuzuki Isaka
ビルバント Birbanto: ビャンバ・バットボルド Byambaa Batbold

サイード パシャ Said Pasha: ルーク・ヘイドン Luke Heydon
ギリシャの少女達 Greek Girls :神戸里奈 Rina Kambe / 副智美 Satomi Soi / 浅野真由香 Mayuka Asano / 日向智子 Satoko Hinata / 井上とも美 Tomomi Inoue / 中村春奈 Haruna Nakamura / 松岡恵美 Emi Matsuoka / 中谷友香 Yuka Nakatani
海賊の男達 Male Pirates :西野隼人 Hayato Nishino ニコライ・ヴィユウジャーニン Nikolay Vyuzhanin / 浅田良和 Yoshikazu Asada / 荒井英之 Hideyuki Arai / 内村和真 Kazuma Uchimura / 合屋辰美 Tatsumi Goya / 長島裕輔 Yusuke Nagashima / 奥山真之介 Shinnosuke Okuyama

【第1幕2場(市場)ActⅠ Scene2(Market)】
物乞い Beggar: 湊まり恵 Marie Minato / 荒井英之 Hideyuki Arai

【第2幕1場(洞窟)ActⅡ Scene1 (Cave)】
パ・ド・トロワ Pas de Trois
  第1ヴァリエーション 1st Variation: 東野泰子 Yasuko Higashino
  第2ヴァリエーション 2nd Variation: 樋口ゆり Yuri Higuchi
  第3ヴァリエーション 3rd Variation: 白石あゆ美 Ayumi Shiraishi
鉄砲の踊り Gun Dance: 中島郁美 Ikumi Nakajima
並河会里 Eri Namikawa / 岩渕もも Momo Iwabuchi / 西野隼人 Hayato Nishino / ニコライ・ヴィユウジャーニン Nikolay Vyuzhanin

パシャの夢の中の娘たち / トルコ軍 / 市場の住人達 / 女奴隷達 / 金持ち達
Girls in Dream / Turkish army / Market dwellers / Female Slaves / Rich Peaple
K-BALLET COMPANY ARTISTS

●芸術監督 Artistic Director:熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
●演出・再振付 Production / Additional Choreography:熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
●原振付 Original Choreography:マリウス・プティパ Marius Petipa
●音楽 Music: アドルフ・アダンほか Adolphe Adam etc.
●台本改訂 Scenario: 熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
●舞台美術・衣裳 Set and Costume Design:ヨランダ・ソナベンド Yolanda Sonnabend / レズリー・トラヴァース Leslie Travers
●照明 Lighting Design: 足立恒 Hisashi Adachi
●指揮 Conductor: 福田一雄 Kazuo Fukuda
●演奏:シアター オーケストラ トーキョー THEATER ORCHESTRA TOKYO

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